僕たちが日常だと信じていたものが、その日壊れはじめた、みたいな?
ささやき―――――
いのり――――――
えいしょう――――
ねんじろ!!
僕は埋葬されました。
はっ!!
……。
知らない天井……じゃなかった、知っているよ。
白い天井どころか、目の前に白い壁。
その距離、約30cm。
ああ、知ってるよ。
知ってる、知っているよぉ~~。
はぁぁぁぁ~~~。
もしかしなくても、ココは皇國代理天の再生槽?
嫌な目覚め方だな、おぃい。
……。
そうだ、僕は魔狼王との戦いで……。
少し身体を動かす。
右手はある。
左手も治ってるみたい。
脚の小指は見れないけれど、多分、ある気がする。
五体ちょお満足。
みさくら語って何気に素晴らしい。
こんな感じ。
僕のぉおお右腕は、飛ばしゃれてぐしゃぐしゃににゃって、左脚はぺしゃんこらったはずにゃのぉおおに、治っていぃるのぉおお。
訳:)
僕の右腕は飛ばれてグシャグシャになって、左脚はぺしゃんこになったはずなのに治っている。
世の中には、色々な言語がある。
何十種類とあるプログラミング用の言語は、割りと身近に溢れている物だ。
もちろん、それ以外にもエスペラントやニカラグア手話みたいな本格的な物もあれば、アルカ、グロンギ、ゼビ語みたいな何らかの余興に作られた架空言語もある。
武居と前に話したんだけど、真偽は別としてオカルト系の言語だと、阿比留文字や神代文字、ロンゴロンゴ、ヴォイニッチ文字、古代シュメール語なんてのもあるらしい。
で、このみさくら語なんだけども、オンドゥル、ブロントさん語録と言ったネットが発祥地。
要するに、ネット界隈でのネタなわけだけど、股間直撃な、淫靡さに溢れている名言語だ。
「あてんしょんぷりーず」
「?」
伊織の声がした。
「うん?どうしたの?」ぽこっ……
あ、声が出る。
「伊織、ここは皇國代理天かい?」ぽこっ……
返事は無かった。
あぅ。
寂しいな。
「伊織~~。
愛しているから返事くださ~~い」
「心配かけたのはゴメンよ~~」ぽこっ……
動くたびに気泡みたいなのが出るし、嫌だけど確信してしまった。
間違いない。
夢でも何でもなく、やっぱり僕がいる場所は皇國代理天の再生槽の中だ。
「伊織~~」
寂しさをアッピル。
「まいてーすまいてーす。
本日は晴天なり本日は晴天なり」
返事キター!
「聞こえてるよ~~、伊織。
だけどアテンションプリーズして、マイクテストっておかしいよ」
「ふぅ、残念だが患者2号、伊織は死んだ」
「え!?」ぽこっ……
「あの戦いの中、戦って戦って戦いぬいた。しかし効率が悪かった。
彼女は最後、ミュータントどもの餌食となってしまったのだ……」
「お前は“嘘です”と言う!」ぽこぽこ……
「嘘です―――ハッ!?」
あ、驚いてる、驚いてる。
先読みして“嘘です”と喋ったからだろうけど。
マイクの向こうの人物は、伊織じゃなくて、三度の飯より嘘が好きな109の方だった。
109……確か第7種乙型特殊工作兵っていうシリーズだったっけ?
多分、伊織と同じ遺伝子を持つクローン体だ。
普段の喋り方とか、声質が似ていて判別がつかないんだけど、聞いているとだんだん違和感を覚える様になる。
なんというか、やっぱりどこか違うんだ。
さすがに声を聞いて、すぐに判別できるほどの相違点は発見できてないけど。
「えっと、嘘吐きの109さんですね?」
「違う」
「「嘘です」」
「―――!!」
あ、ちょっと面白いかも。
「腕を上げたな患者2号。
もうお前に教える事は何も無い……」
「そんな!師匠っ!」ぽこぽこ……
「お前は免許皆伝。
今日からは嘘吐きではなく、詐欺師を名乗るが良い」
「あ、ありがとうございますっ!師匠っ!」ぽこぽこ……
「警備員さ~~ん。
ここに詐欺師がいま~す」
「しーしょぉーっ!」ぽこっ
「お後がよろしい用で」
ギャグでもなく、コントでも無いよ。
「患者2号はノリが良くなった。
人見知りは治った?」
「いえ、元々、人見知りはしませんよ?」ぽこっ……
「……最初の頃は、ドモリがあったはずだけど?」
「いつから見てたんですか?」ぽこっ……
「106の地球におけるデータで」
「うわ~~。
……いつから監視してるの?」ぽこっ……
「ああ、監視ではない。
こんな人間が居たという、106の紹介で」
「はぁ……」ぽこっ……
「嘘です」
「やっぱり……」ぽこっ……
「む」
その後、拗ねたのか109は暫く返事をくれなかった。
仕方ない。
話を変えて、僕は先程から聞きたかった事を聞く。
「質問なんだけど、僕はどれぐらい寝てたの?」ぽこぽこ……
「聞きたい?」
「うん」ぽこっ……
「きっとショックを受ける」
「大丈夫、大丈夫」ぽこぽこ……
「そうか、判った」
「うん」ぽこっ……
「だが、その前に言っておく事がある」
「?」
「患者2号、バラバラに破壊された君の身体を蘇生する為に、5ヵ年計画のプロジェクトが発足された」
「は?」ぼごっ。
なんだって?
