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世界の 法則が 乱れる!  作者: JR
第05話 桃源郷の誓い
70/169

ドッグスタイルで市中引き回しの刑?


「さっさと伊織を手伝って来い!!」ぼぐぅ

げひゃああっ

メイドさんの黄金の右が炸裂した。

「これが若さかっ」

雲雀に以前言われた通りに、殴られた時に言わないといけない台詞を言う。

企業戦士Zガソダムからのしきたりなんだそうな。



雲雀のパンチは、相変らず良い音がでる割に痛くない。

そういう仕様のパンチだ。


昔、聞いてみた事があったんだけど

「私は寸止めしてるんだよ、凄いでしょ?

 偉いでしょ?褒めるしかないでしょ?」って言っていた。

確かにその通りだ。

雲雀のグーパンは青アザができない。

その割に吹っ飛んでるし、鼻血も出るけどね。


「あんた、自分から飛んでってるだけじゃない」

だそうで……。

武道とか空手を嗜む事なんて無かったから、寸止めがどれだけ凄いのか僕には理解できない。

取り合えず、痛くないパンチを撃っている間、雲雀は冷静だ。

雲雀本来の力に比べれば、かなり力をセーブしてるからだ。


水曜日の事は、思い出したくないけど、でも、やっぱり、僕の体重+椅子(車輪付き)を、片手で引きずるだけでも、充分凄い……。

だけど、あれでもまだ、力を出し切って無い。

雲雀が怒りに我を忘れて、火事場の馬鹿力みたいなのを出したら、きっと凄い事になりそうだ。

怖い、怖い。


なので、土下座して、また後でメイド服を頬擦りさせてもらう約束を取り付け、その場を後にする。

雲雀を“特別”に愛した……とはいえないかもしれないが、機嫌がよくなってるし、ここは一旦雲雀の言葉に乗る事にする。


さて、次は伊織を手伝おう。

声を出せるようになる道具を作っているもんだとばかり思っていたんだけど……。





僕は離れから外に出る。

伊織を探す為だ。


花見兼焼肉を行うために色々と材料を買ったみたいだけど、炭とか紙皿の類はまだ、車の中にあるらしい。

それを桜のある所まで持って行こうと思ったんだけど……肝心の伊織と車がない。

門じゃなくて、車庫の方かな?



来た道を引き返し、僕は、車庫へと向かう。



いた。

だけど、様子が……。

伊織は、車庫へと向かう途中のスロープに座っていた。


たそがれている。


どうしたんだろう。

また、僕が原因なんだろうか?



僕は、伊織に近づいていく。

彼女は僕の接近にすぐに気づき、のろのろと顔をあげる。

僕は伊織の隣に腰を下ろし、一緒にたそがれる事にする。






「ん……」

犬の首輪とリードを渡される。

元々は黒のチョーカーだった物を、急いで犬の首輪にくっつけた急増品だ。


これを、どうしろと?

いや、何も問うまい。


僕はイソイソと首に繋いだ。

ワンワンプレイも露出プレイも伊織とならきっと楽しいさ。


「んっ……」

咽喉元がチクッとする。

痛みを感じたのは一瞬だけ、後は、痛くはないが、圧迫感が気になる。

「なんだ?こりゃ……」

「どう……?」

リードを引っ張って、僕を近づける伊織。


「ん、ちょっと圧迫感があるね……」

「それは仕方ない」

「……で、これで何するの?」

「……散歩」

無表情に大胆な事を言う。

「そうですか……」

ワンワンプレイですか。

僕は中腰になり、舌を出して「はっはっはっ」と犬になる。

うむ。

良く似てる。


……。


あれ?


「喋れてる……」

咽喉に手を当て、あーあーあー、らめぇっと声を出す。



「ある程度は話せると思う」

ぼそぼそ……と伊織。


「あ、ありがとう!!」

がばっと抱きつく。

一瞬、伊織の身体がビクッと反応した。

だけど、ここは先に自分の気持ちを伝える。

「ううう、有難う。

 喋れるぅぅ、助かったよォ」

涙出てきた。


元々僕は、人と話すのが苦手だ。

そんな僕が会話以外のツールを使って人とコミュニケーションなんて取れるわけが無い。

僕の事を見知っている人ならともかく、初見の人なら間違いなく攻撃的な対応を取られる。


それ以上に、皆と話す事ができないのは、それだけで鬱憤が溜まるんだ。

助かった。


「ありがとぅぅ」

僕は伊織の胸に顔をうずめ……

いつの間にか、僕は、伊織に抱きしめられていた。

嫌われていない?

