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リアリー戦争終結

_______


 「獲物を追え!」


突然外に出され、火薬と鉄のにおいがする場所に放り込まれた。今頃は飯を食っている時間だというのに…俺はイラつきながら目を瞑った。他の奴らも同じように後に続く。…まったく、ろくな飯を食わせないくせにこういうときだけこき使うのだから腹が立つ。俺は今度は地面に鼻を付けた。獲物の気配はあまりいい雰囲気とは言えない木々の中へと続いているようだった。俺はそちらの方角に吠えた。


「やはりタオゼント様の言う通り、森の中に逃げ込んだか!」


他の奴らは張り切って木々の中に入るが、俺は違った。あそこはやばいにおいが多くするからだ。


「おい! 行け!」


そう言って俺の腹を蹴るこいつら。…お前らは鼻も耳もきかないのか?あそこはやばいんだって。だが、俺の言葉が通じるわけもない。しぶしぶ森の中へと入った。


「……おい! 近いぞ!!」


他の奴らは近くなる獲物の気配に興奮しているようだったが、俺は違った。何かがおかしいからだ。


「…おい! どうした! 動け!」


俺は止まった。俺の後ろにいた奴らが獲物を横取りできると喜び、俺をどんどん抜かしていく。


「とっとと動け! このくそ犬が!!!」


俺は腹を強く蹴られ、坂道を転がった。その時地面に鼻が付いたついでに、俺は獲物の気配を探った。…思った通り、獲物はその場を動いていない。やはりおかしい。こんなにも堂々と追いかけているのに、逃げもしない獲物なんて。そのときだった。大きな音がして、どこから吹いたのか突然の大きな風が俺を襲ったのは。


________




「…成功ですな」


大きな爆発が起きる一部始終を眺めていたフィルマン様が満足そうにそうおっしゃいました。私たちは、追手が城から罠にかかるまでの出来事を、見晴らしの良い場所で眺めていたのです。


「さすがフィルマン様。これで追手の方は心配いりませんね」


私は感嘆の声をあげました。フィルマン様のすごさを改めて感じたように思いました。


 これらはもちろんフィルマン様がしたものです。フィルマン様によると、私が着ていた服には発信機のようなものがついていたらしく、それを特定の魔物に探知させて追わせるというものだったらしいのです。ですから、フィルマン様は逆にそれを利用し、敵を罠にはめた…ということでした。


「なるほどな。確かに目には目を歯には歯を。そして魔物には魔物をということか」


「そういうことだ。お前も分かって来たではないか」


二人はにやっと笑い合いますが、こちらにはさっぱり分かりません。ちらりとギルを見ると、ギルは彼らのやりとりが分かっていたようで、どうやら私だけ仲間はずれです。そんな私を察してか、ギルが説明してくれました。


「あの爆発は魔物の能力なのです。おそらく爆鬼(ばっき)という魔物でしょう。フィルマン殿は彼らのテリトリーに追手を誘導させた…ということです」


……なるほど。だから目には目を歯には歯を。そして魔物には魔物をということだったんですね。ギルの説明でようやく私も納得しました。


「では、参りましょう。殿下や姫様がお待ちです」


フィルマン様に尊敬の眼差しを向けていると、その視線に気づいたフィルマン様がにこりと微笑まれそうおっしゃられました。




________




 リアリー戦争。刻まれていた歴史では、ハウヴァー側の完全勝利となっていた。しかし、その歴史は覆った。リアリー戦争に勝利した彼らが、その後ナノエの王子が率いる軍隊と衝突するという、一日に二度戦が起きるという前代未聞な出来事が起こったのだ。それはもちろん、世界を牛耳っているはずの神々でも予測がつかないことだった。


 二度目の戦は夕日が落ちる時に決着がついた。凄まじい閃光と地鳴りと共に、ハウヴァー側の負けとして。


 異世界仮想歴816年、夏。最強と謳われたハウヴァー大国は、魔族と手を組んだナノエ帝国によって強奪される結果となった。この大事件は、リアリー戦争の裏で起こった出来事だが、後の人々はその出来事については何も知らず、そしてまた歴史にも記されることはない。


 



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