メイドさんが右に
「さて、お主様。
妾は充分、特別を堪能した。
次は伊織か雲雀を、特別にしてやるが良い」
ヴラドが少し強がっているのが判る。
でも、それ以上に今は1人になりたいみたいだ……。
僕は今の所、これ以上は力になれそうに無い。
僕は判った、と、承諾の意思をヴラドに伝える。
予備の作務衣に着替え、ヴラドの乱れた髪を梳かすと、僕はヴラドを再び抱きしめ、部屋を後にする。
僕は雲雀を求めて彷徨っていた。
僕は自室から台所へと向かうが、いない。
まぁ、だいたい予想通りだ。
次に離れの台所へと向かう。
家の中をコの字状に歩いている事になる。
これだから、無駄に大きい家は……。
いえ、大きい事は良い事なんですけどね。
おや?
そこで、僕は初めて気づく。
入ってくる陽の光がおかしい事に。
あれ?
あれれ?
西日だ。
近くの部屋の壁時計を見る。
午後3時……。
実は、朝だと思っていました。
雲雀は、朝からがっつり焼肉を喰う気なのかと、なんてヘヴィな朝飯だ、と戦々恐々としていたけど……。
そっか、多分、飲まず喰わずで看病していてくれたんだろう。
頭が下がる。
雲雀は未だに去年の事を後悔していると言うか、トラウマみたいになってしまっている。
僕自身も、あの時の自分の対応に腹が立つ。
僕は自分に一番近い人の事さえ知ろうとしなかった。
もっとしっかりと雲雀の事を知っていれば、知ろうとしてさえいれば、もっと他に手を打てたかもしれないのに。
結局、何もしなかったつけが、今に響いている。
でも、まだやり直しは効く筈だ。
もっと雲雀と話して、言いたい事を言って、文句を言われて、仲良くなろう。
今まで以上に。
予想通り、雲雀は、離れの台所で悪戦苦闘をしていた。
正直、作りすぎではないだろうか?という分量である。
肉と野菜をメインに、テーブルの上は溢れかえる程の食材の山。
それを、鬼気迫る表情で調理する雲雀。
正直、声をかけるのを躊躇ってしまう。
どうしよう。
きっと雲雀の背中の筋肉は、鬼の様に見えるに違いない。
「ヤシロ?」ギロ
そんな、不穏当な冗談を考えていた僕の思考を呼んだのか、雲雀が、振り向く。
カキカキッ
『はい、何でしょう?』カッ
ホワイトボードを掲げる。
「さっきはお楽しみでしたね」
え?
『な、何の事?』
「ほほぅ。シラを切るか」
右手に包丁、左手に白菜。
ナイスボートが近い。
やばい、何かヤバイ。
『ごめんなさい』
ヘタレな僕は、さっさと謝る事にした。
「そ・れ・は・何に対しての謝罪か、判って謝ってる?」
う。
まずい。
珍しく、理性的な怒り方をしている。
この状態の時は、まずい。
下手に謝ると……って、もう謝っちゃってる。
話を逸らすのは悪手だ、余計に攻撃する隙を与えるだけだ。
逃亡は……
魔王からは逃げられない!
無理ッ
ぐ、打つ手無し。
だが正直にヴラドと乳繰り合ってました、なんて言おうものなら……Nice boat確実。
汗をダラダラとかきながら、死刑宣告を待つ。
何か、ないか……。
ん?
おや?
雲雀がメイド服を着ている。
今までが自然すぎて違和感すら覚えなかったけど、なんだろう。
僕は、雲雀のメイドコスプレは始めてみるけど……
なつかしいのか、自然すぐるのか……
ああ、そうだ、似合いすぎて、それがデフォルトだと感じているんだ。
「?」
怪訝そうに僕を見る雲雀を無視して、僕は急いでホワイトボードに書き込む。
『御主人様って呼んで!』
「言うに事欠いてそれか!!」
ひぃ。
でも、書かずにはいられなかった。
『御主人様!御主人様!』
はぁ。
「御主人様、歯を食いしばって下さいませ?」にこっ
御主人様~
御主人様~
御主人様~♪
正に天上の音色。
ハレルヤコーラスと共に、
御主人様~
御主人様~
御主人様~♪
もう、グーパン受けても僕は、大丈夫。
裁きを受けよう。
裁きは来なかった。
どっと疲れた顔で、雲雀が僕を見ている。
『どうしたの?』
「そんなキラキラした目で殴られるのを、待ちわびてるなんて……
あの銀髪ロリに変な性癖、植え付けられたの?」
「?」
変な性癖?
