25話 ○ートと旅立ちの決意。
家までの帰り道をゆっくりと歩く。
さっき聞いたユリエルさんの話を思い出していた。
『もう、あんな風に助けることは出来ない。だから、死ぬような事はもうするな。』
そう、言われてもなって思った。
別に好き好んで死にそうになった訳じゃない。
そういえば眼帯の盗賊に切られた傷が治ったのはプラスハートの能力だって、融合時の魔力を使って自動で体調を初期化してくれるらしい。
便利って思ったけどそう使い勝手のいい能力でもないらしく、使用制限があるとかでルビアに対して次に使えるのは30日後、つまりは一ヶ月に一回しか使えないんだって。
・・・はー。
足を止めて空を見上げる。
『とわっちはそこを離れるべき。弱体化した王竜とその契約者、たくさん狙われる。』
このままじゃ、エルクさんとティウちゃんをまた巻き込むから。
「そりゃずっと、一緒にいられる訳じゃないのは分かってたけどさ。」
早いなー。
『街に行けば力が手に入る、だから。』
淡々とした一言一言が少しずつ俺の心を締め付けていた。
今の俺じゃ何も守れないもんな。
あーあ、いやだなー。
手に入る力ってなんなんだろ。
・・・迷ってなんていられないんだよな。
迷って失うのは、あの二つの優しい笑顔、なんだもんな。
ゆっくりと、俺はまた歩き出す。
「お帰り、とわくん。朝ごはん出来てるよ。」
「うん。・・・ただいま。」
「どうかした?元気ない?」
玄関で出迎えてくれたエルクさんが可愛く首を傾げる、俺は首を振りながらそのまま進んだ。
「だいじょぶ。なんでもないから。」
「とわ、遅いぞ。私はもうお腹ペコペコだぞ。」
「とわくん、わたしもおなかぺこぺこだぞ。」
ルビアとティウちゃんが朝ごはんの準備されたテーブルで文句を言ってる。
後ろで苦笑いするエルクさん。
ルビア、お前ティウちゃんに悪い影響与えてない?
「うん、ごめんね。俺もお腹すいた。」
「?とわ、何かあったか?」
ルビアも可愛く首を傾げる。
「なんでもないから。」
「・・・そうか。・・・朝はあんなに元気だったのにな。」
・・・それって、下ネタじゃないよね?
俺の1人息子の事じゃないよね。
ルビアは器用に箸でご飯を食べる。
凄いなー、昨日人型になったばっかりなのにな。
「うん。エルク今日も美味いぞ。」
「ありがと、お代わりする?」
「うん、頼もう。・・・とわはどうだ?」
お茶碗とスープの皿を元気よくエルクさんに差し出してルビアは俺を見る。
「いや、大丈夫・・・。」
「とわくん、だいじょぶ?」
今度はティウちゃんが首を傾げる。
3人に順番に心配されてる俺、ダメだなー。
覚悟決めるか。
「エルクさん、俺、ここを出て街に行こうと思います。」
「えっ?」
勇気を出してエルクさんの目を見ていたのは失敗だった、こんなに悲しい顔をするなんて思わなかったから。
「そう。・・・そうよね。その方がいいかもしれないね。」
エルクさんの笑顔がぎこちないのは分かりやすかった。
短い付き合いの筈なのに本当に大事にして貰ってるんだよな。
「やだー、とわくんいなくなるのいやだっ!」
「ティウ!仕方ない事なの!わがまま言っちゃだめ。」
「やだー、ずっといるもん!」
椅子から飛び降りてティウちゃんが俺にしがみつく。
ティウちゃんの泣いてる所を何度も見てるな-、一緒にいっぱい怖い思いをした。
「ティウちゃんごめんね。・・・俺が一緒にいたら、また怖い人がいっぱい来ちゃうんだよ。」
小さいティウちゃんを両手で抱き上げて語りかける。
「だいじょぶだもん。とわくんがまもってくれるもん!るびあも、ままも。」
「だめなんだよ。きっと守れない、だから。」
守れたならよかったのにな、このままずっと一緒にいられたのに。
「とわ。・・・そうだな、出て行くか。」
立ち上がったルビアが俺の頭に手を置く。
ルビアにはきっと分かったんだな、出て行かなくちゃいけない理由が。
「いやだーー!るびあも、いなくなっちゃいやだー!!」
「ティウ!困らせちゃだめ!会えなくなる訳じゃないから。ねー、とわくんまた会いに来てくれるよね?」
「うん、もちろん。また、すぐ会えるよ。」
エルクさんの助け船に何度も頷く。
それは俺の心も救ってくれた、そうだよな、また会いに来ればいいんだよな。
「そうだぞ、ティウ、私ならひとっ飛びで会いに来れるからな。」
ルビアそう言うけど、今のルビア飛べるの?
本当はすぐに出て行きたかったけど、エルクさんとティウちゃんに止められて旅立ちは1週間後になった。
1週間くらいなら大丈夫だよね?
「よし!とわ今日は2人で寝るぞ!」
「だめーー!!」
夜、パジャマに着替えて枕を抱えたルビアにエルクさんが飛びつく。
「なんだ、エルク。お前はティウと寝るんだろう?私はとわと寝るぞ。」
「だからだめーー!!あのね、男と女が一緒に寝るって事は・・・あー、もうちょっとこっち来なさい!」
エルクさんがルビアの腕を掴んで引きずっていく。
何やってんだろ、あの2人・・・ルビアと2人で寝るか-、この何気ないやりとりですでに半分元気な俺・・・。
「なるほど!!とわが朝元気だったのはそういう事か!」
ぎくー!!
ルビア大きい声で何言ってんの!
「と、とわくんが朝元気!?」
やめてー、エルクさん反応しないで!!
「よし!とわ、一緒に寝るぞ!!」
「だから、駄目だって言ってるでしょ!とわくんにはまだ早いの!!とわくん!街に行っても絶対に宿は別の部屋にしなきゃダメよ!!絶対だからね!!」
え、エルクさん近い!顔が近い。
・・・エルクさんの視線が下に・・・あー!
「おー、とわ!準備万端だな!よし、寝るぞ!!」
「だから、駄目です!!もう、とわくん、駄目だからね!!」
もう、いやだーー。




