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世界の 法則が 乱れる!  作者: JR
第05話 桃源郷の誓い
71/169

花見と桃園の誓い ← 桃の木じゃないけど


今日は、花見だ。

バーベキューでも可。


僕は準備万端、皆を迎える。

既に食材は持ち込み済みだ。

後は焼くだけ、食べるだけ。


正直な所、祖父も呼びたかったが、連絡が取れない以上、仕方ない。




ここは、八代家の持つ裏山だ。

登山道は一般にも開放してあるが、裏山の一角、ポツンと唯1本だけ生えた桜の木。

ここだけは、50m四方を厳重に塀で囲い、俗世から隔離してあった。


入り口はたった1つ。

八代邸の裏から続く舗装道路(もちろん私有道だ)を通ってしか入れない。




今、入り口に3人+αが姿を見せた。


僕は急いで、そちらへと向かう。





ゆったりと歩く雲雀。

服は、黒と白の完璧なバランス、ヴィクトリアンメイドスタイル。

ぶらーぼぉう!!


下着はドロワース、見えないところまでのこだわりに僕は大興奮。

相変わらず可愛い。

しかし、雲雀はメイド服に一升瓶を抱えて来ている。

何故、お茶セットでなく一升瓶?

画竜点睛を欠くとはこの事だ。

だけど、あの一升瓶、純米大吟醸だ。

飲む気だろうか?

年齢を考えてください。

あ、それとも酒蒸し用?

何と豪勢な。




驚きの変身、伊織。

彼女は今、髪をアップにし着物を着ている。

びゅーちほー!!


春物らしい、薄桃色の下地に朱の花がアクセントとして入っている。

祖母の着物といっていたけど、まるで伊織の為にあつらえたかのように、似合うし大きさもあっている。

でも、左手の忍者刀は減点。

せめて日本刀にして欲しかった。

あの刀も、あれかな、柄の部分にバッテリーの入った電撃刀なんだろうか?




胸をはり2人に負けじ、と大股で歩くヴラド。

水色の明るいリボンで髪を結び、金曜日に買った浅黄色のキュロットと群青の巻きスカート、動きやすさ重視のスタイルでまとめている。

えくえくえくえくせれんとッ!


自分でコーディネイトしたんだろうか、それとも雲雀が手伝ったのかな?

