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悪魔の取引

-20-《悪魔の取引》


神崎は曖昧ながらも強い違和感を感じていた。不思議な声に、じゃない。人々の篠田運送に対する敵意に、だ。神崎は自分の腰から警棒を抜いて、黒目を小さくして口を開けたままの篠田に聞いた。


「………本当は何をしたんですか? 」


麻薬取引阻止のために、一般人がこんな命がけの暴動を起こす筈がない。起こすとすればそれは………。篠田は黙ったままだった。代わりに答えたのは先程の声。


「『そいつは《取引》をしたのさ。人間として許されない取引をだ』」


神崎は声に聞いた。


「それはどんな取引だったんですか? 」


声は唇を噛み締めたのか、少し曇った音で答える。


「『人の命で金を得る取引さ。ここにいる人間たちは皆、そいつに家族を………! 』」


神崎は後ろにいる篠田を振り返ろうとした。しかし、その瞬間、視界がぐらりと下にスライドする。


後ろから蹴りつけられる衝撃、落ちていく感覚。


篠田は振り向いた神崎に難しい顔を向けて小さな声で言った。


「理想じゃ経営は出来ないんだよ」


それは、こうなることを最初から計画していたように。彼は先程とは打ってかわって声を張り上げた。


「ああ、頼む! その子を殺さないでおくれ! 君たちに人の心があるなら! 」


その言葉に地面に着いた神崎は危機を感じる。


(まずい、これ、私への誘導だ………! )


強い怒りを露にして飛びかかってくる人々。彼女はこの人数相手に、銃も無しで勝てる訳がないことはわかっていても、出来る限り体勢を起こして、落ちた警棒を拾った。


今、自分を護れるのは自分しかいない、出来なくてもやるしかないだろう。


しかし、そんな緊張の糸は、拡声器から響く声で切れてしまった。その声というのがこんな感じ。


「おーい、不良のみんなぁ? ハッスルしてるかい? 俺はめちゃめちゃハスッてるぜ! 皆のために俺の歌をプレゼント! 楽しんでくれよ! 」


神崎は聞き覚えのある声に思わず目を細める。


「………なにやってるんですか、田中さん」


そう、これは田中愛助の謎ボイスだ。というか、良く見たらコンテナの上、先程まで神崎がいた場所に彼は立っている。彼は白い目をする神崎に構わず続けた。


「うぅみぃわ! ひろぉおいやぁっおおっきいにゃぁっ! 」


滅茶苦茶な歌詞と音程で響く雑音。


周囲の人間は皆、耳を塞ぎ出す。


「ぎゃああああ! 殺人ボイスぅ! 」

「死ぬ死ぬ、死んじゃうって! まじでしんじゃうからっ! 」

「あれ、お前、白いの出てね? 」

「お前こそ出てね? 」

「いやぁああ! 」


神崎は大和の鞄からすかさず耳栓を奪い取って装着した。当然、大和は慌てるが、


「え、ちょっ! 栞ちゃん!? 僕は!? 」


神崎は冷たい声で言う。


「死んで下さい」


大和はキチガイボイスをなんやかんやで地肌に直接浴びることになった。


「悪魔ぁ!! 」


勿論、これを浴びてもお肌の改善とかはしない。むしろストレス性の皮膚炎になる可能性が上がる。


だが、それよりもひどい状態のやつが直ぐそばにいた。


それは、耳を塞いでいる篠田。

彼の背後から忍び寄った影が、篠田の頭をふん捕まえて、その耳を拡声器に直当てしたのである。


「ぐふっ!? 」


当てたのは勿論、愛助と一緒に行動していた八代誠二、その人である。

誠二は涼しい顔で暴れる篠田の頭を拡声器に当て続けた。神崎はその様子に大変関心する。


(さすが先輩………この狂気の空間でも表情一つ崩してない! )


だが、その直ぐ後に、どこからか声が聞こえて、それは払拭された。


(………栞ちゃん………聞こえていますか?………今、貴女の脳内に直接話しかけています………。彼の手を良くみるのです………そして心情を察するのです………僕こと大和には、彼の心がわかります………さぁ、やってみて………)


神崎は言われたとおりに目線を動かして気がつく。


(あ、めっちゃプルプルしてる! めっちゃ我慢してる! というか、顔ひきつってる! )


八代はなんか痩せ我慢をしていた。


「先輩! 今助けますよ! 」


神崎はそんな可哀想な八代を助けるために手に持っていた警棒を投げつける。勿論、愛助に。


「ぶへらっ! 」


愛助は顔面に警棒があたった衝撃で後ろに倒れ、それきり動かなくなった。


「よしっ! 」


神崎はガッツポーズをする。

すると、今度は大和が声を上げた。


「栞ちゃん、いたぞ! 月島だ! 」


月島は唐突に指差され、後ずさる。濃い緑の服に注目があつまる。


「そんな、もう投げるものが………! 」


神崎は悔しそうに声を上げた。


《つづく》

<次回予告>

神崎「先輩、うう………ようやく合流できましたね………ギロチンはどうしましたか?」

誠二「投げた」

神崎「縄は………?」

誠二「人に結んだ」

神崎「遺書は………?」

誠二「お前当ての手紙にしたよ。はい、これに、ここまでの内容かいてあるから色々察して」

神崎「え?罪の隠蔽とかしますか?」

誠二「必要かもしんない」

神崎「………次回、絶対正義 (?)の英雄忌憚《決着と逮捕》、お楽しみに~」


<つづけ>

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