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世界の 法則が 乱れる!  作者: JR
第04話 スマイル0円、タダほど高いモノは無い
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問題は、地球の世界法則[リアリティ]じゃな


4月28日。

僕は、死んだ。




あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ!


『おれは奴の前でご機嫌取りをしていたと

 思ったらいつのまにか首を切られていた』


な… 何を言ってるのか わからねーと思うが

 おれも何をされたのかわからなかった…


頭がどうにかなりそうだった…


ナイフだとかギロチンだとか

そんなチャチなもんじゃあ 断じてねえ


もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…






うん。死んだはずなんだ。


まさか、こんなところに木下藤吉郎がいるとは思わなかった。

ぼくはたまたま、この皇國代理天に商いに来て、木下藤吉郎に首を切り落とされてしまったのだ。

当然、静脈は切断された。

真赤な血が、とめどもなく流れ出した。

ぼくは出血多量で死ぬかもしれない。一刻も早く、医者へ行かなければならないのだ。


ふぅ。

螺旋式をしたので、少し落ち着いた。



目覚めると、そこは知らない天井だった。


……なんて事は無く、白い天井どころか、目の前に白い壁。

その距離、約30cm。


「もごっ」ぽこぽこ……

知らない天井ならぬ、壁だ、と言おうとしたら、口に違和感。

「もご……」ぽこぽこ……

ん?ここ、水中じゃないか!


はて?

ここで軽いデジャヴ。


ついさっきも同じ事を……。


あれ?

まさか、夢オチ!?




どうも、再生槽にいるみたいだけど……。



喉元に触れようとして腕を動かす。

右腕にチューブがついている。

あれ?

左腕についていて、そこからヴラドへと繋がっていたんじゃ?





「起きた?時雨君」

スピーカーから、声が聞こえる。

五十鈴さんの声だ。

「もごっ」

「そう、良かった。何が起こったかは、記憶にあるかしら?」

「もごもご……」

「そうね、まだ意識の混濁があるかもしれないわね……」

「もーごもっご」

「もう少しだけ、寝ていて頂戴。検査を行うから」

「もごっもご」

やっぱり通じてない。

えーと、ですね。

五十鈴さん、聞いてください。お願いですから。

声が出ないんですよ。


うーん、どうしよう……。


……。


あ。

ヴラド、通訳お願い。


「あー、五十鈴殿?」

「なに?ヴラド君」

「うむ、先程から、時雨は、声が出ないと訴えておるんじゃが……」

「あら」




僕は現在、再生槽に逆戻りだ。

ヴラドの非現実的な超常能力と、すぐに再生槽に入ったのが、功を奏して一命を取り留めたらしい。

「流石に、今回は危なかったのぅ。

 ココでは肉体の完全蘇生魔法【リザレクション】を使っても、魂という概念がないので、綺麗な死体が出来上がるだけでの。

 そこで、中途半端じゃが、四肢欠損の再構成魔法【コンステテューション】で治したのじゃ」


ん?じゃあ、何で再生槽に入っているんだろう?

「実はの、失血死せぬようにする為と、神経はある程度は繋がったのじゃが、血管や筋肉の修復に時間がかかっての。

 そこで、再生を早める為に入ってもらっておる」




ふ−ん、そうなんだ。

じゃあ、話せないのは、まだ、神経がつながって無いからなのかな?

ヴラドは、そのまま、僕の言葉を翻訳し、五十鈴さんに伝える。


「いえ、再生槽に入ってから、6時間が経過しています。

 すでに治療の全工程は終了していますよ。

 神経も繋がっているはずです」

あうう。

丸一日、無駄にしてるよ。

月見里さん、カンカンだぁ。

あとで、土下座しないと。


「治療ミスの可能性はあるかや?」

「そんなはずはない」


おや?

五十鈴さんとヴラド以外の人がいる。

しかも、冷徹な中に少し感情のこもっている声、間違えるはずは無い、あれは戸隠さんの声だ。





結果として、間違えました。

「彼女の名前は、109よ」

五十鈴さんが、戸隠さんそっくりの声の人物を紹介する。

画面が無いので判らないが、きっと戸隠さんにそっくりの人物なんだろう。


「もごもごもー」挨拶をする。

「何を言っているのか判らない。患者2号」


「八代時雨という名前があるのじゃ。

 そちらで呼んではくれぬか?」

ヴラドが代弁してくれた。


愛しているよー、ヴラド。

「安い愛じゃの、お主様」


相変わらずのツッコミだ。


「患者1号と、患者2号は脳波通信が可能なのか?」

109は名前では呼ばなかった。

「妾はヴラドじゃ、再生槽の中にいるのは、我が主、八代時雨じゃ」


「貴方達の、技術進度だと難しい概念か。

 説明する。

 無音声による会話が可能かどうか、と聞いた。

 もしくは、特定の人物と脳内でやり取りができるか?でも可。

 どう?判る?」


「そうではなくてじゃ、童は名前を……!」

「全ての書類に患者1号と、患者2号と明記されている。

 その書類全てを、ヴラドと八代時雨に直せと言うのか?