子供が少し背伸びした格好をしているように見える、そんな感じがヴラドらしい。

まぁ、中身は見た目に反比例なんだけど。

今回のゲストを連れて来ている。

ゲスト、その名をドラコニー。

竜の下半身に獅子の上半身と言う合成生物[キメラ]だ。

大きさは体高130cm程で、全長は400cm程だ。

獅子にしては巨大、竜にしては小さいという微妙な大きさだ。





さて、この合成生物[キメラ]だけど、ここに来るまで、ちょっとしたイベントがあった。






「うわっ、ナニソレ!?」

雲雀が驚きの声をあげる。

場所は本宅、未だ雲雀と伊織の戦いの傷跡が残る仏間にて。

ヴラドとヴラドがラパ・ヌイから連れて来たドラコニーと、雲雀が遭遇。


この場に僕は居ない。

桜の近くでバーベキューの用意に四苦八苦している時だ。

ヴラドがラパ・ヌイから帰ってきたので、呪法【純潔の誓い】の感覚共有が復活したのだ。

で、それを使って状況を窺っていると言う状態。

しかし、この感覚、本当に自分と他人の垣根が消えていくな。



「ライオン……じゃないよねぇ……途中から爬虫類だし……」

竜の下半身を見て、おっかなびっくりヴラドに訊ねる。

「うむ。この者はドラコニーと言っての。

 竜と獅子の合成生物[キメラ]じゃ」

「ふぅん。花見に?」

「うむ、異界門[ゲイト]の門番をさせておったのじゃが、約定があっての。

 地球の肉を喰わせてやると……」

「お手」

はしっ


雲雀が、右手の平を上に出し命令すると、ドラコニーは、その考えを読んだかの様に、自らの左前足をのせる。

「うん、良く躾けてある」

「え、いや、妾は何も……」


ごろん。

ドラコニーは、腹を上に向け寝そべる。

「うぉおー!賢い、賢い」


つぶらな瞳で雲雀を見上げる。



雲雀がプルプル震えだす。

「もう、もう、我慢できんっ」

「え、な、何じゃ!?」


「かわい~っ♪」

ドラコニーにダイブ。

「お、おねぇさんが、好い事してあげるねぇ?」

雲雀は全身を使って、ワシャワシャとドラコニーを撫でる。

メイド服に、獅子の毛がつくが気にしない。


「うわ、すごっ。金毛って言うの?

 これ、輝いてるよ」なでなで

「うむ、見事じゃろ。

 妾の従属魔でも強さと美しさを兼ね備えt」

「この鱗、外向きで尖ってて攻撃的だねぇ、メイド服が引っかかるよ?

 あ、判った。

 破いて引き裂いて千切って脱がす気か?

 マニアックさんめ!この、すーけーべー」

「いや、それは、武器の打撃力を逸らす為にs」

「あれ?……このこ、雌?」

「いや、戦闘用の人造生命じゃから、性別h」

「このタテガミなんて雄っぽくてカッコイイ……

 そうかぁ。君は男装癖の持主かぁ、ぐっじょぶ」

「いや、男装癖ではなk」

「乙女の心を、男の身体に隠した戦闘用なんだ、君は。

 確かに、この肉球の攻撃力は絶大ッ!」ぷにぷに

「いや、その……じゃな」

「尾に毒針は?

 あ、あるじゃん♪ひゅーっ

 可愛さの中に、刺1つ。そそるぅ」

「……」


ヴラドが唖然としている。

うん。

雲雀のこの状態は、確か、エロゲで好みのヒロインを見つけた時のハイテンションな状態だ。

もしくは祖父の収集した民芸品コレクションの中にあった、呪いのぬいぐるみを見て気に入った時の事とか……。


「ヴラド、このこ頂戴ッ!」

「ダメじゃ」

「ケチーッ!」


ふぅ。

(ああ、妾の従属魔が、この様な……威厳も何も)


それから暫く、ドラコニーの本来の主を前にした痴態は続いた。






そして、現在。

今、僕はドラコニーに押し倒されている。

顔面をペロペロされています。

親愛の情なんかじゃ無い。

腕を甘噛み。

決して親愛の情ではない。


ヴラドの従属魔であるドラコニーの想いはヴラドに伝わり、ヴラドと記憶共有をしている僕は、その感情が読む事ができる。

(食べていい?食べていい?

 おにくっ、おにくっ♪)

味見。

そう、この一言に尽きる。

今は食べて良しの指示が無いだけだ。



助けてぇ。






一足先に、僕に飛び掛ってきたドラコニーの後から、3人は桜を囲った私有地へと入って来た。



桜を見た時の反応は、3人それぞれだ。


雲雀は懐かしそうに、穏やかな、それでいて少し寂しさをたたえて桜を見ているが、残り2人は違うようだった。


その桜を見た時、ヴラドに衝撃が走ったのを僕は感じた。

動揺と感動、そして諦観……だろうか……?

どうしたんだろう?


「ヴラド、どうしt」

「ふぅおおおおおぉぉぉぉぉぉーーーーーっ!!」


だが、僕のその気持ちも伊織の奇声にかき消される。

流石に、雲雀もヴラドもどうしたの?という感じで伊織を見る。

伊織が、感極まった時に発する声だとは思うが……変わった癖だ。

そもそも、移動販売車をこの桜の園の中に入れた時に、伊織は見たでしょう?


「桃園結義ッ」

「?」

「は?」

「え?」

「がう」


どこから突っ込めば?

桃園結義、俗に言う桃園の誓いと呼ばれる三国志演義で有名なシーンだ。

だけど、コレは桃ではなく、桜です。

この場に居るのは3人ではなく4人です。

史実にはそんなの存在しません。

何を誓うの?


