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世界の 法則が 乱れる!  作者: JR
第05話 桃源郷の誓い
63/169

廻り巡ればめぐるときっ!?によろしく


全ての世界にさようなら。



僕は死にます。

南無阿弥陀仏。




そういえば、祖霊崇拝だと言っておきながら、最後は仏教。

輪廻転生は否定するけど、やはり最後は仏様らしい。

というか、神社で葬式って思いつかない。仏式ばっかりだ。

一応、あるらしいけどね。神道で葬式。




4月28日。

僕は、死んだ。


そういえば、今日2回目か?死んだの。

臨死体験が2回なんて、早々ないだろう。

レア体験だ。


あ、そういえば、ベッドの下のエロマンガ、封印しないと僕の性癖ががが……




(いや、臨死は、まだ早かろう、お主様よ)

あ、ヴラド、お帰り。

(なかなかの修羅場じゃな)

ご覧の通り。


(妾としても、死んでもらっては困る)

えー?

僕もゾンビで可愛い魔法少女になりたいよ。

注射器もって、魔法のカルテで……

(毒による死は、蘇生が難しいのじゃっ!)


変身の呪文、何にしようかな……

(うぉい!意識を保つのじゃっ!

 赤スライム、直接支配[フルコントロール]ッ!!)




僕の意識は、だんだんと希薄になっているようだ。

吐血しながら、喉をかきむしっている。

呼吸困難な状態だ。

だんだんと、自分の感覚が消えていく。

手足が冷たくなっていく。


それと同時に、感覚共有しているヴラドからの情報も入って来ている。



ヴラドの視点は、まるで、俗に言う幽体離脱みたいな感じに思えてくる。

時雨の元へと、急いで駆けて行く、僕がいる。


ヴラドは、赤スライムを動かし、僕の体内に入れるつもりだ。

ほっとくと窒息死するけど、直接支配[フルコントロール]下なら、かなり細やかな操作ができるみたい。


赤いスライムが急に動き出した事に、雲雀と伊織は驚くが、僕の方への対処が先と判断したんだろう。

解毒剤を再び飲ませようと、口の中に入れる。



同時にヴラド自身も、魔法の使用に入る。

使う魔法は、対象を仮死状態にする魔法【アスフィキシア】

戦場などで、失血死を行いそうな負傷者にかけて、一時的な延命を図る魔法らしい。



ヴラドが、仏間へと到着する。

得意の結印[シンボル]や真言[パワーワード]を使わずに、僕に発動する。


「お主等!そのまま、スライムの動きを止めるでないっ!

 解毒剤を胃にまで送る事ができようぞっ」

ヴラドの叫びに近い声に、雲雀と伊織は、一瞬動きが止まるが、すぐにスライムと連携を取り始める。







ムリムリッ。

血液を吐き続ける僕の体内へと赤いスライムは入っていく。


「おごぉっ、ごも、ご」

ビクビクと痙攣する自分の体を外から見るのは、また面白い体験だ。

ムリムリッ。

体内に入る事ができない部分は、全身を覆い始める。

ムリムリッ。



暫くすると、口の中のスライムに動きがあった。

肌に張り付くようにして、薄く伸び、気道確保に成功する。


ひゅーっ、ひゅーっ

時折痙攣が走るが、先程のように吐血はしなくなった。

スライムが吸収しているのか、内壁が治癒されたのかは不明だ。


「ふぅ、コレで暫くは持つのじゃ……」




今回、今までと違い、ヴラドは日本語を話している。

会話の魔法【スピーチ】を使用しているからだ。

ただ、欠点もある。

この魔法【スピーチ】だけでは、翻訳機能がない為に、自分が話している言葉が理解できない。

本当に、自分が思い描いた事を、誤訳せずに相手に話しているのか、判断できない。

そこで翻訳の魔法【トランスファコミュニケーション】を同時に使用する事で、キチンとした会話を行う事の出来る状態にするらしい。



最初、この話を聞いた時、僕は違和感を覚えた。

自分に魔法を2回使用するだけで、会話を行えるのだ。



凄く、おかしい。


何がって言うと、僕とヴラドが出合った時の状況で使用された術法が、だ。

ヴラド自身も、言っていたのだが魔法【スピーチ】と魔法【トランスファコミュニケーション】は、共に自分自身を対象に使用する魔法だ。

しかし、ヴラドと最初に出会った時、わざわざ翻訳要らずの性魔術【恋人達の抱擁】を使い、その後、魔法【トランスファコミュニケーション】を再構築して、他人である僕に使用している。

これにより、呪法【純潔の誓い】で行われる心の会話が、翻訳される事となった。


一連のこの流れが、最初から仕組んでいたんじゃないかと思えるのだ。

何を?