色々と思い当たる事は無いとは言えないけど……。
『見とれていただけです』
とりあえず書き込む。
「ん?見とれてた?」
急に笑顔になった。
「ね?どう、これ、似合う?御主人様」ふりふり
GJ。 ∑d(>ヮ<) ← こんな感じ。
「ふっふ~ん♪」
ひらひらとスカートとゆする。
膝下5cmほどの長さに、ゆったり、ふわっとしたスカート。
黒地に白いフリルつきエプロンが映える、この白と黒のバランスが堪らない。
頭飾りのホワイトプリムも派手さが無く、雲雀の黒髪に溶け込む様に、控えめに存在を主張している奥ゆかしさ。
背中のデザイン、エプロンの結び方も僕好みだ。
うむ。
飾り気など無く、いたってシンプルだが、どこに出しても大丈夫なヴィクトリアンメイドスタイル。
素晴らしい。
だが……。
ぴらっ
「―――!!!」
雲雀が息を呑んだが気にしない。
そのままスカートをめくる。
ドロワース。
……完璧だ。
僕は手を叩く。
「ブラボゥ!」「エクセレント!」「ビューティフル!」と言いたかったのだが、口からはヒューヒューヒューのみ。
右の拳を握って僕を殴りかけた雲雀だが、今回も我慢したみたい。
『どうしたの?』
なんで殴らないんだろう?
いつもなら、ここで殴られて、鼻血を出しているんだけど。
日常茶飯事だから慣れちゃったし。
そこには意気消沈した雲雀がいた。
「ねぇ、ヤシロ、本当に私の事、好き?
こんな、がさつな暴力女、糞ビッチのヤリマン……どこがいいの?」
うわぁぁ、やっぱりアップダウンの差が激しいなぁ、雲雀は。
「――――」
そんな事無いって言いたくても声が出ない。
悔しいな。
よし。
声を出せれないなら、態度で示すしかない!
「水曜日の事は御免。
でも……本当にヤシロを誰かに取られたk」
あー、もう。また……。
台所の床に脚をつけて座り込んだ雲雀の前まで移動する。
「ンッ」
構わず唇を奪う。
同意なんかいらない、ムードなんて考えない。
もう逃がさない。
抱きしめ、頭を押さえる。
伊織と同じパターンを使用する。
もう少し、雲雀を元気にさせる事のできるレパートリーがあればいいんだけど……。
やっぱり僕は、雲雀の事を何にも判っていない。
最初は抵抗したが、それが本気で抵抗しているわけで無いのは、すぐに判った。
雲雀が抵抗したら、僕なんてすぐに剥がされる。
僕を受け入れてくれたのを見計らって、床に押し倒す。
もう堪りません、だってメイドだし。
このままいっきに……でも、我慢。
一旦、小休止を入れる為に唇を離す。
はぁはぁと僕。
いやいや、ちょっと待て。
雲雀を元気付ける為なのに、僕が元気になってどうする?
ん?
いや。
雲雀も、目に何か熱い期待うを浮かべているような……。
呼吸が荒い。
ちょっとした興奮状態になっているのは確かだ。
「ヤシロ……」
雲雀がつぶやく。
「必死になると、やっぱり怖い顔だ……」
ほっといてください。
僕がもう一回キスをしようと顔を近づけると、雲雀はやんわりと拒絶した。
「ありがとう、ヤシロ。
でも御免……この先はもう少し待ってて」
「……」
「自分がやった馬鹿な事が、まだ許せないから……
ヤシロがどんなに否定しても、自分が汚いって思っちゃってるから……
もう少し、せめて、克服できるまで……」
むぅ。
まだそんな事を……。
なんで、自分を汚いなんて思うかな。
『臨戦態勢に入ってしまった息子をどーしろと?』
ホワイトボードで異議申し立て。
『メイドさんのお仕事は、掃除、洗濯、お料理、SEXと南さんのロックンロールでm』
ぼぐぅ
ぐふぅ。
な、なんで密着状態から、こんな重い拳が打てるかな、雲雀は……。
「大好きだよ……」
悶絶している僕の耳元で雲雀は囁く。
かきかき
『愛してくれているなら、もう少しやさしくして下さい』
「やさしくしたいんだけどね、ヤシロ……」
立ち上がった雲雀は、いつもの顔に戻っていた。
しかし。
雲雀の顔はすぐに般若の形相にとって変わる。
「まず最初に、女を抱いたなら、風呂に入りなさい、臭うから!