えーと……


多分、桜の木と僕が用意したバーベキュー用の鉄板や、ジュースのペットボトルなどを見て、宴会だと判断したんだろう。

皇國代理天だと無さそうだしなぁ、宴会とか花見みたいな大勢で食事をするって事は。

それで桃園の誓いと勘違いするってのも、伊織らしい。






「良く気づいたわね、伊織!」びしぃッ

「雲雀……」

「これは、この桜を桃に見立てた……誓いの場よ!」

「やはり!」


えー。

ヴラドと僕はついていけない。

ドラコニーは蚊帳の外。


「で、では今から行うのは、義兄弟の契り!

 “我ら3人、うまれし日、時は違えども兄弟のちぎr”」

「しっっ!それ以上はダメよ」

多分、伊織は横山正輝三国志からの知識なんだろうけど、雲雀は何をしたいんだ?



雲雀は紙コップにコーラを注ぐ。

彼女の大好きな、何だったか忘れたけど何らかの治療薬として、消化酵素ペプシンを入れて発売されたコーラだ。

世界的に有名なコカインなドラッグ経由のコーラではない。

もちろん、どっちのコーラも今はただの炭酸飲料水だ。

どっちのコーラがいいかについて、雲雀と語りだすと言い負けるから止める(正直コーラごときどっちでも良い)が、なんで3人分?


雲雀の奇行はまだ続く。

今度は、それぞれの紙皿に焼きたての旨そうな焼肉をいれる。

ロースだ。塩と荒引き胡椒で味付けした、香ばしい匂いを放つ……。じゅる。

差し出す。

が、なんで3人分?



(のう、お主様……)

ヴラドが現状把握をしようとしているのを僕に尋ねているが、僕だって雲雀が何をしたいかなんて判らん。


雲雀は、伊織とヴラドにコーラを勧める。



あれ?

僕は?


ねぇ、僕は?



もしかして村八分?

いじめ?



「これを、八代時雨の肉と血と思って食しなさい」


「ええー!ちょっと待って、僕ココに居るよ!!」

あれか?

キリストの最後の晩餐とか、そういうオチですか?

……最後の晩餐であってたっけ?


「今から行うのは、私達3人の契り……」

「……」

「……」


あれ?

ねぇ、じゃあ、僕は?

ドラコニーも入れようよ。




「私は劉備、伊織は関羽、ヴラドは張飛よ!」


ぐす。

涙出て来る。

孔明、せめて趙雲……。




「待つのじゃッ!」

僕の記憶から三国志を探り当て、急いで知識共有したらしいヴラドから「待った」がかかる。

「納得できんのじゃ、妾は劉備、伊織は関羽、雲雀が張飛であろう!?」


「そうだよ!

 そもそも僕だけ仲間外れなんて……

 ドラコニーも……」

異議申し立て。



「五月蝿いッ!!コレは外史!」

「――!!」

「ドラコニー、お預け、ふせっ!」

「ガオッ」


矢継ぎ早に雲雀は命令する。



だけど、今の一言で判りました。

あー、もう、嫌なくらい判りました。

はい。

納得しました。


この構図……。


「御主人様は、あっち行ってなさい」

「え、でも……最後に僕も皆と一緒に誓いをするんじゃ……」

「乙女の誓いは神聖なのよ。

 アンタはあっちでドネルケバブを焙ってなさい。

 ドラコニーにかじれたくなければ」


うぃ。






僕はその場を離れる。ドネルケバブを焙る為に移動販売車の中に入る。

ある程度までは焙ってあるが、ドラコニーが食ったらすぐに無くなる。



(お主様?)

うん?

何、ヴラド?


(外史とは?)

あー、うん。

三国志ってのは、元々中国って言う国の歴史なんだけど、それを基にして色々と派生した物語があってね。

(ふむ)

その中に、登場者の大半を女性にした、恋姫†無限って言うシリーズ物エロゲに出て来る言葉だよ。

簡単に言うと、パラレルワールド。

今回の意味としては、雲雀は僕をその作品に出て来る主人公として扱うって意味。

伊織と雲雀とヴラドは義兄弟ならぬ義姉妹?



