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世界の 法則が 乱れる!  作者: JR
第06話 異世界の中心で I と叫ぶ
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強いんだ、大きいんだ、ぼくらのロボットなんだ


目の前にあるのは、ラパ・ヌイの異界門[ゲイト]だ。

なんというか非常に特徴的だ。

ストーンヘンジみたいに巨石を組み上げて作られているんだが、門柱がモアイなのだ。

頭の上にあるキャップストーンと呼ばれる帽子の部分が、そのまま屋根の代わりとなっている。

紅い瞳が、ギロリと僕を睨む。


うわぁ……。


いそいそと異界門[ゲイト]をくぐりぬけ、次元回廊[コレダー]からラパ・ヌイへ。

異界門[ゲイト]の外側はアーチ状に石を組んだ門だ。

いかにも迷宮[ラビリンス]の入り口といった趣きになっている。

ただし門の中を見ると、闇が境目までを覆う不自然な暗さとなっている。


今、僕の居る室内は岩盤をくり貫いて造ったらしく、継ぎ目の無い石壁が続いている。

幅5m、縦20m、高さ3m程だ。

一方の端は異界門[ゲイト]があり、その向かい、反対側には両開きの扉がある。


さて僕も急いで、皆を追いかけよう。





次の部屋はホールとなっていた。

円形状の部屋で、直径が50mを軽く越える。

半球状のドーム型の天井は、中央で高さ20mになろうかと云う程に達し、光り輝く白い球が部屋全体を明るく照らし出している。

壁の組成は御影石、えーと花崗岩かなぁ。

白地に黒のブツブツがある岩だ。

風化するともろいって聞いたけど……大丈夫なのかな?


室内を見渡すと、博物館の様に壁際にぐるりと、色々な物が置かれている。

中央は、まわりの床より10cm程高くなっており、その中に直径3mほどの魔法陣が書かれている。

どうやら転送装置の類らしく、それ以外にこの部屋に入る事が出来るのは、僕の出てきた両開きの扉だけだ。





僕は中央にいる皆よりも、壁際に置かれた物が気になってぐるりと見て回り始める。


「何をしておるのじゃ、お主様!」

「少しの間だけ見せて~」

僕が遅いと、怒りの声をあげ始めたヴラドには悪いけど、こっちの方が重要だ。


ヴラドと知識共有して目の前にある物の来歴と使用法を覚えておく。


今、僕の目の前には高さ5m程の大きさの、ある目的の為にデザインされたメカがある。


いや。


ロボット。


そう、巨大ロボットだ……。



以前、ヴラドの記憶で見た異世界ラプラドルの魔導機だ。

思わず感嘆の声が漏れる。


「「おおおおお」」


どこからか別の声。


と見ると、雲雀も同じ様に目を輝かせている。



彼女の見ている物は、僕が見ている物とは違うが、想いは一緒らしい。

「「乗りてぇ……」」



僕が見ている物は、ヴラドがラプラドルで使用していた魔導機獣と呼ばれる4脚型歩行車両だ。

多分、軽量型に属するんじゃないかと思う。


前足にあたる部分は、機体の両側面から出て、前方に伸びている。

後ろ足は、機体下部から腰に当たる部分が出ており、前足に比べると小さい後ろ足が後方に突き出ている。

それぞれの足首に当たる部分には車輪がつけられ、後ろ足は履帯を備えた頑丈な造りとなっている。

うむ、走破性と踏破性を併せ持たせた良い造りだ。


形としては、人が土下座をして両手を前方に投げ出し、額を地面にこすり付けている姿……だろうか?

それとも前屈みに正座しているゴリラ?


装甲は、鉄らしき物のリベット打ちで、関節部には布が巻かれている。

凄い。

被弾したら車内でリベットが飛跳ねるんだ。

なんてデンジャラスな浪漫……可愛い、可愛いよ、リベット。


しかも索敵兼指揮用車両だから、たった1つの武器以外、余分な武装は全て外されている。

そのたった1つの武器も圧縮空気で弾体を打ち出す……要はエアガンと同じ構造の物だ。

更に頭頂部からはウサ耳!!

ヴラド情報だと、集音装置をかねた魔力素反応の探査機らしいが、ウサ耳!!


