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 17話 ママたたかう。



夜の村で風が流れる。


風を纏ったレイピアと炎を纏った刀がぶつかる。


吹き飛んだのはレイピアを突き出した方、エルクだった。


足で地面に着地しそのまま後ろに滑る。

吹き飛ばされた瞬間から準備していた魔法を発動、エルクを中心に吹き荒れる風が追い討ちをかけようと迫ってきた炎の刃達を弾く。


そして、踏み出す。

風に乗って一気に加速。


エルクの視線の先でとわと大して体格の変わらない少年が楽しそうに笑う。


黒い眼帯で右目を隠し、濃い茶髪をオールバックで後ろに流す盗賊団のトップ。


「たまんねーな!おい!べっぴんな上に腕もいい!お前俺の女決定な!七番目だけどな、ハハハ!テク次第ではランクアップも夢じゃないからそこんとこよろしく!」


余裕そうに軽口を叩く男。一方エルクの方にはそれを返す余裕はすでになかった。


盗賊計6人を倒し、トップとの一騎打ちに持って行ったまでは良かった。

結果盗賊達はその一騎打ちを見守る事になり、その間は村への被害が広がるのを止められているのだから。


良くなかったのはその盗賊の腕が予想以上だった事。


エルクは攻勢に回りつつもダメージを与えることに成功していない、なんとか攻撃をさばきつつ、こちらから攻め続けている。

相手から攻められた時にそれに耐えきるイメージがエルクには出来なかったからだ。


「それが嫌ならここで死ねよな!!」


足下を爆発させる踏み込みで突っ込んでくる男。


「くっ!」


風を補助に使いながらギリギリの所で体をそらし剣をかわすエルク、そのすぐ後ろで家が一軒焼き砕かれる。


崩した体勢から低く体を回し、男の足を目掛けて剣を振るうが男の足に踏み止めれれる、踏んだ瞬間起きた爆発がエルクの手から剣を奪い高く打ち上げる。


即座にバックステップ、前髪を擦るように目の前を落ちる男の剣、追撃を外した鞘で受けながら、エルクは勝つことを諦め引き際について考える。


盗賊の頭の七番目の女。

普段なら全く御免だが、盗賊に捕まる場合の行き先としてなら悪くない。


売られて娼婦としてや、盗賊達の性処理として雑に扱われるよりは大分ましに思う。


自分ではそう割り切れる。


だが、ティウととわの事を思うと、その決断をする事が出来なかった。


二人が悲しむことが、辛い目に合うことが、自分の身を痛めつけられるよりも許せない。


だが二人は自分が傷付くことで悲しみ泣くのだろう。



それでも、死ぬよりは盗賊の女になる方が・・・自分の中で自分の説得を試みる。


とわ君が助けに来てくれる。

あんなに弱いとわなのに、エルクは何故かその未来に希望を見る事が出来た。


あとは自分の降参を利用していかに村への被害を小さくするかだ。


金を奪われるのは仕方ないとして、いかに奪われる命を減らすか・・・。


「分かっ・・・!!?」


交渉に向けて言葉を紡ごうとした時だった。

全身を今までに感じた事のない強いプレッシャーが襲った。


潰れそうになる心臓、一気に温度を失っていく身体。


それはエルクだけではなく、相手も同じのようだった。

いや、村全体がそれを感じ、立っていることも出来なくなり地面に倒れ込み胸を押さえ苦しんでいる者もかなりの数に登る。


エルクは上空にいるソレに背を向けている為に、ソレがなんなのかを知ることは出来ない。

身体を動かそうと意識する事すら出来ないのだ。


相対していた盗賊の頭は上空のソレを見ていた。

そして、口が動く。


「王竜・・・ルビア・サンデット、おいおい、くそったれ!それはさすがにありえねーだろ。」


「っな!!」



王竜だと、そんな存在がなんでこんな村に・・・エルクを飲み込もうとしているのは確かな絶望だった。


上空を飛ぶ事はたまにはある。

それでも彼等王竜は基本人間に興味はない筈だ、そうでなければ人間はとうの昔に滅んでいただろう。



そんな存在がなんでこんなにも近い場所に・・・


運命のいたずら、そんな言葉でエルクは自分の終わりを感じていた・・・が。


「エルクさーん!!助けに来たよ!!」


なんで、その声は上空から響くのか。


反射的に振り返り見上げ、エルクは言葉を失う。


絶望的な王竜の存在感と、その頭上でご機嫌で手を振るのん気な子。


なんで、なんで、この子は本当に。


エルクは脱力して弱く笑うしかなかった。

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