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世界の 法則が 乱れる!  作者: JR
第01話 僕にこの手を怪我せぃというのか
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出会い-戸隠伊織-


僕のクラスメイトである、戸隠(とがくし)伊織(いおり)さんは、風変わりな美女だ。

一見すると、無口、無表情なクールビューティ。

身長170cmと平均より背が高く、母性をあまり強調しないスレンダーな身体付きは、ストレートに垂らした美しい黒髪、俗に言う鳥の濡れ羽色という綺麗な黒く長い髪と相まって、和風な美女として人目を引く。

その後の、飾り気のないヘアスタイル同様の、飾り気のない辛辣な一言で撃沈する人も多いんだけどね。


高校1年生の4月下旬というこの時期は、中学校からの友人と話をする事も多いが、クラス内でも少しづつグループ化が成されている時期だ。

話上手な人物の周りには、すでに人の輪ができていたり、馴染むにはまだ早いが、気の合う者同士は行動を共にしている。


さて、そんな状況の中、僕はというと、地元から少し離れているこの高校には、同じ中学校出身の人物がいない。

もちろん、それを狙っての受験だから仕方ない。

幼なじみも一緒に受けるという約束だったんだけど、行方不明中。どこでどうしてるのやら。


ボッチ街道は慣れたモノだから、僕は特殊能力を持っている。

ボッチレーダーだ。

ボッチ戦士にのみ宿る第七感覚(セブンセンシズ)で、クラス内でボッチ戦士を発見する優れた感覚。


ボッチ反応アリ!友愛!友愛!


そんな僕のレーダーにまたしても反応がある。


戸隠(とがくし)伊織(いおり)さんだ。


最初の頃こそ、お近づきになりたい男子、気の合う者を探している女子などが色々と話しかけてたみたいだけど、しばらくすると休み時間になる度に、1人ポツンと右手に携帯、左手に本を持って読書をしている姿を見かけるようになった。。

「何してるの?」「変わったスタイルで本を読むんだね?」等で会話をスタートしようとした者がいても、その後のリアクションは決まって無言で、相手をじっと見るか「会話の必要性を感じない、非効率」で撃沈する。

人付き合いが苦手なのは判るが、それ以上に無口かつ、返しが辛辣なのだ。

更には、コミュニケーションを取るのに絶好の機会である、食事時になると決まって何処かへと行ってしまう。


ボッチ戦士の鑑と言える。

現状、クラスの中では、一人でいるのが好きな奴という認識に落ち着いたみたい。


でも、僕は少しだけ彼女の別の顔を知っている。

同じボッチ戦士だけが持つ嗅覚が、彼女本来の姿を暴きだしている。







きっかけは入学して1週間位の頃から。


ボッチ戦士の僕だが、気のあう人物はいる。

挨拶したり、メールのやり取りを行うぐらいだけど。

ちなみに、スマホは持っていない。

祖父に先手を打たれて、ガラケーで我慢だ。

くっっ!扶養家族にソジャゲーは早いですか、そうですか、残念無念。


放課中……愛知県付近の方言というか、地方によっては小休みとか、10分休憩、業間とか色々と言われている。授業と授業の合間の時間の事。

その時間、僕は気の合った変な人物、武居(たけすえ)一茶(いっさ)新田(にった)小悟郎(こごろう)の2人と行動している事が多い。

ボッチ戦士の僕に話しかけて来る、稀有な人物達だ。

この2人が、僕の友人となった時に、僕はボッチ戦士としての資格が無くなり、全ての能力を失い堕天する。

だが、まだ、放課後……これは愛知ではあまり使われていない言葉だが、他地域では良く耳にする、要は授業後である、の遊びにも誘われていないし、『休日に何処かに遊びに行こう』とも言われていない。


だから、僕はまだ戦える。

まだ、僕には戦う場所が残っている。

ボッチ戦士の孤高の戦いは、始まったばかりだ!完!