はぁはぁ。

思わず、すりすりしたくなる。


ロボットというよりはミリタリーテイスト溢れる戦闘用車両だが……だが、あえてここではロボットで。


フロンティアミッションシリーズやクロスハウンドは大好きなゲームだ。

廚時空要塞マルコスでも好きなのはバルキリーでなくデストロイド。

モンスターも良いが、トマホークも。

でもディフェンダーは捨てがたいし、何よりファランクス。

そう、ファランクス。

何が何でもファランクス。

スパルタンナニソレ。

無骨なミリターテイストが、心の琴線に触れるんです。




で、雲雀の見ている物は、ウサ耳の隣の隣にある10m級のロボット。

こちらもラプラドルの魔導機で、魔導機人と呼ばれている人型のロボットだ。

対ラパ・ヌイ戦でメテオストライクで潰されるまで活躍していた人型に似ている。

最後にリビングフォートレスに突撃したのとはシルエットから違う。

騎士というよりも、傭兵を思わせるがっしりとした骨太なデザインで、片膝立ちの姿勢をしている。


顔らしきところには、兵士の埴輪を思わせる無表情な顔と兜があり、首にあたる部分は無くそのまま胴体に繋がっている。

胴体部分はコクピットを覆うように3枚の鉄板を交互に重ねた装甲で、ぶ厚くなっている。

反対に胴体の下、腰にあたる部分は、人間同様の動作をさせる為に可動域を大きく取り、前面と側面の独立した装甲以外は布で覆っているだけだ。


やはり完全な人型というのは、兵器としては中途半端だなぁ。


僕のそんな感想を他所に雲雀はその機体を見上げている。


「素敵……」

いや、うっとりしている。



理由は明々白々、そのロボットの腕にあるブツが全てだ。


ドリル。

漢の浪漫らしい。

だが、ここでストップするとニワカ。

右腕のドリルと対になるようにある左腕のシザー。

ドリル&シザー。

ここまでやって初めて、漢の浪漫らしい。


ドリル単体では男の浪漫ではあっても、漢の浪漫では無いらしい。

あくまで雲雀曰く。

僕自身はドリルにもシザーにも愛着が無い。

蛇腹関節なら、語り合うつもりはあるが。


以前、シャベルの素晴らしさについて雲雀と語った事があったんだが、いつの間にかシザーについて語り合う事になっていた。

もうね。

雲雀はシザーフェチなんじゃあって疑ってしまったよ。

その時に出たのが、この“ドリル&シザー雌雄一対論”というわけの判らない論。


という事はあれですか?

ドリルは雄でシザーは雌という事ですか?

ドリルコーガンッ!!みたいな?






「いつまでも作業用魔導機を見ておらんと、サッサと行くのじゃ!雲雀」

いつの間にか僕達のすぐそばまで来ていたヴラドは雲雀の耳を引っ張る。


「お主様もじゃっ!

 作戦指揮機を撫でまわしとらんで、夜中になったら雲雀の代わりに、どれだけでも撫で回すが良いのじゃ」

あ、それ名案。


「ちょっとー!私の初夜はどーなるのよっ!」

雲雀が怒るが、

「今日はココで寝れば良いんだ。

 そうすれば雲雀も僕も魔導機を眺めたり、触ったり、撫でたり、スリスリしたり、チュッチュしたり、ナメナメしたり、できるんじゃない?」

「あ、そうか……

 でも、うーん……

 そうだね、そうしよっか」


「御主等、こんなガラクタに何をそんな……」

「「ガラクタゆーなっ!!」」





後ろ髪惹かれる思いで魔法陣へと向かう。

「魔導機から引き離される……まぁ、どうきましょう」


誰も突っ込んでくれなかった。


「いや、言ってる意味判んないし……」

うう、さいですか。


「……時雨には才能が無い」

ポンと伊織に肩を叩かれる。

あああ、伊織にまでも。

「魔導機を用いた事は賞賛に値するが、その後の“まぁどうき”が良くない」

ひぃぃい、止めてよして解説しないでぇ!





あまりに恥ずかしすぎたのでヴラドを急かす。

「ふむ……まぁ、どうきよっかのぅ~?」

うわぁん。

寒すぎる。






魔法陣に全員+2匹が入ると、ヴラドは魔法陣を発動させる。

僕達は転送され、別の場所に出る。

「先程の場所はの、妾にとってその、仲間達の墓所の様なものでな」

「墓所?」

「うむ、自らの世界を護る為に散っていった者達の事を、少しでも覚えておきたかったのじゃ。

 そこで何か残せればと思ってな」

「ああ、それでロボット……」

「雲雀もお主様も魔導機ばかり見ておったのぅ。

 他にもアーラムの王族の遺品やラプラドルの服などもあったのじゃが……」

「「あははは」」



「「ところでヴラド」」


「ハモって言わんでも判っておるわ。

 乗りたいんじゃろ?」

「「うん」」

動作から息までぴったりな僕と雲雀。


「無理じゃと思うぞ」

「「えーなんでぇ~?」」

「ココの世界樹[ユグドラシル]は、地球やアーラムなどの世界法則[リアリティ]を保持しておる。

 当然ラプラドルもじゃが、その為、ココにある魔導機は変質しておらん」


「どーゆー意味よ?」

「あ、そういう事か」


「では、説明するとじゃ、雲雀。

 この魔導機はの、元素転換機関[エーテルリアクター]という物で動力を生み出しておるのじゃが……」

「えーと、それがエンジンって事ね?」

「そういう事だね」と僕。


「で問題があってな。

 肝心の万物構成物質[エーテル]がないのじゃ。

 既に世界は滅びておるので、入手する事もできん」

「あ、そういう事か。

 要するにガス欠ってワケね?永遠に……」


「そういう事じゃ。

 元素転換機関[マナリアクター]に換装すれば使えるやもしれんがの」


「「はぁぁぁぁぁ~」」


仕方ない。

今は諦めよう。






僕達が今居る場所は、ヴラドが墓所と呼んだ所から転移した所にある部屋だ。

室内は先程までと違い狭くなってて、直径6m程の円形の部屋となっている。

中央には転移用の魔法陣があり、僕達はその中に居る。



この部屋の出口は天井にあり、天井までの高さは8m程だ。

その天井までは、室内を一周するように壁際の螺旋階段が続いている。




「うへぇ」

雲雀が悲鳴を上げる。

僕も少し絶句する。


あの螺旋階段を歩いていくのだろうか?