ヤシロ、キスする時、銀髪ロリの匂いがしたんだよ!
判ってる!?
3Pじゃないなら、事後はシャワー!!
最低限のエチケットだからね!!」
え?
「ハーレムだし、相手は真祖たる吸血鬼[ムロゥイ]だし、ちょっと意気消沈しちゃってかわいそうだし、仕方ないけどッ!!
それでも、せめて、次の女を抱く時ぐらいは、シャワーで汗流せ!!」
なんというか、これは、完全に僕が悪かった様です。
デリカシーが足りませんでした。
つくづく思い知る。
僕の周りの女性は、強い人が多い。
身も心も。
土下座。
『申し訳ございません』
「わ、判ればいいのよ」
『シャワーを浴びてきます』
僕は立ち上がり、その場を去ろうとした。
「あ……」
雲雀が、何か言いよどむ。
何だろう?
……。
益荒男を指差しながら聞く。
『欲しいの?』
「うるさーーーいッ!!」
顔を赤くして怒り出す雲雀に、急いでホワイトボードに文字を書き加える。
『すぐに花見の準備手伝うからね!』
僕は逃げる様に、離れの風呂場へと向かった。
それから、10分ほどぐらいだろうか、僕が離れのシャワー浴びて帰ってくると、雲雀とヴラドの話し声がする。
あの2人かぁ。
どうか、喧嘩してませんように!
祈りつつ、そちらに向けて歩いていく。
「ヤシロ~?」
「喧嘩なんぞしておらんから安心せい、お主様!」
僕は足音を忍ばせていったつもりだったけど、やっぱりデブなのか災いして音がたったのか、それとも雲雀とヴラドの知覚力が高いからなのか、僕の接近はすぐに2人にばれた。
声だけを聞くと、ヴラドはいつもの調子だ。
雲雀も、ニュートラルな状態みたいだし、場の雰囲気としては、悪くなかった。
ふぅ。よかった。
「実は、雲雀と話しておったのじゃ」
「?」
「あんたのハーレムについてよ!!」
「??」
「雲雀が上手い事を言っておっての」
「ヴラドが最後のハーレムメンバーとは思えない。
時雨が今後も生き続ける限り、第二、第三のハーレムメンバーが現れるかもしれない」
雲雀がしたり顔で、指をフリフリ言う。
僕は、怪獣映画の金字塔ゴゾラですか。
「それにしても、昨日から見てて思ったんだけど、妙にアンタと銀髪ロリってアイコンタクトと言うか、心が通じ合っているって言うか……ずるい」
なんでズルイのかは突っ込まないで置く。
「……」
「……んむ」
ヴラドはしばし逡巡したが……
「実はの、雲雀。妾と主様は……」
「ちょい待ったッ!!」
「な、なんじゃ、話の腰をおるでない」
「あるじさま?
そういえば、ヤシロの事、おぬしさま、とか言ってたよね?
昨日は、私達の前では時雨って言ってたのに……」
「ん?ああ、その事か。
妾は“愛人”というポジションが好きなのでな。
主様のハーレムに入るに当たり“恋人”は伊織とやらに譲って、妾は“愛人”として君臨する事にしたのじゃ」
「え?ナニソレ」
「で、妾が愛人としての立場になるならば、やはり、愛しの殿方には、心身ともに尽くしたいのじゃ。
もちろん、妾が尽くす以上は、主様にも一定以上の水準を要求するがの?」
「……」
「主様がギスギスとした闘争や暗殺、策謀うずまくハーレムは嫌いらしいのでのぅ。
最大限汲み取って、序列をつけるか、ポジションを作る事で少しでも摩擦を回避しておこうと思うっての。
誰しも寵愛は受けたいのじゃ。
ならば、せいぜい平等に愛されるとしようぞ」
「じ、自分で好き勝手にポジションを決めているの?」ごく
「妾はの。さしずめ、御主はその服から下女ポジショn」
「はい、はーいっ!!
私、妻がいい、妻、正妻!!!婚約者!」
「浮気されるポジじゃな。よかろ」
「え?」
僕の入り込む隙が無い……。
それに雲雀は、妻じゃなくて、奴隷じゃなかったっけ?
「む。雲雀。御主、妻はダメな様じゃぞ?
主様が御主は奴隷じゃと言っておる」
「は?
なんでアンタが私に、妻はペケって言うのよ!!」
「いや、妾でなくて主様じゃ」
「ヤシロが?