「計画は順調に進み、君と私の子供も今では4歳だ。
是非あってやって欲しい」
「ちょっとまてっ!!」ぽこっ
「もちろん嘘です。
ふ……ふふふ。
その反応が欲しかった」ぐっ
「……え?
あー、うん、そうだと思っt」
「子供はホント」
「なお悪いわッ!!」
「ふふっ、怒らないで、パ・パ?」
「声を変えるなぁァァっ!」ぽこぽこっ
「認知しない気……?」
「そもそも関係を持ってないっ!」
「仕方ない、この話はまた今度」
「おいっ!」ぽごっ
「患者2号、一旦、再生槽から液体を排出する」
「ちょ、待って」ぽこっ……
「……地獄の苦しみを味わうが良い」
え?
あ~、そうだ、そうだった。
嫌だなぁ
ごうぅぅんと音が響き、再生槽全体が斜めになり、液体の排出作業に入る。
僕の口元には、鼻と口を覆うように、チューブ付きのガスマスクがあてられ、固定される。
しゅごごごごぉぉぉぉぉっ
音がするとマスクは、僕の肺や胃の中に残っている液体の吸引を開始する。
うう、気持ち悪い。
なれないなぁ。
肺から、鼻からデロデロ~と出るこの感触っ。
思わず咳き込む。
おや?
右目に違和感を感じる。
何だろう?
っと、そんな事よりも、げほっげほっっ、うべぇ。
はぁぁぁぁぁっっ。きっつ~~
再生槽のある部屋を抜けて、シャワールームへ。
全身にシャワーを浴びる。
五体満足な僕の体に。
右腕を見る。
引きちぎられた筈の右腕、僕の右腕だ。
ヴラドの刺青の痕もうっすらとだが浮かんでいる。
右足の指を見る。
切断されたので、傷口を溶かして血止めしたはずの指だ。
新しい、少なくとも今まで僕と共に成長してきた指ではない。
なんというか綺麗だ、臭いもしないだろうな、きっと。くんかくんか。
右足の膝の裏や太ももの矢傷を、見づらいけどチェック。
傷は塞がっている。傷跡は残っているので赤スライムが治療してくれた状態のままだろう。
左脚があるのに驚愕する。
複雑骨折どころか、ペシャンコになった僕の左脚。
すっかり元通り、今まで通りの醜い僕の脚だ。毛深くて、死んだ様に皮膚が黄色で、ケロイドのある……うぅ。
左腕と左肩を触診、及び動かして見る。
骨折していた左腕下腕部と、左肩の矢傷だが、どちらも違和感は覚えない。
骨折していたはずの腕は、異常なし。
完全治癒だろう。
肩には赤スライム特有の治療跡が残っているがこちらも問題なし。
咽喉に手を当てて喋ってみる。
「あーあー。あーえーいーおーうー。らめぇっ」
今までは発声ができなかったんだけど、回復したみたいだ。咽喉仏も振動している。
多分、治療されたとみて良いだろう。
右目。
違和感の理由が判明した。
治っていないからだ。
潰れて失明した結果として、義眼になっている。
しかも物が見える、視覚能力のある義眼だ。
かなり高度な技術で作成されているが、調整が上手くいってない為に、物を見ていると疲れてしまう。
僕は左目を閉じる。
ああ、やっぱり……
原因は、右目が正常すぎた。
片目になると判るが、右目は視力1,2ぐらいになっていて、裸眼の左目と合さると、ピントがボケてしまう。
右目だけだと至って正常。
眼鏡が要らない!!
素晴らしい!!
ブラーボォ!!
残るは全身。
ブランカの雪球と、魔狼王ロボの噛みつきで、何ヶ所か骨折したり、貫通している場所があるはずだけど……
右肩、脇腹、腰、背骨などを見たり触ったりしていると、なんともなっていない。
というか、怪我の痕そのものがない。
相変わらずの身体だ。
死んだ様に土気色の肌、毛深くて類人猿のよう、ケロイド状の醜い傷跡……
はぁ。
親から貰った身体だ、文句なんてあるはずが無い。
でも、ヴラドの言葉があっても、やはりコンプレックスというのは中々治らない。
はぁぁ。
でも。
……良く生きてたもんだ。
シャワーを浴びて、身体を乾燥させると、ロッカーにあった着替えを着る。
僕の家から持ってきたものらしく、下着に長ズボン、薄手のシャツ……春物だ。
時計はない、携帯も無い。
時間経過が判る物は、何もなし。
そんなに時間経過していないのかも。
1年たってた……とか、無いだろうね?