ヴラドの事で怒っているワケではないの?

そんな逡巡を気にせず、伊織は僕を更に抱きしめる。


くんか、くんか。

汗と伊織の匂いがする。

全くの化粧っ気の無い匂いだ。

くんか、くんか。

「時雨……、何か変態っぽい?」

「う」




「そう言えば、家に下宿するって話……」

「うん」

「五十鈴さんからOKでたよ。

 家賃は格安、僕の手伝いをしてもらうだけ」

「それは、手伝いの内容次第だが、ほぼ無料では?」

「うんにゃ?

 毎日、御飯を食べる時に僕と一緒に食べてもらう。

 場合によっては他の人も一緒にいるかも」

「ええっ!?」

伊織は、僕から離れると後ろに後退る。


「コレは家主の決定。

 家主と店子は親子も同然。

 親の言葉は海より深い」

「生みより不快?」

「字が違う」

「う、その、時雨、2人愛し合う時間と言うものは重要だ。しかs」

「地球での生活に慣れてもらうための訓練です」

「う」

「では先程は、何でたそがれていたのか、説明する」

「そ、それは……」


伊織は押しに弱い。

ここぞとばかりに押し込む。



「見てしまったから?」

「……」


暫く間を置いて伊織は頷く。


僕は、ワケをききだす。

焦らずに、ゆっくりと。






原因は僕でした。

すいません。


首輪ができたので、早速持っていったところ、ヴラドとお楽しみでしたね、なシーン。

前と同じ様に、再び覗きをしている最中に雲雀が「俺、参上」

→ムギャオーする雲雀を引っ張って退散。

以後、黄昏ロンリー。


うあああ。

どうにもタイミングが悪い。

皆を平等に、それでいて1人ずつ特別に扱う……。


これでは、最初からヴラドだけ特別枠みたいな扱いをしてしまっている様に見られて当然。

誤解を解かないと。




「時雨」

「なに?」

「質問、さっきのは何?」

「さっきのって?」

「これ」

伊織は。腰を落として、舌を出し「はっはっはっ」と犬のポ-ズをする。


キター!!

来ました。

腰に直撃。


もう、堪りません。

押し倒そう、うん。今すぐ。

いやいや、待て待て。

ケダモノすぐる。


いや。

いかん。どうも近頃、自分が壊れてきている気がする。

なんというか、考えるより先に行動みたいな……。


落ち着け~、落ち着け~。

2,3、5,7,11、13,17,19……

よし。

「こほん、伊織。

 そのポーズは犬のポーズ、ドッグスタイルと言います。

 古来より伝わる、貴方に絶対の服従を誓うという由緒正しいポーズです」

嘘です。




「忠誠を誓う?」

「うん」

「判った……はっはっはっ……」

舌を出して、犬のポーズをする。


いかん。

かなり罪悪感が……。


いや、それ以上に、ドキドキが止まりません。

もう押し倒そう、そうしよう。




伊織はすぐに、このポーズを止める。

「地球に着てから何度か犬を見たが、この様なポーズはしていなかった……

 時雨、何だか馬鹿っぽいな」



ぐさぁっ


「御免なさい」

素直に謝る。


「?」


「全部、嘘です。御免なさい」

「む、嘘なのか」

「はい」

「私は時雨に恥をかかされたのか……」

「え?」

剣呑な雰囲気。


「時雨、私の忠誠心を謀って笑いものにしたな?

 私はこの恥を雪がねばならない」

伊織は、忍者刀を取ると、スラッと鞘から反りのない直刀を引抜く。

「うぇえッ」

後退る。

「ご、ごめっ、冗談ですっ」

「やって良い冗談と、悪い冗談がある」チャキッ

ごもっとも……。


「あ、あのできれば、痛くしないで欲しいなぁ。

 せめて、半殺しだと助かるんですけど……ダメ?」

伊織は無言で頷く。

「!!」

正に一瞬。

瞬きの暇なく、次の瞬間には、伊織は僕のすぐ傍にいた。


雲雀と戦ったときに見せた、縮地だ。

すでに伊織は忍者刀を振り上げ、下ろす動作に入っているのが判った。


間に合わない。

どんな防御行動も、回避動作も全て。

正に疾風迅雷。



まぁ、いいか。

伊織になら……ナイスボート!

