信じる奴が正義 夢を見続ける事が俺のファンタジー
……オオォーーーン
狼の遠吠えが聞こえる。
悪魔城の岩をくり貫いて作られた通路でエコーしているが、どんどん近づいてきているみたいだ。
今から来る狼の群れこそが、ヴォータンの言っていた狼だ。
地球侵略の尖兵なのかな?
じゃあ、目の前の3人の冒険者達は……?
いや、今はいい。
目の前の事に集中しよう。
まずは老魔法師ジョフクに勝利する事。
その後に意思疎通だ。
喋れない事は棚に上げる。
もう一刻の猶予も無い。
老魔法師が犬の遠吠えに気を奪われた、この瞬間を見逃すわけには行かないんだ。
決着をつけるべく僕は動き出す。
「展開!!【インヴィジブルハンド】」
圧縮封印[メモリー]された最後の魔法だ。
展開した念動の魔法【インヴィジブルハンド】はただちに、僕の脳内に追加の神経を作り出す。
凄く不思議な感覚だ。
目には見えないが確かに感じる、伸縮曲折自由自在に動く3本目の腕を。
これを動けなくなった右足の代わりにする。
今の僕の右足の状態は最悪だ。
動かしただけで、痛みが走る。
とりあえず僕は【インヴィジブルハンド】を蛇がとぐろを巻く様に、脚に絡みつかせてテーピングの代わりにする。
片足を引きずりながら、移動。
弾種【パーカッションウェイヴ】2発を撃って 弾種変更【アグリームコンプレッション】1発でファニングする。
あ。
最初の2発は止められるが、次のも……止められた。
耐熱か熱に抵抗する魔法を漢服に掛けたのだろう。
見えない光が漢服に当たった瞬間、火花を散らしたのだから。
確かに原理は判らなくても、服が焦げるという結果を見れば、熱対策すれば良いとなるよねぇ。
老人の癖に思考が柔軟だ。
偏見か。
祖父も破天荒な人だし。
「ふぉふぉ、いくぞぅ勇者!!
それっ!発動【サモンストーンウォール】」
い!?
ゴンッ!
うわわ、あぶねっ
僕とジョフクの間に再び岩壁が出現する。
これ、攻撃に使えるよなぁ……。
「今じゃ!グレイブ!!」
え?
「うぉおおおお!!」ブチブチブチッ
げ。
「死ねや、おらぁ!!」
皮膚が千切れるのも構わず、グレイブは瞬間接着をはがし、そのまま自らの得物、2m程の長さのグレイブを僕に向かって投擲する。
う、うわわわっ!!
幸運な事に、しっかりと中心点を持って投げなかった為に、刃の部分が下がってる。
コレなら簡単に避ける事ができる。
一旦、右に動いてグレイブをやりすごうそう。
あーーー!
動く寸前に嫌な感じがした僕は、動きを止める。
ゴォンッ!!
再び石の壁が目の前ギリギリに現れる。
岩塊を瞬間転移する移送魔法【サモンストーンウォール】だ。
まずいっ!
慌てて横に移動しようとして、体勢を崩す。
ひゅっ
ゴキンっ!
「ぐわっ!!」
嫌な音がしてグレイブの柄の部分が、左腕の下腕部、ちょうど肘の下辺りににあたる。
「~~~~!!」
声にならない声をあげる。
くそ、今ので左腕が死んだ。
見事にポッキリと外側に曲がってる。
呆けている暇は無い。
完全に前、右、後ろと3方向を囲まれた。
くっそぉおおっ!
左足だけでジャンプ、たたらを踏みつつもその場を離れる。
急げっ!
痛む右足が悲鳴を上げるが、悠長な事はやってられないっ!
