おきのどくですがぼうけんしゃはきえてしまいました
朝を迎えた。
僕は、いや、僕達は寝てしまっていたらしい。
いつの間にか。
変な夢を見たような気もしたけど、それは多分僕の腹の上で、うんうん唸っている雲雀のせいだろう。
右隣ではヴラドが腕枕で。
左では伊織が、顔を隠す様に寝ている。
ついでに僕がドラコニーを枕代わりにしていた。
ああ、幸せだなぁ。
リア充万歳。
初老のロリコン・沖津文郎さんはどこだろう?
祖父と連絡が取れないとは言っていたが、祖父が家を1日~3日ぐらい空けるのは良くある話だ。
あまり深刻に取らなかったけど、そういう話じゃないのだろうか?
僕だって、今、祖父がどこで何をしているかなんて知らないんだ。
もう少し話を聞いてみた方が良かったかも……。
昨日の夜遅くまで宴会は続いて、お酒の入った僕達は結局全員寝てしまっていた。
沖津さんはその後で帰ったみたいだったけど、記憶にない。
まぁ、ココに居ないなら帰ったんじゃなかろうか。
お酒ダメ、絶対。
あ、そうだ。
忘れる前にメール打っておこう。
昨日の話で、ヒトラーの予言なる物と、教会の終末予言という2つのオカルト話がでた。
僕は、キリストとオカルトの話は苦手だ。
そこでオカルト博士に聞いてみようと思う。
僕の少ない友人の1人、武居にメールする。
『キリスト教における終末の予言いっぱい教えて。
ついでにヒトラーの予言も。
レポートでまとめて、明日までに』めるめる
時刻は、朝の6時ぐらい……いや、まだ6時前だな。
寝すぎたようだ。
とはいえ、今日は月曜日。
黄金週間に突入中だが、今日は休日ではない。
学校がある。
もちろん休むけど。
学校に連絡を入れておかないといけない。
さて、朝ご飯だ。
でも、朝ご飯は、ワザワザ作るつもりはない。
昨日の残りを使えば良い。
「ん、む……」
「あふ……もう朝ぁ?」
「……」がばっ
三者三様に起きた。
タイミング同じに起きるなんて、器用だなぁ。3人とも。
「がう?」
プラスアルファ。
「おはよう」
皆に挨拶をする。
清々しい朝d
「うう、何か気持ち悪い……」
青い顔をした雲雀が口を押さえる。
「それは2日酔いじゃな」
同様に青い顔したヴラド。
「……」
伊織は……
「毒物除去、代謝完了。排出フェイズに移行……トイレ」
立ち上がり、直行。
「うう、2日酔いにはお味噌汁……」
ガスコンロに火をつけ、その上に八丁味噌の赤出汁を乗せる。
風味豊かな香りが漂い、僕の鼻孔をくすぐる。
「お主様」ちょいちょい
人差し指で「へい、かもーん」としているヴラドに近づく。
「愛しの殿方じゃ」
首に抱きつかれました。
あ、朝から、いちゃラブですか?
おっけぃおっけぃ、僕もギンギンだよ。
がぶっ
じゅるじゅるじゅーーーっ
首元から僕の命が吸われていきます。
凄い勢い。
殺さないでね?
「ヴラド、ずるい!私も飲m」
「それは止めてって……どうしたの?」
「うう、ギモヂワルイ……」
ああ、2日酔いだもね。
「……吐きます」
トイレに向かう雲雀。
まだ思ったよりは余裕があるね。
げろ吐き歴3年の僕から見ればまだまだだ。
(それは自慢にならないよ~、ヤシロ)
心話で返事が入る。
そういえば、確か伊織がトイレに行っていた様な……。
いや、覗きませんよ。
共有もしませんよ。
そんな変態みたいな事しませんよ。
コンコン
「入ってる」
コンコン
「このトイレは通行止めだ、他を当たれ」
コンコン
「……」
「うー、吐きそう」
「我慢する」
伊織の返事はそっけない。
でもやっぱり何か2人にあった垣根みたいなのが取れている。
なんていうか、顔見知りから友達になった様な……。
「早く交代してぇ」
コンコンコンコンコンコン
「余計に遅くなるだけ」怒
「あー、それもそうか。御免なさい」
「吐くなら外でもできる」
「そっか。そうする……
ヤシロからかってくる」
元気だな、おい。
雲雀がこちらに戻ってくる。
僕はあいも変わらず、ヴラドに抱きつかれている。
「私も」
顔を上に向かせ、いきなり口付けをする雲雀。
アルコール臭がした。
「ところで、時雨は木曜日の事、覚えている?」
「木曜日……先週の?」
「うん」
「雲雀に会いに行った時の事?」
「うん」
「色々あったけど……どのような事?」
「このシチュエーションにもっとも近い状況の事」
思い出す。
うーん。木曜日のキスって、実はヴラドとの事がインパクトでかすぎで覚えていない。
雲雀とは良い所までいったけど、シスター・イルゼが邪魔したから……
あ。
僕と雲雀に関する事じゃないのかも……
「えーと、シスターイルゼの事?」
あの濃厚な口付けはヴラドに匹敵する。
「ぶぶー!大ハズレ」
「えー?」
「御主人様がゲロマニアだって話」
え?
