24話 ○ートのひみつ?
「は?おい!?どうなってんだよ!?」
俺の口が俺の意思ではない言葉を喋る。
もう、そんな事知るか。
「勝手な事言うなよ!人間の命が軽い!?そんな事言わせるかよ!!俺の!俺とルビアの手で人なんて殺させてたまるかよ!!」
勝手に動こうとする右手を強く握りしめて下に振り下ろす。
「助けてくれたんだろ!?それはありがとう。だけど、いやだ!こんなやり方絶対嫌だから!だから、あとは俺がやる!」
「・・・とわ。」
『チュートリアル、終了。』
「うわっ!ユリエル何やって、ぎゃはは!分かったからくすぐるな!!」
・・・何!?
俺の口で変な笑い声が上がってから体の自由が戻る。
「・・・とわくん?」
縛られたエルクさんが心配そうに見ている。
改めて見るエルクさんはボロボロで弱々しい、俺が弱いからこんな姿にさせてる。
安心させようと一生懸命笑ってみる。
「もう少しだけ待ってて。・・・ティウちゃんも、もう大丈夫だから。」
「・・・とわくぅーん!」
ティウちゃんは俺の名前を呼んでまた泣き出した。
どれだけ怖かったんだろう。
俺まで泣きそうになるのを唇を噛んで堪えて眼帯の男を睨む。
相変わらず怯えた汚い表情の男。
「安心しろよ。殺したりするつもりなんてないから。」
言ってやると、その全身から力が抜けて涙をどっと流した。
・・・こいつの安心する姿なんて見たくなかったな。
本当は殺したいのかもしれない。
でもそれは他の人に殺して欲しいんじゃなくて、ルビアの力で殺したい訳じゃなくて・・・いろいろ考えて、俺は人を殺せる程の強い意志も責任も持てないんだと分かった。
「とりあえず一発殴っとくから。・・・反省して、仲間と消えろ。もう、俺達の前に現れるな!」
グーを握って俺は踏み出す。
全力で拳を振り落とす!!
・・・えっ!?
「ええーーーっ!!?」
勢いよく殴りすぎてバランスを崩した俺が見たのは、思いっきり飛んで星になった眼帯の男だった。
・・・。
「アン○ンマンに倒されるバイ○ンマン?」
引きつりながら思わず言ってしまった。
なんで、下に向かって殴ったのに飛んだの?バウンド?
・・・死んでないよね?
ルビアの力って・・・。
唖然としながら右手を開いて閉じてしてると、残りの盗賊達が悲鳴をあげながら逃げていく。
「フレア。」
ルビアの異常な魔力を使わないように意識しながら発動させる俺の炎魔法、小さな矢がエルクさんを縛る縄を切り裂く。
「ティウちゃん、エルクさんのとこ行こう。」
先にティウちゃんの所に行く、泣きじゃくるティウちゃんを抱き上げると俺に必死にしがみつく。
「怖かったよね。ごめんね、もう大丈夫だから。」
出来るだけ優しく背中を撫でながらエルクさんまで歩く。
「エルクさん。」
しゃがんだ俺をエルクさんの腕がティウちゃんごと包み込む。
力の入らない震えるエルクさんの腕。
俺は左手でエルクさんの手を握って3人でまた泣いた。
「はーー、嫌われたかな。」
椅子に座ったナナエルはとわの映る画面を見ながら頭を搔く。
「とわっちなら違う。・・・ほら。」
ユリエルが指さす先でとわが空を見てる。
『天使さん、ありがとうございました。生意気言ってごめんなさい。』
小さいその声にナナエルは思わず笑顔を出す。
「ナナエルのとわっちも格好良かった。でも、とわっちは少し困ったこの笑顔が一番。」
ナナエルの横で滅多に笑わない友人まで笑顔になっている。
「そうだね。情けない顔してなければとわじゃないか。ふん、私じゃ格好良すぎたか。」
得意気に前髪を上げるナナエルは満足そうだ。
「ん。」
「なんだ、これ?」
ユリエルから渡された紙を手に取りまじまじ見るナナエル。
「始末書。ナナエル書いて。」
「なんでだよ!!」
横でわめくナナエルを無視してユリエルは画面の中のとわを見ながら目を細める。
「あなたは、なに?」
誰にも聞こえない声でそう呟いた。
チュートリアルというシステムを一時的に世界に作り上げ、体の制御を完全にナナエルが奪うプログラムでとわの自由を奪った。
・・・筈だった。
それを何事もないように撥ねのけたのは何なのか。
人間の意思の力?
そして、チュートリアルの前のとわの行動。
一体何をしようとしていた?
あの転生者に与えられた能力はプラスハートだけの筈なのに。
もしかしたら、とわっちには私達の知らない、主すらも知らない何かがある?




