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 14話 ○ートと○えるむら。



迷った結果、俺は腰に木刀を差した。


何度想像しようとしても、自分が盗賊だろうと人間を斬るイメージは出来なかったから。

まー、ゴブリンも切れなかったくらいだしな・・・。


エルクさんと合流するとエルクさんに困った顔をされた。


俺も困ってしまう。

でも俺に剣に変えるつもりはなかった。

きっとこれは守らなきゃいけない気持ちだと思うから。


「・・・とわくん、木刀だと攻撃を防げないよ。」


・・・俺は剣を装備しました。


仕方ない、これは仕方ないんだ。


「ままー?」


「大丈夫、大丈夫だからね。」


心配そうなティウちゃんを抱きしめるエルクさんは自分に言い聞かせてる様に見えた。


「とわくんも、大丈夫だからね。」


今度は俺が抱きしめられた。

ああ、気付かなければ良かった。

エルクさんの身体が小さく震えてる。


勇気を出して俺もエルクさんの背中に手を伸ばして強く抱き締める。

今更気付いた、エルクさんが俺より小さい女の人だって事に。


「守るよ。俺が守るから。」


「バカ。」


小さく笑ってエルクさんは俺から離れる。


「行きましょう。」


俺達は家を出る。


・・・村が燃えていた。


門のある側から半分程の家から火が出ている、エルクさんの家が燃えてないのはただ門から遠い場所にあったから、それだけの差なんだろう。


これが現実だとは思えなかった。


俺は意識せずに後ずさりしていた。

だって、これは災害じゃなくて人がやっているんだぜ。

こんなのっておかしいだろ。


「はは、」


感覚がおかしくなって勝手に口が笑っていた。


「・・・とわくん。ティウ・・・っ。」


・・・俺とエルクさんの間でティウちゃんが泣き出していた。


俺も泣きそうになる。

ティウちゃんの様にしゃがみ込んで泣きたかった。


「とわくん、お願いしてもいいですか?」


「?なにを、ですか?」


「ティウの事。ティウを連れて村を出てください。・・・危ないけど森に、エルクマさんの所まで行ければとりあえずは安心だと思う。」


静かに俺に告げるエルクさん。


「そんっ!!エルクさんは!?」


「私は村を守ります。ティウが生まれてからずっと育ててくれた村だから。」


「だったら俺も!!」


「無理だよ。戦えないし、戦っても相手にもならない。だから、お願いします。私の大切なティウを守って。」


「嫌だ、嫌だ、」


俺は首を振りながら後ろに下がる。


だって、おかしいじゃないか。

エルクさんが村を守るなら、守れるなら俺達はここにいてもいいじゃないか。


「エルクさんも、一緒に・・・!」


俺の目の前でエルクさんに泣いてすがりついていたティウちゃんがエルクさんに後ろ首を打たれ意識を失う。


優しく抱き上げたティウちゃんを俺に差し出すエルクさん。


「嫌だよ!!一緒に逃げようよ!!絶対に嫌だ。」


「お願いします。」


「嫌だ!!」


「ちゃんと、迎えに行きますから。」


俺は見苦しい程に取り乱してるのに

エルクさんは落ち着いたままだ。


「嘘だ!!」


「嘘じゃない。・・・もし、嘘になったらとわくんが強くなって助けだしに来てよ。」


「そんなの!!エルクさんが死んだら助けられないじゃんかよ!!」


俺は全力で叫んでいた。


エルクさんはそんな俺を笑う。弱く笑う。


「ばかだな、とわくん。私みたいないい女を殺す盗賊なんていないよ。殺されそうになったら大人しく捕まります。それでいいでしょ?」


いい訳ないじゃないか。

そんなのいい訳ないじゃないか。


俺が言葉を無くしてるとエルクさんに頭を撫でられる。


「大丈夫。大丈夫だから。ちゃんと、迎えに行く。だから、とわくんは少しの間ティウを守ってあげて。」


もう一度差し出されたティウちゃんを俺は受け取っていた。


「ありがとう。」


俺は何も言葉に出せない。


エルクさんが俺の左手を掴んで走り始める。俺は右手でティウちゃんを支えながら力なく走る。


村を囲む柵の所まで来た。


エルクさんが腰のレイピアを抜く。レイピアを中心に風が渦巻く。


エルクさんが力強く踏み込みレイピアを突き出す。


柵に大きな穴が開いた。


レイピアを鞘にしまいエルクさんが俺に近付く、俺は拒否するように下がろうとするがエルクさんに素早く抱き締められる。


「お願いします。・・・私も怖いよ。だから、全部終わったらとわくんから抱きしめてね。」


エルクさんが俺から離れても俺は動けない、ただ泣くだけだ。


「ばかっ!!男の子なら根性見せてよ!!私だって怖い!!だけど、とわくんには私を信じてティウと安全な場所にいてって言ってるんじゃんか!!走れ!!」


エルクさんの足が俺の背中を蹴る、俺はそれに押されて一歩前に進む。


「ほら、走れ!」


両手で俺の背中を押して走り出すエルクさん、柵に開いた穴をくぐる。


「ティウもとわくんも大好きだから、絶対に迎えに行く。だから、エルクマさんと一緒に待ってて。いっけー!!」


充分に加速をつけたエルクさんが俺の背中を強く押し出す。


くそー、くそーー。


俺は、エルクさんの言葉に従うしかなくて、強く歯を食いしばって全力で走る。


なんで、俺はこんなに弱いんだろう。


もっと、強くなっていれば、


大事なときに大切な人を守れないなんて、


悔しさを全部走る力に変えて、俺はティウちゃんを抱えて森を目指す。





「良かったの?逃がしてくれて。」


エルクが振り返る先には茶色い外套を羽織った長身大柄な男がいた、背中には大剣。


「構わん。俺はいい女には優しいんだ。」


いやらしい笑みを浮かべて男は剣を抜く。


「それは嬉しい。約束があるから殺さないでくれると嬉しいわ。」


「殺す訳ないだろ。」


「ありがと。・・・私は殺すけどね。」


男の首が落ちた。


エルクは顔から表情を消し、男の死体を通り過ぎ村に戻った。


「他の盗賊がみんなこんなのなら助かるんだけどね。」


彼女は自分の言葉を守る為に走り出した。





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