もう一回口付けされる。
軽い挨拶。
「おはようございます」みたいな。
更にもう一回。
まだ酔ってるの?
流石にヴラドの方から来る怒りのオーラが怖くなってきたんだけど。
「あれから、一生懸命、勉強しました」
「な、なんの?」
「御主人様に気に入ってもらおうと思って、凄い動画を」
え?
ゴクリ。
凄い動画?
教会のどこで?
PCはおろか、携帯までも取り上げられているはずなんじゃ?
凄く嫌な予感がする。
「ゲロマニアな御主人様にプレゼントです」
いらない。
「御主人様……あ~ん、して?」
う、う、うわぁぁぁぁっ
「ちなみに冗談です」
「じゃ、じゃあ、この両手を離してくれると、僕は凄く安心するんだけど……」
雲雀は両手で僕の頬を押さえて、上を向かせている。
口付けした時のままの状態だ。
要するに口から、えれえれっとすれば、被害にあうのは僕だ。
「御主人様には日本一の変態になってもらうんだから、どんな体験でも喜んでしてくれないと」
雲雀の顔は顔面蒼白になってきている。
「いいいいいいえ、ぼ、僕はいたってノーマルです。
スカトロジーも死姦も露出もNTRも痛いの嫌です普通の恋愛がいいです聖水は応相談で飲むのはちょっと、ましてや固形物液体食べるの簡便、縛られるの嫌ですむしろ縛りたい僕の愛で?くんかくんか大好きですが汚物はのぅさんきゅう動物ダメですリアルケモナーじゃないです猫耳好きですバニーもね、でもメイドさんはも~っと好きです稚児巫女ナース大好きですコレだけ言ってもまだまだ足りない奥の深い世界なんです。
だからやめましょ?ね?普通の恋愛しませんか?
お手てつないでシマムラやユニクロからデートしませんか?」
いつの間にかヴラドが血を吸うのを止めていた。
それどころか2歩離れている。
「ドン引きじゃ、お主様」
(うん、時雨は変態)
トイレから心話。
(どの口がハーレム万歳なくせに普通の恋愛なんていうかな?
もうゲロっちゃおうかな)
ひぃぃ。
と思ったら急に僕の顔を放り出して、椅子に座り込む。
「ふぅ……ちょっとはしゃぎ過ぎた……」
雲雀は、ぐて~と背もたれにもたれて空を見上げる。
「ヴらえも~ん、悪酔いを治す魔法かけて~」
「知るかやっ」
「ううぅ」
はぁ、仕方がない。
僕は、まず雲雀と感覚同調する。
うわ。めまいがする。
結構きついな。
そして、ダメージを肩代わりする……。
問題は、悪酔いをダメージとしてみるかどうか、だけど……。
ん?
できた。
一応、悪酔いとかもダメージの扱いになるんだ。
ここら辺の線引きって難しそうだな。
肉体的な不調は全てダメージになるんだろうか?
「あれ?治った……おお、私凄いっ!
私のアイアアンレバー最高っ!」
立ち上がり、赤出汁を一口。
「はぁ……まったく!!
我等が主様に感謝するのじゃな」
機嫌が悪そうにヴラド。
「え?」
「あれほど使うなと言っておるのにっ!!」
(時雨は理解しても反省をしない……ダメ人間)
「あ……もしかしてダメージ転写?」
「それ以外にあるまいっ!?」ふんっ
「……」こくこく
精神的な物はダメージとなるんだろうか?
そもそも、どこまでがダメージか?
癌や腫瘍とかもダメージになるのかな?