石壁が作り出す巨大な影、一瞬遅れていたら、今度は流石に死んでいた。
グォォオオ、ゴゴゴゴゴゴォ
影の中より竜巻が出現する。
あっぶねぇ……。
影の中から出現した竜巻は、内部で雷と吹雪が吹き荒れる魔法【フリージングトルネード】だ。
ここまでの大物になると魔法【マジックイーター】で吸収できないだろう……。
その場に立ち止まっているのもまずいので、僕は左に向かってステップする。
ガンッ
弾種【パーカッションウェイヴ】を撃つ。
「ふにゃっ!」
丁度、僕の影から出てきた猫耳眼鏡っ娘にヒットする。
流石にワンパターンすぎるしね。
「この野郎!よくもリュネットを殺ったなぁっ!!」
「え!?ウチ死んでぇへんよ?」
両刃の戦斧を取り出し、グレイブは僕めがけて走ってくる。
丁度、位置的には、ジョフクと挟撃されている事になる。
僕は【インヴィジブルハンド】を伸ばして老魔法師ジョフクの杖を掴もうする。
バスッ!
うわっ!はじかれた!
カウンターマジックか魔法防御系の魔法が杖にはかかっているみたいだ。
「むむ?」
怪訝そうな顔をする老魔法師。
【インヴィジブルハンド】は、僕の腕力、握力をはるかに上回る筋力を持つ。
使い方次第では、この難局を切り抜けれる力となるはずだ。
といってもなぁ……。
最初から実力で負けているんだから、駆け引きでその差を埋めるのが常道だけど……。
うーん、喋れないのが痛い。
ん?
んぅ……。
やっぱりなんか引っかかっている……。
何かを忘れているパターンだ、これ。
なんだっけ?
(お主様っ!!もう良いのじゃ、その者らに降るのじゃ!!
命までは取られる事は無い!)
脳裏にヴラドの声が割って入る。
(時雨、心意気は買うが勇敢と無謀は違う!)
(ヤシロは早く逃げなさいって!!)
伊織と雲雀の慌てた声も入ってくる。
というか、伊織の慌てているのって、声だけだとニュアンスが伝わりにくいよね?
(ん?いや、慌てているのか?私は?)
喋り方が最後に少し強い調子になっt
(ああ、ああっ、早く、はよう、手当てをっ!)
むむぅ、なかなかに激しい井戸端会議が始まった。
井戸端会議の最中も僕は動き続けている。
何しろ、挟撃状態だ。
戦術としてもっともまずい状態だ。
あ、いや包囲よりかはましか。
「爺さん!さっきの遠吠え、聞こえたか!?」
グレイブが叫ぶ。
「判っておる、まんまとしてやられたのぉ。
時間稼ぎとは……」
「援軍が来る前にやるぜ。
勇者のくせに生意気だ!」
ふぅ。
おーけぇ、おーけぇ。
説明ありがとう。
コレで状況は、ほぼ全て判りました。
3つ巴ですか。
僕 VS どこぞの冒険者 VS ヴォータンってわけですね。
本来なら、手を組むべきなんだろうけど……。
僕はこっちに向かってくるグレイブを無視して、老魔法師ジョフクにコンストリクターVSPを構える。
「させるかよぉっ!」
豚顔巨漢の戦士グレイブが短剣を投擲してくる。
はっ!
僕は跳躍すると同時に【インヴィジブルハンド】で自分の身体を引っ張り上げる。
先程、ジョフクの杖を掴もうとして失敗したので、その隣の柱にグルグル巻きにしておいたのだ。
ぶぅん!
ゴムが戻るような要領で、そのまま老魔法師の頭上を抜ける。
足を使った移動ができない以上は、ターザンみたいにやるしかない。
問題は着地時に攻撃を受ける可能性だ。
老魔法師の方を見ると、老魔法師はグレイブの投げた短剣を避けようとしていr
うわっ!!
僕は慌てて着地用に使おうとしていた弾種【パーカッションウェイヴ】を撃つ。
ガンッ
空中で短剣と弾丸がぶつかり、衝撃波が発生する。
あ~あ。
フレンドリーファイアを狙ったんだけど、敵の方が1枚上手だった。
僕がジャンプすると、投擲された短剣は軌道を変えて僕を追いかけてきたのだ。
うん?
まさか、これも【マジックミサイル】化したのか!?
(違う!それはソーサリーダガーと言って、簡単な自動追尾機能のついた投擲用短剣じゃ)
説明アリガトっ!
あわわ。
そんな事より、問題は老魔法師だった。
「チェックメイトじゃのぉ」にや
いやらしい笑みを浮かべて、杖を振るう老魔法師。
魔法【マジックミサイル】亜種により十数本の光り輝く矢が宙に浮かぶ。
あ、さっきのソーサリーダガーもある。
「さらばじゃ、勇者よ!!」
ぶぃん!