さっきから言ってないじゃない、一言も!
だいたい伊織無しじゃ、喋れないでしょうがッ!!」
「ん?おお、その事じゃ。
さっきまでその話をしておったのじゃ」
「……?
何の話よ?」
「妾と主様は、心をつなげておる。
そうじゃな……心を読みあう事ができる、と言えばよいかや?」
「それと奴隷と、どう関係するのよ」
「ふむ、奴隷の話の前じゃ」
「妻?」
「一番最初、妾と主様のアイコンタクトが……の話じゃ」
「なんだっけ?」
鳥頭……。
ギロ。
「あによ、御主人様、その目は」
いえ、何でも?
僕は視線をメイドさんの左に泳がせる。
「きー!!馬鹿にした!
今、絶対、馬鹿にしたぁッ!!」
僕は急いで、ブンブンと首を横に振るが、ヴラドが火に油を注ぐ。
「御主、勘だけは良いのぅ。
わざわざ、術法に頼らんでも心が読めるではないか。
それとも、阿吽の呼吸とか、腐れ縁とか言うものかや?」
「やっぱり、馬鹿にしてたんだ!」
ブンブンブン。
「ヤシロ~」
『はい』
もう観念するしかないのか。
仏は、僕を見放したもうのか。
「覚悟完了した?
委細問題なし?
迎撃の準備は必要ないよ?
……じゃあ、殴るね」
『暴力反対!ジャイアニズム追放!』
急いで平和の尊さを訴える。
平和万歳。
「……妾とて、御主が羨ましいのじゃぞ……雲雀」ふぅ
ヴラドは、暴れる雲雀とそれを押さえつける僕を見て溜息を吐いている。
僕と雲雀は、暫くするとじゃれ合いを止めて、再び話を効く事にする。
「なんじゃのぅ、
妾も少しブルーが入ってきた」
「トンビに油揚げさらわれた私の気持ち、少しは判った?」
「ふふ、そうじゃな。
じゃが、仕方あるまい?
運命の出会いじゃ」
「かー、ぺって言ってやる」
「御主、下品どころか粗暴じゃのぅ……」
「フン、だ」
「話を続けるが、良いかや?」
「あ、そういえば……」
「先程も言った通りなのじゃが、妾と時雨は、呪法【純潔の誓い】で結ばれておる。
互いの知識と感覚を共有し、その一環として記憶を見たり、心を読みあう事ができるのじゃ」
「――――!!」
息を呑む雲雀。
「それは、ずるいっ!!」
ズルイって雲雀……。
もう何回突っ込んだやら。
「ずるいと言われてものぅ……」ふぅ
ヴラドは、僕との出会いから、情事を省き、会話する為に必要だった事を、1から説明をする。
「じゃ、なに?
その呪法って言うのを使えば、ヤシロの心の中が覗き放題、思っている事は筒抜けってワケなの?」
「そうじゃ」
「私も欲しいっ、覗きたいっ」
うわぁ。目が輝いてらっしゃる……。
「妾は別に構わんが……本当に良いのかや?
魔法と違い、呪いじゃから解呪には相応の手間がかかるが。
後でやっぱり止めたいと言っても、取り消せぬぞぇ?」
「構わないわ!」
「まぁ、それなら……
あと、当然じゃが、御主の心も主様に筒抜けになる。
隠し事はできぬようになる」
「え?」
「なんじゃ?」
「ヤシロの心を覗くだけじゃないの?」
「そんな都合の良い物なんてあるわけかろう!」
「ええ~~~ッ、やっぱ止める。
あ、でも、ちょっと待って……
うーん、でもなぁ、考えさせて……」
「御主……」
ヴラドは溜息を吐く。
「まぁ、よかろ。
別に期限なぞないしの。
ゆっくり考えるが良いさ」
「御免、ワガママ言って……」
「なんじゃ、急にしおらしくされると、調子が狂うのぅ」
「お、女には男に秘密にしておきたい事がい~っぱいあるのよ!」
「同感じゃ。
ならばこそ、妾は主様にのみ全てを明かすのじゃ。
唯一人の愛しい殿方に……身も心も全て、の」にま
「む」
「ところで、お主様、妾はこれよりラパ・ヌイに行ってドラコニーをつれて来る。
じゃが、代わりの見張りが欲しいので赤スライムを持っていくが、別に構わんかの?」
こくこくと頷く。
元々、ヴラドの作った擬似生命体なんだし。
あ、それと、ヴラド?