――――!!
あ。
思わず、手が途中で止まる。
今までとは決定的に違った事があった。
たった1つだけ。
それでも信じられない相違点。
春物の長ズボン。
明らかにコレは、僕が普段から履いていた物だ。
間違いない。
いや、だけど……
これは……。
ダブダブ。
指が2本、余裕で入る。
体重計はっ?
見回すが見当たらない。
体重が減ったのは、嬉しいことだけども……
純粋に喜ぶわけにもいかない。
脂肪が減少した。
→ それだけの時間を再生槽で過ごした。
筋肉が減少した。
→ 同上の時間経過と、これからの体力回復。
血液が減少した。
→ 血圧低下による動脈硬化など考えられる。
ふむ。
まぁ、考えても判らんから保留。
体重が減った。
その事実だけで、ぬか喜びをしておこう。
「聞こえるか、患者2号。
そちらに迎えをやった」
迎え?
あ、もしかして。
「お前の良く知っている人物だ。
着替えたら外に出るが良い」
僕は急いで着替えを終える。
雲雀に会いたい。
伊織と話したい。
ヴラドに触れたい。
よっし、元気が出てきた。
僕はベルトを締めると、外に出る。
プシュッ
音をたてて、スライドするドア。
「みんな、待たせてゴメンっ」
「おはろー」
そこには、片手を挙げて、見知らぬ少女がいた。
……他には誰もいない。
伊織に似た少女だ。
黒っぽい色のレディーススーツの上から白衣を着て、髪をツーサイドアップにしている。
……。
「誰だ、お前?」
「そんな……
私の事忘れちゃったの!?」
「最初から存じません」
「このお腹には、あなたの子がいるのよ!」
「身に覚えがありません」
「酷いっっ!
……私との事は遊びだったの!?」
「はい、そうです」
「ブブー。
失格です」
「何が?」いらっ
「最初“あなたの事を知らない”って言っているなら、その嘘を突き通すべき。
途中から知り合いになっている」
「それが……?」怒
「地球に帰る前に、ポーカーフェイスを覚えるべき」
むか。
「……ついて来て」
「判った」
「ちなみにお腹の子供は嘘です」
「当然でしょっ!」
「膨らんでないから?」
「その通りでしょ」
「外で成長しています」
「まだ引きずるの?
その嘘……」
「……」
「そもそも、そんな関係じゃないよね!?」
「……106(いちまるろく)なら良いの?」
106……それは伊織の本名だ。
僕の目の前にいる少女、やたらと嘘吐きな彼女、109(いちまるきゅう)と同じ遺伝子を持つクローン体の1人。
だけど、やっぱり違うんだ。
僕は109は、正直、苦手と言うか、まだ知らない事が多い。
「伊織だったら、喜んで踊りだしているよ」
「そうか、どうあっても認知はされないのか。
可哀相な子……」
お腹をさすりさすりする109。
「まだ続ける気?」はぁ
「未来予想図」
「やりません、しません」
「安心して?
この子は立派な企業ニンジャとして育てるから」
「はぁ?」
「お前は遺伝子提供者に捨てられた、ひもじいのは遺伝子提供者の所為、苦しいのは遺伝子提供者の所為、辛いのは遺伝子提供者の所為、醜いのは以下同文。
そう言って育児するから安心して?」
「ソレで安心する親って、おかしいよ!」
「大丈夫」
「??」
「成人した時には会いに行かせる、完全武装で」
「殺されちゃうよ!」
「成人の儀」
「まだ引っ張るんだ……」
「地球の風習に従う。
アルコールによる思考能力の低下と、欲望のままの攻撃本能で、暴れまわり、カッコイイ?」
「成人式の馬鹿どもみたいに育てないで!!」
僕と109は、再生槽の部屋から出ると、喧々囂々と歩き出す。
なかなかに喧しい2人だ。
通路には誰もいないから、余計に五月蝿く感じる。
ん?
違和感。
方向が違う。
僕達が目指す方向には、階段があった。
下りの。
「階段?」
「そう。滅多に使う者はいない」
エレベーターではなく、階段を使う?
前回と違って地下へと向かうのか?
「実は患者2号は、ココには居ない事になっている」
「え?」
「治療の魔法とやらを使ったらしいが、数箇所、治療が困難な場所があった。
そこで、ここの設備を無許可で使用したいと打診があった」
「魔法を使って?
ああ、ヴラドか。
でも、無許可で使用ってのは伊織だよね?
それは、物凄く危ない橋を渡っている気がするんだけど……」
「……」じっ
企業の設備を、関係ない他人が無許可で使用すれば、発覚した場合、それなりの金額が取られる。
場合によっては、この世界の法に照らし合わせる事にもなるだろう。
僕1人の問題じゃない。
伊織や109にも、その被害が及ぶ可能性が……
「実は使用許可を取っていた、みたいな事にするとか……」
「……」
「書類上の変更は可能なのかな……だとしたら別名義で……」
「……質問」
「え?なに?」
「宗教の本尊にするなら、金貨とクレジットカード、どっちが良いか?」
「え?御本尊に?