 効率的ではない。

 君達こそ、今、ここで改名しなさい」



名前なんて飾りです。

偉い人にはそれが判らんのですよ。


名前そのものに効力がある世界から来たヴラドには、納得できない考え方なんだろうなぁ。



僕はヴラドに、どうどう、落ち着け、とやりたいが、思っているだけだ。

身体を動かせない、声をかける事も出来ないのは辛いね。




少し、現状把握でもしておくか。


木下藤吉郎という謎の人物の攻撃を受けて、僕は首を切断された。

しかし、ヴラドと五十鈴さんの尽力で僕は一命をとりとめた。

結果として声を出す事ができなくなった。

理由は不明。


これによって、僕は、秘められた力が覚醒したとか、異世界転生したわけでもない。

残念。


こんなところか。

じゃあ、まずは情報収集だ。


これは、僕の思っていることを、ヴラドに通訳をしてもらうしかないな。

色々と不便になるし、ヴラドにも迷惑をかけてしまうなぁ。

ゴメンね。


「そう、気に病むな、お主様。

 そのうち魔法で治療すれば良いのじゃ」


ああ、その方法もありか!

ラパ・ヌイに行ったら試してみよう。

じゃあ、ヴラド、早速で悪いけど、五十鈴さんに木下藤吉郎という、人物の詳細を尋ねて貰って良い?




暫く待つ。

再生槽の向こうで、何やら話をしている様だ。


「時雨君、木下藤吉郎という人物の話なんだけど、現在のところ、判っている事を話すわね?」

はい。


「木下藤吉郎についての調査結果だけど、正直に言うとかんばしくないわね」

そう前置きして、五十鈴さんは話し始める。

その口調からは、驚愕と苦渋が感じられた。


これは……演技なのだろうか?

最初は情報の出し惜しみかと、疑っていた僕だが……どうも違うみたいだ。

本気で悔しがっている。

108の放った刺客だとでっち上げて、それを盾に他の契約をしようかと思ったんだけど、やっぱり止めよう。

僕は空気を読んで、付け入るのを止める。




五十鈴さんの話した内容は、木下藤吉郎と名前と顔、身体的特徴から判断した結果、皇國代理天には、木下藤吉郎という人物は存在しないという事、また、多指症という特徴を持ったミュータントも登録はされているが、該当者はいないという事が判明した。


「それでは、その間者は、どこから来たというのじゃ?

 ……まさか、地球からというのかや?」

ヴラドが訊ねている。

「いいえ。

 状況から考えるに、忍者としては、あの男は悪手を打ってます。

 だとしたら、これは、行きずりの口封じと考えるべきです」

「確かにのぅ。

 妾達が姿を見せて、慌てて殺害しようとした様に感じられた……」

「はい。

 時雨君が映してくれた、視覚と聴覚情報もそれを裏付ける根拠となります」

「ヘッドハンティング……という言葉じゃの?

 首刈りと言う単語じゃが、別の意味……スラングか何かかや?」

「いえ、そうですね。

 多分、翻訳機は、引抜きと翻訳するはずですが……」

「うむ?おお、確かに。

 我が主がヘッドハンティングという、難しい言葉を使うので、判らなんだ」


ん?

そういえば、何でヴラドは、僕との心の会話で、言葉を翻訳できるんだ?

