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世界の 法則が 乱れる!  作者: JR
第06裏話
95/169

鞭で打たれるのは もう嫌だよ。クズにはクズの生きる所があるよ

「よぉー、リュネット。

 お前さぁ、この城の事どう思う?」

「どう思うって言われても、デストラップダンジョンよね~~としか」

「まぁ、どいつもこいつも魔法による起動だから、発見は容易いんだろうけどなぁ……」


俺は、リュネットの眼鏡を見る。


こいつは魔力探知の感知魔法【ディティクトマジック】の効果を、永続化して鋳込んであるってぇ魔法物[マジックアイテム]だ。

首都の魔法道具屋で販売している代物だ。

中級の冒険者なら割と入手しやすい手頃な価格だと言われているな。

他にも、兜やお面、モノクル型など色々な形の物が存在していて、痒い所に手が届くのも人気の秘密らしい。


ま、それ相応の実力がなければ、最初の発動ができないけどよ。

一度発動すれば、未来永劫動き続ける働きモンだ。

効果を考えるなら、高い買い物じゃネェ。

弱点としては、自分の認識外に置いておくと、再度発動しなおさないといけないってぇ事ぐらいか。

ま、リュネットの眼鏡は、市販品の構造を真似て、あいつ自身が造った特別製らしいけどよ。


「発見が容易いって……軽く言ってくれるけど、並み以上のダンジョンランナーでも引っ掛かってるわよ?コレ」

「そうなのかよ?眼鏡があってもか?」

「うん、使っている事を前提に、罠[トラップ]が組んである」

「うわ~~。陰険だな、ここのダンジョンマスターは」

「そうよー♪ウチみたいな可愛くて賢くて、凄腕のダンジョンランナーと組めて良かったわね~♪」

「はいはい……そんなに、ひでぇのかよ?」

「酷いって言うか、多分、相性の問題も入ってるわね。

 でも……うん、酷いのは間違いないわね」

「相性?」

「そう、この迷宮[ダンジョン]の罠[トラップ]を造ったのは1人だけ。

 罠[トラップ]の設置方法が、良く言えば独創的、悪く言えばワンパターン」

「ああ、そういう事か……癖がありすぎるんだな?」

「そう。ウチらから見て、今までのセオリーが通じないタイプ。

 反対にセオリーを無視すると……割と一定のパターンで組んである」

「ほうほう」


やっぱり、こいつ頭良いなぁ……。

コイツとコンビを組んでもう2年になるが、罠[トラップ]に関してだけは、こいつの右に出る奴を見た事がねぇ。


「ただ、妙なのよね」

「ん?何がだ?」



「この悪魔城の建築様式ってさ、岩をくりぬいてるじゃない。花崗岩を」

「ん、おお」

「飾りは派手すぎず、自然の素材を流用、使われているのは古代魔法文字[ロンゴロンゴ]なワケよ」

「ふーん」

全然判らん。

頭脳労働はリュネットの役目だ。

俺が考えても仕方ねぇ、答えが出るのを任せる事にする。

それまでは、ただ相槌を打つだけだ。


「これって、既に廃れて使われていない建築様式なのは判るでしょ?」

「ん?おぉ」

判らねぇけどな。


「そうね……少なくみても、今から1500年以上も昔の建築様式なのよ」

「そりゃスゲェ。俺のご先祖様がまだ居なかった頃じゃねぇか」




俺の名前はグレイブ。

血風のグレイブと人は呼ぶ。


種族はイプセプス・ハイ・オーク。

そんじょそこらの野良オークと一緒にしないでくれ。

知性もあれば理非もある、勇気もあって義理人情に篤い男だ。


簡単に言っちまうと、先祖がイプセプスっていう異世界から来たオークなワケだ。

俺達の一族は勇猛果敢を売りとしている。

中には愚直っていう奴らも居るが、姑息よりかは遥かにマシだと思うぜ。



隣に居るのは、相棒のリュネット。

獣人[テリアントローペ]と人間のハーフだ。

俺の腰までしか背が無いが、頼れる奴だ。



俺達は《便利屋イザヴェル》っていうギルドに所属している。

世界で最も名高いギルドじゃねーかな?


歴史は浅いが、今じゃ傭兵、冒険屋、商業などと並ぶギルドの代名詞だ。

何しろ初代ギルドマスターが王族で、当時のギルドの専横ぶりに腹を立てて造った、喧嘩上等のギルドだ。


ま、そのおかげで今の政治制度があるらしいんだが、投票所とかには行った事無いから良く判らん。

そう言やぁ、リュネットは行った事があるのかね?

獣人[テリアントローペ]には選挙権はあるが、ハーフはどうなんだろうな……?