僕に向かって一斉に放たれる魔法【マジックミサイル】
まだまだぁっ!
柱に巻きつけてある【インヴィジブルハンド】を動かす。
見えない腕を急速に縮める。
着地寸前だった僕の身体は、引っ張りあげられ柱を中心に遠心力によって回転する。
なんとぉーーーっ!!
ぶぅん!!
飛ばないデブはただのデブだぁ!!
(いや、それは当然じゃない)
雲雀の突っ込み。
ありがとうございます。
(なんじゃ、相変わらず死にそうな割に緊張感無いのぅ)
(大丈夫、死ぬ時は一緒。
仇が取れないのは悔しいが、共に腹を切れるのはちょっとうれしい)
(それはそれで、どーなのよ……いおりん)
死んでたまりますかって!
コッキングする。
スピードでは僕より【マジックミサイル】の方が早い。
しかし、普通に弓で射るよりかは遥かに遅い。
その為、回転2回目に入ると僕を追いかけて誘導された矢が、かなり1箇所に固まってきた。
猫耳眼鏡っ娘リュネットが、眼鏡を掛けなおしながら僕を見ている。
「?」
(お主様、あの眼鏡には、魔力素感知の魔法【ディティクトマジック】がかかっておるぞ。
確かアレキサンドリアで販売しておったはずじゃ)
ヴラドから情報が入る。
うわ、萌え要素ではなく実用でしたか。
ひゅっと猫耳眼鏡っ娘は、その場から消え、岩の影から老魔法師の影に瞬間移動して来た。
「む」
「爺さん、気をつけて!!
そいつ【インヴィジブルハンド】系の変な魔法を使っているから!!」
失礼な!
正真正銘の【インヴィジブルハンド】ですよ!
(え?)
「?」
ヴラド?
(あ、ああ~。
そ、そうじゃな、うん……)しれっ
ヴラド?
(……)
(いや、お主様は、その、触手が好きらしいと事前調査で……
ほ、ほら、地球には触手プレイという伝統芸能があると言う話じゃろ?)
伝統芸能は否定しないけど。
だけど、僕は普通の恋愛が好きなんです。
(あははは、そりゃ、無理だって御主人様!)
むむ、諸悪の元凶め。
雲雀でしょ。
ヴラドや伊織に、ある事ない事言ってるのは。
(だけど、いおりんに聞いたよ?
私が御主人様の部屋をケチャップまみれにした後、いおりんに部屋の掃除をお願いしたそうじゃない)
うん?
それが……?
(いおりんが部屋の掃除をしていると、御主人様のベッド下の奥から、とってもいかがわしい漫画が……)
ーーー!!
わ、わーわーわ-わー。
聞こえなーーーいっ!
(部屋を離れから本宅に変えて、まだ1ヶ月ぐらいだよね?
それなのにベッド下にあるって事は、頻繁には使わないけどそこそこ必要なんd)
いやいやいや、置き場がなかったんですよ!!
まじでまじで。
(へぇ~へぇ~へぇ~。
でもベッドの下の23冊中、表のカモフラージュ用8冊を除くと残るは異常性癖関係15冊だったよ?
触手系が5冊、SM系4、母2妹2姉1メイd……)
うわわわ。そ、そそれはプライバシーn
(うむ、続けるのじゃ。
雲雀、情報は共有すべきじゃ)
(えー?どうしよっかなぁ~♪
御主人様も嫌がっておられるようだしぃ~♪)
(ああっとそうじゃ、お主様。
あの魔法の本当の名前は【インヴィジブルテンタクルス】じゃ。
多弾系魔法の実験作として色々と構想しておったのじゃが、お主様から念動の魔法が欲しいという話があった時に、渡りに船だったので圧縮封印[メモリー]したのじゃ。
すまぬが後で使い心地を教えて欲しいのじゃ)
あ、そう……。
いや、まぁ、凄く使い勝手の良い魔法でありがたいんですが……。
(絶対じゃぞ?
必ず伝えて欲しいのじゃ)
???
うん、別に構わないけど……。
(さてお主様との話も終わったことじゃし、雲雀よ。
あちらで茶でも飲みながら、ゆうるりと話でもしようかや?)
