5話 ○ートと異世界④。
「とわくん!またみみず!!てぃうがあっちにぽいしてくるね!!」
「あ、ありがとー。」
俺がビビるしか出来ない15センチオーバーのミミズをティウちゃんが掴んで持って行く姿を苦笑いしながら見送る。
そんな俺はティウちゃんとお揃いの麦わら帽子をかぶって畑仕事中。
そんな生活も今日で早くも三日目だ。
人間とは慣れる生き物だと誰かが言っていた気がするけど、実際その通りで、ミミズや虫が出る度にティウちゃん6歳に助けて貰うのもスッカリ慣れた。
だが、肝心の虫達には全然慣れない。
違うんだよ!!
俺だって小さい頃には触れたんだけど・・・、今はもう子供の頃に憧れたカブトムシやクワガタですら触れない気がする。
「ティウー!とわくん!お昼にしますよー!」
家の裏口から顔を出しエルクさん。
ピンクのエプロン姿が可愛いんだ。
あと、たまに油断した感じのTシャツ姿とかも凄いいいんだ。
「とわくん!ごはんいこー!」
ティウちゃんが俺に向かって手を伸ばすから、小さいティウちゃんと手を繋いで歩く。
途中後ろを向いて太陽とさっき畑に植えた苗を見る。
働くっていいものだなって少し思う。
もっと早くそういう風に思えていたら、母さんや父さんはあんなに泣いたり心配したりせずに幸せだって思えたのかな?
「とわくん?どうしたの?」
「なんでもない。・・・ご飯なにかな?」
「うーん、おむらいす?」
心配させたのか、俺を見ながら首を傾げてたティウちゃんが笑顔を見せる。
かわいいかわいい。
お昼ご飯は冷やし中華だった。
・・・異世界っぽさゼロだけどいいの?
まー、ティウちゃんが美味しそうだからいいか。
17だっけ、18だっけ?
自分の年を思い出そうとしてよく分からなくなった。
18な気がしたんだけど、色々考えると17の筈で、でもやっぱり18な気がするんだ。
というよりも、元の世界の記憶がどうもおかしい気がする。
思い出せない訳じゃないのに妙に遠いというか、なんか変な感じ。
ちゃんと思い出せるんだよ。
高校一年の五月前には学校に行かなくなり留年、次の年もまた五月前に行くのを止めた。
働きもせずに家にいた。
優しくて真面目な母さんは見えない所で泣いていた。
父さんは何も言わなかった。
母さんに何か言えと言われて困っていた。
父さんには本当に怒られた記憶がない。
子供っぽくて優しい父さん。
父さんが作るカレーは辛くて人参が入っていなかった。
他の家の親は良く分からないけど、うちの親は理想的ないい両親だったと思う。
何も恩返し出来なかった。
ただ心配かけて、悲しませて、苦労させた。
じゃあ、俺は何のために生まれたんだろう。
最初からいなきゃ良かったのに。
迷惑をかけるだけの俺なんていなければいい。
何度もそう思ってた。
でも、こんな形じゃないんだよ。
駄目な息子だったのに、いなくなったらきっとあの親は凄い悲しむから、寂しいけど喜んでくれた方がいいのに、悲しんで泣くのが分かるから。
両親の顔を思い出そうとして涙が止まらなくなった。
なんで、こんないきなりお別れだったんだろう。
「とわくん。ティウがお昼寝しちゃったから、2人でまた剣の練習しましょうか。」
俺が寄りかかっていた木の裏側から、エルクさんが顔を出す。
その手には二本の木刀。
そうだった。
昼ご飯あとの一休み中だったんだった。
俺は服の袖で涙を拭って立ち上がる。
「いいですね。やりましょー。」
普通に喋ろうとしたのに、変な声が出た。
鼻水も垂れてきたし。
「とわくん。・・・泣いてたんだ。」
エルクさんの言葉は疑問系じゃなくて、なんだか逃げ場がなかった。
泣く理由が分かってるそんな言い方だったから。




