6話 ○ートと異世界⑤。
「やっぱり帰りたいですか?」
エルクさんが俺の正面にしゃがみ込む。
「別に帰りたい訳じゃないです。」
顔を横に向けて答える。
「俺は・・・学校にも行かず働きもしないダメ息子だったから、あっちにいても親の負担になるだけだから。」
弱々しく言葉を吐き出す。
拗ねたような感じになるのが自分でも気持ち悪かった。
「それでも、悲しいんでしょ?」
「やっぱりさ、急にさ、自分の子供がさ、いなくなったりしたらさ、親はかなしいでしょ。・・・それが嫌だ。」
まさか異世界に来て畑仕事してるなんて思わないじゃんか。
小さく呟く。
「それは・・・・・・えっ?」
「?」
痛みに同調するようだった、エルクさんが変な声を出した。
ゆっくりそちらに目を向けると首を振った。
「いえ、なんでもないです。」
「・・・そうですか。とりあえず、帰りたい訳じゃないから、変な所見せてすいません。」
膝に手を置き立ち上がる。
もうこの話は終わりにしたいと背中を向ける。
言葉に嘘はない。
優しいエルクさんとかわいいティウちゃんと一緒にいて、仕事もさせて貰えてる。
今の方が幸せだから。
歩こうとしたら後ろからエルクさんに抱きしめられた。
「エルクさん!?」
柔らかくてあったかくて、いい匂いがするんですが!!
「私はとわくんの親ではないですけど、私も人の親だから、親の事で泣いている子供をほっといたり出来ないです。」
親、か。
そうは言ってもエルクさんと俺はそんなに年変わらないのに。
俺は下に弟と妹がいたからか、両親に甘える事なんて全然なくて、だから抱きしめられた記憶はない。
人に抱きしめられると落ち着くな。
落ち着いて心が弱くなる。
俺は立ってられなくて、またしゃがみ込んだ。
エルクさんはくっついたままで、耳元で喋る。
「それにね、とわくん。多分とわくんは急にいなくなった事にはなってない。これは本当だよ。」
本当に?
心も抱きしめられてるみたいで、エルクさんの言葉はそのまま俺に染み込んでくる。
今なら何を言われてもそのまま信じてしまうだろう。
「そっか。なら良かった。」
安心したら、また涙が出てくる。
「うん、だからとわくんはこっちで幸せになってください。それが親の幸せですから。」
言って、一回強く抱きしめてくれたエルクさんが俺から離れる。
俺の前に立つと腕を広げた。
「?」
涙を拭いながら見上げる。
「今日だけは甘えさせてあげます。特別ですよ。」
誘われるままに立ち上がって近づく、今度は前から抱きしめて貰えた。
今日だけは甘えさせてもらおう。
少しだけ、もう少しだけ・・・
!!ダメだ!!俺の中で一番の働き者、ニートの時も元気に働きたいと主張していたあいつ、下半身が反応しちゃった!
慌ててエルクさんから離れて俺は逃げ出した。
くそー、もっとくっついていたかったのに。
「男の子なんですね。」
エルクはクスリと笑って、目を細める。
走り去るとわの背中を見つめていた。
能力を与えられなかった転生者、そんな存在聞いた事がなかった。
お金を与えられている事から、事故の類でこちらに来たということではなさそうだ。
悪い子では無さそうだし、頼りない感じがほっとけない、昔同じパーティーにいた男の子を思い出すから。
ティウと仲良くする姿も微笑ましい。
しかし、どうしようもなく違和感がある。
嘘をついている類ではない。
聞いた話では転生者には大きな共通点がある筈だ。
でも、とわはその共通点に合わない。
いや、知らない覚えていないに近いのだろう。
そのせいもあって、心を痛めてしまっていた。
「とわくん、・・・あなたは・・・。」




