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 9話 ○ートとはじめてのた○かい。


俺の剣がゴブリンを切り裂く。


なんだ簡単な事じゃないか。


体が軽い。


何体ものゴブリンを容易く切り裂いていく。


ゲームとなんら変わらない。


眼鏡のゴブリンもヒゲもじゃもじゃの奴も小さいおっさんなんかじゃない、モンスターだ。


簡単な事じゃないか。




・・・寝起きは最悪だった。

なんで夢の中ではあんなにテンション高かったのか教えてほしい。


まだ暗いな。

眠り直す気にはなれずに立ち上がる。


夢の中みたいにはなれないよな。


「無理に戦えとは言わないです。ただ、いざという時に戦う力が、覚悟がないと後悔しますよ。」


エルクさんに言われた言葉を思い出す。


高校を辞める時に担任に「逃げてばっかりじゃ何にもなれない。」

とか言われたな。


関係ないけど、お前ら引きこもりは何でも人のせいにするんだ。とか言ってたな。


逃げたくなくても逃げなきゃいけない時だってあるんだよ。

心の中ではそう叫んでた。


エルクさんの言葉もそう、戦う事が、モンスターだから倒すって事が正しい訳じゃない。

そう思う。


だけど、エルクさんの言う後悔が、守れないって事ならそれは嫌だ。


エルクさんとティウちゃんを守りたいな。


俺が弱くて守れない日がもし来るというのなら、強くなりたい。


例えそれが、小さいおっさんを殺す事でも。


きっと、その時になってからじゃ遅いから。

エルクさんはそれを俺に教えてくれようとしてるんだよな。


結局俺は逃げてるだけなのかな、今も昔も。


逃げてるだけじゃ何にもなれない。


「くそっ!」


俺はあの教師がだいっ嫌いで、あんな奴の言葉に従いたくはないけど

守りたいって思うんだよ。


覚悟くらい決めてやる!


「弱さなんて捨ててやるよ!」


1人言葉を吐き捨て剣を持つ。


準備を整え、静かに家を出る。


まだ外は真っ暗で、夜に外に出るのは初めてでちょっと怖い。


でも怖いなんて言わない。

俺は走り出す。


まずは村の門まで行って外に出る。

森まで行ってゴブリンを倒す。

昨日採れなかった果物を取って来よう。



鼓動が高鳴る。

俺はもう動きだしてる。

戦うんだ!



・・・。

「あれ、門閉まってる。」


・・・えっ?

少し周りを見回すけど他に出られそうな場所もない。


・・・えっ!?


「えーーーーっ!?」


俺の覚悟はー!?






「おい、坊主!おい、坊主何こんな所で寝てんだ?」


「・・・ん?・・・門番さん?」


「お前、エルクさんとこの坊主か?なにやってんだ?」


「門が開くの待ってたら寝ちゃいました。門ってもう開きます?」


結構寝たのかな?

ちょうど明るくなり始めた所みたいだ。


「ああ、開けるけど、なんだ外に出るのか?昨日も出てったよな。」


「うん、森に少し行ってくる。」


俺より背の高い中年の門番さんに頷いて答える。


「森ねー。あんまり無理すんなよ。エルクさんの悲しむ所は見たくないからな。」


言いながら大きな門を開けてくれる。


「分かってる。それは俺だって同じだから。」


言って前に進む。

門番さんは笑って俺の頭に手を乗せた。


「そりゃそうか。行ってこい。」


「うん。」


門をくぐって走る俺は門番さんに手を振った。


やっぱりエルクさん好かれてるんだな、そんな事を考えた。





あれ、どうしよう。

森に辿りつく頃には熱い想いとかがすっかりなくなってしまったんだけど。


怖い、帰りたいんだけど。


なんで俺、森に来ようとか思ったんだよ。


「よし、小さいおっさんに気付かれないように果物取って帰ろう。」


1人握り拳を作って頷く。


森を1人で歩くと凄く怖い。


いや、思い出して見れば昨日もビビってたぞ。


怖いよー。

小さな物音にビビりながら進む。


「うおっ!出た!」


昨日もいたでかい蜘蛛だ。

どれくらいでかいかと言うと俺の手ぐらいある。


俺は腰の剣を抜く、蜘蛛の少しの動きも見逃さぬように集中し、距離を取っていく。


「ふー。」


安全と思える距離まで離れて剣を鞘に納めた。


・・・あれ、今何か視界に映ったような。


気のせいだよなと言い聞かせつつ振り返ると醜く笑う小さいおっさんと目が合った。


「お、おはよーございます。」


俺も笑みを返す。


「ギギィギギギィィス!」


朝の挨拶かしら?小さいおっさんが襲ってくる。


「いやーーっ!!」


俺は逃げ出す。


「ゴブリンだ!!こいつ、おっさんなんかじゃない!モンスターだよ!!駅にいたのはこんなんじゃなかった!!」


自分が襲われて初めてその真実に気付いた。


昨日はエルクさんと一緒だったから精神的に余裕があったって事にも今更気付いた。


走ってる事以上に心臓が強く脈打つ。


怖い怖い。


後ろをチラリと向くとゴブリンが凄い勢いで追いかけてくる。

昨日は醜い顔だって思えた。

でも違う、あれは恐ろしい顔なんだ!!


恐怖から早くも息が上がる。


決めろ!!決めろ!!

覚悟を決めろよ!!


昨日みたいに数が増えられたら終わりだぞ。


大丈夫!大丈夫!

武器はある、俺の能力だって上がってるんだ!


「くっそーーっ!!」


俺は右手で剣を抜きながら体を回し振り返る!


そのまま剣を後ろに振りかぶり一気にゴブリンに対して突っ込む。


お互いに動いているんだ間の距離はすぐになくなる、俺は剣を振り下ろっ!!

全身で、全力で、自分にストップをかけて後ろに跳んだ。


回避動作みたいなそれは回避動作じゃなくて、ただ、斬る勇気が持てなかった。


急激な動きに体勢を保てず剣を持った手を地面につく。


泣きそうだった。


俺の目の前に迫る小柄なゴブリンの焦げ茶色の細長い手、髪の毛を掴まれ顔を地面に叩きつけられた。


痛い!


嫌だ、嫌だ、死んじゃうのか!?


嫌だっ!!!


俺は顔を地面につけたまま、剣を上に向かって振るう。


剣の先に軽い感触。


「ギィィっ!」


かすった!?


俺は両手で地面を押し、ゴブリンがいるだろう場所に自分を突き出す。


頭に衝撃!


「うっああーー!」


そのまま頭の先にあるものを突き飛ばし立ち上がる。


荒い息のまま、両手で剣を握る。


頭突きを受けて倒されたゴブリンは目の前だ、すぐに起きてくるだろう。


殺さなきゃ!殺さなきゃ!


呼吸がおかしい、顔の筋肉がおかしい、頭の中が爆発しそうだ、剣を持った両腕が、足がガクガク震える。


殺さなきゃ、殺さなきゃ、


分かってるのに動けなくて、俺はゴブリンが起き上がるのをただ見ていた。


「ギギィっ!」


悔しそうに鳴いたゴブリンが背中を向けて逃げって行った。


俺の手から剣が落ちる。

両膝と両膝を地面につく。


流れ出す涙を止める力が俺にはなかった。





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