卒業式2
「ちょっとお父さん。もうそんな時期じゃないし、朝からそんな軽口叩かないの。仕事に遅れるわよ。三貴、おはよう。すぐご飯食べるわよね、用意するわ。」
「ありがとう、母さん。」
「ははっ、また母さんに怒られちまったよ。まあそれはおいてだな。今日卒業式見に行けなくてごめんな。どうしても仕事に行かなきゃならなくてな。」
「大丈夫だよ父さん。それに父さんは僕の大事な節目に来れないのは小学生の時に理解してるよ。」
「おいおい、いじめないでくれ。俺だって行きたいんだ。大事な一人息子の晴れ舞台だぞ、行きたくないわけないじゃないか。」
「冗談だよ、分かってる。もうそんな駄々をこねる年じゃない。」
「はいはい、おまたせ。もう三貴?あまりお父さんをいじめちゃ駄目よ。」
テーブルに並べられた朝ご飯は相変わらず品数が多い。ザ・理想的な朝ご飯とでもいえるようなぐらいだ。まあ僕の理想には程遠いけれど。
「わかってるよ、母さん。」
いただきます、そうつぶやき朝ご飯を食べ始める。
午前7時10分。リビングのテレビは無味乾燥なニュースが流れている。同じ国の話なのに相変わらず現実味を帯びず、ただ右から左に言葉が流れていく。
いつもより食べる時間が早いのと、寝不足が相まってあまり箸が進まない。
「ごちそうさま。」と箸を置く。
「今日はまたずいぶんと残してんな。体調でも悪いのか?」
「そういうわけじゃないんだけど……。それにもう行かなきゃ。」
さっきからポケットの携帯が震えていた。きっと家の前についたのだろう。
「おう、なんだ。もう彼女来てるのか。えーっと、ヒカリちゃんだっけか。お前にはもったいない程いい娘だよなぁ。」
「もうお父さん、ヒカリちゃんじゃなくてひかるちゃんよ。何度言ったらちゃんと覚えるのよ。まあでももったいない娘っていうのは本当にそう思うわね。可愛いし、礼儀正しいしねぇ。」
「あーごめん。待たせるの悪いからもう行くね。。」
コートを着込み、マフラーを巻き玄関に向かう。
「いってらっしゃい、気をつけるのよ。」
「いってきます。」
玄関を開ける。いた。
「おはよう。おまたせ。」