(え~、でもぉ……)
(いつも、ずるいっと言っては情報共有の大切さを語っておるではないか、ん?)
(目、目が怖いよ、ヴらえもん)
(好いた殿方の趣味嗜好はきっちりと把握をしておきたくての。
御主、まさか出し抜こうとは考えておらぬかや?
妾は、御主に序列1位を譲っておる。
ならば1位である御主は度量の深さを下の者に示さねばのぅ?)
(あ、あはは……)
(なに、茶は冗談としても、ココではなんじゃ。
秘匿回線を使おうとするかの。
お主様もがーるずとーくの邪魔はせんようにの?)
うぃ、了解。
そんなヒマもございません。
(ちなみに今、町から出た。
すまない、私が足を引っ張っている)
伊織からの心話。
……。
え?
雲雀の間違いじゃなくて?
(こんな事なら、脚部をサイバー化してロケットブースターを内蔵しておくべきだった!!
この脚は何て非効率的なんだっ!)ぐすん
あ、それは止めて下さい、全力で。
珍しく伊織が感情的になってるなぁ。
(次回の帰還時には全身をフル・カラクリ化申請を提出s)
それも止めて。
まぁ、みんなが来るまでは何とか生き残るように頑張っておくから。
僕は弾種【インスタントエードヘイシヴ】を撃って【マジックミサイル】をからめとる。
それでも半分以上は残っている。
柱の周りを3周目に入った。
その間に、グレイブはジョフクと合流したみたいだ。
僕は【インヴィジブルテンタクルス】を柱から離して、玉座の方に自分の身体を放り出す。
正直に言うと全身の痛みで気絶していてもおかしく無い状況なんだけど……。
空中でコッキング。
着地時に触手で地面を叩いて、その反動を使い、遠心力で得たスピードを相殺する。
ぐぅ。
無茶のしわ寄せは、折れた左腕と矢が突き刺さったままの右足と左肩、脇腹へと向かう。
くらりと貧血するが、朦朧とする意識を、全身の痛みが現実へと戻してくれた。
ガンッ
追いかけてくる【マジックミサイル】に向かって再度、瞬間接着をする。
それでも止まらない。
折れた左腕をかざして、【マジックイーター】と即席の盾で、矢をうける。
よっし、次は3人組だ。
ーーー!!
いや、待て!
僕の記憶が危険信号を出す。
まにあうか!?
右手を動かす。
心臓の前にコンストリクターVSPを持ってくる。
ガツン!!
ぎりぎりだった。
短剣がコンストリクターVSPに突き刺さっている。
僕の心臓を狙ったソーサリーダガーは、コンストリクターVSPの心臓部、シリンダーを破壊して止まった。
安堵の溜息を吐く暇は無い!
老魔法師ジョフクが詠っている。
「♪~~~」
どこかで聞いた詠唱[チャント]だ。
……。
そうだ!
フギンとムニンの時だ。
魔法破壊の魔法【ディスペルマジック】を使用するつもりか!!
くそっ、今はまずい!
魔法【インヴィジブルテンタクルス】を消されるわけにはいかない!
「ふぉふぉ、まずは見事じゃ!
トドメをさそうとして、トドメをさせないワシ、恥ずかしい!!」
「爺さん……」
「大丈夫、今ので、あの不思議なマジックアイテムの破壊に成功したみたいだよ!」
「ならば、そろそろ覚悟も良かろう、勇者よ」
僕に語りかけてくるジョフク。
「―――!!」
僕の笑いを見ていたのは、猫耳眼鏡っ娘リュネットだけだったみたいだ。
「気をつけて!そいつまだ何か企んd」
遅い!
こっちはやっと、最後の1手が完了したんだ!!
ジョフクの魔法は発動寸前。
「発動じゃ。魔法【ディスペルマj」
しかし老魔法師は魔法発動を行う事はできなかった。
ヘイ!レッドスライム、カモ~ン。
僕が盾として放り投げてから、赤い絨毯に偽装して、にじりにじりと寄って来ていた赤いスライム。
3人の冒険者達が1箇所にかたまっている、この状況!
僕にとって最高の状態だ!!
