テルさんのおはなし
「ほほー、こりゃあいい。ねっとりとした昆布締めに焼きのりのぱりぱりが実によう合うわい!」
「でしょ? 旨味が強いから強めのワサビ醤油と焼きのり! これだけは外せない!」
「きゃいのきゃいのとやかましい調理場だったなあ。まあ、こっちは静かに飲めてよかったがね」
昼下がり、みんなでこうしてゆっくり食べつつ、飲みつつ、おしゃべりしつつっていうのは最高に贅沢な時間の使い方だ。
師匠はすでにゴロ寝状態。
おざぶを丸めて脇息(お座敷に置いて寄りかかれるようにした、ひじ掛けのようなもの)みたいな使い方。
お行儀悪い――と、ふつうならボクも咎めるんだけれど……モン爺のお料理の供し方って変わってて、畳に直置きした脚(?)みたいな台にお盆を載せて、そこにお皿を置いて……ボクらのお皿も同じような台の上に置かれてる。
だから、お酒もお料理も机を囲むより、ずっと全てが低い位置にあるの。
これって、そういうふうにしてもいいよ、っていう無言の誘導なのかな?
そんなふうに考えたんだ。
「礼儀を失しすぎちゃいかんが、堅苦しすぎるのも、またおなじくらい、いかん」
そんなふうな、モン爺の声が聞こえた気がする。
「それにしたって、このシャコもおいしいねえ」
「カラシたっぷりの酢醤油でくうのが、わしの好みよ」
「おっきいから、もっと大味なのかと思ってたけど……」
「繊細な味わいじゃろ?」
「うん。身が甘い。しっとりと詰まっていて……」
マヒルヒ原産のワサビは、たしかにお魚には万能とも思える薬味なんだけど、魚介類のなかにはカラシのほうが相性がいいかな、って思うものもいる。
たとえば、カツオ。あるいはイワシ。はたまたサンマ。
赤身、青身のお魚はもしかしたら……うん、よかったら試してみて?
「アルカディアのヤツは二度、旬がある。今ごろと、晩秋な。晩秋のは卵を抱えとるんじゃが……これも一食の価値ありじゃて」
「それも食べてみたい」
「ほっほっほっ。また遊びにきたらいいんさ」
そんなかんじで、時間はゆっくり、なだらかに流れていく。
お日さまに温められて青い薫りをまとったさわやかな風が吹き抜けていって……うーん、キモチイイ。
「どうじゃな、ジョーの字、ええもんじゃろ。シャコもうまかろう」
「奮発したなジジイ。ソラの前だからってちょっとカッコつけすぎだぞ。年金暮らしのくせしやがって……」
「悠々自適にやっとるよ」
いつのまにかモン爺もゴロリ体勢となり、ボクも失礼して足をくずしちゃったりして。
はて……ボクら、なにしにきたんだったけか?
なにしろ、美味しい飲み物と美味しいおつまみが適量でしかもいくらでも出てきて、ゆっくりできるのんびりできるとなると――いくらでも食べられるし、飲むことができるし、っていうゾーンに突入しちゃうのはもう、悲しいけど必然なのよね。
陽が傾いてきたのか、風が午後の匂いを帯びてくる。
でも、まだまだ、この酒宴は……続くみたい。
だって、モン爺、まだまだ飲む気みたいだもん。
師匠が、昆布締めを薬味のミョウガや細ネギ、大葉と合わせてむしゃりむしゃりと食べてから、名残惜しそうに言った。
「アテが切れちまうなあ」
「あ、ボク、イサキの中落ち一塩しておいたの、焼いてこようか?」
いつのもクセで、ボクは言う。
あちゃー、どんだけウチで甘やかしてるの、亭主関白なのって話だよ。
「いやいや、お客さんにこれ以上させてしもうたら、まずいわな。なにか食べたいもの、あるかね?」
だけど、そこを遮ってモン爺が申し出てくれた。
おなじゴロリマンでも、そのへんがやっぱり違うよね。
気配り、心配り、ってやつ?