そりゃ金貨でしょ、ありがたみがあるんだし」
「……ちなみに嘘です」
「え?」
「更に嘘です」
「嘘が嘘ですって事かな?」
「……ふむ」
109は僕の回りを回り始める。
下から見上げるように、臭いをかいだり、腰にさわったりって!おい!
なに?
この109って子は、何故か強面ブサメンな僕に気軽に接してくる。
あれか?僕を人体実験用のモルモットと見ているからだろうか?
友達というよりも観察する目だよなぁ、これは。
「その右腕の幾何学模様は、患者1号の魔法?」
右腕の幾何学模様。
今はマジックペンで書いた腺みたいになっているが……移送魔法【ハンマーコック】用に、永続化され圧縮封印[メモリー]された5種類の魔法の構造式だ。
現在は非活性化状態なのだが、これが活性化すると、とても鮮やかな青色に輝きだす優れ物だ。
「ああ、うん。
普段はただの線みたいになっているけど、魔法を発動させると刺青みたいな形になるんだ」
「ふぅん、魔法ね……」にま
「??」
なに?
「なんでもない。
面白くなってきた」
くすくす
「??」
なんなんだよぅ、もう。
1階下に降りて、連れてこられたのは、行き止り。
両隣には、あまり使われて無さそうな部屋の扉がある。
「?」
「間の抜けた顔」くすくす
「普通の顔ですよっ!」
「皇國代理天の人間はそんな顔はしない。
怒る事もあまり無い」
「あー、はいはい、そうですかぁ」
「ふふ、患者2号を怒らすのは簡単だな?」
もしかして僕、喧嘩売られているのかな?
ここみたいな行き止りなら、喧嘩し易いだろうとか……。
そんな事を思っていると、109は手を壁にかざす。
ピッ
プシュッ
いきなり何もなかった壁がスライドして、その奥に2m四方の小部屋が現れる。
何も無い部屋だが、それもそのはず。それはエレベーターのかご、乗降用の部屋だった。
「乗る」
「え?」
「急ぐ」
「あ、うん」
僕は釈然としないながらも乗る事にする。
「ねぇ、今の壁って……」
「男は質問するフリをして、私に近づくと有無を言わさず押し倒した」
「え?」
「そのまま抵抗しようとする女を組み伏せると、女のズボンを下着ごと途中までズリ降ろす。
なおいっそう暴れだす女。
しかし、エレベーター内に乾いた音が響く。
赤くなった頬を押さえる女からは、既に抵抗の意思は無くなっていた」
「えと……」
「男は用件だけを済ます。
前戯も愛撫も無い、ただ荒々しいだけの、効率的な繁殖行為」
「はぁ……?」
「チーーンっ」
「?」
「1分後、エレベーターの扉が開く。
男は満足した表情でエレベーターを降りていく」
「……」
「後に残された女は、放心しながらも、男の背中を見て呟いた」
「?」
「ソーロー」
「……」
「……」
「……」
「どう?」こてん
「どう、とは?」はぁぁぁ
首をかしげて聞いてくる109。
「たった?」
「たちませんっ!
ていうか、何でいきなり、そんなレイプまがいの話になるんですか!!」
「あなたはこうして作られたと、2人の愛の結晶に話すため」
「それ違うよね!絶対に愛の結晶じゃないよ、かわいそすぎるよ、その子供!
っていうか、まだそれ引きずってるの!?」
高速エレベーターの急制動によるGがかかる。
チ―ン
扉がスライドする。
「ついた」
「あ、うん」
「急いで出る」
僕はエレベーターの外に出る。
「ソーロー」
「え?」
エレベーターの中から、109の声が聞こえた。
「なんで……?」
「患者2号に、私は強姦されてしまった」
「いやいやいや、してないって」
109はエレベーターから出ると、何も無い通路の天井ナナメ上の方に向かって、親指を上に立ててガッツポーズみたいな事をしている。
監視カメラか何かだろうか?
スタスタと109は歩いていく。
「あ、ちょっと」
まるで監視カメラ外に出るのを見計らって彼女は言った。
「嘘です」
「あれだよね?