お、選挙の時期だけ、代筆屋をすれば儲かるかも……。


「リュネット、選挙の時期だけ代筆屋をやるってぇのは、どうだ?」

「いきなり話の腰を、おらないでよ。

 ウチの言っている事、聞いてる?」

「ん?……お、おお、もちろんだ。

 リンゴ、リンゴの話だろ」

「っとに、アンタは……」




今、俺達は、悪魔城に来ている。

昔から人づてに名前だけは伝わっていた迷宮[ダンジョン]だ。

曰く、竜をも凌ぐ悪魔が住む。

曰く、数多の魔法の知識を収めた叡智の欠片が眠っている。

曰く、魔獣の王が今は主の居ない玉座を守っている。

曰く、ムー帝国の生き残りが居る。

曰く、巨万の富が埋蔵されている。

曰く……。


昔から色々と噂されていたが、今まで、その場所が判らなかった。

何しろ転々と変わるからだ。

南の極地に始まり、海底、ムー帝国跡、砂漠、マレノストルム、暗黒大陸、ムーの欠片大陸、至る所で悪魔城発見の報告があがっては、そこに探索者達が向かうと何も無い、空振りだったなんて事は、数えたらキリがネェ。

それだけ、前人未到の迷宮[ダンジョン]ってわけだ。


そんな悪魔城だが、今回発見された場所は、アレキサンドリアから見て西だ。

ずっと海を越えて暗黒大陸に入り、ユテの地にあるボンネビル湖の一角で発見されたと、ほんの数日前に俺の知り合いが言ってきた。

信頼できる情報屋だ。

噂レベルでも、その情報屋が扱っている以上は、非常に確実性の高い情報だ。




「ちょっと、聞きなさいって!」

「おう」

「簡単に言うとね、この建築様式はムー帝国時代の物と考えて良いのよ」

「そりゃすげぇな、でもなんで、そんなのが暗黒大陸にあるんだ?」

「やっぱり、何らかの移動方法を使っていると考えるのが、妥当なんだけど……」

「空間湾曲か、転移か?

 どちらにしろ魔力をドカ食いするぜ?

 感知魔法ですぐばれるだろ?」

「迷宮丸ごと転移なんて、ムー帝国時代にそこまで発達した魔法は無かったわよ」

「ははっ、そりゃそうだ。

 ルーンと違って、古代魔法文字[ロンゴロンゴ]なんて使ってたら日が暮れちまう」

「まぁね。そういえばルーンも初代ギルドマスターの発案らしいよ」

「ほーぅ」

「で、話を戻すけど、ムー帝国時代には暗黒大陸って、入植されてなかったはずなのよ。

 あったとしても、いかがわしい魔法研究をするような奴らのアジトぐらいね」

「お、もしかして……」

「うん、もしかしたら、そういった施設の1つなのかもしれないって事」



さて、暗黒大陸ってぇのは、荒地や樹海地帯にくわえ、魔獣が多く生息し、一部の未開の少数部族が住む以外は、人類が住みづらい土地として忌避されている。

加えて南には竜大陸がある事から、いつしか、この地は犯罪者の逃げ場所とか流刑地として使用されるようになった。

当然、昔から暗黒大陸を覆うように、大結界が張ってあり、渡航にはそれなりのコネや名声、信頼、もしくは犯罪歴が必要となる。

ま、歩いて行くなら話は別だが、魔法を使って転移はできないって事だ。


ココまで言うと判るだろうが、俺達は本国から来た探索者じゃあない。

今は流刑地で活躍中の部隊[クラン]だ。

竜大陸との貿易拠点であり、暗黒大陸唯一の大結界外への港のあるオルメカ州、州都ティオティワカンに住んでいる。




さて、悪魔城だ。


俺達がココに居るのは、実は依頼じゃねぇ。

知り合いの情報屋からたまたま運良く、悪魔城発見の報告を耳にしたってぇだけだ。

間違っても、俺の知り合いがギルドに情報を売る前にそれを買ったとか、そういったわけじゃあネェ。


一晩、酒をたらふく奢ってやっただけだ。

気分がよくなったアイツは、独り言をつぶやいた。

俺達は、それを耳にした。

それだけの話だ。


それでまぁ、冒険屋ギルドや同業者どもを出し抜いてやろうと思ったわけだ。

一番乗りには、当然、一攫千金の可能性があるからな。

命をかけるに値するってワケだ。






「話を総合すると、要は昔ながらの建物ってわけだな。

 てぇ事は古いから、お宝がザクザクって事だ!」

「う~ん、もしかしたら魔晶貨がたんまりって事もあるかもしれないけども……

 あったらあったで、当時の魔力素を固めた物だから、今の物より純度が高くて質が良いかもね。

 あったらの話だけど……」

「なんだよ。妙に引っ掛かる言い方だな?」

「ちょっとね、気になる事があってね」

「ふむぅ?」


「……なにか判る?」

「おう」

あーん、あたりまえだ。

判るにきまってんだろ。


「どうやって俺達だけで持って帰ろうかって話だろう?

 ま、あの情報屋には、少しぐらい分けてやっても良いと思うぜ?」

「違うって……」

「じゃあ、なんだよ?」




リュネットは俺を迷宮[ダンジョン]の壁に寄せる。


「コレ見てよ」

そこには樹の根っこがある。


「おお、樹の根っこだろ……腹が減ったな」

「はぁ……」

「そう、溜息つくなよ」

「この樹木の根っこ……ただの植物じゃないのは判るでしょ?」

「おお、判るぜ。食えるんだろ」

「違うって。この植物が、まだ誰にも発見されて無い、新種だって事よ」

「ん?てぇっと、食ったらまずいのか?」

「そういう事よ」はぁ

「そりゃ残念」


「見た事も無い樹よ?