とまぁ、休憩時間は2人の変なのとつるむ事が多いが、放課後は部活だったり、即効帰宅だったりと別々な行動を取る。

僕の行動は、初日から変わらない。

図書室へと向かう、だ。

これは、僕の登下校が1時間2本のローカル線での電車通学だから。


要は暇つぶし。

本を読むのも嫌いじゃないから、うってつけ。


部活動するつもりはない。


1週間に2回、スーパーお手伝いさんが来るだけの、祖父と僕の2人暮らしの家。

その祖父も世界中を遊び廻っているから、家はもぬけの空。

あまり空けときたくはない。



HRが終了し、2人に別れを告げて図書室へと向かう。


約1週間も毎日、同じ行動を繰り返していると、僕と同じ行動を取っている人物がいるのに気づいた。

相手もだろう、自分と同じ様に、僕がHR終了と同時に図書室へと向かうのに気づいたみたい。

それが、彼女、戸隠伊織さんだった。


それから約1週間後の事だ。

大抵の場合、武居と新田の2人に挨拶して図書室へと向かうので、僕が戸隠さんの後を追う形になる。

ただ、たまたま、本当に偶然、ある日、僕が戸隠さんより数歩、図書室の扉に早く着いた事があったんだ。


まさにタッチの差で。





あの時の事は、多分、生涯、忘れられないだろう。


脳裏に鮮明に焼きついている。


彼女の顔に変化があった。


明らかに、悔しいという表情だった。

僕は、それを見てしまった。


競争していたわけではない、ただ、単にいつもと図書室に入る順番が変わっただけだ。

たった、それだけ。

たった、それだけの事だったんだ。


次の日、彼女はリベンジに出た。

僕を後から追い抜き、たった数歩、タッチの差で図書室の扉に手をかける。

そして、僕の方を振り向く。


相変わらず無表情だった。

だけど、僕には、何故か、判ったんだ。


たった一つの変化。


あの目は絶対、

「どや?」

と勝ち誇っていたんだ。


それから、僕と戸隠さんはHRが終了すると、徒競走による図書室までのデッドヒートを行うようになった。

相変わらず、彼女は無口だったが、無表情とは思えなくなった。






次の転機は、3日前。


この高校の図書室には、数種類の漫画が置いてある。

寄贈本なのか、奇特な先生が入れたのかは不明だが、横山正輝三国志、あさきゆめみじ、のらしろ上等兵から軍曹まで。その3種類だ。

ただ、これらの漫画は、巻数全てが揃っているわけではなかった。

特に、古代中国の歴史を元にした群像劇である三国志に至っては、60巻+αの内、実に20冊近くも抜けがあり、通しで読もうとすると話がつながらない所が出て、正直、微妙だ。


そんな三国志を、戸隠さんが物凄く熱心に読んでいた。

無口な彼女が、時折、「じゃーんじゃーん」とか「げぇっ、関羽!あわわ」と小さく声を出してまで。


あー。

26巻か……。

次は28巻で、31巻まで、抜けているんだよな。

盗まれたのか、返却してないのか……良い所なのに。


この図書室も足りない巻数をさっさと直してくれれば良いのに……。


僕は、横山正輝三国志を父親の書斎で読んだ。

結構、好きな漫画だ。

だからだろうか、彼女の反応が気になって、今日は本を読む気にならず、戸隠さんの様子を伺っている。

無表情どころか、ころころと良く変わる。

お、読み終えたようだ。

残念、27巻はこの学校には置いてないんだよ。


26巻を読み終えた戸隠さんは、ニコニコと本棚へと単行本を戻しに行く。

そして、初めてその事実を知ったようだ。


愕然としている。


にらむ様に辺りを伺う。

どうやら、図書室内にいる全員が読んでいる本をチェックしているみたいだ。

26巻の背表紙を見る。

そこには、持ち出し禁止のマーク。

要は貸し出し不許可。

読みたけりゃ図書室で、というマークだ。

再び、図書室の全員が読んでいる本をジッと睨んでいる。


視線が僕の方に向く。

27巻持ってたら、いつでも殺してやる。

そんな睨みだ。


僕は、あわてて持ってないよとばかりに両手を振った。



そこから先は電光石火。

26巻を持って貸し出しカウンターまで縮地。


カウンターの図書委員に「27巻?27巻?」と連呼。

泣きそうだ。


「あー。無いんですよぉ。

 多分、誰かが勝手に持ってって、そのままなんでしょうねぇ~」

のんびりと、小柄な眼鏡の図書委員さん。

ちょ、戸隠さん、胸ぐら掴んで攻撃しようとしないで!


