決着と逮捕
-21-《決着と逮捕》
動くことが出来ずにいる神崎に、誠二はコンテナの上から声をかけた。
「大丈夫だ神崎。こんなこともあろうかと、これを持ってきておいた」
彼が服の中から取り出したのは、ちびラキアである。彼はそれを握ると、大きく振りかぶって、月島に投げつけた。
「ぐふぅ!? 」
謎の物体を投げつけられた月島は悲鳴を上げて、ぶつかった頬を押さえ、誠二に叫ぶ。
「てめぇ、何投げやがった! 」
誠二は答えた。
「俺にとっての不要物だ」
まぁ、直ぐに、
「ゴミはゴミ箱に捨てろよ、警官!」
と怒られたけど。
ゴミ扱いされたラキアは涙ながらに言葉を紡ぐ。
「うう、僕は要らない子なの…………? なんで? なんで? 」
誠二は彼の疑問に、穏やかな言葉で答えた。
「それはな、お前がちゃんと罪を償わないからだよ。罪を償って、更正したら仲良くしような」
それを聞いたラキアは広角を上げて表情を明るくする。
「うん、分かった! 僕今から出頭してくるね! そんで、更正したら悪魔らしく人類滅亡のため一生懸命に働くよ! 」
誠二は小さく笑いを溢した。
「ああ、頑張れよ」
それを見た神崎も、近くにいる大和の肩に手を置いて言う。
「松崎さん、貴方も更正して一緒にお茶でもしましょう」
大和は「ふっ」というカッコつけた息を漏らして、優しげな瞳を神崎に向けた。
「更正したら、パフパフしてくれる? 」
勿論、直後、腹に強烈な一撃を食らうことになるのだが。神崎は殴った方の拳に息を吹き掛けて笑う。
「ええ、グシャッザクッなら喜んで」
すると、今度はやっと目覚ました愛助が声を上げた。
「はっ! ここは篠田運送!? 私は田中愛助!? なんで罪逃れできそうだからってこんなところに!? 」
誠二はそんな彼に、すかさず伯○の塩というパッケージが着いた袋から、白い粉を投げつける。
「お前はもう牢屋に帰れぇえ! 」
そして、塩がついた篠田と愛助はみるみるうちに30センチほどに縮んだ。当然、篠田は慌てた様子で、
「な、なんだこれは!? なんで塩で縮むんだ!? 」
と声を上げるが、愛助の方は………。
「くっ、これが黒の○織の陰謀か!この ショタコンどもめぇ!! 」
となんかノリノリである。ただ、誤解を招かないようにいちおう補足しておくと、彼らは子供になったわけではなく、縮小コピーをされた感じの見た目だ。
誠二は二人を見下ろして悪い笑みを浮かべる。
「くく、これは魔界9億5千万道具が一つ、ナメクジの為の最終兵器--塩、 略して………《しお》だ。一昨日ラキアの毛玉から拝借したが、料理に使ったら大変なことになったぜ」
それは誰よりもこの兵器の威力を知っているからだろう。愛助はそんな誠二に思わずツッこんだ。
「食べ物の無駄、駄目絶対! 」
続けて神崎も意見する。
「そうですよ! 田中さんに使うなんてお塩が勿体ないです! 」
「え? 」
戸惑う愛助。ただ、そこに追い討ちをかけるように大和もコメントした。
「そうだそうだ! そんなもんに使うなら僕にかけてくれ! 女子更衣室覗くのに便利そうだし! 」
勿論、ろくなコメントじゃなかったので、誠二は彼に向かって縮んだ愛助を投げつけたんだけど。
「なんで俺ぇえ!? 」
誠二はため息混じりに言う。
「動機が明確だな、良いことだ。さっさと刑務所に行け。後で俺も行くから」
すると、今度は向かいのコンテナから声が飛んできた。
「え!? 誠ちゃんも行くの!? やったぁ! これで皆でお話しできるね! 」
声の主は勿論、隣にいる月島と肩を組んでいるラキアである。ラキアは肩を組んでいる………というか、捕縛している月島に語りかけた。
「ツッキーも一緒に行こうよ! 刑務所ってバスケットコートとかあって、ご飯も出てくるし楽しいよ! 」
だが月島は当然苦い顔をする。
「刑務所が楽しい訳ないだろ、楽しいとしたら警察の怠慢だ。それに、俺はなにも悪いことなんてしてない。殺人者に相応の罪を与える、これは正義だ」
それを聞いたラキアは一時きょとんとしてから、月島に問いかけた。
「正義ってそういうもの? ツッキーにとって《都合が良いこと》が正義? 」
口調は軽いが、ラキアの隠れた瞳には、きっと月島の姿が鮮明に映っている。月島は怒鳴り付ける口を作って、言葉を吐き出そうとしたが、それを留めた。
彼自身、よく分からなくなったのかもしれない。
大勢の同意、意見無き被害者、守れなかった自分から矛先を変えるための悪………。
これが本当に正義だろうか?
思わず目線を下げる月島に、誠二はそっと息をついてから話しかけた。
「お前がどんな正義を持っていようと、俺にはそれを諌める権利はない。でもな、それが他の奴らの幸せを壊す行為なら話は別だ」
そして、ポケットから黒光りする何かを取り出し、ラキアの方に投げる。ラキアは慣れた様子でそれを受け止めると、渡されたものをその手に納めた。
「あー、やっぱりそうなっちゃうよねぇー」
彼の開いた手のひらに乗っていたのは、鉄の輪が2つ繋がったもの………手錠である。ラキアは小さく音を立てて輪を開くと、月島に言った。
「ごめんねツッキー、ツッキーはしのちゃんと一緒の所に行くことになっちゃうみたい」
月島は一瞬、目を見開いてラキアの方を見る。囁けば、もらった力を使えば、切り抜けられるかもしれない。
でも、彼はそれをしなかった。
「篠田も捕まるか? 」
静かに手を差し出して、拘束を待つ。
ラキアは月島に笑い掛けた。
「もちろんだよ。だって誠ちゃんは、《正義の味方》なんだもん」
そして、カシャリ、輪の片割れ同士が音を立てて繋がる。この暴動はこれでお仕舞いだ。
《つづく》
<次回予告>
ラキア「ラキアでぇす!今からネタバレしまーす!」
愛助「ええっ!?」
ラキア「次回はなんと殺人事件が発生!発生直後に誠ちゃんが言いはなった言葉とは!?」
愛助「犯人はこの中にいる?」
ラキア「次回、絶対正義の英雄忌憚! 《犯人はヤス!》お楽しみに~」
愛助「………いや、これ元々推理要素ないから、ネタバレになってないんだけど………。ほんとの次回はこっちです《過去の声》。お楽しみに」
<つづくかな>