 何か強力な力を内包しているのに、感知魔法に引っ掛からないなんて」

「んー?その【ディティクトマジック】にもか?」

「引っ掛からないどころか、むしろ、罠[トラップ]の魔力素を隠蔽してるぐらい。

 一部の捕食型植物が、こんな性質持っているけど……ココまで凄いのは始めてよ」

「じゃ、その眼鏡つけているだけ、無意味なんじゃねぇのかよ?」

「アイデンティティよ」

「何だそりゃ……旨いのか?」

「はぁ……ホントに腹が減ると、そればっかりねぇ」

「おぅ、腹が減ったら石だって食うぜ」

我慢できなくなったので、目の前にある旨そうな樹の根っこを引き抜いて食う事にする。


……。


むむ?


引っこ抜いて……

さわさわ


むむむむむ?



触れねぇ……どうなってやがる?

幻覚か?


オークにゃ食わせれねぇってか?

樹の根っこ如きが!


ガンッ!!

壁を殴る。

「腹が減ったからって、怒らないでよ」

「いや、別に怒って無いぞ?」

「怒ってるじゃない!」

「?」

「じゃあ、何で壁を殴ったのよ」

「おお!根っこがオークには、食われてやらんと言ったからだ」

「はぁ、言って無いでしょうね……きっと」


「そんな事より、さっさと行こうぜ。

 食えない根っこより、食える石ころだ」

俺は 歩き出す。


「適当な所で休憩取らないと死んじまうぜ」

「はいはい」






「ちょっと待って!」

リュネットの制止の声が聞こえたのは、俺が曲がり角を曲がろうとした時だ。

岩をくりぬいて作った通路は直角に右に折れ曲がっている。

壁には、燭台があり、ロウソクの代わりに明かりの創造魔法が実体永続化してかかっている。

足元はおぼつかないが見えないほどではない。


「どうした?」

「ん~。多分、罠がある」

「どういう奴か判るか?」

「ココのパターン通りなら……ちょっと待って」

リュネットは俺を留めると、曲がり角からそっと向こうを窺う。


「俺も顔を出していいか?」

“曲がり角の向こうを覗いて良いか?”と言う意味だが、リュネットは俺に手の平を向ける。

“ちょっと待て”のサインだ。


「確実にある。見てもいいけど、ちょっと待って」

そういうとリュネットは明かりの魔法を発動する。


「いいよ。あまり動かないでね、腰をかがめて見て」

「おう」

光源を俺の後ろにおいて、リュネットからOKの合図が出る。

曲がり角から顔を出す。

その先の通路は、10ヤードほど続いて、再び右に曲がっている。それだけだ。


「別に疑っているわけじゃないが、こんなんでホントに罠[トラップ]があるのか?」

「うん。左右の壁を見てみて」

言われたとおり、左右の壁を見る。


違いは、左の壁には燭台があり、明かりの魔法が灯っているだけだ。

「判らん」


「燭台の間隔が変わっているでしょ?」

「んんー?」

「間隔が今まで10フィートだったのが5フィートになっていて、その分、明かりで周りが見やすくなっているでしょ?」

「おー。おぅ」

そうかもしれんなぁ。


「でも良く見ると、普通の明かりと違って、指向性があるでしょ。

 真横に強く、周りに弱く光っているでしょ?」

「おー。おぅ」

そうかもしれんなぁ。


「影をはっきり出す為の措置ね。

 反対側の壁に罠[トラップ]のトリガーが隠れてるから」

「おぅ」

「トリガーは感知魔法で、明かりが影で消されると発動するタイプ」


「おおぅ?」

もっと、噛んで、砕いて、磨り潰して、説明プリーズ。


「えと……誰かが普通に歩いて行くでしょ?」

「おう」

「そうすると明かりの前に立つと影ができるじゃない」

「お、おう」

「その影を感知して罠[トラップ]が発動するわ。

 多分、部隊[クラン]全滅型の大掛かりなものね」

「そうなのか?」

ヒデェな、そりゃ。


「だって、燭台が全部で6個あって、それぞれに感知魔法によるトリガーって、普通は必要ないでしょ?