急いで、止めに入る。

幸い、胸ぐら掴む前に理性が働いてくれたようで、むむむ……と唸っている。


流石に見てられないし、自分が好きな物を、同じ様に好きになってくれるのは、うれしい事だ。

「あ、あの……よ、良ければ今度、貸そうか?三国志?」

だから、聞いてみた。


え?と怪訝そうな顔で戸隠さんは、僕を見る。

「あ、いや、家にあるんだよ。親父の、その……単行本が。

 横山正輝三国志と辞典。それに文庫版も。よ、良ければ貸そうか?」

ドギマギしながら語りかける。

幼なじみを除いて、女性と話す事なんて、殆ど無い事だから。



花が咲いた、としか表現できない。

図書館のカウンター襲撃から、この一瞬まで、無表情と言われていた、戸隠伊織の喜怒哀楽を僕は、今、目の当たりにした。


この時の彼女の百面相は、僕しか知らない。

そして最後の笑顔も。


この時、既に僕は、彼女に惹かれていたんだと想う。






僕は、図書室を出ると、いつも通り帰宅する。

学校を出、長い坂道を下り、駅前商店街を抜けて駅へ。


この後の僕の行動は、ローカル線に乗って2駅で下車。

あとは苦手な自転車に乗って、川沿いの土手を走って、家へ向かうわけだが…


現在、僕達は駅前商店街を抜け、ロータリー付近に差し掛かっている。


「あの、戸隠さん?」

「?」

僕の後ろを、戸隠伊織さんが着いて来ている。


「えと、戸隠さんの家は、ここら辺なんですか?」

「……通り過ぎた」


「えっ?」

「気にしないでいい」


「えと、あ、あの27巻でしたら、明日、学校に持って行きますけど……」

「……もっと。三国志60巻と辞典……それに文庫版もあると言った」


「えと…もしかして、いっきに持って行くつもりですか」

「……」コクコク。


何とバイタリティ溢れる……感心するどころか、呆れた。


「え、えーっと。コレから僕は電車の乗って帰りますけど……

 その、大丈夫ですか?お金とか、お家の人とか」

「問題ない。住所を知れば、今度から直接乗り込む。効率的」


「あ、あー。判りました。

 せっかくココまで来ちゃったんですしね……」


この駅付近は、うちみたいな田舎と違って、プチ都会化が始まっている。


駅の反対側は、何かの工場が造られるらしく、宅地開発で次々と建物が建っている。

そのおかげか、駅前の方もリニューアルの話が出ているらしい。

駅のロータリー付近は、まだ工事が始まってはいないが、駅前のデパートは夏前にはリニューアル工事に入るという話だし、少し離れた処にある10階建てのマンションは突貫工事で建てられたらしい。

個人的には駅前商店街には、立ち読みできる本屋を入れて欲しいね。



ロータリーを歩いていると、宣伝カーみたいなのが止まり、何かのビラ配りをしている。

何だろ?

大音量で宣伝カーからは、男性の声が流れている。


―――主の裁きの日は近い。

―――悔い改めよ。天の御国は、すぐそこまで来ている。

―――主は人を愛しその罪を取り除く。

―――天にまします我らの主よ。願わくは、御名を崇めさせたまえ。


もしかして、キリスト看板愛好家御用達の聖書配布協力会かな?

