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 10話 ○ートともりの○まさん。



今日は朝ご飯から気合いを入れて具だくさんのスープを作る。


とわくんはいつも美味しいってご飯を食べてくれるけど、あったかいスープの時は嬉しそうにするからな。


「昨日は少しキツく言い過ぎちゃったかな。」


「ままー?」


「んー、なんでもないよ。母親やるのも大変だなって。」


「ままはてぃうのまま、たいへんなの?」


椅子から下りて私の元まで歩いてきたティウの頭を撫でる。


「ほら、今はもう1人子供がいるでしょ。」


「・・・とわくん!」


嬉しそうに彼の名前を呼ぶティウ、あっという間に懐いたものだ。


・・・私は焦りすぎたのかな。

彼はモンスターなんていない平和な世界から来たんだものね。


最初は戦う事に抵抗のある転生者が多いっていうのは聞いたことあったけど、まさかゴブリンにあんな反応されるなんて。


小さいおっさんって。

思い出して吹き出してしまった。


「まま?」


「ちょっと昨日のとわくん思い出しちゃった。」


「小さいおじさん?小さいおっさん!あははは!」


ティウにも何の事かすぐに分かったのか上機嫌だ。


「ほら、ティウ。朝ご飯出来るからとわお兄ちゃん起こしてきて。」


「うん、とわにいさんおこす。」


両手を上げてとわくんの部屋へと駆けていくティウ。


朝から微笑ましい。

昔からは考えられない幸せな家庭を持てたものだ。


「ままー。とわくんいないよ?」


言いながらティウが戻ってくる。


嫌な予感がした。


急いで玄関に行き靴を確認する。


とわくんの靴が無い。


「ティウ、少し留守番してて!」


「えっ、とわくんは?」


ティウの言葉に返事はせず、私はエプロン姿のままに家を飛び出す。



「ダムさん!とわくん!うちのとわくん見ませんでしたか!?」


「エルクさん!!み、見ましたよ。朝早くから森に行くって!」


「やっぱり!」


何を考えてるのあの子は!


違う、私のせいか・・・。


一度家に戻らなきゃ。

ティウも心配してるだろうし。



「まま!とわくんは!?」


玄関の前でティウが待っていた。

走って私の所まで来る。


「森に行ったみたい。」


「ちいさいおじさん?」


「そうね、小さいおじさんに会いに行ったみたい。ママ急いで迎えに行ってくるから、また留守番しててもらっていい?」


「・・・うん。」


いつもなら一緒に行くって言いそうなのに我慢して頷く娘の頭を撫でる。


「とわくんをすぐに連れてくるからね。」


家に入ってエプロンを外す。


携帯を取り出しとわくんに電話をかける。


電子音を聞きながら最悪の想像が頭をよぎる。


出て、出て!


「とわくん!!無事!?」


音が変わった瞬間に私は声を上げていた。


「え、エルクさん!?・・・おはよーございます。」


はー、なんでこの子は。


「良かった。無事みたいね。今はどこにいるの?」


「・・・えっと、すいません森に来てます。」


「分かってる。今すぐ行くから、危ないことはしないで。」


「・・・はい。」


「家に帰ったら怒るから、覚悟しててね。」


「・・・はい。」


「じゃあ、待ってて。」


電話を切る。

良かった、生きてた。

安堵の息を吐く。


「とわくん、だいじょぶ?」


「大丈夫。ティウごめんね、待っててね。」


愛用のレイピアを腰に差し、ティウの頭に手を置いて家を出る。


「まずは森!」


私は魔法で身体能力を強化して走り出した。



森まで来た。

少し弾む呼吸を整えながら携帯を取り出す。


便利なもので相手の位置情報が分かるのだ。


「バカ・・・道を外れてるじゃない。迷うって言ったのに。」


急がないと!

私はもう一度走り出す。



「あとちょっと!」


途中出会ったゴブリンやフォレストウルフをレイピアと風の魔法で瞬殺しながら走り抜けてきた。


よくこんなに奥まで来たものだ。

あの臆病なとわくんが。

なんだか怖くて泣いてる姿が簡単に想像出来た。


早く見つけてあげないと。


そう思う私の前に巨大な影、直立すると四メートルを超えるあれはこの森の王者フォレストベアー。


最悪のタイミングだ。


だが、あっちはまだ私に気づいていない。今のうちに強力な魔法で・・・でって・・・


「とわくん!!何やってるの!!?」


思いっきり叫んでしまった。


だって、とわくんがフォレストベアーの肩に座ってるんだもん!そりゃ叫ぶよ!


「あっ、エルクさん!」


器用に振り返るフォレストベアー、とわくんは呑気に手を振っている。


「えるくまさん、あの人がエルクさん、俺の事を迎えに来てくれたんだ。ありがとね、下ろしてくれる?」


フォレストベアーに話しかけるとわくん、フォレストベアーは頷くとゆっくり体を曲げ四足歩行姿になる。

低くなった所で飛び下りるとわくん。


「とわくん、・・・あなた、何やってるの?」


「えっと、この子がゴブリンに襲われてたのを助けようとして一緒に逃げてたらくまさん、えるくまさんが助けてくれて、肩に乗せてくれました。」


な、何それ。

この子ってのはすぐ近くにいる小熊か。

モンスターにそんな事ってあるの!?


そして、くまの名前!!


「このくまさん、優しいお母さんで、くまのエルクさんみたいだなって思って。」


どうも。みたいな感じで母熊が頭を下げてくる。

そんな風に私の名前を使われても嬉しくはないけど、同じママ仲間として私も会釈を返す。


「とわくんの事、ありがとうございます。」


「ぐるーー、ぐるーーるー。」


なんか言葉を返された。

どうもいい熊さんのようだ。

先制攻撃しなくて良かった。


何て言ったんだろうと、とわくんの方を見てみたけど当然分からないみたい。


「じゃあ、とわくん帰ろう。」


「うん。じゃあまたね、えるくまさん。てぃくまもえるくまさんから離れちゃダメだよ。」


手を振りながら別れを告げるとわくん。

小熊の方にもどこかで聞いたことある名前を・・・。


不思議な子。


「心配したんだからね。」


「ごめんなさい。」


申し訳なさそうな顔をするとわくん。

私は二人のくまさんに見つめられながらとわくんの手を握る。


「エルクさん?」


「危なっかしいんだから、とわくんも私から離れないでね。」


「・・・はい。」


少し赤くなるとわくんがかわいい。


はー、お母さんやってるなー私。


「小さいおじさんは倒せた?」


「駄目でした。」


うつむく私のかわいい息子。


「仕方ない子だなー。」


笑う私に不思議そうな顔をするとわくん。


君が無事でいてくれて私は幸せなんだよ。


とわくんは初めての冒険にテンションが上がったのか色々な話をしてくれた。

主にとわくんの情けない話を、しかも楽しそうに。


本当、この子は。

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