 真ん中の燭台だけトリガーにして、罠[トラップ]発動で充分じゃない」

「まぁ、そうだな」

「なのにワザワザ、6個全てを連動したトリガーにしてるのよ。

 だから、最初の燭台は侵入者の数を把握する為の燭台ね。

 それで、もっとも効果的に罠[トラップ]を発動するタイミングを計るんだと思う」

「嫌な罠だな」

「うん、凄く陰険。

 ここのダンジョンマスターは人間不信か、人を見下しているか、どっちかね」


「で、どうする?迂回か正面突破か」

「突破で。匍匐前進して」

「おぅけぃ」


「ちなみに……」

「お、なんだ?」

「他の迷宮[ダンジョン]のセオリー通りで行くと、この先に重量感知型の魔法がかかっているの」

「は?」

「もしも、匍匐前進して行って、セオリー通りだったら……」

「罠[トラップ]起動するじゃねぇか!」

「フフフ、セオリー通りじゃない事を祈っていてね?」

「おい!」

「大丈夫、ここのダンジョンマスターの欠点だから」

「欠点なんてあるのかよ」

「詰めが甘い」





暫く匍匐前進すると、床の感触が変わった。

下に空洞があるのが判る。

どうやら落とし穴みたいだ。


「罠[トラップ]は、落とし穴みたいだな」

先に、影から影に移動する魔法【シャドーハイド】を使って通路をショートカットしたリュネットに言う。


「うん、それに落とし穴が開くと、同時に吊り天井も動くよ」

「うお、確実に落とすわけか」

「多分、浮遊の魔法対策ね」



通路を渡りきった俺は立ち上がる。

「ふぃ~~助かったぜ。さすがは“7つ手”だな」

「あんまり好きじゃない、ソレ」

「まぁな、判るけど、それでもお前の腕を褒めてはいるんだぜ?」

「アンタだって“血風”なんて言われたく無いでしょ?」

「そうだな……悪かった。

 次もよろしく頼むぜ“凄腕”さん」

「まかせてよ“鉄壁”」






“血風”のグレイブ。

それが今、俺につけられている二つ名だ。

似た様なのに狂戦士や殺戮のエーバー、孤高の戦士とか色々あるが、意味合いとしては仲間からも恐れられる実力者だ。

俺の場合は仲間殺しの意味合いも入っている。




事の起こりは4年前。

シン州で起こった農民反乱に端を発する大規模な戦闘行動は、鎮圧される事なく瞬く間にシン州全土に広がった。


ココから先は良くある話だ。

軍団同士の争いで、負けそうになった側についた傭兵が、逃亡ではなく裏切りを敵に打診、上手くいったら報奨金なんてのは。

それを俺達の団長が傭兵団ごとやるってのを偶然、俺は聞いちまった。

当時の俺はフリーランスではなく、傭兵ギルドに属していた。

そこで15人からなる傭兵団[クラン]に登録し、シン州の反乱軍に雇われて参加していたのだが……。


裏切りを画策していた団長ってのは、臨時の戦時任官だ。

丁度、その日の昼の戦闘で、本来の団長が戦死して、俺とソイツ、どっちかが団長として後を継ぐ必要があった。

俺はウマは合わなかったが、戦死した団長には、一目置かれていたようだ。

実際、それなりの活躍が認められて小隊を任せられていたしな。

それで実力や階級、経験から7:3で俺が傭兵団[クラン]を率いる事に決まりかけたが、強硬に反対する奴らがいた。

それが、さっきの臨時団長の一派だ。


で、まぁ、傭兵団[クラン]を2つに割るわけにもいかないので、ソイツに団長の座を譲ったわけだ。


だけど、それが気に障ったのだろう。

臨時団長は生粋のラパ・ヌイ人以外を人間と認めない原理主義者だったのだ。

当然、その裏切りは、彼の趣味が色濃く反映されていた。

裏切りの甘い蜜にありつけるのは、生粋のラパ・ヌイ人だけで、残りの団員達は、捨てられる事を前提として作戦が練られていた。


まぁ、後の話は簡単だ。

裏切る前に、こちらがその作戦を使って起死回生の逆転劇って事にしたかったんだが、政府軍もさる物、元々裏切る様な傭兵団なんか信用していなかった。

当然だな。

裏の裏をかかれて、裏切り者を粛清した時には、傭兵団[クラン]も壊滅していた。

逃げ道もなかったから、敵軍の真ん中を殺しまくって逃げたら、こんな二つ名がついちまったわけだ。

仲間殺し、殺戮のエーバー、“血風”のグレイブってな。



その後、傭兵ギルドに居づらくなった俺はギルド《便利屋イザヴェル》へと乗り換えて、丁度フリーだったリュネットと行動を共にするようになった。

ギルドを乗り換える奴なんて、基本的に碌な奴じゃネェから《便利屋イザヴェル》ぐらいしか受け入れてくれなかったんだけどな。




「で、話は戻るんだけど……」

「おぅ」

「何処まで話したか覚えてる?」

「おぅ、飯を食う場所を探すって話だろ?」

「違うわよ。建築様式よ」


「ああ、すげぇ昔なんだろ?保存食も腐るような」

「そうそれ」

「でも。ま、別に良いんじゃね?

 ここのダンジョンマスターを倒してみれば判る事だろ?」

「そうなんだけど、嫌な予感がするのよ」

「珍しいじゃねぇか。

 ま、リュネットが言うんなら間違いは無ぇな。

 気になるってのは何だ?」

コイツがココまで言う以上は、かなりやばいんだろうな、この迷宮[ダンジョン]は。


「さっき言った通り、建築様式はムー帝国、罠[トラップ]がかなり変則ってのは判ったでしょ?」

「おぅ」

「その罠[トラップ]がね、鋳込みはルーンなんだけど、魔導学も応用してるみたい……ていうかベースが魔導学なのよ」

「魔導学ぅ?それってあれだろ、100年ぐらい前の異世界の……」

「そう、ラプラドルの魔法みたいな物……おかしいでしょ?」

「……」


1000年以上前の迷宮[ダンジョン]に100年前の異世界の文化……。

考えられるとすれば……。


「ダンジョンマスターが交代した可能性は?