ナニを。


そう、僕の童貞奪取の為の布石だったんだよ!!


(違うわ、うつけ!)

おお、珍しく、お主様とか言わなかった。


んー。

もしかして僕の心を覗いて情報収集していたとか?

まぁ、いいか。





仏間には、奇妙な緊張感が漂っていた。


スライムを半分ほど飲み込んでいる仮死状態の僕、不気味だ。

それと突如現れて、行動を支持した銀髪ロリ、ヴラド。

「……」

雲雀はヴラドを睨むように見る。

「……」

伊織は、泣き腫らした目で、ヴラドの居る方向へ目を向ける。


「……」

「……」

「……」

暫く、三者三様の無言の時間が過ぎる。






「あんたさぁ、ヴラドって言ったっけ」

最初に声を出したのは、雲雀。

「うむ、いかにも。

 その様子であらば、自己紹介は要らぬ様じゃな?」


「……」

「……」


「……あんた、真祖たる吸血鬼[ムロゥイ]なの?」

雲雀が、ヴラドから顔を逸らし、不思議な事を聞く。

「妾の種族の事を知っておるのか?」

ハッとした表情で、ヴラドが雲雀を見る。

その顔には、隠しようのない喜びがあった。


「そっか……」

ヴラドの問いには雲雀は答えなかった。

「……?」


僕は、雲雀の質問に驚いていた。

実は、僕は雲雀と伊織にヴラドの正体について話していない。

それどころか、イプセプスの事も。


何で雲雀が、それを知っているの?


なんだろう。

僕の身近な人達が、僕の知らない事を知っている……。


何かを隠している。


……いや、違う。

きっと記憶喪失の前は、知っていたはずの事なんだろう。



「真祖たる吸血鬼[ムロゥイ]……勝てるわけ無いじゃない」ぐっ

雲雀は、唇を噛み、つぶやく。

そのまま出て行こうとする雲雀をヴラドの声が止める。


「お主、このまま逃げても良いが、戦わずして逃げるなら……

 今後一切、妾の愛し(いとしびと)に色目を使う事、許さぬぞ」


「―――!!」ぎりっ

柳眉を逆立て、憤怒の形相。


振り向き、烈火の如く喋り出す。


「な、何よ!後からしゃしゃり出て来たくせにっ!

 私は、もう5年も前から時雨を見てたっ!

 誰よりも近くにいようとしたし、努力もしてきたっ!

 時雨のパイオニアは私だっ!

 アンタみたいなポッと出の、種族維持本能だけの奴に、時雨を愛しいなんて言わせないっ!!」

「ふふ、その意気じゃ」

「~~~~!!」きーっ



再び、驚く。

正に驚愕の事実。

5年前?

記憶喪失前より知り合いだったの?


