外の人間
-33-《外の人間》
誠二と神崎は、それから電話を受けた救急隊員は、裁判にかけられることが決まった。そして、その中では、その場では分からなかった事情も見えてくる。
「やっぱり、断られた原因は小春のイタズラ電話だったか」
誠二は神崎の車の後部座席に乗って、神崎が資料課から持ってきた供述調書に目を通していた。神崎は前を向いたまま、ゆっくりとアクセルを踏み込む。
「ええ、確認できる限りでも30回以上も連絡していました。責任を問われる隊員も、これは災難ですよ」
誠二は呆れたように首を振った。
「小春は裁判で、自分はやってない、誰かの陰謀だって主張するらしいが、その可能性はないんだろ? 」
神崎は車の少ない路地に車を滑らせて、停止し、後ろの誠二に言う。
「そこに、通報記録の音声がありますから。聞いてみたらどうですか? 」
誠二は車の扉を開けて外に出ると、自分の隣の席においてあったレコーダーのイヤホンを右耳につけた。
レコーダーから流れたのは、悪意としか言えない、通報の数々である。
『びんぼーにんのお馬鹿さんたちー、びんぼーひまなししてるー? ははは! 』
『ちょっとぉ、対応が違うでしょ? 私にたいして庶民と同じ対応をするわけ? このジョーシキ知らず! 』
『大変なの! お父さんが死んじゃう! 助けて助けて! 』
誠二はイヤホンを耳から外して、レコーダーをポケットにしまった。
「これは酷いな」
誠二の前を歩いていた神崎は、立ち止まって電話ボックスを指差す。
「ええ。先輩、ここですよ」
誠二は今はもう殆ど見かけなくなったその透明な箱に入って、その中を調べ始めた。
「誘拐犯の一人、見つかってないのは、ここから神酒の自宅に電話をかけた奴ってのは確かか? 」
神崎はそれを少し離れた所で見ながら、彼の質問に頷く。
「間違いありませんよ。この情報を渡してくれたのは、誘拐犯の場所を調べてくれたのと同じ人ですから」
誠二は更に彼女に聞いた。
「ああ、確か、被害者団体の存在と、そいつらの動きを探ってた奴だったか? 俺の知り合いじゃないんだろ? 信じていいのか? 」
神崎はそんな疑り深い誠二の言葉に深いため息をつく。
「先輩は相変わらず、変なところに心配性ですね。大丈夫に決まってるじゃないですか。だって《彼》は………」
その時、背後から声がした。
「だって彼は、《外》の警察の人間なんだから………言葉の続きはそんなとこか? 」
声の主は、眩く光る勲章を胸に着けた、短髪で濃い青の制服姿の若い男である。男は神崎に話しかけた。
「久しいな、栞」
神崎は彼の顔を見ると、表情を急に明るくする。
「賢人くん、来てくれたんだ! 」
誠二はなぜか自分が置いてけぼりにされたように感じて、声を上げた。
「は!? まじで誰!? 」
そうだ、誠二はこいつのことなどこれっぽっちも知らない。神崎は誠二に説明しようとしたが、それを遮って賢人が説明を加える。
「俺は木下賢人、彼女とは警察学校の同期だ。俺からすれば、むしろお前が誰なのか聞きたい」
誠二は神崎の説明ではなかったことに少し不満を感じつつも、彼の質問に答えた。
「俺は八代だ、八代誠二。神崎の捜査の相方をしてる。それで、お前の目的はなんだ? 」
賢人もすぐに誠二の言葉に返答する。
「目的は神酒昌太郎の逮捕だ。この町の治安の悪さの一端に彼がいるとうちでは読んでる。そういうお前の目的は何だ? 裁判を待つ身なんだろ? 」
誠二は電話ボックスを出て、賢人の眼前まで歩み寄った。
「あれは不当裁判だ。大人しくしている必要なんてない。警察官の目的は、犯人逮捕と治安維持だからな」
近距離で睨み合う二人。
神崎は二人の間に入って、両手で二人を引き離す。
「ちょっと賢人くんも、先輩も、一体なにしてるんですか! 無駄なことしてないで、犯人逮捕しましょうよ! 」
誠二はあからさまに賢人に向けて舌打ちをして、賢人は誠二にため息をついた。賢人は神崎に言う。
「………そうだ、新たな情報が掴めたから、栞に伝えようと思って来たんだ。栞は《寄付連合》って知ってるか? 」
神崎は頷いた。
「ええ、知ってますよ有名ですから。10年前の事件の時、警察組織に寄付をした人たちのことですよね? 」
誠二はそんな神崎を後ろに下がらせて、賢人に聞く。
「それで? それと今回の件になんの関係があるんだ? 」
賢人は一瞬、嫌な顔をしてから、仕方なさそうに答えた。
「《寄付連合》の奴らは、あの事件の直前に、急に金持ちになっていたんだよ。しかも、金の出所も不自然だ」
誠二はその返答に、鼻の上に皺を寄せて声を荒げる。
「勿体つけるな! 早く言え! 」
賢人は懐からメモ帳を取り出して、誠二の顔に投げつけた。
「少しは待つってことを知らないのか? これだから頭がアレな奴は困るな」
今にも殴りかかりそうな誠二を、神崎は「先輩どーどー」と言って止めて、代わりに手帳を開く。その中には、《寄付連合》の黒い噂がかかれていた。
《つづく》
<次回予告>
誠二「予告にあった恋愛ゲームに居そうなキャラが来たな。階級はなんだ?警視?」
神崎「警部ですよ」
誠二「なんだ、予想より低いな」
神崎「何言ってるんですか、本当のハイスペックキャラっていうのは、周りに、特に恋愛ゲーなら恋人に支えられて急成長するものなんですよ」
誠二「なんだか育成ゲームじみてるな」
神崎「今はそういうのが流行ってるんですよ。先輩も美女育成ゲームとかやったらどうです?」
誠二「それはいい。俺は完成形と戯れてた方が楽しいし。なによりなんかやると切ない」
神崎「楽しいですけどねぇ」
誠二「神崎はそういうのやってんの?」
神崎「やで始まって、じで終わる不良の育成を楽しんでますよ」
誠二「や……じ……?……ってそれ犬じゃん!」
※神崎の買ってるシェパード、やまじ。
神崎「次回、絶対正義の英雄忌憚、《沈んだ資産家》。わんわん育成楽しいですよ~」
誠二「俺はサボテンでいいです」
<つづく>