僕は感覚共有で、その場を覗く事にした。

で、雲雀は結局、何をしたいんだ?




「雲雀、桃園の誓いは判ったが、御主いったい何をしたいのじゃ?

 まさか、ごっこ遊びではあるまいに」

「あはは」

「あやしいのぅ……何を企んでおる?」

「質問、私は関羽ポジなのか?」

「少し待っといて」

「少し待っておくのじゃ」


「ヴラド、さっき言ってた呪法ってのかけるんでしょ?」

「んむ?」

「八代が居ると、まずいんじゃない?」

「おお、そういう事じゃったか。

 御主の事、馬鹿じゃと思っとったから判らなんだ」

「あはは、銀髪ロリは張飛ポジね」怒

「御主の思い描いた餅では、確かにロリはそうなるのぅ……くふふふふ」怒


「じゃ、みんな納得s」

「じゃが断る」

「おお」

伊織が驚いている。

多分、ジョジョの微妙な冒険を思い出しているんだろう。


「じゃあ、こうしましょう。

 私は1号、伊織は2号、銀髪ロリはV3で」

「ふむ、それは知識共有で一度調べたのぅ……

 確か御面ライダーであったか」

「私は2号さんなのか?

 でも愛人はヴラドが……」

「そうか、雲雀。

 御主、ついでに序列付けもしたいわけか。

 このままだと奴隷だからの?」くふふっ

「う」

「じゃが、御主、御面ライダーで行くつもりなら、主様のハーレムを拡大させるつもりかや?

 ZXまででもかなりの人数じゃが、平成まで入れると目も当てられんぞ」

「そっか、しまった……

 八代のハーレム拡大の良い言い訳に使えるわね……」

ちょと待って。

人の好意を、そんな酷い扱いで……。

当たっていそうで怖いけど。


「主様は人の好意に弱い。

 好きと言われたら“自分も~”と答える事、請け合いじゃ。

 取捨選択なぞできん。増える一方じゃ」

「そっか。そうよね……それが、今の現状だし……

 ちっ。ヘタレ」


あう。

今の言葉、ワザと聞かせる為に言ってるよね?

ホントに雲雀は、口が悪い。

るるる。




「ヴラド、雲雀?

 今の話し合いは時雨の寵愛を受ける順番なのか?

 それを誓うのか?

 世界を正すとか、時雨を護るではなく?」

「少し待って」

「うむ、そうじゃ」

伊織の質問に簡潔に答える2人。


というより、雲雀、伊織、ヴラド……分けて考えようよ。

呪法と寵愛とごっこ遊び……。



「じゃが、このままでは埒があかんのは事実じゃ。

 ここは妾が折れよう、雲雀、貸し1つじゃ」

「……判った」

「序列は、主様と出会った順、雲雀、伊織、妾じゃ」

「……ん」

「クラスは、奴隷、恋人、愛人じゃ」

「それは嫌」

「しかたないのぅ。くふふふ。

 では、御主は新妻(NTR確定)でどうじゃ?」

「喧嘩売ってる?」

「判った。自称・婚約者でどうじゃ」

「自称じゃないんだけど、まぁいいわ。及第点」


今度は上手くまとまったみたい。





「さて、次は何を誓うのじゃ?」

「私は、時雨を護る……」ぼそ

「ふむ、伊織の言う事もっとも。

 ここに居る者の総意じゃ。

 それをもって妾等は姉妹になるのかや?

 穴兄弟ならぬ、竿姉妹に」

ヴラド下品。

雲雀みたい。


「そういえば、何も考えてなかったなぁ。

 でも、別に何でもいいんじゃない?」

「ならば、永遠に主様を愛し続ける……とでもしてみるかや?

 まさに呪いじゃぞ?