 迷宮[ダンジョン]と罠[トラップ]の設計者が、違うんならありえるんじゃねぇのか?」

「そうだよね……最近になって変わったって、考えるのが妥当なんだけど……」

「違うのか?」

「ルーンの描かれた幾つかの素材が、アーラム固有の素材を使ってるのよ、確か、錬金術とか言うので作る素材よ」


「んん~~?アーラム素材っていやぁ、俺の知っているのだと、確か……アムートゥムとか、それとも七彩鋼[アヤス]か?」

「どっちも使っているわよ。鉄に似ているけど、輝きで判るもの。

 多分だけど、これ万物構成物質[マナ]から生成してるんだと思う……」

「アーラムってぇのは、300年ぐらい前だっけか?」

「ラプラドルの前だから、それぐらいかしら?」


「なんだか色々と、ごちゃ混ぜなんだな」

「そうなのよ……」

「ごちゃ混ぜ……」

「?」


「……鍋料理が食いてぇな」

「あと少し我慢して」






その後、休憩を挟んで4時間、俺達は罠[トラップ]を掻い潜りつつ、 迷宮[ダンジョン]を奥底へと向かって行った。


「それにしても……ちっ、どれもこれも即死系ばっかりだな」

俺は、いらいらと壁を蹴る。


「ほら、グレイブ、イライラしない」

「ココまでワンパターンだとなぁ……お宝も無いしよォ」

「そうね……宝を分散配置するつもりが無いとしか思えないわね……

 もしくは私達が気づいていないか……」

「どういう事でぇ?」

「ココのダンジョンマスターは、魔晶貨に価値を見出していないのかもしれないって事」

「ああ、そういう事か……

 判るぜ、俺も白の魔晶貨1枚と麦酒1年分だったら、まよわず麦酒だ」

「そーじゃなくてね……」

「ああ、きゅっと1杯の麦酒を飲みてぇな。

 無尽蔵に麦酒が湧いてくる壷って、お宝でねぇかなぁ」

「はいはい……アーラムの遺失技術品[アーティファクト]でも見つけて頂戴な、注いでも注いでも無くならないそうよ?」

「あるのかよ……」

「魔法で構築する事も出来るけど……」

「魔法味の麦酒は勘弁してくれ。あんなのは酒じゃねぇ」





「あ……グレイブ」

「お?」

リュネットが顎をしゃくって前を指す。

両開きの扉が見える。


「ボス部屋か?」

「さあ?入ってみないと……」

そう言うとリュネットは扉のチェックをする為に、足音を殺し慎重に近づく。


俺は腰の後ろの両刃の戦斧に、切れ味が鋭くなる魔法を掛けておく。

得物のグレイブは、俺に取っちゃリーチ差を活かした防御用の武器だ。

やはり最後に頼りになるのは、両刃の戦斧。

大振りになるが、重い1撃を与える事ができ、鉄の鎧でも紙のごとく破壊する事ができる。



「あれ?」

「どうした?」

「開いてる……」

(待て)

俺はサインを出してリュネットを止める。

俺が扉を開け中に入り、その後にリュネットが続く。




室内は、縦横が50ヤードはあるだろうってぇぐらいの馬鹿でかい正方形だ。

天井までの高さは6ヤード。


部屋の中央には、木の根元があり、そこから至る所に根が伸びていっている。

ちっと驚いた事に、樹は天井を突き抜けているが、穴が空いているようには見えねぇ……きっちりと壁との間の隙間が埋まってやがる。

どうなってんだ、この樹は?

食えねぇし。

食えない樹は木とは認めねぇぞ。



その樹の根元近くには、先客が居た。


シン州の古服を着た爺さんだ。

黄色い肌だし、まちがいなく、あのあたり出身の人間だろうな。

あのあたりの奴は、年齢より若く見える特殊能力を持っているが、さすがに爺さんになっても、その効果があるとは思えねぇ。

80歳は超えてるな、白い髭に髪をしている。


うぉ、やばいな、あの爺さん強えぇぞ。

気配も格好もただの爺さんなのに、鳥肌が立ってる。

久しぶりに見ただけで、怖えぇなんて奴を見たな……。



隣には2匹の狼だ。

珍しいな。

ここら辺に住んでいる化け物じみた狼、魔狼種じゃなくて普通の大きさの狼だ。

といっても、この狼もおかしいけどな。

灰色で毛が長い、寒い地方の狼の特徴を備えてやがる。

亜熱帯の気候な、ここいらには似合わない種類だ。


しかも、だ。

俺が樹の根っこ1本食えネェのに……魔法味の肉と麦酒で毎日我慢しているのに……

この狼どもは、良いもんを食っているみたいで、やたらと毛並みが良い。


旨そうだ。




先客は部屋の中央、樹の根元部分で、根っこを切っていたみたいだ。

だが俺達が入ると、それに気づき、値踏みする様に油断なく、こちらをうかがう視線を向けてきやがる。


風貌や状況からすると、ダンジョンマスターやボスといった人物じゃねぇ。

確実に御同業だ。

俺達より先にココまで来れた奴が居るとはなぁ。正直驚いたぜ。





俺はリュネットと目配せする。

どっちがメインで交渉するかと言う合図だ。


相手は魔法師っぽいし、リュネットが交渉するほうが良いだろうと踏んでいると、顎で俺に行けとサインを出す。

いいのかよ?