「えー、いいの? モン爺? やたっ、せっかくだから甘えちゃお。羽根をのばしちゃおー」
「ジョーの字のやつ、手は動かさんクセして、舌はいっちょまえだからのう。ソラさんの苦労、いかばかりじゃな」
「あー、うるせえな……おう、ジジイ、オレゃあ、あれがいい! 茄子の古漬とジャコエビの炊き合わせ」
「なんじゃとう? ……じゃこごうこか……ふーむ……えらく侘びた注文じゃのう」
「オレはテルさんの味付けが好きでね」
「そういやむかし、おまえさん、預け鉢いっぱいのアレを抱え食いしとったな」
「甘辛さとエビの旨味に、古漬の酸味が混ざってさ……たまらんのだな、アレは」
む、師匠がお料理、褒めた!
悪くない、まあまあだな、が口癖の男がお料理、褒めた!
「じゃこごうこ? 茄子の古漬とジャコエビの炊き合わせ? なにそれ?」
はじめて聞いた料理名と師匠の反応に――ボクは反射的に訊いている。
あとで……夫の好物を探し当てたときの新妻みたいだって、気がついてから激しく赤面するんだけれども(え? どこでそんな知識を得たのかって? ナイショ。女のコには、なにかと秘密があるもんなんです!)。
「こーんなちっこいエビと、茄子の古漬を炊き合わせにするんさ。醤油とみりんでのう」
モン爺が鞘巻エビ(クルマエビのまだ小さいやつのこと)よりもっとちいさい……十セトルくらいのサイズを指で示す。
「エビは、よく、そのへんの一杯居酒屋で唐揚げで出てくるヤツじゃよ」
「ああ、わかる。サルエビだ。トビアラとかとも言うんだっけ?」
「そうそう。まあ、わしら、そんなちっこいエビはまとめてジャコエビというんじゃが、それと古くなって酸っぱくなってしまった茄子の漬けものをな、炊くのよ」
「漬けものを、炊く!?」
えええー!
ボクにはその発想がなかった!
「美味しいの?」
「好き好きじゃが……まあ、ソラさんは好きじゃろうのう」
なんせ、将来の晩酌友達じゃからな。ほっほっほっ、とモン爺さんは笑い、厨房へ向かった。
ちょっと塩抜きをしないと、しょっぱすぎるんだって、古漬。
束の間、訪れた師匠とふたりきりの時間。
ボクはちょっと気になったことを訊いてみた。
「ねえ、師匠、聞いていい?」
「んあ? おお、いいぞ。なんだ、庭の話か?」
「ううん。さっきお話に出てきたテルさんって……だれ?」
「ああ、ジジイの死んだ奥さんのことさ」
「! よかった。ぶしつけに聞かなくて!」
「もうずいぶんと前のことだ。ジジイも気にしちゃいねえさ」
それに、そんなこと気にしながら飲んでたら、酒がまずくなっちまう。師匠は言う。
「だから、ふつーに聞きゃあいいんだよ。相手も答えたくなけりゃ答えねえ。心配りはオメエの美点だがな。やりすぎりゃあ、堅苦しいぜ?」
ジジイが、わざわざ、床でゴロリ、なんて飲み方提案してるのは、まあ「気兼ねなく、気づかいなく」でやりましょうや、って無言のサインなんだからよ。
師匠が、今日の酒宴の趣向を説明してくれた。
あ、そか、やっぱりそれでよかったんだ。
「ほー、いっちょまえに嗅ぎ取ってたか。ふーん」
なんだかちょっと嬉しそうに師匠が言うものだから、ボクは……ぷくっと頬を膨らまして見せるけど……内心照れちゃうよ。
「じゃあ、聞かせて? テルさんのこと」
「そりゃあ、じかに聞いたいいんさ」
「そうともさ」
と会話に割って入ってきたのは、モン爺だ。
「なんにも隠すことなんかないからのう」
下拵えを終え、料理の準備が整うまでのつなぎに、ちょっとした乾きモノ(あられだ!)を携えてモン爺は現れた。
お酒はとうとう、二本目。
なんのかんのと、ふたりとも飲むんだから!