いい夢みせてもらいました。


運が良ければ、ヴラドが間に合うだろ。

この後、皆、喧嘩しないと良いけどなぁ……。



目を瞑る。




……。


…………。



来るべき斬撃は無かった。

いつまで待っても。


目を開ける。


目の前で忍者刀は止まっていた。


伊織が泣きそうな、怒り顔になっている。

「?」

どうしたんだろう。


「ヴラドや雲雀が言ってた。

 時雨はもっと生に執着するべき。

 私も、そう思う」

「う~ん。充分、執着してるけど……」

「もっと」

「?」

「もっと執着すべき」

そうですか。

もっとですか。


「今の斬撃は、時雨の運動能力なら私に抱きつくか、右腕を押さえるだけで防御は可能」

「いやいや、伊織の運動能力についていけるような体格ではないですよ?」


「体格は必要ない。

 時雨の動体視力はかなり高い。

 私の斬撃を途中まで追っている。

 見切りは余裕のはず」

「……」

「だけど、途中で目を閉じた。

 諦めるのが早すぎる」

伊織は、手がフルフルと震えている。

何だか、とても悔しそうだ。


「私は、時雨と居ると楽しい」

「うん」

「私は、時雨を守る」

「う、まぁ、うん。

 ぼ、僕も伊織を守るよ」

「時雨は、私と居て楽しいか?」

「それは、もう!」

コクコクと頷く。

嘘、偽り無い気持ちだ。



「私は、時雨と居ると時々、胸が苦しくなる……

 いや、雲雀やヴラドが時雨と一緒に居るのを見ると、息が苦しい……?

 いや、腹にナイフを当てているような感じ?

 ……臓腑を抉り取りたくなる様な?」

すいません。

その例えは、僕には判りかねます。

でも、

それは、

もしかして……


「嫉妬?」

伊織に問いかける。

「判らない。

 でも……時雨が居なくなるよりかは、その状態の方がマシ」


多分、嫉妬している……と思う。


五十鈴さんの言葉を信じるなら、試験管ベビーである伊織は8歳までは文字通り試験管内で、2年で身体訓練、実践投入は3ヶ月前……。

実年齢10歳で、社会経験はよくて2年と半年……。

きっと、自分の感情を持て余してるんだろう。

もしくは、知識のみで知らなかった感情を実体験して、戸惑っている……といった所だろう。




実は、僕自身が不思議に思っていた事があった。

伊織の冷静さの裏にある過剰反応。

常に冷静な伊織が、時々、取り乱したり、多弁になる事がある。

多分、伊織の冷静さ、と言うのは、それは感情を消していると言うより、何も感じない事からくる無表情なんだろう。

それに対して、抱き合う事もだけど、皇國代理天の世界法則[リアリティ]で言うセクシャルな事(一緒に食事をしたり、睡眠を取ったりする)をすると過剰な反応をする。

五十鈴さんみたいに笑ってかわすか、はっきりと嫌だと言えば良いのに、大袈裟に驚いて後退る……。

冷静さが消え去り、慌てふためく。


これらの行動の裏には、きっと10歳という実年齢と、社会勉強不足が絡んでいるんだ。

きっと適格な条件反射ができない場合、あの様な状況になるんだろう。



「うん。話は戻るけd」

「私の話はまだ続く」

「え~……」

何とか、会話のイニシアチブを取らないと、伊織を“特別”に愛してるってできないぞ。これ。

意外に強敵だ。



「時雨……質問だが、その、時雨はヴラドとしていた様な、体外受精の方が安全なのに、あえて母体を危機に陥れる、反社会的なケダモノじみた行為を、私ともしたいのか?」

「は……?」

えーと、えーと……。

伊織の言葉を反芻する。


ぽん。

「ああ、伊織と抱き合いたいか、と言う事?」

「違う」

「?」

「穴があったら入れたい?と言う事」

「同じじゃん!っていうか、品が無いよ!」

「雲雀っぽい……」

「あ、うん。そうだね」

伊織にまで言われているよ、雲雀。

「やりたい?」

「はい!とっても!」



「そうか……」

悲しそうな顔をする伊織

え?

なんで??


僕は、無理難題、無茶苦茶を言ったのか?

それとも軽蔑された?


「あ、あのですね、生に執着させる良い方法として、現世に未練をタラタラ残しておくと言う、良い方法があるんですがッ!

 そ、それで、目の前に人参をぶら下げた馬のように、伊織を抱かせない、お預けを延々と繰り返すと言う方法もアリですが……ッ

 僕としては伊織を抱きたいです。

 次から次へと欲望まみれな関係を築きたいです。

 そうすれば、死ぬ前に、もっと色々と試したい事があったなぁ……と、だから死ねないとか、

 今死ぬと、僕だけの秘蔵のお宝、ハードディスクの“いけない伊織官能データ集”を他人に見られてしまう、だから死ねない!とか、

 色々と死ねない理由作りができます!