……。


そうか、僕は、一番身近に居た女の子の事さえ、知らないんだ。

いや、記憶を喪失してしまっているんだ。




ジーちゃんが雲雀に色々な事を教えていた。


雲雀は、僕の家族の名前を知っていた。


雲雀は、僕が記憶喪失になる前から、僕を知っていた。


きっと、僕に負担を掛けないようにと、中学時代は、友達をやり直してまでくれてたんだ……。


そして何より、僕の心が死んでいた時も、傍にいてくれてた。

雲雀は、僕の事を好きで居続けてくれたんだ。



でも、そんな雲雀に、僕は、今から酷い仕打ちをする。

雲雀1人を選ぶことなく、三股をすると、誰か1人を選ぶ事ができなかったと、伊織とポッと出のヴラドも欲しいと告げる。



まぁ、問題は受け入れてくれるかなんだけど……。

赤いスライムを、顔面にべちゃあっと貼り付けたブサメンを見下ろす。

雲雀はイケメンが好きなんだけど……僕では無理だなァ。

雲雀の希望には答えられそうにない。

でも、まぁ、努力はしないと。

3人を手に入れる以上、好きで居続けてもらう為に。






「さて、伊織とやら」

ヴラドが僕の傍で腰を抜かし、抜け殻のように僕をボーっと見ている伊織に呼びかける。

伊織はのろのろとヴラドを見上げる。

「なんじゃ、覇気がないのぉ。

 五十鈴殿に優秀な人材と聞いておったのじゃが……」


「……時雨……死んだ……」

良く見ると伊織は、僕の腕に指を這わせ、脈を診ているみたいだ。

「いや、死んでなんかおらんぞ?

 仮死状態にしただけじゃ」

「息していない……私が殺した……」

「いや、死んでないと言うておるのじゃが……」





「腹を切って詫びる」ことっ

太ももからタクティカルナイフを外すと目の前に置く。


「ずるい!私もチート転生するッ!!」

雲雀の暴走も、いつも以上にハイテンションだ。

「いや、待てと言うにっ!!」

待って待ってぇ!

僕とヴラドの想いがシンクロしていた。




「とりあえず、伊織に雲雀とやら、お主等、人の話を聞くのじゃ。

 解毒剤は投与した、内臓の出血もすぐに治癒する、胃洗浄もついでにやっておる。

 しばし、待つのじゃ」


(なんじゃのう、お主様は、深く想われ過ぎておるようじゃが、なんぞしたのかや?)

雲雀は、何でだろう?

きっと無くなった記憶の彼方に理由があるんだろうね。

伊織の場合は、ちょっと特殊。

ココまで落ち込んでいるのは、浮気現場を見てしまったからだけど……。


僕が、ヴラドの問いに答えると、今度はヴラドが怒り出した。

(浮気!?

 お主様、何人ハーレムに連れ込む気じゃ!!

 手が早すぎるじゃろう!?)

違うよ!

僕とヴラドの、その、えちぃ事してる所を見てたんだよ!


(妾と……?いつの話じゃ?)

僕は、ヴラドに木曜日の夜のことを伝える。

ヴラドとの情事の最中に気づいた物音と、それを追って外に出た時の事。

(ああ、あの時の事であったかや……。

 気配なんぞ感じんかったのじゃが、余程の手練の様じゃな……伊織とやらは)

あの時も、結局、発見できなかったしね。

(ふむぅ。確かに優秀な様じゃな)




「ヴラドさん……で良い?」

伊織が、ヴラドに呼び方を尋ねて来る。

「妾の呼び方ならば、呼捨てで良いぞ。御主等ならば」


「ならば、ヴラド。

 時雨との関係を聞きたい」

「聞いてどうするのじゃ」

「それは……」

「妾と時雨の関係を聞いて、己と時雨の関係を決めるのであらば……

 お主……この先、死ぬ事になるぞ」

ヴラドは、ちらと僕を見る。

眼鏡も耳も、スライムが包んで、監視という役目を果たしていない。

「丁度、今は都合が良いので言わせてもらうが、皇國代理天もいつかは滅ぼさねばならぬ相手じゃ。

 お主は、時雨と戦う事になる」

「戦う……?」


「悪い事は言わぬ。

 時雨と話して、己との関係を決めるが良い。

 他人なぞ気にするでない」

「……」


「それは、お主もじゃ。雲雀」

「か、勝手に呼び捨てにしないでよ!

 さ、さんをつけろよデコ介野郎」


「震えながら言わてものぅ……

 じゃが、妾の特殊能力【吸血鬼の魔眼】の恐怖に抵抗したのは見事じゃ。

 どこで、その様な胆力を身につけたのか知らぬが、余程の死地を潜り抜けたのじゃのぅ……」

「へ?」

え?

いや、ヴラド。

それはないと思うけど。

(……と言ってものぅ。

 妾の恐怖に抗う程の胆力とは、並大抵の人間には不可能な事なのじゃ)


「あ、あんたが何を言っているのか判らないけど、褒めてくれたらしい事は判ったから、礼だけは言っておくわ」

凄い。

まるで雲雀がツンデレみたいな台詞を!