そして、モン爺はテルさんのことを教えてくれたんだ。
※
テルは隠忍の血を引く娘じゃった。
生まれがどこかは、しらん。どこの家かも、わからん。
ただ、マヒルヒの陰陽師の名家がその才能を認めて使役する家来――というか、下僕として扱われてきた娘じゃった。
隠忍というのは、裏方の仕事……間諜やら暗殺やらを任されることの多い異形の血筋でな。
魔界人の血が混じっておる、というのはおそらく正しい。
来訪者の血筋なのじゃ。
そのころのわしは、まだ若く、将軍に仕える剣士じゃった。
こちらも、特務を帯び、怪異や化け物に相対する……隠密のな。
そのころ、都を脅かしていた怪異に「鵺」があった。
いまでいうところのモンスターランクでAマイナス。
強敵よ。
宙を舞い、瘴気を吐く。
虎の身体に猩猩の顔、尾はヘビ。
呪詛を操り、奇怪な声で人心を惑わせる。
これの退治に将軍はわしを、そして、朝廷=帝の名を受けた陰陽師はテルを、それぞれが差し向けたのじゃ。
幕府と朝廷の共同作戦……と言えば聞こえはよかったがのう。
その実、権力闘争としての図式も、そこには隠されていたのじゃ。
共闘しながらも、相手の足を引っ張り、あわよくば協力させつつも、決定的な場面は己が勝ち取る……勝利が確定したなら相手を蹴落とす……いや、この世から抹殺することさえありうる……そういう関係じゃった。
だが、その任務のただなか……わしは、アレに魅せられてしもうた。
頑なさに秘められた、ひたむきさ。
冷酷に鎧われた、ほんとうの優しさ。
なにより、己の《ちから》を解放せんと月下で舞うアレは、本当に美しかった。
そして、その実力は、ほんものじゃった。
互いが命を救い、救われた。
「そなたは美しい」
思わずそう告げてしまったわしに……アレは困惑……というか畏れたような顔をしていたな。
いま思うと……照れておったのやも、しらん。
その一件以来、わしらはそういう事案のおりに、なぜだか、よく顔を合わせるようになった。
もしかしたらだが……そのときの幕府と朝廷の間に、ほんとうの意味で協調路線を模索しようという動きがあったのやもしれぬ。
新しい幕府というしくみと、古い朝廷というしくみが、どこか妥協点を見出そうとしていたのやもしれぬ。
ときには味方、ときには敵。
それぞれの立場を入れ替えながら、わしらは「暗闘の場」での出会いを重ねるようになっていった。
愛を告白されたのはむこうからじゃった。
「毎晩、キサマを夢に見る……なにをした? いかなる呪いか、方術かッ?!」
そう斬りつけるように言われたよ。
身を投げ出すように飛び込んできてな。
腕のなかで恨みごとを言われた。
苦しい、と。
わたしに、なにをした、と。
それは呪いではない、とわしは言った。
その正体を教えた。
けれども、どうか諦めたほうがいい、とも伝えた。
わしには……放蕩癖があった。
ずっと暗がりを歩んできたゆえだろうか。
そこで得てしまったタチの悪い病のような、どうしようもない憂さばらしを、お大尽や女たちに求めてしまう癖があった。
治らんだろうなあ、と思っておった。
そういう心の根っこに居着いてしまった一種の病気はな……治らん。
性癖なんじゃ。
もっと言えばな、ソイツの本性みたいなもんじゃ。
だから、わしのことは諦めてくれ、と言った。
そしたらな、アレは笑うた。
にたーり、とな。
それから訊いた。困るか、と。
わたしがお前を好いたら、困るか、と。
困るなあ、とわしは答えた。
アレのことが、そのときにはもう、どうしようもなく愛しくなってしまっておったから。
泣かせることになる、とわかっておったから。
わしの心底、困った顔を見てアレはますます笑みを広げて笑うた。
それから言い放ちおった。
「いいことを聞いた。わたしを苦しめた報いを受けろ! 好いてやる、一生好いてやる。ずっとずっと死ぬまで想うてやる」
――困ったよう。
どうしてやったら、よかったんじゃろかな?