まぁ、いいか。

交渉決裂した時には、やっちまうから準備ヨロシク。


それだけ眼で合図すると、爺さんに話しかける。


「俺達より先客がいるなんて、思わなかったぜ」


「ほほっ、お互い様じゃ。

 たった2人でココまで来るとは、よほどの腕じゃの。ふぉふぉふぉっ」

「え?そうかよ。いや、てれるなぁ」


「見たところ、トレジャーハンターか探索者みたいじゃが?」

「おうよ。俺達はトレジャーハンターよ」

「ふむぅ、ならば利害が一致するのぉ。

 じゃから、その物騒な物はしまうが良いぞ、ふぉっふぉっ。

 ココで殺しあっても、ダンジョンマスターが喜ぶだけじゃろうて」


胡散臭い爺さんだが、敵意は無い。

正直に言うと俺達より格上だ……。

俺はリュネットを見る。

「グレイブにまかせる」

「……」

俺の好きにして良いという返事だった。




俺は、いつでも攻撃できる様にしていたグレイブを、左手に持ちかえ戦う気が無いとジェスチャーする。

「利害の一致と言っていたが、どういうこった?

 爺さんもトレジャーハンターじゃねぇのか?」

「確かにそうじゃが、ワシが欲しいのは魔法に関する知識じゃ。富はいらんのぉ」

「知識ねえ……」


「そっちの娘っ子は、気づいておるのではないかの?

 この迷宮[ダンジョン]の異常さに」

「ええ、色々な異世界の魔法知識が融合して、新しい魔法体系を創り上げている……」

「そうじゃ。これを作った者に、会ってみたいとは思わんか?」

「え?う~~ん、どうだろう。

 多分、500歳以上をこえる長命種……なんてありえないから、現実的なのは高位アンデット……

 そんなのには会いたくないなぁ」

「なら交渉は決裂かのぉ。残念じゃ。

 ふぉふぉふぉっ、まぁ、お主達とやりあうつもりは無い。

 ワシは暫く、この樹の根っこを調べるつもりじゃ、先に行くが良いぞ」


「樹の根っこ?

 もしかして、ここなら、この樹が食えるのか?爺さん」

「おお、この部屋の中にある部分には、触れる事ができるようじゃ。

 変わった性質をしておる」


俺は木の根っこに触れる。

確かに実体がある。

だけど、こいつぁ……

「なんか、すげぇ禍々しいな、コレ」


「おぉ、気づいたか。

 ふぉふぉふぉっ、勘が良いのぉ、何処のオークじゃ?」

「お?へへっ、褒められると照れるぜ。

 俺はイプセプス・ハイ・オークよ」

「イプセプス……ラパ・ヌイ史上初の敗北を喫した異世界じゃな。

 あの戦士達は勇猛果敢じゃった……」

「お、なんだ。話せる爺さんじゃんか!」


「ふぉっふぉっ……どれ」ポキッ

爺さんは、木の根っこを2フィートぐらいに折ると、2匹の狼に1本ずつ(ゆわ)える。


わんわん。

2匹の狼は(こうべ)を垂れ、爺さんに謝意を示している。

爺さんの従属魔かよ、賢そうな奴らだな~~。

やっぱ主人が魔法師だと、従属魔も頭がよくなるんかね?

