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東方幻想物語 殺人夢想  作者: Frandle
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プロローグ

  目の前には、紳士姿の太り気味の男が、頭から血を流して倒れていた。

  ここは高級ホテルの小部屋。私は男の死体を数秒見つめた後、出来るだけ返り血が目立ちにくい黒の服の腰あたりに、ベレッタM92サイレンサーを収めた。

  頭に固定された、ニコッと笑っている裂けた口のイカれたピエロ顔のマスクを外した。

  少し茶色の混じったような腰まである長い黒髪を左手で靡かせた。

  「・・・」

  また一人、人間を殺した。

 恨みや、嫉妬ではない。多額の報酬金の代わりに受け持った暗殺の依頼である。しかしそれは、権利を利用して悪行を働く人間に限られた。

 黒色のズボンのポケットが振動する。私は、そこから携帯を取り出すと、耳にあてた。

〈約束のじかんだ。終わったか?〉

携帯か、男の声がする。彼は、この殺し屋組織の人間であり、両親のいない小さかった私を親代わりに育てた人でもある。

「はい。殺しましたよ」

〈よし。そこから離れろ。外に車を用意してある。はやく乗れ〉

 私は、銃を隠し、2枚重ねしていた黒い服を脱いで、一瞬で高そうな洋服に着替える。黒い服を袋に詰めて

バックの中に入れて、怪しまれぬように部屋を出た。

 いつものように、殺すための情報だけを教えられ、言われたように標的を殺す。これが、正しいことだと、正義だと教えられた。

 どうして、私はこんなことをしているのだろう・・・?

 私は指定されたところにある車に乗った。

「お疲れさまです。ミス静音」

金髪で、髪の長さは短髪。すこし髪がボサボサしている黒縁眼鏡の男のドライバーは、そのまま車を発進させた。

 悪い人間を殺して、何故悪人扱いされるのはいつも自分なのか。私のやっていることの意味が、時々わからなくなる。

 「着きましたよ」

車が止まると、ドライバーの男はそのままドアを開けて出ていく。着いた場所は、いつもの我々の組織の拠点ではなく、廃墟の建物が一軒ある人気のない場所だった。

「ここは?」

見知らぬ場所へ連れていかれ、私は男を警戒した。

「心配いりませんよ。大丈夫。ついてきてください」

と、男は廃墟の方へ向かっていく。ここにきた理由を言わないから、どうしても私はあの男を信じられない。裏切り者か。

「動かないでください」

私はベレッタを構えて背中を向けた男に銃口を向けた。

「おやおや。もうバレてしまいましたか」

眼鏡の男はそう言ってクククと笑い始めた。様子がおかしい。

「おっと。私を撃つなんて考えないほうがいいですよ?」

眼鏡の男はそう言うと、私の方を向いた。他にも私を囲むように左右に拳銃を持った男が現れた。

「手を上げろ」

眼鏡の男が私に指示する。ゆっくり両手を上げた。

「あなたは少し邪魔なんですよ。消えてもらわないと私の気が済まない」

「・・・」

私は何も言わずに、眼鏡の男を睨む。

「ふん。まあいい。そのまま銃を地面に落とせ」

 私はゆっくり腰を落として、ベレッタを地面につけたと同時に、手首のねじらせて左側にいる男に銃口を向けて引き金を引いた。

男は胸に小さな穴が開き倒れた。

「クソ、ソイツを早く殺せ!」

この人気のない場所で、止まない銃撃戦が始まった。


                   


「はぁ・・・はぁ・・・」

銃撃戦の末、廃墟の中にまで戦闘は及んだ。

相手の人数は10人を超えていたのかもしれない。限られた弾数の中での戦い。丁寧に戦うが、やはりそれでは数に圧倒されてしまう。私は左肩を撃たれ負傷し、血を流していた。

 私は廃墟の中の壁にもたれて座り込む。負傷し血が流れている左肩を右手でぎゅっと握って止血を試みるが、痛みでそれも簡単には出来なかった。身体がだんだん暑くなる感覚に襲われ、息がだんだん荒くなる。

その中でゆっくり、一つの足音がだんだん近づいてきた。

「いやあ。あなたは本当にすごい」

私の目の前に現れたのは、私を見下し嘲笑う黒縁の眼鏡の男だった。

「10人の手下をたった一人で、しかも限られた弾数で倒してしまうなんて。いやあ、本当にあなたは天才だ」

男はそのあと、でもねぇ。とい言い、小さく息を吸った。

「目障りなんですよ。あなたの存在は。あなたのせいで、あなたばかり目立ち、功績を上げるから、私は目立たない」

男は強い口調で続けた。

「真の殺し屋は私だ。あなたじゃない。残念だけど、あなたには消えてもらう」

男は拳銃を取り出すと、私に突き付けた。

「・・・殺す側が、今度は殺される側に立つわけですか」

私は、非常に小さい声で呟いた。

「何?」

男は訊き返した。

「・・・」

彼の言葉を無視した。

 「まあいい。さようならだ」

男は突き付けた拳銃の引き金に、人差し指を掛けた。

その刹那だった。

「お・・・おい、なんだ!?」

かなりの規模の地震が廃墟を襲った。

「ク、クソ・・・。動けねえ!」

黒縁眼鏡の男は、体勢を崩して倒れこむ。

 チャンスだった。

私は右手に拳銃を取り出して、体勢を崩した男に銃口を向けた。なおも地震は続いている。

「お、おい、やめろ!撃つな・・・!」

私は引き金に人差し指をかけて引いた。

一発の銃弾は、高速回転をしながら、男の頭の表面をえぐり貫通せずに脳の中で止まる。

「あ・・・ぐ」

男は白目を向いて死に、地面に血を流した。

廃墟は耐震性など皆無だ。簡単に柱が折れ、次々と天井から物が落ちてくる。

「私も、終わりですか・・・」

私はため息をつくと、上を向いた。揺れはまだおさまらない。

 人殺しは地獄に堕ちると聞いたことがある。さあ、地獄が一体どんなところなのだろうか。非常に楽しみである。

「まあ、人生の最期が殺されなかっただけ、マシですかね」

そう呟いた瞬間。天井が、ドンと私を踏み潰した。

 痛みなど感じなかった。視界が真っ暗になり何も見えず、何も考えられない。ただ残っていたのは、謎の心地よさと、浮遊感だけだった。



























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