気がついたら、わしらは祝言を挙げ取った。
いま思えばアレはお上同士が仕組んだ、巧妙な罠だったんじゃないかとも思うんじゃ。
恋の、な?
じつはな――マヒルヒの朝廷の血筋には来訪者のそれが混じっとるんじゃないか、というまことしやかなウワサがある。
天から降り来たる――まあ、そういうことよ。
陰陽師の血筋も技も、向こう側の能力なんじゃないか、というな?
それをどこかで残そう、しかも制御できるカタチにしよう、というな?
まあ、お上の思惑なんざ、どうだってよろしい。
それでわしらはつがいになったわけよ。
ただまあ……たいへんなことになった。
わしの予想のとおりよ。
泣く、噛みつく……わしがお大尽やら女遊びやらするとな、もうな、テルのやつ。
ところがそれがまた、かわいいんじゃ。
恨み言ではなく――もっと想うやる、好いてやる……そう繰り返しおる。
それでわしが困ると「うひひ」と笑いおる。
悪戯なのか本気なのか、本気の悪戯なのか、わしにもついに最期まで、わからんかった。
わしのほうもわしのほうで、そのときは深く反省するんじゃが、気がつくと忘れてしまってな。
よくないことよ。
わかっとる。
だが、また遊んでしまう。
すると泣かれる。
ますます互いが愛しくなる。
この繰り返しよ。
んだが、アレに先立たれてからは……まったく遊べんようになってしもうた。
あれは「遊びだから」できたんじゃな。
本気の女は、アレだけじゃった。
そう、身体に染みついてしまっとったというわけさ。
まんまと、アレの術中にはまっとった、というわけさ。
いつの間にか、陽は大きく傾いて、お屋敷には夕暮れが迫りつつあった。
ボクは、モン爺の重さのまるで感じられないお話を聞きながら……なぜか泣いてしまっていた。
要約すると「ダメ男の生涯」なんだけれど。
陰陽の技を得意としたテルさんは、自分が逝去するずっと以前から、このお屋敷にその術式=呪をかけてたんだって。
きっと自分の死後、モン爺が困るだろう――生活に、って思ってたんだろうって。
だから、ボクらが最初に出会ったあのヒトは、テルさんの残した呪=すなわち式神なんだって。
「どうせなら、姿形も似せといてくれればよかったのにのう」
と、モン爺は笑うけど、それはたぶん違う。
テルさんは、自分の死後、自分そっくりの式神がモン爺のそばで世話を焼くことをよしとしなかった。
きっと、モン爺をこのお屋敷に縛っちゃうことになるから。
そう思ったんだろうね。
愛したヒトのその後を案じることと、死んでしまった自分がそのヒトを縛りつけることと……それはまったく別のことで、でもそれを分けて考えて、実行できるなんて――そんなふうに想えるなんて、スゴイことだなあってボクは感じた。
そしたら、泣いちゃったの。
「おうおう、こりゃあ、おうおう、ジョーの字、どうすればいいんじゃああああ」
「クセなんだよ。共感能力が高すぎるのさ。ほっとけ、いつものこった」
「おうおう、ジョーの字ぃいいい!」
モン爺と師匠のやりとりがおかしくて、笑ったとたんに鼻水出ちゃった。
ヒロインなのに恥ずかし(赤)。
「そこまで後々を考えてくれてたのに、お庭だけ手付かずって……テルさんらしいね」
「そうよ、そこよ。手入れが大変でなあ」
「庭はわしの領分だ、とかなんとか……むかしカッコつけて言ったりしたんじゃないかなー?」
「ななな、ギクギクッ」
それでまた、大爆笑。
やっぱりそうだった。テルさん、スゴイ。
モン爺が生き甲斐にできる場所には「口を出さない」なんて……できないよ、フツーは。
そうして、やっとボクらは意識をお庭に向けたんだ。
「うわっ、夕陽に照らし出されて……向こうのお山が……キレイ!」
そうなんだ。
なんでいままで気がつかなかったんだろう!