 永遠の呪縛じゃ、死ずら救いにならぬ」

「な、何よそれ」

雲雀が何か思ったのか顔が引きつっている。


「えと、死ぬ時は一緒……が良い」

伊織は三国志通りを望むけど、それを呪術でやると……。

「それはまずいのじゃ、伊織」

「?」

「その誓いで呪法を行うと、誰か1人が死んだ時に全員死ぬか、アンデット化のどちらかという嫌な呪いとなるのじゃ」

「ん、判った。

 でも何故誓いにこだわる?」

「ふむ?そうであったか。

 説明がまだであったな。

 昨日言った監視の話、覚えておるかや?」

ヴラドは、昨日話した五十鈴さんの監視の事について、伊織に尋ねる。

また、その監視を逃れる為の方法として、皇國代理天の世界法則[リアリティ]では存在できない呪法というワザを使い、感覚、知識の共有ができる様にすると伝える。



「簡単に言うと、心が読める様になるという事じゃ。

 まぁ少しナレが必要じゃが、読ませたく無い事があるなら、隠す事もできる」

「それは時雨限定?」

「む?いや、対象者は呪法しだいじゃな。

 例えば妾ともできるし、雲雀でも良い。

 ただ、複数は無理じゃ。

 その場合は土地や家など別の物を対象とせねばならぬ」


「私はヤシロ1人だけでいいわ」

「雲雀には聞いておらんわ、って良いのかや?

 もう結論を出してしまって。

 心は覗かれたくないのじゃろぅ?」

「う、でも、私だけ覗けないのはズルイ!」

「御主、せせこましいまでの平等論者よのぉ。

 それとも民主主義とやらか?

 日本人には民主主義は早すぎると思うがの?」

「幸せは義務なのよ~!!」キーッ




「要するに、時雨をメインフレームとして、我々が端末と考えれば良いのか?」

「その例えは、妾が判らんのじゃ」

うん、あってると思うよ、ヴラド。

「……うむ、主様もあっていると言っておる」

「今、時雨と秘密の会話していた?」

「うむ。

 会話と言うよりも、双方で勝手に独り言を思っているだけじゃ。

 たまたま、意思疎通ができるだけでの」


「直接相手に入力はできず、どちらも出力のみと言う事?」

「……そうじゃ。

 主様がこちらの事を勝手に覗き見ていて思った事を、妾が勝手に拾ってきていると言う事じゃな」

「判った。でも、時雨は3人分を常に監視している状態で無いと、相互交流が上手くできない?」

「そうなるの」

ええっ?

確かに、常に記憶や感覚同調してないと、相互交流は不可能だろうけど。

いや、そもそもそんな事やって、僕は自我を保つ事ができるの?


「まぁ、大丈夫じゃろぅ。なんて言ったかの?

 主様が前に言っていた……

 マルチタスクな思考法とか、分離思考じゃったかを駆使すれば良いのじゃ」


ああ、そういう事か。

同時に考えた事を、雲雀、伊織、ヴラド、それぞれ専用のフォルダに別けておけば良いのか。


んー。

何とかなるかも。



(そうかや、ならば、次に進むとしようかの)