「いや、ワシの従属魔ではないんじゃよ」

「え?もしかして俺、声に出してたか?」

「ふぉっふぉっふぉっ。

 ワシぐらいの歳になると、人の顔色を窺うのに慣れてしまってのぉ、何となく思っている事が判るんじゃよ」

「ははっ、まぁ、そういう事にしとくぜ、爺さん」


「ではの、主殿によろしく頼む。

 御依頼の品、確かに渡した……と」

爺さんが2頭の狼の頭をなでると、ウォンと返事をして2頭は広間より出て行った。


「何だ、誰かの依頼だったのかよ」

「うむ、だがコレで依頼は果たした。

 ココより先は趣味と実益じゃ」

「うへぇ、事実上1人で、ここまでの罠[トラップ]を全部クリアーして来たのかよ」

「いやいや、裏道じゃよ。

 ここのダンジョンマスターが使用する、生活用の通路を通ってきただけじゃ」

「えっ!?爺さん、裏道が判るの!?」

リュネットが横から爺さんに話しかける。

ま、それは仕方ないだろう。





“ダンジョンマスター”と呼ばれる存在。

それは、今現在、その迷宮[ダンジョン]内を統括する人物の事だ。


もちろん、ダンジョンマスターのいない迷宮[ダンジョン]だって存在する。

そういった“死んだ迷宮[ダンジョン]”なら、一度、罠[トラップ]を破壊すれば元には戻らないので、何回も攻略チームでアタックを続ければ、いつかはお宝ザクザクだ。


しかし、これが“活きた迷宮[ダンジョン]”なら、話は別だ。

常にダンジョンマスターによって、罠[トラップ]は作り変えられ、部屋や通路は空間湾曲し、迷宮の掃除屋によって一定の清潔さが保たれる。

ダンジョンマスターの目的は千差万別だ。

犯罪者が自分の身を守る為、財貨を隠す為、非人道的な実験を目的として、探索者のお金が欲しくて、掘るのが趣味、地域活性化、なんとなく、本当に色々な目的がある。


だが、このダンジョンマスターが知性ある存在の場合、1つ困った事がある。

ずっと迷宮[ダンジョン]奥底の玉座で、いつか来る探索者を夢見て座っているだけなんて、普通の神経じゃ無理だ。

極力、定位置に居たいだろうが、やむを得ず迷宮[ダンジョン]内を徘徊する事だってある。

文明的な生物なら衛生の為にトイレに行くだろうし、筋トレだってしたいだろう、勉学に励むかもしれないし、拡張工事だってしたいだろう、もしかしたら痴呆かもしれない、魔法師で無いなら迷宮[ダンジョン]に放つ攻勢モンスターや死体清掃モンスターを買う必要だってあるだろう、中には営業時間を過ぎたら一杯やりたくなるような奴だっているかも知れない、理由は様々、そこに住むダンジョンマスターしだいだ。



そこでダンジョンマスターが、自分の迷宮[ダンジョン]を徘徊すると、困った事が起こる。


罠[トラップ]や自分の放ったモンスター、それにトレジャーハンターや探索者達だ。


知性のあるモンスターなら問題は無いが、死体や汚物清掃用のスライムやスラッグ、ワームなどに知性を求めるのは無駄だ。

従属魔でなければ、たとえダンジョンマスターでも襲い掛かってくる。


罠[トラップ]だってそうだ。

自分だけ作動しない罠[トラップ]なんて、この世に存在しない。

平民、貴族、人外、ワケ隔てることなく平等に作動する。

魔法物[マジックアイテム]による判別という抜け道もあるが、高性能な物は望めない。


それらに対処したとしても、何らかの理由で迷宮[ダンジョン]内を徘徊中、トレジャーハンターや探索者とばったり遭遇して戦闘開始 = ワンダリングボス戦などの悲惨な目にだって会う事もある。