 伊織が大好きです!

 キスもしたいし、抱きたいし、色々とやりたい!ワンワンプレイも露出もいいね!

 判った、市中引き回しでもいいから、だ、だから……」

珍しく、多弁に気持ちを伝える。

支離滅裂なのは仕方が無い。



「あ、ありがとう。

 面と向かって言われると、てれる」

かなり引き気味に伊織が答える。


「……時雨は、やっぱり変態?」

「違います。

 地球の世界法則[リアリティ]です」

「そ、そうなのか?」

「はい、間違いありません」

「そ、そうか、地球人は変態……」



「時雨に穴の事を話す」

「?」

「聞いて欲しい」

「うん、いいけど……穴の事?」

コクコクと頷く伊織。

「私に穴は無い」

「は?」


「勘付いていると思うが、私の指先からは電気を流す事ができる」

「あ、それで、声が出せれたんだ……

 やっぱり、原理は人工咽喉と同じか」


「私は筋肉細胞の一部を発電用に変更している」

「……?」

「とはいえ、常に筋肉を蓄電状態にしておくわけにはいかない。

 電子機器に与える影響が大きすぎる。

 だから、丹田に生体蓄電器……バッテリーを入れてある」

「……丹田?」

「オヘソの下あたり」

「あ、うん」

「私はバッテリーを入れる為に、子宮を摘出した」

「え?」

「だから抱いても、その、時雨は楽しむ事ができない……」

「あ、そういうことね……」


「すまない。

 コレを言って時雨に嫌われるのが……その……」

「大丈夫!!」

僕は伊織のお尻をはたく。

「わ!」

パァンと良い音が響く。

「大丈夫!伊織は気にしすぎ!

 日本人ハ変態デス。

 楽シミ方モ色々デス!」


「そ、そうなのか……

 やっぱり、時雨はケダモノ……」


「例えばっ!」

「わっ」

ガバッっと再び、伊織の腰に抱きつく。

抱きつく際に、伊織の手が貫手となって僕を襲おうとしたのを見た。

寸前で止めたようだが。

多分、貫手は無意識での行動だろう。

こえぇ、こえぇよぅ。


だが、いつまでも震えているわけにはいかない。

せっかく抱きついたんだ。

伊織の感触を確かめる。


「んぅ、時雨、この行為に何の意味がある?」

「僕は伊織とこうしているだけで、充分、楽しいよ?

 伊織は楽しくない?」


僕は伊織の胸に顔をうずめる。

雲雀ほど大きすぎないし、ヴラドのように真っ平らで無い胸に。


「楽しい……?」


僕の背中に、伊織の手が回される。


「……」

ぎゅっ

僕は更に深く抱く。

「あ」

僕の身体と伊織の身体の密着度が増す。


伊織が深く息を吐いた。


「うん……楽しい。充足する」


伊織は僕の頭を掻き抱く様に抱きしめる。

伊織はスレンダーな胸だけど、それでも充分なほど、僕に女という存在感をアピールしている。

暖かい。

気持ち好い。

伊織の匂いがする。

ちょっと汗の臭いがするけど、伊織、独特の匂い。

キスした時は感じる余裕もなかったけど、今は……。

僕は伊織の腰を抱くと、しばらく、その状態を楽しんだ。






そ-いえば……。

「なんで、伊織はセーラー服なの?」


「家が無い、服が無い」

あ……って言う事は、3日ぐらい、同じの着てるよね?

くんか、くんか

「時雨?」

くんか、くんか


汗の臭いが、鼻孔をくすぐる。

ああ、コレはコレで……

じゃなくて。


「洗濯をします」

「?」

「セーラー服を脱いで下さい。

 下着も脱いでください。

 靴下はそのままで」

「うぇえ?な、なぜ、時雨?」


「伊織の香りが、僕の脳を直撃して押し倒したくなるからです。

 押し倒されたくなければ、脱いで下さい」

「ま、待って?