……。

あ、そうか。

ヴラド、自分にはもう翻訳の超常的な力を使っていたのか。

で、会話用に翻訳機を使用していると。

それで、単語の翻訳違いが出ると、今みたいな状況になるんだ。



「私の判断では、木下藤吉郎と言う男は、他の皇國代理天から来た企業忍者だと思っています。

 目的は、ヘッドハンティング。

 優秀な人材を、自らの企業に連れ帰る為に、水面下で交渉を行っていたのでしょう」

「不思議なのは、それを、何の能力も無い地球人が看破したと言う事」

109が割り込んで話し出す。


「そうですね」

と五十鈴さん。

「そうじゃな……」

とヴラド。


どちらも、何か僕に思うところがあるようだ。



「時雨君は、頭が回りすぎて、無鉄砲な所があるようです。

 106もその事を話していましたよ」

「確かにのぅ。

 周りを見ずに、たった一つの事に夢中になりすぎる時があるのぅ」

「私との交渉の時もそうでした。

 もう少し、全体的な視野を持てば、より良い条件を提示させた交渉も可能だったのに、自爆してしまっています」

「駅前の戦闘の時もそうじゃが、多極的に物事を見た方が良いかも知れぬ。

 今のままでは、小部隊の参謀レベルじゃ。

 一軍は任せれぬぞ」

「そうですね、今の視野では良くて係長レベルです。

 課長を任せるには経験が足りていません」

「そうじゃな。

 いかんせん経験不足じゃ。

 じゃからテクではなく、激しさによる力攻めが、メインとなってしまうんじゃろうしの」


あれぇ。ちょっと待って。

何時の間にか、この空気って僕を糾弾するような空気になってない?


「力攻め……ですか?

 それなりに手練手管は、使いこなしていると思いましたが?」

「いや、それでは、足りぬ。

 ()らし、()がし、(あせ)らせる。

 引きのテクがまだまだじゃ。

 これは、自己に自信が無いゆえの事じゃ」

「焦らし、焦がし、焦らせる……。

 確かに、交渉事にも必要な話ですね」


これは、僕を糾弾すると言う話を肴に、盛り上がってきている。

しかも、言ってる事は通じ合っているが、内容は全然違う。

ヴラドは、ビッチ全開で卑猥な事を言ってるし、五十鈴さんは、交渉にしか興味が無い。


「誰が、ビッチじゃ!!」

良かったぁ。

声が届いた。


「お主様、後で、今の話はゆぅるりと聞こうぞ」怒怒怒。

そ、それよりも五十鈴さんに聞いて欲しい事があるんだ。


「話を逸らすつもりかや?」

そうじゃなくてっ!

木下藤吉郎という概念についてだよっ!

振り向かせる事に、悪口を言ったのは謝るよぅ。


「むぅ……」

ほ、ほら、男が気になる女性、可愛い人に振り向いてもらう為に、悪戯をするのは、よ、良くある話じゃない?

え、えと、えーと、こ、これも引きのテクニックの1つなんだよ。

「ほほぅ。

 一気に誠意が無くなった様じゃがの。お主様?

 これも、妾を焦らし、焦がし、焦らせる……引きの1つかや?」

ひぃい!ゴメンなさいぃぃっ!!


「まぁ、夫婦漫才していても仕方あるまい。

 五十鈴殿、実は先程のヘッドハンティングの話じゃがの」

「何か時雨君が知っている情報でも?」

「いや、木下藤吉郎という地球での概念の話じゃ」

「地球ですか?」

「うむ。地球の木下藤吉郎の話が、たまたま、皇國代理天の話と被っている部分があったらしくての。

 それが、我が主が間者の目的を見破った事と繋がっておるようなのじゃ」

ヴラドは、僕の言いたい事を一言一句、キチンと五十鈴さんに伝えてくれる。





木下藤吉郎という人物について。

地球は、日本、戦国時代に実在した人物。

羽柴秀吉、豊臣秀吉として有名で、出自については不明な部分が多いが、織田信長に仕え、農民から最終的には関白まで上り詰めた出世頭と言われている。

醜悪な容貌で、猿と呼称されていたらしい。

人たらしと異名を取るほどの、巧みな人心掌握術に長けており、世評を気にかけるなどといった情報に聡い部分を持ち合わせている。


「……といった所じゃろうか?」

ヴラドは五十鈴さんに、木下藤吉郎の人物像を語りあげる。

「で、それらの歴史の事を、時雨君が覚えている……と。

 歴史歪曲の法則が働いているのだから、本来なら存在否定されているはずの歴史なのに……」

五十鈴さんは、少し考え込んでいる。


「どういう事?」

と問いかけている109さん。


「判らぬ。と言うよりも、皇國代理天の世界法則[リアリティ]自体が、妾の知っておる異世界と違いすぎていて、理解しづらいのじゃ」

「憶測で、申し訳ないけど、他の皇國代理天で許可されている歴史じゃないかと推測するしか無いわね。

 私達だって、他の皇國代理天の歴史を詳しく知っているわけではないのだから」

「五十鈴殿、他の皇國代理天とやらに行って、歴史を調べるのは無理なのかや?」

「残念ですが、私では無理ですね。

 まぁ、配下の体現者[ビジネスマン]か、企業忍者を使えば、何とかなるかもしれませんが、全員、地球に行くか、こちらでバックアップしていますので……」

「ふぅむ。足取りは追えぬか……

 ならば、地球で概念だけでも詳しく調査しておくべきかのぅ……

 我が主を傷つけたのじゃ。

 それなりの覚悟をしてもらわねばの」


うーんと、それなら、実は1つ、五十鈴さんに行っておいて欲しい事が……。

ヴラド、聞こえる?