うわぁ、うわぁ、初めて見た。

田舎に行くと必ずあるという、家の壁などに張られたキリストさんの有難い御言葉を書いた黒看板。

うちの近くで見た事ないから、あれは伝説の存在だと思ってたよ。

という事は、配ってるのはビラやティッシュじゃなくて、コンパクト聖書かな。


自然と足がそっちに向く。

こんな地方で見れるなんて驚きだ。

ちょっと見てみてみたい。

フラフラ~~と近づこうとする僕の襟をトガクシさんがつかむ。

「?」

「非効率。先に帰る」

「あ、ははは。面目ない」

「ん」


戸隠さんが、新興宗教を睨んでいる。

まるで息子を取られた姑の様に。


嫌いなのかな?

明らかな敵意を眼に宿している。

何かをボソッとしゃべった様だが、上手く聞き取れなかった。

いや、多分、日本語ではないような気がする。

戸隠さんと話してみて、気になったのだが……


どことなくだが、日本語のイントネーションと違う話し方をする。

中国語、もしくは東南アジア系だろうか?

僕も語学は詳しくないので、雰囲気でしか判らない。


もしかしたら、僕と同じで帰国子女なのかもしれないな。

そんな風に、僕は今日一日で戸隠伊織という人物について、かなり判った気になっていた。


それが、ある意味では当たっており、ある意味では全くの見当違いである事に気づくのは、もう少し後のことだ。



「え、えと、そろそろ行きましょう、戸隠さん。

 僕は駐輪場に自転車を止めてあるので……」

「……ん」


1歩1歩、歩く度に、戸隠さんの事を知りたいという、欲求がむくむくと大きくなってくる。

僕は、好奇心には勝てなかった。


ちょっとぶしつけかなと思ったが、質問をする。


「えと、さっき、あそこの新興宗教の人達を睨んでいたようですが、嫌いなんですか?」

その言葉を聞いて、戸隠さんは黙り込む。


あー、これは地雷踏んだな……。

ボッチ戦士の禁忌に触れてしまっているのは判った。

別に仲が良いわけでもない。

ただ、単に漫画の貸し借りをするだけの一時的な関係なのに、命を狙われるレベルの質問をした。


実際、今日、初めて言葉を交わしたのだ。

図書室への競争と言ったって、無言で行われている訳だし……。


取り合えず、謝って様子を見よう。

孤高のボッチ戦士だからこそ分かる、引き際の良さ、惚れちゃうね。


しかし、謝罪の言葉よりも先に、彼女の方が話し始めていた。



「……あれは、おそらく、敵。

 リアリティが違う……から、気をつけて」



たどたどしく言ったその言葉が、何故か、はっきりと聞こえた。


え、リアリティ?

現実性が違う?

聞き間違えたかな。

あ、

レアリティ……希少性?

レア度が違うって意味かな?

カードゲームか何かだろうか。


「えと、御免。もう一度」

「……そんな事より、三国志……」

強引に誤魔化された。

でも、まぁ、いいか。


「あ、うん。じゃあ、こっち。

 電車と自転車に乗って、30分程の距離だから」


改札口を通って、駅前自転車置き場でケッタマシーン、地方によってはチャリンコとかママチャリと呼ぶ、苦学生愛用の品に乗って家に帰る。

二人乗りなんて青春な事、ボッチ戦士にできるわけない。

それどころか戸隠さんに「遅い、非効率。走るから、自転車を速く運転」と言われて家まで全力でこぎましたよ。

戸隠さん、脚速すぎ。





「ふぅおおおおおぉぉぉぉぉぉーーーーーっ!!」


戸隠さんが喋った!

あんなに大きな声で!


眼をランランと輝かせて、父親の書斎を見ている。

十畳間2つを繋げ、本棚を図書室のように並べた部屋だ。

天井近くまで、ギッシリと漫画本。

家がつぶれそうになるくらいの蔵書を残した父に感謝を。

一応、遺品なんだから……と古本屋に売らなかった僕の良識に誉れを!

戸隠さんが涎を垂らす勢いで物色を開始した。


サラリーマン金太郎、課長島耕作シリーズ、なぜか笑介、ナニワ金融道……次々と遠慮なく、床につまれて行く。

うーん、一部を除き、けっこう題名的に偏った作品を選んでるなぁ……

絵柄や内容的には、全然、別物なんだけど、企業や社員を題材にしたものが多い。

まぁ、バブル期華やかな時代の作品が多いけど。

そもそも、ここに置いてある漫画自体が年代物で、最近の漫画は別の場所だ。


あれ?そーいえば、三国志は?