だから当然、ダンジョンマスター自身も、自分の身は自分で守らないといけない。


爺さんが言った“生活用の通路”とは、ダンジョンマスターが普段から使う為に作った通路で、俗に裏道や抜け道とかと呼ばれる通路の事だ。

ココには、当然ながら最小限の罠[トラップ]しか、置かれていない。

そりゃそうだ。

普段から自分が使う通路に、大掛かりな罠[トラップ]をしかける奴なんていない。

そんな事したら、うっかり自分が引っ掛かっちまう場合があるからな。


そんな通路を見つければ、お宝まではかなり楽に進める。

リュネットが爺さんの話に飛びつくのも当然だ。





楽といえば、昔、俺のご先祖様が異世界に攻めて行った時に、迷宮[ダンジョン]を発見したらしい。

そこにはダンジョンマスターが居たが、迷宮[ダンジョン]そのものには、対魔法処理が行われていなかったそうだ。

そこで、迷宮[ダンジョン]情報を全て感知魔法で入手して、お宝部屋に転移、部屋ごとかっぱらって帰って来たという逸話がある。

ダンジョンマスターの性格1つで、その迷宮[ダンジョン]の難易度ってのは変わるっていう話なんだが……。


そういった意味では、この悪魔城のダンジョンマスターは最悪だ。

人間不信だろ、ぜってぇ。


部屋どころか通路も魔法妨害する上に、どうやっているのか判らないが魔力素を少なくして、魔法の力を削いできやがる。

即死系罠[デストラップ]を多用して、そうでなければ治療しづらい怪我を負わせるしよぉ。

出て来るモンスターはリビング系モンスター、ゴーレム、スライムがメインだ。要は硬い、俺の武器が効き難いって嫌な敵だ。


しかも、この固い奴接近型 + 固い奴遠距離型 + 効果的な罠[トラップ]配置の3重で必ずやってくる。

メンドくせぇの何のって……。

接近型に接近したら罠[トラップ]の脚バサミとか、遠距離型に投擲したら幻影魔法で位置が少しずれているとか……倒す前に抱きついて自爆とか……。


話がずれ始めたな。





さて、話は戻るが、この爺さん、俺達とは違って裏道から来たという。


今までの話が真実だとしたら、一時的に部隊[クラン]を組むのは悪い話じゃねぇ。

ていうか得だ。


帰り道が楽、火力増強、利害が一致……なにより俺達とは目的が違う。

即物的な富である俺達と違って知識だ。

場合によっちゃ、この迷宮[ダンジョン]の宝を全部、爺さんに上げて知識から得られる報酬を毎月貰うってのもアリだ。


俺はリュネットの肩をトントンっと軽く叩いて、再度、交渉してくれと目で合図する。


「……」

「……」こく



「ねぇ、爺さん」

「なんじゃ?」

「爺さんは、ここのダンジョンマスターはどんな奴だと思う?」

「ふぉふぉっ、そうじゃのぉ。

 500年以上は存在しておる化け物じゃな」

「将軍[ジェネラル]チャンドラグプタや超人ジョフクみたいな、不老[エイジレス]や長寿[ロンジェビティ]に成功した人……

 もしくは竜族や神人、魔人みたいな?」

「そうじゃ。アンデットの可能性もあるがの。

 行動パターンは判りやすそうじゃがのぉ」

「行動パターン?」

「次に戦争が始まると、必ず相手側についてラパ・ヌイと敵対する、反逆思考的な人物じゃな」

「ああ、そうすれば異世界の知識を確実に入手できるモンね……」


「んー……ッて事はよぉ、もしかしたら今、悪魔城にダンジョンマスターは、居ないんじゃねぇのか?」

「あ、そっか」

「ほぉ?それはどういう事じゃ?」


「えっとね。

 あくまで噂なんだけど、1週間ぐらい前、極寒の海に異世界から侵略者が現れたらしいのよ」

「ほぉ、もう攻め込まれたのか。

 しかし、極寒の海とは、またえらく北じゃのぉ」

「おう、ところがな、今回はそれだけじゃねぇんだ。

 実は同じくらい……5日か6日ぐらい前に、竜大陸の方にも異界門[ゲイト]が出現したってぇ話だ」

「2箇所でか。ふぉふぉっ、それはまた凄いのぉ。

 今回も竜どもは秘密主義を貫くのかのぉ?」


「あくまでも噂でね、まだギルドでも確認出来て無い見たい」

「ふぉふぉっ、もう1週間近いのに、確認できておらん事こそが証明じゃ」

「ハハッ、ちげぇねぇ」

何だ、この爺さん話しやすいな。




「ふむぅ。しかし、ここに居ないのなら、長居は無意味じゃのぉ……」

「ねぇ、爺さん、手を組まない?」

「ん?しかし、お主らは先程ダンジョンマスターに会うのは避けたいと、言っておったではないか……」

「それで取引よ」

「?」

「ウチラは爺さんの裏道に関する情報が欲しい。

 その代わりにダンジョンマスターに会いに行くのを手伝うってのは?

 今なら、居ない可能性もあるから、私達はそっちにかけさせてもらうけどね」

「ま、代理ぐらい居るんだろうけどな」


「ふむぅ。ワシだけ丸損じゃのぉ」

「あははは」



「その条件に1つ追加じゃ」

「お?なんだ?」

「実は少しばかり気になる事があってのぉ。

 手を組むなら、この悪魔城の地図を見せて欲しいのじゃが……

 マッピングぐらいはしておるじゃろ?」

「ん?それぐらいなら構わんだろ?リュネット」

「うん。ウチは別に良いわよ」

「いや、続きがあるのじゃ。

 先に、この悪魔城の部屋をある程度見てまわりたくてのぉ。

 別に全室でなくて良いんじゃが……」


「良く判らんが、それが、何かあるんだな?」

「そうじゃな……いくらか確認したい事があってのぉ。

 ワシの説が立証されれば、歴史の真実とやらを紐解く事ができるのじゃ。

 ふぉふぉふぉっ」


「歴史の真実?」

「なんじゃ、そりゃ?」


「ふむ……で良いのかの?」

「構わないけど、その歴史の真実ってのを教えてくれる?

 ちょっと気になったから」

「寄り道ぐらいなら、俺はいいぜ。

 どっちにしろ、宝が入手できなければ全部見てまわるんだしよ」


「ふぉふぉふぉっ。では一時的に部隊[クラン]結成で良いかの?」


「おう、よろしくな、爺さん」

手を差し出して、はたと気付く。

そー言えばまだ名乗っていなかった。


「あー、俺の名前は、血風のグレイブ」

「ウチは7つ手のリュネットよ」

俺とリュネットは爺さんに二つ名込みで名乗った。


「コレは丁寧に……。

 じゃが、すまんのぉ、ワシは“爺さん”で通してもらって良いか?

 あまり名乗る事ができなくてのぉ……」

ん?

名乗る事ができないって事は、ワケありってことだ。

ココにいるのがまずい様なやんごとなき御方か、犯罪者か、隠密行動中の諜報員……そう、例えば敵の異世界人とか?


ちょっと悩んだが、まぁ、別に良いだろう。

リュネットの方を見ると、首を縦に振る。

俺と同じってワケだ。


「判った、詮索はしねぇよ。

 俺達は“爺さん”と呼べばいいんだな」

「ああ、そうしてくれると嬉しいのぉ。

 ふぉっふぉっふぉっ」

「まぁ、そうよね。

 暗黒大陸で探索者やっているんだから、後ろ暗い事ぐらいあるわよ」

「ふぉふぉっ。耳に痛いのぉ」

「それでだ、すまんが爺さん、俺達の事も二つ名では呼ばないでくれ」

「好きじゃないのよ」


「ふぉっふぉっふぉっ、うむ、承知した。

 じゃが、そんなに気にする必要は無いじゃろ?」

「あ?」「どー言う事よ?」


「この悪魔城から帰還すれば、ワシらには悪魔城の迷宮踏破者[ダンジョンエクスプローラー]の二つ名がつくじゃろ」

「あ、そーいえば……」

「おおっ、そりゃ、ありがてぇ。

 いい加減、血風なんてウンザリしてたんだ」

「……そーよねっ!7つ手ともお別れできる!」


運が向いてきたぜ。

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