今、まるで証拠映像かの様に振舞ってなかった?」
「そんな事は無い」
「嘘だっ!」
「嘘です」
今、僕達が歩いている通路。
その通路は、僕の知っている皇國代理天の通路とは違っていた。
一言で言うと汚い。
今までの延々と続く白い壁と違って、全体的に灰色と黒で構成されている。
配管が剥きだしの天井には、一部に照明がつけられている。
それによって影の濃淡が生まれ、塵や埃といった物が目に付くようになった。
「こっち、強姦魔」
「名誉毀損、言われの無い罵詈雑言、冤罪だぁ」
「強姦魔は嫌か?」むむむ
「当然でしょうっ!」
「じゃあ痴漢」
「してないよっ!」
「地球の列車の中では、良くある話。
ごく一般的な光景、お金も請求できる」
「それ日本の列車限定だよ……」
通路をまっすぐ進むと、その奥は行き止りになっていた。
倉庫もしくは廃材置き場みたいな広い空間となっている。
大きい物だと壊れた工業用ロボットっぽいものやリフトカーに始まり、様々な作業車、デスク、金属製のパイプや丸められたケーブルがある。
奥の方には、幾つもスチール製の棚が並び、ドリルや電動ノコギリといった作業用の道具類や、金属製の小道具入れ、ダンボール箱が所狭しと置いてある。
109は無造作に置いてある(捨ててあるの方がしっくりする)廃材をすり抜け更に奥へ。
そして、何も無い壁の前に立つ。
いや、少しばかり周りの壁と比べると綺麗な壁だ。
ゴミの様な廃材(?)類は、横にどけられていて、その壁までは歩きやすい通路となっている。
ゴンゴンゴンゴンッ
やおら壁を蹴りつける109。
「おーい、ジャンキーども。
お前達、糞虫に栄養素を持ってきてやったぞー」ゴンゴンっ
プシュッ
壁がスライドし、奥へと続く通路が現れるが、中は真っ暗だ。
部屋の中からは、ぬるっとした暖かい空気が流れてくる。
それと共に異臭、すえた臭いだ。
「ん……?」
だけど、その中にどこかしら懐かしい匂いが混じっている様な気がする。
胸が期待に高鳴る。
くんかくんか。
渾然一体となっていて、判りづらいけど……。
ヴラドの、伊織の、雲雀の匂いがする。
同時に暗闇に眼が慣れてきた。
どうやら住居のようだ。
地球の一般的な日本家屋、いやアパ-トに近い。
多分、3LDKぐらいの。
目の前は玄関となっている。
そこから先の床はカーペットがしかれている。
玄関には3人分の靴がある。
僕がヴラドと買った革製のブーツに、多分、色々と仕込まれていそうな伊織の運動靴、雲雀のローファーだ。
玄関より先は、すぐにT字路だ。
靴を脱ぐのも、もどかしい。
僕はすぐに靴を脱ぎ捨てると、109より先行して中に入る。
右手には部屋への扉が2箇所ある。
左手は通路だ。
電気はついてないが、左手奥へ。
そこにいるような気がするんだ。
奥へと進む。
台所、トイレ、風呂場。
そして居間へ。
「みんなっ!」
がらっ
僕はその光景に息が止まった。
ついたままでザーと砂嵐を発生しているテレビ。
ソファとコタツに電気ストーブ。
コタツの上には鍋やコップ、空き瓶などの食器類が散乱している。
そして脱ぎ散らかされた服と下着。
むっとする異臭。
女の臭い。
その中に、屍体が3人分。
ヴラドはコタツに突っ伏して。
雲雀は下着だけで、ソファに倒れている。
伊織はコタツから出て、裸で横になっている。
微動だにしない。
あ……。
思考停止していたのは、ほんの一瞬だった。
コタツに向かう。
ペロっっ
「―――これはっ!?」
僕はコタツの上にある、コップの中の液体を一口舐めた。
「……読めた!」
僕の灰色の脳細胞は、この部屋で起こった惨劇を正確に把握した。
いや、まぁ明らかに、この密室殺人っぽい事件の犯人は、雲雀なんですけどね。
闇鍋に我慢大会、これに純米大吟醸が加わって、皆ダウンと……。
テレビはつけっぱなしで、ブルーレイのディスクが散乱している。
ワザワザ地球から持ってきたみたいだ。
えーと、どれどれ……古いメジャー物が多いな。
ジョジョの微妙な冒険、武装年金、Cowboy Repop、MAISTERキートン、あーる・おー・でー、魔砲少女りりかれ!なのは、運命/長き夜シリーズ、りある魔法の禁書目録、新造人間エヴァンゲルオン、企業戦士ガソダムシリーズ(除種系)……後は1クール物。
ここら辺は僕向けのネタチョイスか。
話が合うようにしてくれたんだろうけど、ダイナミックプロ(ジーグ、魔神我、ゲッター系+グロイザー)が無い、最低野郎が無い、あ、でもここら辺はスパロボ補完でいいのか?
じゃあ、かいおん!や戦え!超ロボット戦隊トランスパフォーマー、それにダークエンジェルりりかSOSに代表される大地監督作品とか、ブレイブロボットシリーズがないよ。
ん?
おやおや?