どこまでが限界か、ちょっと調べてみたくなった。
例えば、医療ミスで体内にハサミが残ったとしよう。
ダメージか?
肩代わりできたなら、僕からハサミが摘出されるのか?
おぉお、楽しそう!
魔法とか呪術のアナを突っついていくのって結構面白いかも……。
例えば感覚共有で、ヴラドの鼻と共有すれば、今日はどんな香りをしてるのか判る様に……くんかくんk
「な、何をしておるのじゃ!うつけっ!」
べしっ
「うべっ」
「あ、御免。今日のヴラドの香りを嗅ごうと……」
「ま、まだ何も用意しておらんのじゃ、それぐらい察したらどうじゃっ!?」
「ヴラドのそのままの匂いも好きだけど?」
「尚、悪いわっ!変態!」
「時雨、変態……」
トイレから戻ってきた伊織にも言われた……。
朝一番の挨拶もしていないのに……。
雲雀が僕の頭をむんずと掴む。
「私の2日酔いとったな?」
「うんにゃ?」ふるふる
首を振る。吐きそう。
「悪ふざけが過ぎたか……。
ありがと、ヤシロ。
でも今後、絶対よほどの事がない限りは、やらないで」
こくこくと頷く。
っていうか、誰が好きこのんでダメージを受けたがりますかって。
「それより、雲雀は日課のランニング行かなくて良いの?」
「あ、そうだった。楽しくて忘れていた」
「私も行こう」
立ち上がる伊織。
「結構ハードよ?」
「望むところ」に
「着替えあったっけ?」
「……ない」
「全裸で走る?ペイントの方がいい?」
「……どちらも嫌」
「わがままだなぁ」
「……」
メイド服と和服が遠ざかっていく。
奇妙な取り合わせ……なんだけど……何だろう、物凄く懐かしい感覚がする。
桃の庭園には、僕とヴラドが残された。
「ヴラドも走ってくる?」
「妾にその習慣はないのじゃ、止めておこう」
僕は、顔を洗うと朝ご飯の用意を始める。
動くのもおっくうだが、赤出汁は雲雀が温めていたし、御飯は圧力鍋から炊飯器に移し変えてあるので、ほかほかだ。
やる事は、朝のサラダと、玉子焼き、焼き魚……はいいか。
最後に、ココからの逃走を計った伊織を感覚共有・入力で連れ戻して朝ご飯を食べさせるっと。
この家に住む以上、トイレでゼリー飲料喰って、それで終わりなんて許さない。
地球の世界法則[リアリティ]に慣れてもらいますとも。
「ねぇ、ヴラド。質問なんだけど?」
「なんじゃ?」
僕の血を吸ったおかげか、朝は2日酔いの状態だったヴラドは、いつも通りの状態になっている。
「この世界樹[ユグドラシル]が作った桃園ってどうやったら桜に戻るの?」
「む、そうじゃったな、忘れておった」
「戻せる?」
「うむ、すぐにできる。
戻し方なんじゃが、妾がやったのは世界樹[ユグドラシル]の擬態じゃ。
じゃから、擬態の解除をお願いすればよいだけじゃな」
「ヴラド、この世界樹[ユグドラシル]って何なの?」
「ん~、そうじゃな。朝の食事の前に軽く昔話でもするかの。
妾達の世界のコレ、世界樹[ユグドラシル]はのぅ、もともとは樫という樹にドルイド共が願掛けを行っていたのが発端での」
いきなり話が、ケルト人ですか?
北欧神話ではなく?
さすが異世界。
「ん?いやいや、妾の生まれる前の話じゃ。
願掛けはドルイド共が滅びた後も、ゲルマンやその他の部族、最終的にはヴォータンが引き継いだのでな」
少しヴラドと知識共有する。
ん?
「もしかして、ヴラド達の世界にはローマ帝国が無かった?」
「うむ。というよりもの、強大な国家が作られる事が無かったのじゃ。
ある時期まではの」
「ある時期?」
「世界樹[ユグドラシル]が完成を迎えるまでじゃ」
どうも、地球の世界樹[ユグドラシル]とは違うみたいだ。
「世界樹[ユグドラシル]はの、元々は千年にも渡り、イプセプスに住む人々の血と願いを、飲み続けた呪具だったのじゃ。
願う者はケルト人からゲルマン人、真祖たる吸血鬼[ムロゥイ]に変わっても、たった1つの願いを叶える為だけに、存在を続けてのぅ」
「たった1つの願い?