「それから、伊織」

「?」

「妾はお主に謝らねばならぬ事がある」

「謝る?」

「うむ。実は、妾の傷を治すために、五十鈴殿と時雨が、無茶な契約をしての」

「……あの女に取り込まれた?」

「どうも、その様じゃ。

 時雨の眼鏡と耳に、色々と細工をされておる」

「細工?」


「妾には皇國代理天の世界法則[リアリティ]は、理解できぬ話が多かったのでの。

 すまぬが後で時雨と話しておいて欲しいのじゃ。

 判っている事は、五十鈴殿は、御主の監視役として時雨を選んだ様じゃ」

「監視……裏切りを防ぐ為?」

「その様じゃ。

 五十鈴殿は、監視の目を時雨の眼鏡に、監視の耳を時雨の耳の中に、つけたと言う話じゃ」

「あの女……!!」


「時雨は、親心と見ていたようじゃが……どうじゃろうのぅ」

「あの女は、もっと打算的」

「そうじゃな。妾もそう思うのじゃ。

 情と理を上手く織り交ぜておる様な気がするのぅ」

そうかなぁ……。



「そういえば、妾に手出ししないと言う誓約をしていたらしくての。

 自分の事を考えておらなんだ様じゃ。

 その穴を突かれて、まんまと子種を取られおった」


「子種?」

不思議そうに伊織。

暫く考え、ヴラドに問う。

「……精子の事?」

「あ、ああ、うむ。

 直接的な表現だと、そう言うらしいの」


「な、あによ、それ!!

 テコキされたって事!?」

雲雀が、再び怒り出す。

「雲雀、落ち着く」どうどう


「雲雀……御主、品が無いのぅ」

「うるさいっ!」


「まぁ、テコキは当たりじゃが、時雨に落ち度は無い……と擁護ぐらいはしておいてやるのじゃ」

「問題はそこじゃなくて、時雨の貞操観念よ!!

 ほんっとに、もう!!

 もっと、自分を大事にしなさいっ!」

仮死状態の僕に向かって文句を言う。


「自分を大事に……と言う話は妾も賛成じゃ」

(お主様は、少し生きる事、生に執着して貰わねばのぅ)

ヴラドは、器用に、会話では雲雀と話し、心では僕と話している。


生に執着か。

結構、執着心は強いと思うけど……。


とりあえず謝る。

申し訳ない。

で、申し訳ないついでにもう1つ。

実は、指紋と網膜、声紋に関するデータも多分、108に抜かれているはず。

そっちは事前に対処しといたけど……


「やれやれじゃの」







「ねぇ、いつまでヤシロは、この状態なの?」

「随分落ち着いてきておるし、そろそろじゃと思うがのぅ。

 とはいえ、妾は、この毒について何も知らぬ。

 いったい、どういう毒なのじゃ?」

雲雀が問うと、ヴラドは伊織に投げる。


「深紅の蜜[シェンホンデミィ]は、見せしめに使う毒。

 死に方は派手なのが良いので、吐血と呼吸困難がメイン。

 主成分はテトロドトキシン」

「ふむぅ。さっぱり判らん。

 体外排出したら、治るものかや?」

「難しい。体内で分解を促進すべき」

「何故、そんな毒を使ったのじゃ?」

「時雨は、河豚が好物みたいだから……使ってみた。河豚毒」


あらら。

凄いな。

皇國代理天、河豚毒の解毒法が確立されているんだ……。


「そ、そうかや……時雨の好物かや。あの様な毒がのぅ」

違うよ!河豚だよ!美味しいんだぞっ!!






そうして、また、座は静かになる。

もーそろそろ起きたいんだけど、どうすれば良いんだろう。


ん?

そういえば……。


ヴラド。

(なんじゃ?お主様)

質問なんだけど。

(何のじゃ?知っておる事ならば答えようぞ)


僕が仮死状態なのに、なんで僕はヴラドと話したりしていられるの?

(ん?……そうじゃな……?

 何故、妾は、お主様と話ができるのじゃ?)