これ、幅広くカバーしてるように見えて、ハーレムもの除外してる。
あー、そういう事ね。
我慢大会 + 雲雀のお気に入りアニメフルマラソンか。
こりゃひどい……。
雲雀の本格的な教育だ。
ヴラドと伊織をオタク予備軍にするつもりらしい。
この次は特撮が待っている……いや、その前に婦女子向け(腐含む)があるか。
あれはきつかったなぁ……物によっては、背中が痒くなるんだ。
ソレが終わるとゲーム地獄だ。格ゲーとSTG。
きっと伊織なんかは「非効率的。RPGと恋愛ゲーはシナリオテキストだけ渡して」なんて言いだすんだろうな。
それにしても、うら若い乙女が、こんなあられもない姿になって……。
なんだろうね……皆の、このダレっぷりは……。
据え膳かね?
あ。
「ね、109、僕はどれだけ寝てたの?」
「知りたい?」
「できれば真面目に、嘘でなく」
「嘘は嫌い?」
「嫌いではないけど、好きでもない」
「嘘は相手にバレなければ、全ての人々を効率よく幸せにする」
「それでも」
「判った……」ふぅ
ごくっ
「患者2号が担ぎ込まれたのは、今から142時間前。
現在は地球時間で、5月6日、えーと……ニチヨービ、トモビキ」
「う、…………嘘です」
「マジです」
「そこをなんとか」
「無理。真実はいつも厳しい」
はぁぁぁ。
「僕は約1週間、寝続けたわけだ……最悪の黄金週間でした」
せっかく皆と遊ぼうと思っていたのに……。
「仕方ない。患者2号は、本来ならまだ再生槽に入っているべき」
「え?そうなの?」
「血液の絶対量が足りていない。
暫くは貧血が起こりやすいはず」
「え?でも輸血……」
「患者2号に適合する血液はココには無い。
豚の血液を狼に入れる事はできないのだから」
「?」
「今は眼球も再生中。
だが、しばらくは義眼で我慢して欲しい。
近視+乱視の状態にするのが難しい。
調整に時間がいる」
「え?治るの?」
「ん」こく
「私は、それよりも患者2号の体内で、起こった変化を調べたい。
先程まで気づかなかった」
「え?それってなに……?」
「気づいてないなら良い」
「えー、教えてよぅ。
あー、じゃあ、医者の説明責任とかは?」
「モルモット風情には無い」
「げ」
「だが、子供を認知するならば考えない事も無い。
生まれる子供は人間の予定だから。ね?パ・パ」
「ぐ……」
「誰かが、何処かで、フラグを立てている……」むく
ゾンビの様に雲雀が起きた。
下着という足枷を外されたおっぱいが、プルンプルンと元気良く3次元機動を描く。
「Oh……デカメロン!」
わしづかんで、こねくりまわして、つまんで、たたいて、ひっぱって、のばして、はさんで、しごいt―――ハッ!!
夜の闇よりも暗い、闇の底で、赤い双眸がこっちを見ている。
突っ伏したコタツから恨めしそうに、こっちを見ている。
へらっと笑った。
ひいぃっ、いつものヴラドじゃないっ!
あれか!?フルマラソンが原因か!?
逃げようとした僕だが、それは許されなかった。
伊織が弾丸よりも早く、僕をホールドした。
ぎゅうぅぅぅっと、顔面を胸に押さえつけられる。
雲雀と違ってスレンダーな胸だが、なかなかどうして、つんと上を向いた生意気さ加減が、こいつめ!こいつめ!
思わず胸を掴んでしまった。
うわわ、やわらかい……
ん?
震えてる?
伊織は、僕の頭を抱いてくる。更にきつく。
え、え~と?
「……った」
「え?」
「良かった……!」
僕は思わず伊織を見上げる。
「―――う」
思わず凍りついた。
伊織の双眸からは、涙が溢れ出ていた。
「時雨、生きてた……!」ぐしゅ
えちぃ気分が霧散していく。
「あ……う……」
なんか自分が恥ずかしい。
こんなにも自分の事を思ってくれているのに……おぱ-いにしか目がいってなかったなんて……。
えっろい気分が抜けて、少し落ち着いた。
伊織の背中に手をやって、あやす様に撫でる。
「ただいま伊織。心配かけたね」
「――っ」ぶんぶんっ
周りを見ると、ヴラドがこっちを見てる。
「ただいまヴラド」
「ああ、久しぶりじゃ、お主様」
雲雀は今、僕に気がついたみたいで、ワナワナしてる。
「ただいま雲雀」
「う、うわぁぁぁんシグレェェェッ!」
走り寄ると、伊織ごと僕を抱きしめる。
うわわ、デカメロンがっ!
せっかく無我の境地に辿り着いたのに、再び僕を俗世に落とそうというのかっ!?
ああっ、涅槃、ニルヴァーナがっ!悟りの極地が!煩悩退散っ!
うわぁダメだ。
圧倒的暴力を前にして人は屈するしか無いのかっ!?
