二人の関係
-29-《二人の関係》
しかし、神崎がエンジンを掛けて駐車場から走りだそうとすると、目の前に白い小山が立ち塞がった。誠二は窓を開けて、それの正体を確かめようとする。すると、小山から声がした。
「やっほ~い、誠ちぁゃん! 僕だよぉ、見てみて~おっきくなっちゃったぁ」
誠二はその声で全てを悟り、運転席の神崎に話しかける。
「神崎」
神崎はその一言で誠二の言いたいことを察したらしく、右足に力を込めた。そして当然、高速で走り出す車。車はラキアの足を轢きつつ、前進する。
「いだっ!? 」
キラアは悲鳴を上げて煙のように消えると、今度は車の座席の下から表れた。
「ちょっとぉ! またまた酷くない!? なんで轢くの!? 安全運転しようよ! 」
まぁ、直ぐにシートを上から押さえられて、座席に収納されてしまったが、更に今度は神崎の帽子の中から小さいのが表れたので、もう放っておく。すると、少しの間の後、ラキアはふと気がついたように後部座席の誠二に聞いた。
「ねぇ、誠ちゃんは免許取らないの? 」
誠二はその質問にため息をつく。
「別にいいだろ。神崎は持ってるし、必要ない」
ラキアは不思議そうに「ふーん? 」という声をあげた。そして、今度は神崎に聞く。
「神崎ちゃんは手錠とか無線機とか持たなくていいの? 」
神崎は前を見たまま応えた。
「先輩が持ってるし、必要ないですよ」
誠二は疑問そうに首を傾げるラキアに言う。
「前に言わなかったか? 俺たちは相方で、いつだって二人で行動する。そこで必要ないものはいらないんだよ」
ラキアはまた誠二に聞いた。
「あれ? でもお屋敷の事件では神崎ちゃん見かけなかったけど? 」
ただ、これには神崎が答える。
「いちおうはいましたよ、外の車に。というか、先輩一人であれだけ距離があるところには行きませんから」
ラキアは幾度か瞬きをした。
「居たのになんで事件に関わらなかったの? 二人でやった方が早かったんじゃないの? 」
誠二は小さなラキアを掴んで、雑誌などを入れる座席後部の袋につっこむ。
「荒事は基本、俺の担当なんだよ。それに、神崎には検察とか、事件関係者への連絡をしてもらってた。この町では1人逮捕するにも手間がかかるし、それなりに人脈も必要だからな」
すると、ラキアは袋からちょこんと顔を出して呟いた。
「………つまり誠ちゃんはボッチ」
勿論、即刻誠二の警棒フルスイングを食らうことになったが。誠二は潰れかけて小さく痙攣しているラキアに言う。
「俺は真の友情しか求めないだけだ」
神崎はそんな誠二の言葉に小さく笑みを溢した。
「まぁ、先輩は昔から不器用ですから。友達と言えるのは松崎さんと田中さんくらいじゃないですか? 」
誠二はなんだかそれを馬鹿にされているように感じて、食って掛かる。
「愛助はただの馬鹿だからいいが、大和は違う、あいつは友達じゃないから」
だが、神崎は益々笑って言った。
「それだけ言える相手なら、私は友達、いいえ、親友だと思いますよ」
それは、馬鹿にしてるというよりも、どこか微笑ましそうである。誠二はそんな彼女の笑顔に言い負けて、頭をくしゃくしゃと掻いた。
「あいつが親友なんてヘドが出る。さっさと現場に向かえって」
ラキアは二人の様子をなんとも優しげな瞳で見つめて、誰にも聞こえないほどに小さな声で何かを呟く。誠二は一瞬、嫌な顔でそれを見たが、また直ぐにその瞳は正面を捉えだした。そして、彼は確信のこもった言葉を発する。
「………神崎、俺たちは警察だ。だれよりも正義に忠実じゃなきゃいけない。わかるか? 」
神崎はしっかりと頷いた。
「言われなくても分かってますよ。信じて無いんですか? 」
二人の乗る車の前には、警官の制服を着た男、彼は拳銃をこちらに向ける。
《つづく》
<次回予告>
神崎「なんかラキアちゃん、今日はやけに質問してきますよね。気まずいとか?」
誠二「いや、なに話しても気まずいだろ。昨日の会話の後だぞ?」
神崎「そりゃそうですけど。ラキアちゃんなりに気を使ってる、のかも?」
誠二「それはないだろ、ラキアだぞ?」
神崎「先輩はラキアちゃんにやけに詳しいですね。結構前に出会ったんですか?」
誠二「………ま、それはそのうち話せたら話すよ」
神崎「うーん、なんとも歯がゆいです!次回、絶対正義の英雄忌憚、《悪魔達の出会い》!次回で明らかになりますか!?」
誠二「ごめん、それはない」
<つづく>




