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正義の奴隷



-31-《正義の奴隷》


 銃を持った警官は、白に黒の線が入った警察車両を止めて、威圧的な声を上げる。


「どこの課の人間だ」


誠二は窓を全開にして、彼の問いかけに答えた。


「いちおう1課だな。だが、そんなの聞いてどうすんだ? この町じゃ、課なんて関係ないだろ、俺たちはただの税金泥棒だしな」


すると、警官は誠二の言葉に腹を立てたのか、銃を誠二の額に突きつける。


「お前はそうなんだろうな、だが、真面目にやってるやつだっている。それを何で見ようとしない? 」


誠二は小さくため息をついてから、勢いよく車の扉を開け、警官を凪ぎ払った。

銃を向けているのは、今度は誠二の方である。


「真面目に、ね。俺にはお前が真面目にやってるようになんて見えねぇな。拐った子供は何処だ? 」


警官は即座に自分の銃を拾って、誠二に向けようとするが、その銃はいつの間にかそこに来ていた神崎によって、手の届かない距離に蹴り飛ばされた。警官は悔しそう、というよりは、殺意に満ちた目で誠二に言う。


「子供じゃない、あれは裁かれない罪人だ。あいつの自分勝手のせいで俺の家族は死んだんだ」


神崎は思い出したように一瞬、表情を曇らせて、誠二に聞いた。


「先輩………小春ちゃんの盗みぐせは知ってますよね? 」


「ああ」


誠二は記憶を辿りつつ、彼女の言葉に頷く。神崎は続けた。


「彼女は、薬や鍵、財布、色々なものを盗みました。その中には、それがあれば助かったという人間は少なくありません。そして、彼女は盗みの事実が明白であっても、一度も捕まったことがないんです。もしかしたら、今回の事件は………」


だが、誠二はそれを遮る。


「理由なんて関係ないだろ。警官がそんな馬鹿な理屈を吐くな」


それから、警官の男に手錠を掛けてこう続けた。


「俺たちは、誰よりも《正義の奴隷》じゃなきゃいけねぇんだから」


神崎は思わず言葉を失う。

それは、きっとこの言葉が………。



「誠ちゃん、正義の味方はかっこよくなんてない。だって、僕たちは誰よりも正義に縛られる《正義の奴隷》じゃなきゃいけないんだから」



あのときの明はどんな顔をしていただろうか? 悲しげな顔? 憎らしそうな顔?


しかし、どれだけ思い出しても、神崎の頭に浮かぶのは、笑顔の利根明(とねあきら)の姿だけ。だから、神崎は車に鍵を掛けて、建物へと向かう誠二を追いかけた。


「先輩! 」


横に開く扉と、映し出させる数人の男女。彼らは小春に蹴りを入れ、罵声を浴びせる。


「お前は仇だ! 死ね! 死ね!! 」


誠二は、天井に向けて銃を撃った。


「さて、お縄についてもらおうか。誘拐犯ども」


集まっていた男女は声を上げる。


「権力者は裁かないくせに! 私たちだけ裁くのか! 」


「拳銃を持って脅すなんて最悪だ! 」


「本当に正義の味方なら、出ていけ! 」


ただ、言葉に怯む神崎とは対称的に、誠二は強い言葉で怒鳴り付けた。


「本当の正義の味方? そんなもん、この世界にいるわけがねぇだろ」


そして、集団の一人に駆け寄って、その男を地面に叩きつける。


「俺たちは所詮、大衆が決めた《正義》に従う犬なんだよ。それ以上でもそれ以下でもねぇ………だが」


続きは神崎が言った。


「もしもその《正義》を守らない犬が出たら、私たちは仲間も敵もなく、その犬を牢獄にぶちこみますよ。ついでに、キャンキャン煩いハイエナもね」


神崎は小春の縄をとくと、助けるではなく、その腕を後ろに回す。


「貴方達が悪だと私には言えませんが、裁きを決めるのは裁判所です。貴方達でも、ましてや神でもない」


小春は彼女の言葉を否定するように、ただ暴れて叫んだ。



《つづく》

<次回予告>

神崎「神崎とー!」

誠二「八代のー!」

二人「無駄話コーナー!」

神崎「今日も次回予告をする気がない、マイペース警官の神崎栞です!」

誠二「誰も見てないだろう部分だからこそ暴れられる。コミュ障上等、八代誠二だ!」

神崎「いやーシリアス多くて疲れますねー。この小説のタグ知ってますか先輩」

誠二「最早詐欺になりかけてる。「コメディー」だろ、知ってる」

神崎「でもシリアスにしても詐欺なんですよねー。特に前半戦が」

誠二「そこで俺は新タグを提案するぞ」

神崎「どんなですか?」

誠二「「段々シリアス」、これ完璧だろ」

神崎「先輩、天才ですか!」

誠二「どやぁ」

神崎「次回、絶対正義の英雄忌憚、《我が身にかかる》。次回もお楽しみに!」


<シリアス率、80%>

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