「とりあえず、今日は、これだけ」


うわぁ、すでに遠慮なく、借りるつもりだ……

山のようにうず高く積まれる本を見て、僕は戸隠さんの物欲を弱めようとする。


「えと、これだけって、持って帰るのは無理なんじゃ……」

「む、むむ……アドレナリンブースターで……無理、持続時間が……」


「今日はもう遅いし、三国志だけでd……」

「……良い案、泊まれば良い。まごうことなき名案。効率的」


「おい」


思ったより戸隠さん常識ナイヨ。

欲望に負け続けるダメ人間ダヨ。

フリーダムすぎダヨ。

嗚呼、そうか、僕は男性と思われてない。

人畜無害な人とか、草食な人とか、いい人とか。

そんな感じ。

ブサメンだしね。


「えと、親御さん心配するし、だ、男性の家に、泊まるというのも、ど、どうかと思うヨ」

「……問題ない。この行動は全てに優先される。

 必要経費限度額までなら、対価を支払う」


うわぁ、誰だよっ!

戸隠さんが無口で無表情なクールビューティーって言った奴は。

漫画見たら直ぐに化けの皮が剥がれたぞ。

しかも、何かあさっての方向に暴走しているみたいだし……

おーい戻ってこーい。

だいたい、対価を払うって、金銭n



「!!」ピコーンッ


閃いてしまった。

今日の僕は、冴えている。

運がついている。

機を見るに敏です。


も、も、もしかして、今、この瞬間でのみ、イケメンでない僕にもチャンスが!

一生を童貞で終える運命の僕に、薔薇色のニャンニャンタイムを送る事が可能なコマンドが!

全てのモテ要素コマンドには“イケメンに限る”と今まで表示されていたのに!

今回の!

今!

この瞬間の!!

とあるコマンドには“イケメンに限る”がない!


対価、何て良い響きだ。

対価、それは君が見た光。

対価、それは僕が見た希望。


「じゃ、じゃあ、た、対価として、

 こ、恋人になってくれないかなぁ~……、な、なぁんて……」


言ったぁ!


と思った後、はっと我にかえる。

え?

いや、ちょっと待って。

い、今、自分は何を言った?

何を口走った?

今の言葉ぷれいばっく!


いやいや、相手は、僕の事を異性とも思ってない。

ただ単に漫画本のオプション程度にしか思ってないんだよ?


そんな奴が、いきなり変な事を、金に物を言わせてみたいな事を……

それは幾らなんでも最低だ。

男として。

人として。


むむむ、た、確かに、僕は外道だけども……

それに、上手くいったとしても、僕の身体を見れば、気味悪がる……

どちらにしろ、ある一線以上は越えるつもりはないんだ。

そんな僕が、仲良くしたって……


自己嫌悪に陥る。


あああ、いや、自己嫌悪の前に!

そう、その前に「冗談でっす」と、せめてフォローを!!


しかし、彼女は、ナナメ上に暴走をしていたようだ。


「……対価?……コイビトって?」


やおら携帯を取り出し、入力を始める。


「え?そ、そりゃ、デートしたり、手を繋いだり、にゃんにゃんしたr」

「デート?社外密談……手を繋ぐ……合併?

 いや、状況として考えるなら買収されろという事……。

 にゃんにゃん?」

「あー、いや!にゃんにゃんは良いから!」


「つまり、対価として、私に皇國を裏切れ……と?」

「どーしてっっ?」


電波だ。

戸隠さんは電波だ。

間違いない。


「……判った。

 裏切りと抜け駆けは皇國の華!!

 ……なる。コイビトに」


にぃぃっと笑う。


今まで見たことのない、壮絶な、そして一番似合う、笑み。

嗚呼、これは、これこそが、戸隠さんの本性だ。

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