「で、じゃ。もう1つ問題がある。

 それは皇國代理天の世界法則[リアリティ]じゃ。

 あの世界には、呪術が存在否定される。

 多分、希望とか祈り、占い、願う事、そういった類の無い世界なのじゃろう。

 営利で冷徹な計算式と、現状把握だけの様な……」

「ん。希望や占いは非現実的。

 現状の把握と効率的な未来への取捨選択のみ」

「ますますもって、妾には理解しかねる」

「仕方ない。私にも魔法は理解不能。

 心が直接、力を発揮するなんてナンセンス」


「ふふ、お互い様と言う事かや」

「ん」


「しかしの、それでは、ちと困る。

 御主が、妾の呪法を受け入れるのなら、ラパ・ヌイかイプセプスの世界法則[リアリティ]を、その身に受け入れて欲しいのじゃ。

 地球の世界法則[リアリティ]は持っておるじゃろうが、少しばかり弱いので、確実性の高い世界法則[リアリティ]にしたいのじゃ」

「……そうしないと、時雨と秘密の話ができない?」

「そうじゃ」


「判った。

 ここの世界法則[リアリティ]は地球とイプセプス?」

「ふむ、気付いておったかや」

「ん。この中だけ、別の世界法則[リアリティ]が存在してる。

 八代邸の世界法則[リアリティ]とは別物。

 あっちがラパ・ヌイ?」

「そうじゃ」

「どっちが効率的?」

「今後の事を考えるなら、ラパ・ヌイじゃ。

 魔法が使えるのでな。ただ……」


「ただ?」

「うむ、ラパ・ヌイの世界法則[リアリティ]はどうも、短絡思考的というか粗暴と言うか……

 口より先に手を出す、あまり文化的とは、言い難い部分もあるのじゃ……

 皇國代理天の世界法則[リアリティ]は、熟考をする事が多そうじゃからの。

 それが、御主に影響を与えるやもしれん」

「イプセプスは?」

「言いたくは無いが、思想文化、科学技術、精神熟成、どれをとってもあまりパッとしないのぅ。

 イプセプスが、どの世界よりも優れておると自慢できる物が思い浮かばぬのじゃ……」

「じゃあ、そっちで」

「良いのかや?」

「私に悪影響を与えなさそうだから」

「ああ、何か嫌な利点じゃ」

「考え方の違い。

 欠点は長所となる場合もある」

「それもそうじゃなぁ」




「ところで、私もそろそろ話に入って良い?」

「だが断る」

「何でよッ」

「冗談じゃ、そうカッカするで無い。で?」


「誓いの言葉は、時雨を守るで良いんじゃない?」

「ふむ、騎士の誓いみたいなものじゃな。

 その呪いで良いかの?」

「ん」

「私も」

「主様を傷つける事できぬ様になるぞ。

 良いか、雲雀?

 御主の暴力的コミュニケーションが不可能となる、という事ぞ?」

「エエッ!?それは困るッ」

「困るのかや……」

そうですか、困るんですか。雲雀……。


「この呪いで一番簡単な誓いは、初物を捧げるという奴じゃが……」

「無理。前も後ろも、上も下も」

「そうかや」

「えー、じゃあ、どうしよう。

 時雨に何を誓うのよ~」

「自分で考えるのじゃな?」

「うぇーん、ヴラえも~ん。

 魔法で何とかしてよぉ~」

「えぇい!うっとうしっ!」







そんな時だった。

桜の木が光った気がする。


いや、気がするのではなく、実際に輝いている。


幻想的な光景。

薄桃色の花びらも、その色のままに周りがうっすらと光り輝く。


ほのかにだが、黄金に。





雲雀と伊織も、少し驚いたようだが、「綺麗ぇ~」とか「……ん」とやっている。

花より団子というが、今、この瞬間のみ、まさに花見だ。


残念ながら、それを僕の肉眼は捕らえていない。

肉の塊を前にして、焙った所を切り分けているだけだ。

それを旨そうに食べるドラコニー。


僕が、かじられないようにする為には、彼に僕が食料で無い事を判ってもらわねばならなかった。

僕が如何に有能で、彼にとって必要な存在かをアピールしなければならなかったのだ。


ドネルケバブを焙り、焼けた旨い場所を、そぎ落とし、喰いやすい形にして、提供する。延々と。


これで僕の有能さに感動して、ドラコニーはデザートとして食べる事を諦めようとするだろう。

完璧だ。




(お主様ッ)

なに、ヴラド?

桜が光っているけど、どうしたの?


(知らんフリをせよ!

 そのままでいるのじゃ!)


……判った、何かあるんだね?


(すまなんだ、最初に伝えて置けばよかったのじゃが、その様な暇が無かった)

「?」



「この木は桜ではない。

 世界樹[ユグドラシル]といっての……イプセプスの(かなめ)じゃ」

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