僕はヴラドに、伊織には呪法を使って、会話以外のコミュニケーション手段の確立をお願いしておく。
目と耳が五十鈴さんに監視されている以上、僕の居ない所で伊織に説明してもらわないといけない。
(心得た。では伊織には妾から話しておくとしようぞ)
そう思うと、ヴラドはその場を後にする。
残された僕は、急いで雲雀の仕度を手伝う事とする。
御飯は、既に圧力鍋で炊いてあり、蒸らしてる状態だ。後は入れ替えるだけ。
あ、卵黄のニンニク醤油漬けもある。
素材は……豚、牛、たん、ひれ、スペアリブにフランクフルト、牛肉やハーブなど数種類のウィンナーなどエトセトラ。
もちろん普通に、肉以外にも、海老やホタテなどの海産物、タマネギ、白ネギ、白菜、キャベツ、レタスなど野菜や果物を豊富に取り揃えてあり、加えて、同じ食材でも、ニンニク生姜醤油につけ込んだり、塩コショウだけだったりと色々と手の込んだ事をしている。
タレ自体も何種類か作っておいたらしく、テーブルの下にジュース以外のペットボトルがいくつか置いてある。
ていうか、最初見たテーブルの上以外にも食材がある。
思っている以上に量が多い。
素材と道具を見るに、バーベキューする以外にも、鉄板焼きをするつもりみたいだけど……。
僕が、それを見てるのに気づいたのか、雲雀が答える。
「バーベキューと鉄板焼き。
道具のいくつかは桜のある場所の小屋の中にあるよ」
桜のある場所?
あれ?
裏山の桜のある所に小屋なんてあったっけ?
そもそもどうして、花見の場所を知ってるんだろう?
僕の怪訝そうな顔を見て、
「あ、そうか。
……んと、実は昔、秋霖さんに教えてもらったんだ」
あー、そうか。
僕の記憶喪失前の話か。
そういえば、昨日の夜、ヴラドと雲雀が話していた事を、僕が聞いていたなんて知らないもんね。
僕にとっては、初めての花見でも、雲雀にとっては4年ぶりの花見って事になるのかな?
じゃあ、楽しんでもらわないと。
僕が新たに気合を入れなおしていると
「うーん、こっちは粗方終わってるから、桜の所まで、必要な道具を運んでセッティングしといてもらっていい?
多分、女狐もそっちにいると思うけど、必要な道具は、コソボイの所にあるから」
……コソボイ?
それは、あれですか?
戦え超ロボット戦隊的な司令官の名前ですか?
僕としてはオプティマスクライムなんですが。
雲雀は、日本人ならコソボイだろと言って、この話をすると千日戦争になるので、極力避けているのですが……。
要は、翻訳物のアニメ・戦え!超ロボット戦隊トランスパフォーマーの翻訳時の名称問題だ。
かなり古くからあるアニメシリーズで、日本で翻訳放送された時に名称変更がなされている。
僕は原作・オプティマスクライムと名称変更をするべき派。
雲雀は翻訳・コソボイこそ至上、横に並び立つものなど存在しない派。
ちょっと違うが、厨時空シリーズの改変や、闘映製作のスパイ・ダーマとか、こういった事が起こるのも翻訳物の面白みだ。
なんて事を考えていると、雲雀が説明してくれる。
「女狐の車、あるでしょ?」
コクコクと僕は頷く。
紺色のジムニーの事だ。
「アレのナビの名前、本名は……なんだっけ?
ダサいネーミングだったから破戒皇帝オメガトロンと総書記コソボイの二択をさせたの」
ダサいって……コソボイの段階ですでに……
他にもっと、ましな、例えばn
「ナイトウライダーのH.I.T.T.は却下」
そ、ですか……。
『じゃ、そっち手伝ってくる』
僕はホワイトボードに書き込む。
「お願いね~。御主人サマ~」
むぅ。
もうちょっとメイドな雲雀を堪能したかったな。
料理もしたいな。
……。
でも、忙しそうだし。
仕方ない。
ぴら。
ああ、やっぱり、ドロワーズ着る事でスカートのひらひらっとした膨らみを形作っているんだ。
うまいなぁ。
どこのメイド服だろう?
「御主人様?」
「?」
「何を至福そうな顔して、スカートめくりしてんの?」怒
え?
……。
あ。
「さっさと伊織を手伝って来い!!」ぼぐぅ
げひゃああっ
メイドさんの黄金の右が炸裂した。
ううう。
結局、最後はこういうオチか……。