 言ってる意味が」

「脱ぐか、全身くまなく舐められるかの2択です」


「どちらも嫌」

「じゃ、両方。

 脱がしてペロペロで」

「ひぃ」


逃がさない。

腰はがっちりホールドしたままだ。



「わ、判った、時雨、脱ぐ代わりに他の服を……」

「ワイシャツとトレーナー、どっちがいい?」

「えと、下半身は?」

「ない」

「せめて、何か……」

水曜日、半裸で境内をうろうろしていた時からは、まさにありえない、考えられない進歩だ。


恥じらう顔が堪りません。

でも、手は抜かない。


「パンツじゃないから恥ずかしくないもん!」

「は?」


「伊織も一緒に」

「え?」

「パンツじゃないから恥ずかしくないもん!

 ……一緒に言って?」

「あ、うん。えと……パ、パn」


「パンツじゃないから恥ずかしくないもん!

 りぴーと、あふたーみー」


「パ、パンツじゃないから恥ずかしくないもん……」


「もっと大きく!!」

「え」

「腹の底から、大きな声で!!」

「パ、パンツじゃないから恥ずかしくないもん!」


「よろしい。

 では、着替えましょう。

 前はトレーナーだったので、今日はワイシャツで。

 ……いや、エプロンだけってのもアリだな」

「ひ……」

赤面して泣きそうな伊織。




どどどど



ん?



どどどど、


バンッ


扉を開け放つと同時に、雲雀が姿を見せた。

ダッ

「何してんのよ、この色ボケェッ!!!」

その次の瞬間、僕は蹴られる。

ぺぎゃわっ


何回か転がり、顔をしたたかに地面にぶつけて僕は止まる。


トップロープからの飛び蹴り、コレは効いた。

頭がくらくらする。


雲雀は、ワザワザ離れから 車庫の入り口まで走って来たらしい。



「ハーレム作ったら、早速セクハラか、アンタは!

 乳繰り合うわ、スカートめくるは、羞恥プレイまで、この変態!」


腕を組んで仁王立ち。

僕を見下ろす。

ガイナ立ちと呼ばれる、雄々しきポーズ。


この流れはヤバイ。

僕の脳内に重厚なる音楽が鳴り響く。


デンドンデンドンデンドンデンドン♪


ヤバイまずい、何となく気後れする。

コレは怖い。

流れ、そう、流れを変えないとッ




「お、お待ち、お待ちをッ、お奉行様っ」

「なんじゃ、しぐのすけ」

「じ、実はかくかくしかじか」

「判らんわ」

僕をびしっと指差す。


「その方、女子(おなご)の心をもてあそび、日々のセクハラ三昧。

 お天道様が許しても、このメイド服がゆるさねぇッ!

 裁きを申し渡す。

 市中引き回しの上、打ち首獄門を申し渡す。ひったてぇ~い!」


「ちょ、まって。それは酷い!

 そもそも、たかが町奉行に死罪判決する権利無いよ!」

「頭が高いッ!無礼者!!」

「ひぃっ!!

 お、お待ちを、ちょっと待って、お奉行様。

 伊織に貸せる服、何か無い?

 メイド服とか、メイド服とか、メイド服みたいなの」


「なんでパンツがメイド服になるのよ?」

あー、えっと。

「それとも、ストライクウィニーズの話?」

ふぅ、やっと、マトモに会話できる流れに。


「えっとね……」

僕は今までの経緯を簡単に話す事にした。

要するに、伊織のセーラー服を洗濯する事と、その間の服をどうするかの話。


「あー、汗の臭いね、で、替えの服かぁ……」

ちらと伊織を見る雲雀。

「まぁ、確かに大冒険だったもんね?」

伊織と雲雀は、何かアイコンタクトしている。

しかも、伊織も雲雀も、ちょっと笑ってる。



む、むむむ。



やっぱり水曜日の時よりも仲良くなっている。

仲が良くなるような何かがあったんだろう。


むむ。

知りたい。

しりた-いーぞーッ!



「あ、そういえば……」

雲雀は何か名案が湧いたのか、暫く唸っていたが、ふと声を挙げる。

「何か、服ある?」

「うん、ある。だけど……」

雲雀は僕を見る。

「?」

「実は、その服、氷雨さんの私物だから私が勝手にするワケにはいかないの。

 背丈も伊織と同じぐらいだから大きさについては、大丈夫だと思う」

「氷雨……というと、祖母の部屋かな?」

「うん。とってもお世話になった方だから。

 本当だったら、秋霖さんに聞かなくちゃいけないけど、いないから……

 跡取りである時雨に使っても良いか、聞いておくね?」


僕は、雲雀と八代の人々との関係同様、祖母の事は殆ど覚えていない。

だから、懐かしそうに言う雲雀がちょっとだけ、羨ましく感じる。

「あ、うん。いいよ」

「じゃあ、ちょっと、見てくる。

 部屋の鍵はいつものところ?」

「うん」

あわただしく雲雀は行ってしまった。

料理の用意、いいんだろうか?