赤いスライムは腹ン中がパンパンだぜって感じに、膨れ上がっている。
そう、外から見ると、まるで内部に爆発物を抱えているかの様だ。
僕は赤いスライムを放り出す前に、その内部に痴漢撃退スプレーの缶を仕込んでおいた。
落さない為に密度を高めさせて。
そして【マジックミサイル】は缶を貫き、内部から痴漢撃退スプレーの主成分カプサイシンはダダ漏れ状態。
赤スライムは自身の身体の一部を開く。
ぶしゅああああああぁぁっっ!!
赤い液体が飛び散る、噴霧状になっているのもあれば、噴水の様にドバドバふきだす場合もある。
「ぬおっ!」
「ぎゃああああああっ」
「ナニコレ!?」
あたり一面が真っ赤に染まる。
カプサイシンは唐辛子の主成分だ。
唐辛子のエキスがどれぐらい凄いかは害虫駆除、除草剤に使われている事から判ると思うが、これが人間に及ぼす効果というものは、少量なら血管拡張、血行促進といった良い効果ですむ。
しかし、多量に浴びた場合、痛覚を刺激し激しい灼熱感を与える。
更に酷いと皮膚のただれ、炎症をおこし、その上、水で洗っても取りにくいという優れもの。
世の中には激辛スナック、激辛ソース、激辛調味料といった物が存在する。
ファイナルアンサーとかブレアの午前?時とかデス・ソースシリーズとか。
特に調味料の場合、唐辛子エキスを濃縮した物も多く存在しており、下手に取り扱うと良くて皮膚がかぶれる、最悪、失明とか色々と凄い事に。
おっと閑話休題。
「ひぃーひぃーひぃ-ッ」
老魔法師ジョフクうずくまって涙、涎、鼻水を流している。
「ぐおっぉぉぉ」
豚顔巨漢グレイブは身体中をかきむしり、血を流している。
「にゃぁーうにゃぁぁぁぁっ」
猫耳眼鏡っ娘リュネットは転がりまわっている。
3者3様の痛がり方をしている。
下手をしたら失明もしているはずだ。
老魔法師ジョフクは口を開けていたから口、目、鼻に甚大な被害。
老人だから大丈夫かな、死なないでよ~?
これから対ヴォータン戦の防波堤になってもらうんだから。
豚顔巨漢グレイブは右目をスライムが失明させてたみたいだけど、図体がでかい分、大量に浴びたみたいで下手すると左目も……。
いや、それより瞬間接着魔法から脱出する際に皮膚を破っていたよね?
うわぁ、痛そう……。
猫耳眼鏡っ娘リュネットは眼鏡のおかげで失明はしていないけど……耳が酷い事に。
ゴメンねぇ。
ああああ、でも、シュンとたれた猫耳もいいなぁ。
まぁ、何とか次の戦いには間に合いそうだ。
さて、これからどうやって交渉しよう……。
喋れない……。
でも……。
そう、何かが引っかかってるんだ。
方法はあるはず。
少し思考している間に、ドラコニーも岩の壁を反対側から迂回して合流した。
赤スライムは、カプサイシンエキスを吐き出し終わると、こっちに戻ってきている。
僕はフギンとムニンに隠れながら出て来るように言おうとして、声が出ない事を再認識する。
あー、そっか、喋れなかった……。
「いやいや、思うだけで結構ダ。
心話とやらで充分通じるゾ」
ん?
……。
フギンとムニン、「あ」って言ってみて?
「ア」
僕の意思をくんで喋れるよね?
「もちろんダ」
ん。
解決。
はぁ。
戦闘中、教えてもらいたかった……。
「お前が喋れなくテ、悩んでいるのは判っていタ」
え?
じゃあ、なんですぐに教えてくれなかったのさ!
「聞かれなかったカラ」
……。
あ、うん、そうだね……。
はぁぁ……。
「じゃあ、次回から僕が悩んでいて、力を貸せれそうな時は言って?」
「ソレは命令なのカ?」
「違うよ、お願いだよ」
「では、断ル」
むか
「じゃあ、命令d」
「怒るナ、嘘ダ」
むかむか
「何で嘘つくかな……?」
「ゴアッ、面白そうだったカラ」www
…………こいつぅ~~~!!!