僕は、ヴラドと声なき声で連絡を取り合う。


「なんじゃ?お主様」

スピーカーからヴラドの声。

僕は、ヴラドに話して欲しい内容を伝える。


「五十鈴殿、我が主からの伝言じゃがの。

 地球の歴史を調査するなら、日本の戦国時代辺りから調査してみると良いじゃろうとの事じゃ。

 先程の木下藤吉郎の話にでてくる、他の武士(もののふ)も歴史改変の効果を受けておらん……らしい」

「そうですか。貴重な情報、ありがとうございます。

 だとすると、地球と歴史が変わった部分は日本の戦国時代以後なのでしょうか……」

「判らぬのじゃ。

 どちらにしても、一旦は地球に帰らねばのぅ。

 ところで、五十鈴殿、もうそろそろ、我が主を再生槽とやらから、出しても良いと思うのじゃが……」




「それは、待って下さい」


109が再生槽から出たがっている僕を止めた。

ええー、何で?



「どうしたの?109」

「もう一度、精密検査をした方が良いです」

「暴走の危険性があるの?」

五十鈴さんが怖い事を聞く。


え?


なに?


暴走って、なに?

もしかして、僕、新造人間エヴァンゲルオンみたいになるのか?

うぉおおおおおおっとか、獣のように叫んで、おいしく心臓を頂く様な……。


心臓……。


じゅるっ。

それも好いかも……。


いやいやいや、何を考えている、僕はっ!!




「ち、ちと聞いてよいかや?

 そ、その暴走が起こるとは、いったい……」


「いえ、暴走が起こると決まったわけではありませんよ、ヴラド君」

「でも、だからこそ、です」

と109が引き継いで答える。


「ふぅむ。それもそうね。

 時雨君、もう一度、精密検査をするわね?」

「い、五十鈴殿?だ、大丈夫じゃ。

 我が主の声帯は、妾が魔法で治すからの、そんな心配は無用じゃ」


「それでも、原因は突き止めておいた方が良いわ。早めにね」

「患者1号は非科学的すぎる。

 患者は医者の指示に従えば良い」

「むぅ……しかしじゃな」

今までの話し方や、周辺状況から考えて、109は医療関係に従事しているのだろう。

多分、坂崎医師と交代で入ってきた医者だと思えた。



声帯……そう言えば、108が仕掛けた入力装置ってどうなったんだろう?

五十鈴さん、取ってくれたのかな?



僕は、ヴラドに連絡を取る。

精密検査をしてくれるなら、やってもらった方が良いと言う事と、入力装置の事を聞いてもらえるように。

「五十鈴殿、話は変わるが……」

向こうで、ヴラドが聞いてくれたみたい。


「それなんですが……

 コレを見てもらうと判ると思います。

 109、データを」

「了解。患者1号、コレを見る」

「何じゃ、これは?」


「時雨君の首の3D画像です。

 で、こちらが断面画像ですが……」

五十鈴さんの声を引き継いで、109が話し出す。

「異物と思われる物については、現在の所、無いと判断している」

「む?」


「また、検査機器以外にも、我々が調査した結果、入力装置に該当する物は見当たらなかった。

 憶測だが、木下藤吉郎に切られた時に破壊されたと考える」

「そうかや……」

そうなんだ。

声の出ない原因かと思ったけど違ったか。


「だから、おかしいと感じているんですよ」

しかし、五十鈴さんは、僕とは違っていたようだ。


「切られて破壊されたのなら、何の後遺症も無いはずです」

あ、確かになぁ。

「ヴラド君、えーと、効果の程は判りませんが、回復魔法を使った場合、普通は完治するはずと考えて良いのでしょう?」

「う?うむ。当然じゃ。」

「なら、完治していないと言う事は、何らかの不具合の可能性が高い。

 その為にも精密検査を行う必要があります」

「うぅむ。……確かに、その通りじゃな。

 では、よろしくお願いするのじゃ」



「109、精密検査の準備を」

「少し難しい……」

「どういう事?」

「患者2号には、継続されているデータが無い。

 その為、以前の健康体のデータが108の作った情報となっている。

 108のデータを使わずに検査するなら、初診からとなる。

 優秀な遺伝子だけを持つ坂崎医師に頼むべき」


「貴女では、できないの?」


「医療は専門外」


……。


は?