いや、その前に息がっ
「ふがっ……」
落ち着いた頃を見計らって、伊織と雲雀の2人には服を着てもらい、我慢大会の余熱の残った室内を換気する。
そして僕は土下座。
「心配かけて申し訳ありませんでした!」
頭を床上1cmの所まで一気に下げる。
「ん」
「今回は仕方なかろう……」
「まぁ、頭を上げて」
「ごめんなさいっ!」
「ん」
「城の警備を増やさんかった、妾にも責任があるしのぅ……」
「まぁ、頭を上げて」
「感動の再会中すまないが……」
横合いから声がした。109だ。
「どしたの~?桃ちゃん」
桃ちゃん?
思わず土下座を崩して、109と雲雀を見る。
どうやら109の渾名が“桃ちゃん”らしいけど……
「うん?あー、それ?
109 → もも・こ → 桃ちゃんよ」
「へぇ」
「106、取り合えず、患者2号のデータを渡しておく」
「ん、判った」
109は人差し指で伊織を指差し、空中をタップする。
伊織は109に「ん」と言っただけで、まるで双子が見詰め合っている様だが、今、2人の間には色々なデータが飛び交っているんだろう。
「偽装は2、3の問題を残して完了済み」
それから……と前置きして109は、コタツに入る。
それにならって僕、伊織、雲雀、ヴラドもコタツに入る。
一辺だけ2人が座る事になるわけだが、僕の膝の上に来ようとしたヴラドは、早々に109と同じ僕の対面に追いやられた。
「患者2号、右目の義眼について言い忘れていた事がある」
「?」
「眼鏡に取り付けられていた、映像記録用機器についてだ。
眼鏡を直す事ができなかったので、義眼内に移した」
「え?」
「映像記録用機器?ああ、監視カメラね!」と雲雀
「そういえば、そんなのもあったのぅ……」
「109、本人の確認もとらずに行なったのは、条項違反では?
映像記録用機器を眼鏡に仕込むと言うのは、契約書に明記されている」
「そこが問題」
ん?
「問題って?」
僕は聞き返す。
あの契約書に不備はなかった気がするんだけど。
「故障した場合の罰金はあるが、故障を直せなかった場合の対処については、明記されていない」
「あ、そーいえば……」
「そこで簡易だが、契約書を作っておいた。
事後承諾になるがサインをして欲しい」
「109、それを見せて欲しい」
「ん」ピッ
伊織が、その契約書を受け取ったみたいだ。
ちなみにAR[拡張現実]用のディスプレイ無しでは、僕やヴラド、雲雀には今のやり取りが全然判らない。
外から見ていると、2人が空中をタップしているとだけ認識できる。
「いくつか、おかしい点がある」
契約書を見たらしい伊織が、睨むように109を見る。
「判っている。それは偽造書類。
現在、患者2号の聴覚、及び視覚に仕掛けられた記録用の機器は、稼働を止めている」
「?」
「ふむ、ココでの事は記録されない?」
「されない」
「ちょお~~っと、良く判んないんだけどぉ……?」
「雲雀は判らなくても大丈夫」
「そっかー……って、おいっ!!」
「患者2号が、皇國代理天に来た理由は眼鏡が壊れた為とする。
再生槽の利用は、咽喉の治療と義眼の植え付けの為の利用。口裏を合わせる事」
「ん、判った」
「あー、もしかして無断使用じゃない理由を捏造しているの?」
「そう。これで経費が通れば勝ち。
患者2号は、金曜日からずっと再生槽を利用していた事にする。
記録用機器が稼働再開するのは明日0:00分から」
「そういえば109。
再生中の僕の右目って、ワザワザ近視+乱視にするの?」
「そうだ。問題でも?」
「あ、いえ、お構いなくって言うか、ワザワザそこまでしないで良いよ?」
「気にしない。やりたいから、やっている」
「あ、趣味でしたか……」
「嘘です」
「質問だが……」
伊織が109に話しかける。
「現状で、時雨は血が足りないと言う事だが、輸血は?」
「できる人が居ない。適合する血液が無い」
「あれ?じゃあ、飛行機事故の時って、どうしたんだろ?」
僕の素朴な疑問。
「氷雨さん、お祖母様が輸血して下さったのよ」
「え?」
驚いて雲雀を見る。
「あ、あによ?」
「いや、今、雲雀の口から聞きなれない単語が……」
「?」
「~~様とか“下さった”とか……」
「確かにのぅ……お主、上手く雲雀に化けたようじゃが、生来の育ちの良さが出てしまったようじゃな?
雲雀はもっと粗野で蛮族の様な喋り方をするぞ」
「ん」かちゃり
「えーっ!ちょっと待ってよ。
私だって尊敬する人には敬語ぐらい使うわよ!
育ちが良いんだから!!」
「くふふふ、馬脚を露したのぅ、賊が!
雲雀が育ちが良いなどと……」
「えぇ?うわ~~ん、御主人様ぁ、これパワハラだよーっ」
「パワハラは違います。正体を見せろ!
外道照身霊波光線っ!