僕が聞きたいよ。

(ふむ、少し待つのじゃ。

 今、初めて気づいたが異常事態じゃ)

おいぃ。


ヴラドは少し目を細めて、仮死状態の僕を視る。

(……どうやら、状態としては、幽体離脱、魂と意思が肉体より剥離しておるみたいじゃ)

えーと、やっぱり臨死体験?


(確かに、本来なら人が死ぬと、この状態になるんじゃが、お主様はまだ生きておる。

 気が早いのか、何かの力が働いたのか……。

 お主様、なんぞ、心当たりは?)


うーん……ないなぁ。

それより、どうやって幽体離脱の状態を解除すればいいんだろう?

(いや、解除自体は簡単じゃ。

 妾が魔法で治せば良い)

そんなのも、魔法で治せるの?

(うむ)


うわぁ、なんか、レベルを上げて物理で殴ればよい、みたいな話だね。

何でもかんでも魔法で!みたいな。

(まぁ、その通りじゃな。

 妾の知っておる魔法は、殆どがラパ・ヌイ製の物じゃからのぅ。

 全ての解決を、魔法で行ってきた世界じゃ。

 役に立たない魔法も多かろうて)




じゃあ、その魔法を使って、幽体離脱を解除してもらって良い?


(そうじゃな。妾も少し聞きたい事もできたしの。

 黙っていても時間が過ぎ去るのみじゃ)


雲雀の話だね?

(うむ、何故に、妾等の種の事を知っておるのか、聞き出さねばならぬ)

珍しくヴラドは、神妙な顔つきになっている。

(もしやとは、思っておったが……いや、まだ仮定の話じゃ……。

 ……滅びておるなど、その様な馬鹿げた話など……)





ヴラドは、僕と心で話している間、無言だったので、伊織も雲雀も無言で居た。

ただ時間だけが流れていく。


相変わらず、僕の身体にはスライムがへばりつき、ピクピクしている。


あ。

そういえば、スライムを飲み込んだという事は、治癒能力で咽喉が治った可能性が高い。

やっと喋れそうだ。




そんな僕の想いが伝わった……とは思えないが、やはり最初に痺れを切らしたのは、雲雀。

「あーもう、我慢できないっ!ヤシロを起こすわよっ!」

「雲雀、まだ安静にしておく」

僕に駆け寄ろうとした雲雀を、止める伊織。

「でも、ずっとヤシロが、あのままなんだよ?」


「せっかちじゃのぅ。しばし待つのじゃ、今、魔法を使うのでな」


「魔法~?」

胡散臭げに、ヴラドを見る雲雀。

自分のエンゲル・パトリオットはどうなんだ?とツッコミをいれつつ、幽体離脱の解除をおとなしく待つ。


「なんじゃ、魔法も知らぬのか?」


「やっぱり、アンタ、魔女だったのね」

「間女?」

伊織のボケが遠くで聞こえた。


「魔女とは、少し違うのぅ」

「でも、魔法を使うんでしょ?」


「ああ、得意とするのは、イプセプスの呪法じゃがの」

「そんな事はいいのッ!

 どの魔族と契約をしているの?

 何故、ヤシロをたぶらかした?」

「はぁ?御主、何を言っておるのじゃ?」


「これでも、シスター見習い以下だから、悪しき邪教徒は成敗しないといけないのよ!」

「シスター?妹?何の事を言っているのじゃ?

 まぁ、落ち着け。

 お主には、後で聞きたい事もある。そう、興奮するでない」

「どうどう、落ち着け、雲雀」

ヴラドに加え、伊織も雲雀の暴走を止めようと、身体を押さえる。



「問答無用!成敗ッ!!」

バチッ!


雲雀が突っ込む寸前、伊織が軽く雲雀の身体に触れる。

すると、一瞬の硬直の後、雲雀はクタッとその場に倒れる。


「助かった、と、礼を言うべきなのじゃろうな」

「気にしないでいい」


「ところで、何をしたんじゃ?

 見たところ魔法ではなさそうじゃが……」

「電気を流した。それだけ」

でも、伊織は両手に何も持っていない。


「そ、そうかや……」

「それより、時雨を起こす」


「うむ、そうじゃったのぅ」



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