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沈んだ資産家

-34-《沈んだ資産家》



 燃え尽きた家の前で、たった一人立ち尽くす少女に、人々は憐れみの目を向けていた。


「両親も資産も全部なくなってしまって、可哀想に」


しかし、誰一人として彼女を助けようとはしない。それどころか、ある人はこう悪態をつく。


「なに不自由なく、今まで楽しく過ごして来たんだ、これで俺たちとフェアになっただけだろ」


そうだ、彼女は今まで十分に幸せだったじゃないか。誰よりも大きな家に住み、よい家庭教師をつけてもらい、面倒なことは全てお手伝いさんに押し付けて………。


彼に言われた人々は、瞬く間にその瞳の色を憐憫から軽蔑へと変えた。


もう誰も、彼女に声さえ掛けてくれない。少女はこれから、ただただ無念の涙を溢すのだろう。



 誠二は神崎が読み上げた資料に何度か頷いてから、質問をした。


「つまり、大資産家の火災の後、《寄付連合》は多額の金を得ている、と? 」


神崎はその質問に「おそらく」と返答する。続けて、賢人(さかと)が説明した。


「金額も殆ど一致しているし、殺人と付け火をしたのは彼らに違いない。無論、20年以上前の事だ、証拠といえる証拠も無いが」


だが、誠二はその説明に納得できず、睨むような目を賢人に向ける。


「20年前の事件と奴らの関連は分かったが、それが逮捕の原因って訳じゃなさそうじゃないか。これから繋がる事件でもあるのか? 」


賢人は神崎の方を見て、質問の答えを言った。


「この事件の被害者の少女、名前を臼井(うすい)白音(しらね)と言うんだが、彼女は俺たちが管轄している地域に住んでいたんだ。そして、10数年前に残酷にも殺されている。これが、今、うちで抱えてる唯一の未解決事件だ」


神崎は賢人の行動を不思議に思いつつも、彼の説明に理解を示す。


「そっか、町のイメージアップの為に、未解決事件は作りたくないんだね。だから、付け火で彼女と関係のある神酒さんを追ってきたんだ」


賢人は大きく頷いた。


「その通りだよ。あのメンバーの中で、一番金を得ていたのは神酒だったから、恐らく実行犯は奴だと思う」


誠二はまた二人の間に立つように無理やり移動して、後ろの神崎に言う。


「一番金を得て、今は3人中の2番に落ちたとは、難儀な話だなぁ」


神崎はメモ帳に更に目を通して、誠二の言葉に返答した。


「ええ、本当に。事件で一番少額を得た篠田が一番の金持ちですからね。世の中はわからないものです」


会話を邪魔された賢人は、やや不機嫌に立ち位置を横にずらして神崎に提案する。


「そういうことで、俺は捜査を続けるつもりだ。栞も事件を追うつもりなら、捜査権が無くちゃ調べるのも大変だろ? 俺と捜査しないか? 」


思ってもない提案に、神崎は手を合わせて喜んだ。


「賢人くんいいの!? ありがとう! 手帳も取り上げられちゃって困ってたから、凄く助かるよ! 」


言われた賢人は少し照れ臭そうに自分の頬を掻く。


「俺の方こそ、受けてくれて嬉しいよ。栞とは同じ署に入ると思ってたから、中々会えなくて少し寂しかったんだ」


神崎はそんな賢人の肩を「ありがとう、頼りになるね! 」と何度も軽く叩いた。

ただ、誠二はその様子に、口を開けて唖然とする。


「え? なんなのお前ら!? 何いちゃついてんの!? 俺いるんだけど! 他所でやってくんない!? 」


それは、誠二がそれまで賢人を単なる神崎にまとわりついている迷惑野郎 (大和第二号)ぐらいにしか思ってなかったからだ。まさか、こんなに親密だとは。そして、それを理解すると、今度は自分がここに居てはならない気がしてきて、彼は無言で路地から抜けようと後ずさる。


まぁ、直ぐに神崎に手を掴まれて、止められてしまうのだが、


「先輩! これで裁判までに思う存分捜査できますよ! やりましたね! 早く車に乗ってください、いきますよ! 」


誠二は滅茶苦茶家に帰りたかった。


「い、いやだ! お前らそんなに仲良いなら、俺要らないじゃん! 絶対的に邪魔じゃん! 俺ボッチじゃん! 精神に悪いから帰らせてくれよ! 」


そして、騒ぐ誠二を神崎はノーコメントで車に引きずって乗せる。賢人はさっきとは対照的に後部座席で借りてきた猫のように大人しくしている誠二を横目に見ながら言った。


「じゃあまずは周囲の監視カメラの確認からだな、栞、出してくれ」


神崎は敬礼のポーズを作って威勢よく返事をする。


「いえっさー! 」


そんなこんなで捜査は始まった。

そう、始まったのだ。


(帰りてぇえええ!! )



《つづく》

<次回予告>

誠二「とりあえず、美少女育成系のゲームをダウンロードしてみたぞ」

神崎「へー、どんなのですか?」

誠二「デレ◯テ」

神崎「結構王道来ましたね~。先輩は音ゲーとか得意なんですか?」

誠二「反射神経でいけるゲームは基本的に得意だぞ。苦手なのは謎解き系だ」

神崎「明らかに刑事に向いてませんね!」

誠二「俺も強行犯係に入りてぇなぁ」

神崎「入ってもいいですが、知らないひと一杯ですよ?」

誠二「………じゃあやめとく。次回、絶対正義の英雄忌憚《八代誠二》。ってあれ?俺の名前?」

神崎「先輩大活躍の予感ですね!」


<つづく>

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