神様が見てる②
「とわくん。剣も似合うな、うん。」
主はなにやら頷いてらっしゃるが、賛同は出来ない。
怯えながら剣に触れている姿のなんと情けないことか。
虫に悲鳴を上げ物音にビビる。
これを一体どんな気持ちで見ろというのだ。
「とわくんはかわいいなー。」
主・・・私にはそれは無理です。
周りの天使はと見ればポテトチップを食べながらジュースを飲み始めている。
・・・お前ら。
『ええーっ!!ゴブリンっていうか、小さいおっさんじゃん!!?』
現れたゴブリンを見て叫んでいる。
・・・確かに、見えなくもない。
なかなか上手いこと言う。
私はプルプルと笑いを堪える。
一度思ってしまうと、ゴブリンが小さいおじさんにしか見えないから不思議だ。
『戦う!?小さいおっさんと!?』
何故そこに驚く?
もともとその為に森に来たんだろうに。
主あなたは何故そんな緊迫した表情を・・
『ギギィァーズ!!』
ゴブリン達が攻勢に出ようと動きだす。
遅いなー。
『小さいおっさんじゃないです!!ゴブリンです!』
エルクの剣は容易くゴブリンを貫く。
やはり、ゴブリンなどは相手にもならないな。
『おっさん!!』
なんだ、その知り合いのおっさんがやられたみたいな反応は。
『おっさんじゃないです!!ゴブリンです!』
エルクが当然の反論をしながらゴブリンを蹴散らす。
『小さいおっさんだよ!!たまに駅にいたもん!!こういう人達!!』
いないわ!!
天使達が吹き出しゲラゲラ笑う。
『いません!!モンスターです!襲って来てるでしょ!!』
エルクが精神的な疲労を見せる。
少し同情してしまう。
「確かに、たまに天界にもいるな、こんなの。平日の昼間に。」
主!!いません!!
天界に平日とかないでしょ!
ゴブリンを撃退しようとするエルクを止めようとしがみつく転生者。
『とわくん!?なにを!!』
『リストラされたんだよ!仕事がなくて荒んでるんだよ!!』
んな訳あるかー!!
なんなんだ、この転生者は!?
天使達は爆笑してる。
おい!なんか宴会みたいになってるぞ!
『エルクさんもしっかり見て!ほら、眼鏡かけてる奴いる!!おっさんだよ!あっちのはヒゲ生えてるし!おっさんだよ!』
本当だ。眼鏡ゴブリンなんてレアなのがいる。
ヒゲの生えた長老みたいなのもいる。
こんなのが駅にいたら嫌だ。
私は迂闊にもプルプルしてしまった。
その間に徐々に増えていくゴブリン。
手で押してくるエルクに対して耐える転生者、圧倒的な能力の差があるだろうに。
『俺が小さいおっさん達を守るんだ!!』
・・・なんで、こんな所で火事場の馬鹿力みたいの出してるんだよ。
「・・・とわくん。」
あるじー!!?泣くような所じゃない!
『かわいそうな小さいおっさん達を剣で切るなんてダメだ!!仕事が無いって事は辛いんだよ!!』
この○ートはなんでゴブリンに感情移入してる!
そして、これがゴブリンの仕事だわ!
エルクはどうやら逃げる事を決めたようだ。
お疲れ様だな。
転生者の襟首を掴み引きずって走る。
・・・こんな情けない駄目転生者初めて見た。
ゴブリン達も追ってくるが距離は広がる一方だ。
しかし、汚い顔して走ってるな。
下等なモンスター共が。
そのゴブリンを見つめる転生者、さすがにその醜さに現実に気づいたか?
『おっさん達!!頑張れよ!頑張れよ!!俺も頑張るから!!』
ダメだ!こいつはダメだ!
なんでこんなにもゴブリンに仲間意識を持っているんだ・・・
ほら、エルクにも怒られてる。もっと怒っていいぞ。
「とわくん。初めての冒険頑張ったね。」
・・・もう、何も言うまい。
「いやー、笑った笑った。」
・・・お前ら、酒飲んでないか。
・・・まだ、続くのか。
映像は夜、あいつが起きた所から始まる。
「おーっ、寝起きとわくん!」
・・・私は何も聞いてない。
立ち上がった転生者は眉間にしわ寄せ何か真剣な顔をしている。
夜這いか?
『くそっ!弱さなんて捨ててやるよ!』
暗い部屋で一人声を出し剣を握った。
こいつ、まさか。
・・・握った剣を一度置き、寝間着から私が用意した黒服に着替える。
主赤くなってませんか?
家を出て走り出す転生者。
向かう先は村の出口だ。
こいつ、やっぱり一人で戦いに行くつもりなのか。
男らしいところあるじゃないか。
「とわくん!ダメだ!危険すぎる!!戻るんだ!」
主が声を上げるが、私は男にはこういう事が必要だと思う。
きっとこうやって、少年は成長していくんだろう。
行け、行くんだ少年!
『あれ?門閉まってる?』
・・・は?
『えーーーっ!?』
「えーーーっ!?」
転生者と私の叫びが重なった。
なんなんだよ!こいつは!!




