正義の奴隷
-31-《正義の奴隷》
銃を持った警官は、白に黒の線が入った警察車両を止めて、威圧的な声を上げる。
「どこの課の人間だ」
誠二は窓を全開にして、彼の問いかけに答えた。
「いちおう1課だな。だが、そんなの聞いてどうすんだ? この町じゃ、課なんて関係ないだろ、俺たちはただの税金泥棒だしな」
すると、警官は誠二の言葉に腹を立てたのか、銃を誠二の額に突きつける。
「お前はそうなんだろうな、だが、真面目にやってるやつだっている。それを何で見ようとしない? 」
誠二は小さくため息をついてから、勢いよく車の扉を開け、警官を凪ぎ払った。
銃を向けているのは、今度は誠二の方である。
「真面目に、ね。俺にはお前が真面目にやってるようになんて見えねぇな。拐った子供は何処だ? 」
警官は即座に自分の銃を拾って、誠二に向けようとするが、その銃はいつの間にかそこに来ていた神崎によって、手の届かない距離に蹴り飛ばされた。警官は悔しそう、というよりは、殺意に満ちた目で誠二に言う。
「子供じゃない、あれは裁かれない罪人だ。あいつの自分勝手のせいで俺の家族は死んだんだ」
神崎は思い出したように一瞬、表情を曇らせて、誠二に聞いた。
「先輩………小春ちゃんの盗みぐせは知ってますよね? 」
「ああ」
誠二は記憶を辿りつつ、彼女の言葉に頷く。神崎は続けた。
「彼女は、薬や鍵、財布、色々なものを盗みました。その中には、それがあれば助かったという人間は少なくありません。そして、彼女は盗みの事実が明白であっても、一度も捕まったことがないんです。もしかしたら、今回の事件は………」
だが、誠二はそれを遮る。
「理由なんて関係ないだろ。警官がそんな馬鹿な理屈を吐くな」
それから、警官の男に手錠を掛けてこう続けた。
「俺たちは、誰よりも《正義の奴隷》じゃなきゃいけねぇんだから」
神崎は思わず言葉を失う。
それは、きっとこの言葉が………。
※
「誠ちゃん、正義の味方はかっこよくなんてない。だって、僕たちは誰よりも正義に縛られる《正義の奴隷》じゃなきゃいけないんだから」
※
あのときの明はどんな顔をしていただろうか? 悲しげな顔? 憎らしそうな顔?
しかし、どれだけ思い出しても、神崎の頭に浮かぶのは、笑顔の利根明の姿だけ。だから、神崎は車に鍵を掛けて、建物へと向かう誠二を追いかけた。
「先輩! 」
横に開く扉と、映し出させる数人の男女。彼らは小春に蹴りを入れ、罵声を浴びせる。
「お前は仇だ! 死ね! 死ね!! 」
誠二は、天井に向けて銃を撃った。
「さて、お縄についてもらおうか。誘拐犯ども」
集まっていた男女は声を上げる。
「権力者は裁かないくせに! 私たちだけ裁くのか! 」
「拳銃を持って脅すなんて最悪だ! 」
「本当に正義の味方なら、出ていけ! 」
ただ、言葉に怯む神崎とは対称的に、誠二は強い言葉で怒鳴り付けた。
「本当の正義の味方? そんなもん、この世界にいるわけがねぇだろ」
そして、集団の一人に駆け寄って、その男を地面に叩きつける。
「俺たちは所詮、大衆が決めた《正義》に従う犬なんだよ。それ以上でもそれ以下でもねぇ………だが」
続きは神崎が言った。
「もしもその《正義》を守らない犬が出たら、私たちは仲間も敵もなく、その犬を牢獄にぶちこみますよ。ついでに、キャンキャン煩いハイエナもね」
神崎は小春の縄をとくと、助けるではなく、その腕を後ろに回す。
「貴方達が悪だと私には言えませんが、裁きを決めるのは裁判所です。貴方達でも、ましてや神でもない」
小春は彼女の言葉を否定するように、ただ暴れて叫んだ。
《つづく》
<次回予告>
神崎「神崎とー!」
誠二「八代のー!」
二人「無駄話コーナー!」
神崎「今日も次回予告をする気がない、マイペース警官の神崎栞です!」
誠二「誰も見てないだろう部分だからこそ暴れられる。コミュ障上等、八代誠二だ!」
神崎「いやーシリアス多くて疲れますねー。この小説のタグ知ってますか先輩」
誠二「最早詐欺になりかけてる。「コメディー」だろ、知ってる」
神崎「でもシリアスにしても詐欺なんですよねー。特に前半戦が」
誠二「そこで俺は新タグを提案するぞ」
神崎「どんなですか?」
誠二「「段々シリアス」、これ完璧だろ」
神崎「先輩、天才ですか!」
誠二「どやぁ」
神崎「次回、絶対正義の英雄忌憚、《我が身にかかる》。次回もお楽しみに!」
<シリアス率、80%>