それだけの為に、千年以上も?
それに血って……えぇと、もしかして、生贄……とか?」
「そうじゃ。数限りない犠牲の上に、このイプセプスの欠片は完成したのじゃ」
「……」
「それだけ力を持った呪物[セーナム]という事じゃな。
だから……お主様、あまりこの事を口外せぬようにして欲しいのじゃ」
「判った」
まぁ、皇國代理天には筒抜けなんだけども。
ヴラドが話しているうちに桃園は消え、薄い桃色の花弁をつけた桜の樹だけが残る。
「まぁ、これも擬態なんじゃがの」
ひらひらと花吹雪が舞う。
「これは、素晴らしいですね」
うぁ。
いつの間にか、ヴラドの傍に初老のロリコン・沖津文郎がいた。
もう既に帰ったと思っていたのに、まだ居たのか……。
ヴラドにもう少し世界樹[ユグドラシル]の事を聞きたかったけど、諦める事にした。
「おはようございます、ヴラドさん」
「うむ、お主も早いのぅ」
「早起きは3文の得と言いますからね。
今日はヴラドさんの寝顔も拝見できましたし、素晴らしい1日になりますよ」
「そ、そうかや。微妙に返答に困るのぅ」
「あははは、それはそうと、時雨君」
「?」
ムカムカしたままの顔で、初老のロリコンを見上げる。
「先程、山の散歩道を爆走するメイド服と和服の美人がいたんですが……」
「ああ、気にしないで下さい」
「そうですか。
あまりにも人間離れした速さでしたので」
「どちらも走りにくい服のはずなんだけどなぁ」
「それで連絡は取れたのかや?」
ヴラドが初老のロリコンに目的語を省略して質問をする。
「え?ええまぁ、ヴァチカン本国とは取れましたけどね。
秋霖殿とは相変わらず取れませんなぁ」
「質問なんですが、祖父は携帯か何か、貴方との連絡手段を持っているんですか?」
「ええ、直接は危険なので、普段はメールを使ってですが。
今までは“連絡乞う”のメールに3日以内に返事が来たのですが、今回は1週間……」
「あれ?祖父なら木曜日の朝、一度帰宅しましたよ?
すぐに出かけてしまった様ですが……」
「そうですか……何かあったのかもしれませんね……」
聞きたい。
本当にたかが終末予言如きに、祖父の意見を聞きたくてバチカンからココまで来たのだろうか?
何か裏があるんじゃないのか?
「お主様」
「ん?どうしたの、ヴラド」
(預言というものは、あながち馬鹿にせぬ方が良いぞ)
そうなの?
(地球の世界法則[リアリティ]では、あまりにも術法文化が低く、預言の精度が落ちているがのぅ。
ラパ・ヌイやイプセプスでの預言というのは、抗う事の出来ぬ精度を誇るのじゃ)
抗う事の出来ぬって事は、最初から予定調和……みたいな話?
例えば、予言で「今日の昼、カップヌードルを食べるだろう」と言われた場合は?
(地球では、パンを買えばそれがそのまま昼飯となろうがのぅ……
イプセプスでは、買ったパンに何らかの不都合がおき、カップヌードルになるのぅ)
ふぅん、予言への強制力が働くとか?
(考え方の違いじゃな。
地球の世界法則[リアリティ]でも判る様に言うなら……
やる事為す事全てが裏目に出て、結果としてカップヌードル……と言う事じゃろうか)
やはり予定調和みたいな感じなのかなぁ。
「ところで沖津殿。
我ら地球の守護者[ガーディアン]筆頭の八代家の者に預言の話を聞きに来るというのは間違っていないが、御主は何の預言で動いておるのじゃ?
差合い無き所で良いのじゃが、教えてもらえんかや?」
うわぁ。
自称、地球の守護者[ガーディアン]なのは祖父で、僕はそんなの全然知らないよ。
(なに、お主様、情報収集というものじゃ。
どちらにしろ後で御祖父殿に伝えておけばよいじゃろ?)