まぁ、いいか。




「それから、油売ってないで、キチンと用意しといてよ!!」

むぅ。

釘、刺された。



雲雀に蹴られて、スロ-プから転げ落ちた僕は、車庫を眺める。

ここも無駄に広い。

車庫の中には、伊織の紺色のジムニー、ドネルケバブの移動販売車、祖父のサイドカー付きのカブがあるのだが、それでも後2台は入る。

この家に、お客さんなんて来ないのに……見栄っ張りなだけだ。




あ。


「そういえば、ドネルケバブの移動販売車って伊織が持ってきてくれたの?」

「ん。管理人から緊急で“駅前のドネルケバブの移動販売車を至急確保、八代邸に秘密裏に護送せよ”と金曜日の帰り間際に命令が下った」

「あああ、無茶を言って御免ね」

「駅前の惨事は、時雨の行為?」

「えぇと……」

はい、結果的にはそうです。


「あの事件は、五十鈴マンション爆破事件の犯人と同一と言う事になった」

「え、事件?」

「ん。犯人は、マンションの爆破で自信をつけたらしく、第2の犯行を駅前で行う予定だった。

 しかし、ある偶然の結果、当時、もれ出ていたプロパンガスに加え、戦時中の不発弾の爆発が重なり、被害が加速度的に、増した」

「不発弾ってかなり無理が無い?

 ここは元々、山だったから……」

「大丈夫。きっと上手くいく」



何だろう、検察とか警察に工作員が居るのかな?

「移動販売車どうする?」

「あ、そうか。これ、パクッちゃった事になるんだ」

伊織がコクコクと頷く。

「変更しておく?」


何を?とは聞かないで置く。

「お願いします……」

「ん」


「伊織、この車を裏山の桜のある所まで、運転してもらって良い?」

「ん」

「ありがと。

 じゃあ、コソボイの中から、移動販売車の方に荷物を移すから手伝って?」


「ん。コソボイ、ロック解除」

伊織はジムニーに語りかける。


「私ハこそぼいデハナイ」


「……」

あー、やっぱり。

謎仕様の車だ。


「じゃあ、なんて名前なn」


「ダガ人ヨ、名ヲ問ウナカレ。

 闇ニ生マレ闇ニ消エル。

 ソレガ車ノ定メナノダ」

「それ、車じゃなくて忍者だよ。

 サスケ、お前を切る!!」

「……判ルノカ!?」


「サスケって言う、かなり昔のアニメのOPだったか、出だしのイントロだったか……」

「詳シイナ」

「雲雀と祖父と父の遺品に鍛えられた」


「気ニ入ッタ!

 助手席ニ来テ、伊織ヲふぁっくシテイイ!」


この車、会話が成立するよ……。

いや、それ以上に素敵な車だ。

一生ついて行くしかない。


「時雨、馬鹿車の言う事は、聞かなくていい」

「え、でも助手席……」

「聞かなくていい」

「はい……」ぐすん






そして、僕と伊織は、荷物を移動販売車に入れ替えて、裏山の桜のある場所まで移動した。

後から、ドラコニーとか言うのをヴラドが連れて来るから、今の内にドネルケバブを焙っておこうと思ったのだ。


大きな桜は、よじくれているが、しっかりと大地に根をはり、満開の桜を咲かせていた。

もう5月近く。

桜の季節は過ぎ去っているはずだが、今年は珍しく、桜の開花が遅れているらしい。


時刻は4時過ぎ。

闇の帳がおりようとしている。


裏山で桜のある場所は、ここだけで、少し開けた場所となっている。

良く見ると、この桜のある場所近辺は、桜を中心に塀で囲まれ、私有地にて立ち入り禁止の札が貼られていた。



この場所に入って判った事がある。

何かが違う。

雰囲気と言うのか、聖域とか神域みたいな……。

何だろう?




塀に囲まれた中、入り口近くには、小屋がある。

小屋は古くから建てられた物らしい。

物置小屋ではなく、大きくは無いが、江戸時代の農家のような、板張りに中央に囲炉裏のある小屋だ。

ところが、小屋の中は電気が通っており、冷蔵庫やクーラー、TVが使えるようになっている。

雰囲気を台無しにするアンバランスさだ。


その中から色々と物を運び出す。



そして、全ての用意は整った。


さぁ、花見だ!


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