正直に言うとエレベーターかエスカレーターが欲しい。



「誰しもそう思うじゃろ……」

僕の心を読んだヴラドがボソリと言う。

「うん、まぁね」

「そこで、魔法を使って天井まで移動するのじゃ。

 転移、浮遊、飛行、空間湾曲、どのような方法でも良いからの」

「いえ、魔法は使えないって。

 コンストリクターVSPだって攻撃が主目的なんだし」

ヴラドの難題は、僕には無理無茶無謀です。

「うむ、イジワルを言ってすまなんだが、ココで明暗が分かれるのじゃ。

 ラパ・ヌイでは」

「?」

「誰しもが面倒くさいと思う場面で、それを切り抜ける魔法がある。

 それはステイタスシンボルとなるのじゃ。

 反対に何もできない場合は、それだけで嘲りの対象じゃ」

「うわぁ」

「じゃからラパ・ヌイの者は、競って力を見せようとする」

「……」「……」

伊織と雲雀も黙って聞いている。


「決闘もその一環じゃな。

 相手を挑発して決闘を受けねば腰抜けと嘲り、相手が受けるならばギャラリーに力を見せるチャンスじゃ」

「でもそれって相手が自分より格上だったらどうするのよ?」

雲雀が問う。

「見極めじゃな、決闘するなら楽に殺せる奴を狙うじゃろ?」

「ああ、そう言う事ね……

 なんとも卑怯くさいというか……」

「名を上げるには効率的」と伊織。



ああ、そういう事か。

以前、ヴラドに“魔法の使えない落ちこぼれや、犯罪者、生きているだけで益なしの存在は、万物構成物質[マナ]に変換される。お主様なぞ、油断していると後ろからバッサリじゃ”と言われた事があったけど、僕なんかは良いエサになるわけだ。




僕達は話しながら上への階段を上る。


ドラコニーは一足先に飛翔して扉の前にある踊り場へ。

赤いスライムは壁を伝わって垂直上昇している。





はぁはぁと、息を切らして登りきると、すでに3人はゆったりとくつろいでいた。

ていうか、みんな息切れしていない。

凄い。



「さて、この先は玉座じゃ」


ヴラドが扉に手をかける。


「ちょ、ちょっと待って。

 息を整えさせて。

 うぇ~っぷ」

「ふむ、お主様は少し体力をつけた方が良いようじゃな」

「おかしいなぁ。

 ご主人様は、昔はもうちょっと体力あったはずだよね?」

「時雨は脂肪を落とすべき……。

 む、脂肪を落として死亡……」

そんな演技でもない!



息を整えながら、僕は疑問を口にする。

「ヴラド、ちょっと質問」

「なんじゃ?」

「ここまで一本道だったけど、どこかに横道とかってある?」

「うむ?いや、ないのぅ。

 そもそも、今通ってきた道は宝物庫へと続く道じゃ」


「え?」

「宝物庫?」

「……」


「あれ?でも次は玉座の間だって……」

「……時雨、私達は宝物庫から逆に歩いてきている。

 だから、次は玉座の間であっている」

「ああ、そういう事ね」


「判んない……お宝は?

 さっきのドリルとシザーの事?」

「えっとね、雲雀、要は僕達は宝物庫から逆走してきたんだよ。

 地球への異界門[ゲイト] が宝なんだよ」

「正確にはイプセプスへの異界門[ゲイト] だったんじゃがな……。

 でも、そうじゃな。

 地球への異界門[ゲイト] こそが、この城の宝じゃ」


「逆走って、アー、そういう事か!

 じゃあ、やっぱりドリルとシザーも宝じゃん!」

 ヴラドも判ってるね!」


「は?御主、何を言っておるのじゃ?」

「え?違うの」


「いや、先程言った通り、地球への異界門[ゲイト] こそが宝なのじゃが……」

「そ・れ・も・でしょ?」

「ん?」

「あそこにある物は全てアンタにとって大切な物なんでしょ?

 じゃあ、宝じゃない。

 価値があるとか値段が幾らとか、思い出ってのは全部プライスレスよ!」



ーー!!


「ん……そうじゃな、その通りじゃ」

「思い出はプライスレス……」

ヴラド、伊織も何か感銘を受けたのか、ほぅ、と唸っている。







「さて、息も整ったようじゃな、お主様」

「ん」

「雲雀と伊織も良いかや?」

「……」こく

「いいよー」


「では、謁見の間に裏口から案内するとしようかの」


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