卒業式
僕たちは嘘をついている。
あの日吹き荒んだ雪の日から。
午前6時過ぎ、普段の僕だったらそんな早い時間に起きることもなく、暖かい布団に包まれ小さく寝息をたてていただろう。しかし今日の僕は全ての身支度を整え家を出る時間を待っていた。こんな朝の早い時間に起きているのは初めて彼女とデートした日以来だろう。僕はベッドの上にある携帯を手に取りその彼女にメールを打つ。
『おはよう。起きてる?』
簡素なメールを送る。きっと彼女、ひかるも起きていて身支度を整え、僕をいつ起こそうか考えてるかなと思いふけっていると手の中の携帯がブブーッと震える。
『おはよう!今日は早いね。卒業式の朝はさすがに三貴くんもちゃんと起きれるんだね。笑』
『今日くらいはちゃんと起きなきゃ親に怒られそうだからね』
『それで起きれるならいつも起きられたと思うんだけど……。本当は眠れなかっただけなんじゃないの?』
『そんなことないよ。今日もいつもの場所で待ってるね。』
相変わらず彼女は察しがいいから困る。いくつかやり取りをしてポケットに携帯をしまい、コートとマフラーを持ってリビングに降りる
リビングではもう朝食がとられていた。
「おはよう。」
「おう、おはよう。今日は早いな。明日は雪か?」