草が伸び邦題になっちゃってるモン爺宅のお庭の向こうに広がる風景は……あまりに美しくて……夕陽に照らされて赤みを帯びて輝いてるけど……あの緑青色の屋根は……。
「あれっ? はじっこにちらっと見えるあの建物って……翠嶺宮じゃない? マヒルヒの離宮」
「気づいたか」
「すごいすごい、うっわ、道理でお山の植栽の配置や彩りが、完全な自然まかせだとしたらちょっと完璧すぎるとは……思ったんだよ」
そうか、アレが師匠の作品、そのひとつ――翠嶺宮なんだ!
ひとことで言うと、凛、とした風格がここからもわかる。
ううん、こう言っていい?
ここから見る翠嶺宮は絶景だって。
このお屋敷も翠嶺宮の一部みたいだって。
「借りとるのよ」
「借りてる?」
すこし笑みを含んだ調子で言うモン爺に、ボクは思わず訊いた。
「どういうこと?」
「景色をな?」
言われて、はっと気がついた。
そだ、ボクはあまりに自然でそのことに気がつかなかった。
あれは、あの“理想郷の景色”は師匠の思い描いたソレだもの。
そこに、このお屋敷のお庭は「風景を借りてる」……そういうことなんだ!
鳥肌が立った。
ボクはそれまで、お庭っていうのはあるお屋敷と、そこに住んだり、訪れたりするヒトたちの世界だと思っていた。
そのヒトたちのためだけに造営された――ある種の結界のようなものだって。
ちがった。
ちがうやりかた、ちがう発想が、ここにはあった。
景色を……借りる。
「借景とオレらは呼んでいるやりかたさ。たしかに、その庭は造園主のモンかもしれんがね。けれども、その外に、どうしたって見えちまう景色は……それはしょうがないぜ? どうしようもない」
ぶわわっ、てまた鳥肌が立った。
景色を独り占めにしない――そんなやり方があるんだ。
「翠嶺宮周辺の宿泊施設はみんなどこかで、景色を借りてるよ。ま、オレの知る限りホントの絶景は、この庭からの眺めだろうがな」
師匠の太鼓判に「ほっほっほっ」とモン爺がまた笑う。
「敷地の外から見る景色もまたよいものよ」
「なにより金がかからねえからな。借りたモン勝ちだ。踏み倒し放題だ」
「ちょいと、ずるかったかのう?」
がっはっはっ、と男ふたりは笑う。
笑うけど、ボクには全然、ずるいとか、そういうふうには思えなかった。
豊かだ。
このヒトたちの感性はとても豊かだ。
ほんとに、素直にそう思う。
「借りたいな」と思われるような景色を大地に降ろすこと。
「その借りたいな」を貸してしまえるように、設計してしまうこと。
スゴイ。
ボクはこのヒトたちのそういうところに、感動する。
「なかなかのもんじゃろう」
モン爺さん、ちょっと得意げにボクに言った。
うん、とボクも答える。
「……でも」
「でも? なんじゃな?」
「この草ぼうぼうはダメだと思う」
豆を投げつけられ面食らったハトみたいな顔をモン爺はした。
がっはっはっ、と師匠が笑う。
「じゃから、それは岩のやつがじゃのう!」
夕闇が迫る草ぼうぼうのお庭に、モン爺の叫びがこだまする。
あ、やっぱり、岩が関係してるんだ。
「ほんじゃ、そろそろ始めてみるか」
師匠が笑いながら言う。
っていうか、アンタらふたり、よく見ると……ちょっと飲み過ぎじゃない?
「これぐらい飲まんとだめなんじゃ!」
「やれやれ、ジジイ、早く持ってこいよ!」
あれれ? 酔っ払いふたりがあわただしく、なにかを……はじめましたよ?