しばし逡巡の後、沖津さんは承諾する。
「……そうですね、確かに地球の守護者[ガーディアン]の皆様方には、ある程度知っておいてもらった方が良いのかもしれませんね」
「うむ」
「元々、私達ヴァチカンは聖書の教えを守り、その規範に従って生活を送っています。
その聖書の中でも解読がもっとも難解なのは黙示録です。
ですが、終末預言は黙示録だけではないのです」
「……」
「まぁ、正確に言うなら、黙示録は終末預言ですらありませんがね」
もう聞きたくなくなってきた。
キリスト嫌い。
ジンマシン出そう。
「昨日言いましたが、終末預言は数限りなくあります。
今回意見を聞こうと思ってきたのは2つ、ファティマの預言と聖マラキの予言です」
「なにそれ」
「まぁ、あまり人の耳に入るような物でもありませんしね。
ファティマの預言はかなり風変わりな世界大戦の様子を書いています。
聖マラキの予言は歴代教皇の特徴を書いた預言です」
「は?えーと、ファティマは判りましたけど、歴代教皇の特徴を書いたという聖マラキの予言が何故、終末預言なんですか?」
「それは……まぁ、いいでしょう。
我々が恐れているのは、ニューエルサレムの動向です。
雲雀さんがカルト宗教といっていましたが……
今、イタリアではその名を良く聞くようになっているのです」
あ、話はぐらかされた。
それとも説明がメンドクサイからか?
~♪
携帯電話が鳴る。
ゲームミュージックだ。
しかもファミコン華やかなりし頃の傑作、スーパースターフォースのDA0001年のBGMだ。
ちなみに、その頃、僕は生まれていない。
それなのに雲雀が自信満々に、その頃の事を語るのは何故だろう?
弾幕シューが面白いからやれと言われて、1週間、古今東西のシューティング漬けをされた。
クリアしなくても良いからといわれ、次から次へと。とっかえひっかえ。
判ったのは多分、僕はシューティングゲームが嫌いだという事。
感想を言えと言うので「嫌い」と言ったら殴られた。
理不尽すぎる。
うう。
その頃の事を思い出していても仕方がないので、携帯に出る。
「おはよう、武居」
「おう、4日ぶりだな、キチーフ。
早速だが、俺、今日学校休むんでヨロシク」
「奇遇だね。僕も学校休むのでよろしく」
「おいおい、使えねーなー」
「あはは、お互い様」
「んでな、さっきのメール、ありゃ何だ?」
「うん、教えて欲しいのは、ファティマの預言と聖マラキの予言とヒトラーの予言」
「あー結構、有名な奴だな、それ」
「そうなの?」
「時間がないから聖マラキだけな。
ファティマは面倒くさいから、ぐぐれ。
ヒトラーのは長い、くどいからぐぐれ」
「おい」
「取り合えずだな……」
武居からの情報をまとめると、聖マラキの予言というのは歴代法王の特徴を簡潔にまとめた物らしい。
うん、それはさっき聞いたんだ。
「何で、それが終末予言なんだ?」
「あ、なんだ、それを聞きたかったのかよ」
「うん」
「そりゃ簡単だ。次の法王で予言が終わってるんだ。
いや、正確に言うと今代の265代目法王ベネディクト16世が最後だ」
「え?」
「予言はいくつかのハズレがあるが、概ね当たっていると言われている。
ノストラダムスと同じでな、如何様にでも取れる内容なんだよ」
「次の法王ってのは?」
「ローマ教会への迫害の中でローマ人ペテロが法王になる、中略、後略って奴だ」
「後略を詳しく」
「確か、7つの丘の町は崩壊し、恐るべき審判が人々に下されるのである……だったかな?
でだ、このローマ人ペテロってのは、キリストの弟子で初代法王になった人物の事だ」
「ふむ」
「始まりの終わりって奴なんだろうな。
まぁ、今度会う時までには詳しいの用意しとくぜ。
んっ、じゃな」
「あーうん。また明日」
えぇと、まとめると、今代で法王が最後、次の法王は初代と同じ名前の人物がつく……と。
そうすると、恐るべき審判がって言う奴か。
あいかわらずキリスト教ってのは、不安を煽って人に何かさせようとするなぁ。
いや、これはキリスト教だけじゃないか。
「内容については、ググッた方が良さそうだって。ヴラド」
「そうかや」
僕達の会話に耳を傾けていたロリコンとヴラドの2人に先程の電話の内容を語る。
さて、どうしようかな。
ニューエルサレムの事は気になるけど、ラパ・ヌイ対策の方が先だしなぁ。
祖父が何も話してくれなかったのが、ちょっと悔しいが、仕方ないだろう。
僕を思っての事だ。
本当に、地球の守護者[ガーディアン]って何やってるんだ?ジーちゃん。
まさか、スーパーヒーロー(笑)とかじゃないだろうね?