今、凄く不適当な台詞を聞いた気がする。


いや、精密検査の必要性を訴えたの、君自身だろう?109!


「す、すまぬが、109とやら、汝は医者ではなかったのか?」


「違う」


「し、しかし先程、汝は自らを医者と……」

「“シノビは自らをも、騙せるようになって、初めて半人前になれる”と、実録!ビジネスにみる万川集海には書いてあった」

何だ、それ?

この世界の本か?


「もし、初期のデータを重視するなら、地球側の情報が必要。

 患者2号には、稚拙な火傷治療の痕がある。

 それを行った企業に行けば、何らかの初期情報は入手が可能」

初期情報ってなんだろう?

再生槽を使用するのに必要なのかな?



外で、またヴラドが聞いてくれたらしい。

五十鈴さんが、説明してくれる。


再生槽とは、そのままの意味らしく、新陳代謝を活性化する液体と、破壊された細胞に代わり、細胞が回復するまでの間、傷跡に付着して代理機能する医療用ナノマシンからできているという。


この医療用ナノマシンだが、その殆どは生体部品で作成されており、非常に優秀な代理機能をもっている。

元々は、幹細胞研究の成果を生かしているからだが、医療行為を行うにあたって、患者の負傷具合、病気の進行度によって、どこまで代理機能をするのか、予め情報がインプットされる。

この情報によって、患者本人に悪影響を与えない様に、医療用ナノマシンは代理機能を抑制される。


本来なら医療用ナノマシンは人体に悪影響は与えないのだが、その万能性から、一度アクシデントが起こると、暴走と呼ばれる状態になる。

具体的には、自己進化、自己再生、自己増殖といったアルティメットなG的3大理論を彷彿させる医療事故をおこし、患者をミュータント化するという。


この暴走だが、主な原因として、抑制をしなかったり、情報が間違っていた場合、患者本人が何らかの特異体質であった場合などが挙げられる。



「で、五十鈴殿は、もしかしたら、不具合の可能性に留まらず、暴走の兆候かもしれないので、精密検査を勧めている……と。

 だいたいこんな感じじゃな、お主様。早く帰りたいのは判るがの」

ヴラドが、僕の思いを代弁する。


でも暴走って、新造人間エヴァンゲルオンじゃなくて、企業戦士Gガソダムのラスボス、アルティメットGじゃん!


こえぇ。

医療用ナノマシンこえぇ。




ん?


いや、待て。

今、何か、引っかかったぞ。


…………。


……。



あれ?


うん、そうだ!

地球に戻れば、医療用ナノマシンは、地球の世界法則[リアリティ]下での変質を余儀なくされるはずだ!

地球には、ココまで高性能な技術はないんだし。

だから、暴走とか気にしないで良いんじゃない?

僕は、ヴラドに、五十鈴さんに問いかける様に頼んだ。


しかし

「地球の世界法則[リアリティ]か……。

 実は、それも問題なんじゃ……」

返ってきたのは、ヴラドの溜息。

ん?

どういう事なんだろ?

地球の世界法則[リアリティ]が問題って?


「実はのぅ。

 お主様には、謝らねばならぬ事が有っての」


え?

謝罪って?

もしかして、僕の事が嫌いになった?

108に一目ぼれ?

それとも、五十鈴さんの方が萌え萌えするの?

う。

ああぅ。

ハーレムが……僕のハーレムがぁぁぁ


「えぇいっ!

 そんな色恋の話ではなくてじゃ!!

 妾は充分お主様を好いておる!

 泣くなっ!」

じゃあ、いったい……どういう事?


「実は、妾も五十鈴殿もな、お主様を体現者[シュトゥルム]だと、信じて疑っておらなんだのじゃ」

え?

「全てお主様が、体現者[シュトゥルム]であると計算して、今後の活動を考えておったと言う事じゃ」

な、なんで?

「妾と五十鈴殿では、着目点は違うが、お主様が体現者[シュトゥルム]と思うに足る証拠が幾つもあったからなんじゃ」

そうなの?

でも。

「まぁ、その話は今は良いじゃろ。

 問題は、地球の世界法則[リアリティ]じゃな」


それが問題ってヴラドは言っていた。

何が、問題なんだろう?

「うむ。

 五十鈴殿が言っていた、地球の世界法則[リアリティ]でのぅ、保存の法則という物がある。

 これが、もしかしたらお主様に悪影響を与えるやも知れぬ」



保存の法則……?




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