……汝の正体見たり、前世魔人デカメロン!」
「ばぁ~れぇ~たぁ~かぁ~~」
やっぱり、この手の話だと雲雀しかついてこれないな。
「時々じゃが、お主様と雲雀は珍妙で不可思議なやり取りをするのぅ」
「ん」
「あははは……だから、皆にもそのネタ提供してるじゃない」
「?」
「ん……?」
伊織は、ブルーレイを見る。
「ん、把握」
「うむ?もしや、あの地獄の行軍は……」
「そうよ!ヤシロとオタな話ができるようにっていう、私のメイド心よ!」
「「嘘です」」
僕と109がはもった。いぇ~い。
「……」
「……」
「……」
「な、なんじゃ、今のシンクロは……」
「……」がくがく
「ちょっと……御主人様?」ゆらっ
「え?」
「妙に、桃ちゃんと親しそうじゃない」
「ん」こくこく
「ええっ、それは別に……」
「何があったのかな?聞きたいな?」
「そうじゃな。
妾も情報の共有と言う概念は、重要じゃと思っておる。
ホーレンソーであったかのぅ?」
「ん。桃子、教える」じとっ
伊織に詰め寄られた109。
「え、えと……」てれっ
何で、そこで赤くなるぅぅぅぅ!!
まずいっ
「先程エレベーター内で……その……ちょっと。
でも、皆と同じになったんだと思うと、嬉しくて……
頑張ってね?パパ」
にこりと微笑んで僕を見る。
おかしい。
こんな嘘、すぐにばれる筈なのに。
いつもは冷静な伊織が、涙目ってうぇぇ?
うわぅ、雲雀の赤いオーラが見える。
ヴラド、ヴラドならきっと!って、何で牙はやすの!?
「外道死ね!ロイヤルパンチ!!」
「ふぅぅぅぅ、お主様は気が多すぎる」
「こ、これは義務の発生……う、うぅうぇぇぇぇ~~ん」ザシュッ
「……嘘です」てへぺろ
危うく再生槽に逆戻りする所でした。
「や~~ねぇ。判ってたよ?嘘って事ぐらい」
「嘘だっ」
「もちろん、ふざけただけじゃ、ほ、本気なわけ無いじゃろう?」
「どもってるよね?ヴラド」
「ん……え、遠距離恋愛をする恋人同士が、久しぶりに出会ったので、離れていた時間を埋める為、コミュニケーションを円滑にする為の、レクリエーション的な何かだ」
「饒舌だね、伊織」
「そっ、そそ、そうじゃ伊織、地球の方はどうじゃった?」
「ん、ホーレンソーは大事。
筋力強化に役立つと水兵が宣伝していた」
「そ、それならほら、御主人様に最初から判るように説明しないとっ!」
「あ、うむ。そうじゃなっ!」
「……」
必死に誤魔化そうとしているが、仕方ない。
僕はあの後どうなったかを聞く事にした。
「まず、あの後についてなんだけど……」と雲雀。
「ドラコニーは、ラパ・ヌイで門番をやらせておる。
お主様の従属魔となったフギンとムニンはラパ・ヌイで偵察任務じゃ」
「3人組は?」
「リュネットとグレイブは八代邸におる」
「ジョフクさんは?」
「旅に出た」
「は?」
「いや、その、妾の魔法を見て、何やら落ち込んでのぅ」
「ん、あれは痴呆にしか見えなかった」
「何でも自分を見つめ直す旅だそうじゃ。
いつでも連絡はできるので、用事があれば妾に言えば良い」
「判った」
「さて、こっからは暗いニュースね」
雲雀が、テレビのボリュームを少し上げる。
「ん」
伊織はBD-Rを雲雀に渡す。
雲雀は手元のコントローラーで操作すると、ニュース番組をテレビに映す。
『小さな村を襲った悲劇!』
『熊か野犬か、謎の生物-UMA-か!』
『ついに死者28名、重傷者15名、行方不明者3名に!』
沈痛そうな声をあげ、心底、哀しい~~と演技しながらニュースキャスターが、田舎の村を歩いている。
―――ここが、事件のあった愛知県の……
―――事件が起こったのは真夜中……
―――生存者は……
まとめると田舎の村が、襲われたらしい。
ただ不思議な事に、襲ったのが野犬か猿の群れか、冬眠から目覚めた熊の一家かは不明なのだという。
日にちは黄金週間の月曜日、6日前だ。
虐殺は真夜中に行なわれ、一夜にして村長など村人の半数以上が帰らぬ人となった。
「なんじゃ、こりゃ?」
「カニス・ディルスに、お主様の住む村の住人が、襲われたのじゃ」
「え?」
「死者28名、重傷者15名、行方不明者3名じゃ。
ちなみに行方不明者は、お主様たちの事じゃ」
「え?」
その時、ニュースキャスターが言った。
「現在行方不明中の月見里雲雀(15)さん、八代時雨(15)さん、八代秋霖(87)さんの安否が気づかわれます」
ええーっ!?




