あら、もう108と106の取り合いをやったの?
「悪いね?耳にバイオチップが入ってんだ。
調査してくれっていえば、全て筒抜けだよ?」
僕は勝ち誇ったように、微笑んでみせる。
こういった時ばかり、悪人面が役に立つ。
「さぁ、僕を君の御主人様の所に案内してくれないか?
なに、安心しろよ。
躾のなってない、狗の事は黙っといてやる。
な?ミュータント君」
108は唇をかみ締め、拳を握りこんでる。
「……こっちだ、ついてこい」
その後、僕と108は、終止、無言で五十鈴さんのいる部屋へと赴いた。
エレベーターに乗って上昇、相変わらずの白い壁が続く、迷路の様な通路を通って、目的の部屋に着く。
「失礼します」
ぷしゅっ
ドアがスライドして、108と僕は、室内に入る。
あ。
室内は、相変わらず白い壁で、そこには、五十鈴さんとヴラド、優良遺伝子の坂崎さんがいた。
「ヴラド!」
「お主様、久しいのぅ」
「いや、まだ1日もたってないって」
「一日千秋の想いじゃ。ふふ」
ヴラドは、昨日と同じワンピースを着ている。
あれ?
いや、それはおかしい。
ワンピースの、びりびりに破れた箇所が直っている。
僕は、服の事をヴラドに聞こうとして、違和感を感じた。
なんだろう?
そして、すぐに違和感の正体に思い至る。
ヴラドの肉声が、僕の耳に届いたのだ。
正確には、脳内翻訳されないで、ヴラドと会話が成り立っているという事だ。
気になると、どうしても聞かずにはおれない。
幾つも聞きたい事がある。
まず、疑問点を次々と解消しよう。
「えと、ヴラド、質問なんだけど、その服は?」
「ん?これか?」
チラと五十鈴さんを見るヴラド。
僕は五十鈴さんの方を見る。
「同じ物がありましたので。
大丈夫ですよ、経費で落す必要も無い物ですから」
「え?」
「地球で、私が懇意にしている会社で縫製していた物だったんですよ。
たまたま、その衣装サンプルがありましたので」
「はぁ」
「残念ながらデザインと言う分野では、皇國代理天は地球と比べて、明らかに劣っています。
それを覆さない限り、安価なだけでは、頭打ちするのは目に見えてますからね」
「ああ、それで、地球の会社のデザインからパクrいや、イマジネーションを得ようと……」
「効率的ですから」
どこぞの隣国みたいだ。
そんな五十鈴さんは、昨日はベージュのビジネススーツ、スラックスだったのが、今日は一転して、紺色のレディーススーツ、スカートだ。
「とまぁ、そういうワケじゃな」
「そっか、良かった。
結構、気にっていたみたいだから、後で、同じ物を買おうと思っていたんだ」
「お主様?妾は同じ服が2着でも、いっこうに構わんのじゃが?」
「じゃあ、次ね」
「スルーかや。悲しいのぅ……」
「う、別にスルーと言うわけでは……」
「判っておる。
どうして会話が成立するのか、じゃな」
こくこく。
僕は、首を手に振る。
だが、少し判ってきた。
ヴラドの口の動きと、話し声のタイミングにズレが生じているのだ。
「まぁ、お主様の思っておる通りじゃ。
これについても、妾より五十鈴殿の方が詳しいじゃろ」
「時雨君も察したと思うけど、翻訳機よ。
外付けのものだから、リアルタイムではないけど、ソフトは106が作った最新式の物ね。
テストを兼ねて使ってもらっているの」
「へぇ……、え?外付け?」
「本来は、脳のウェルニッッケ中枢とブローカ中枢にチップを作成して、インストールするのよ」
「は、はぁ」
どちらも、言語中枢で、聞き取りと発声に関する部分だ。
「何ヶ国語に対応しているんですか?」
「地球では24ヶ国語に対応しているわよ。
流石にマイナーなのは無理ね」
「それは、凄いですね……」
「こういう物じゃ」
ヴラドか髪をあげて、耳を出すと、無線のイヤホンみたいな物をつけている。
「へぇ、これはコンパクトだね」
「うむ。話す時は、こちらの方じゃな」
ヴラドは胸元から、名刺サイズの機器を取り出す。
その機械からはヴラドの声が、ハッキリと聞こえる。
「これで、音を拾うという話じゃ」
服の襟につけてあった、飾り気の無いネクタイピンみたいな物をとる。
無線の集音機とスピーカーだろう。
んー。
上手くすれば、地球の世界法則[リアリティ]でも変質しないで使用できるかも……。
ワンセットもらえないかなぁ……。
まぁ、いいや。
じゃ、最後の質問をしようかな。
僕は、ヴラドから目を離し、五十鈴さんの方を見る。
「話は変わりますけど、ヴラドには、後遺症が残るって……」
「非現実的すぎる!これだからミュータントはっ!!」
いきなり激昂する坂崎さん。
怒り方も優良遺伝子的だ。
「……」
肩をすくめて、ヴラドを見る五十鈴さん。
「自分で、治してしまったわ」
ヴラドを見る。
「ヴラド?」
「ん?喉の事か?あれなら治したぞ。
お主様のおかげじゃな」
「僕の?」
「うむ。色々と迷惑をかけたの。すまなんだ」
「いや、それは、いいけど……
本当に、喉はなんとも無いの?」
「お主様の血液で、体内の魔力素を補充できたからの。
今しばらくは大丈夫じゃ」
「本当に?」
「疑り深いのぅ。
特殊能力【竜の焔】は、本来、特殊能力【完全竜化】が必要なんじゃがの。
まぁ、今回は、特殊能力【耐火】に救われたようじゃ」
「し、心配してるのを、疑り深いというのは、ちょっと、その……」
「ん?まぁ、のぅ、それが皇國代理天の世界法則[リアリティ]なんじゃろうとは思うが……」
僕は五十鈴さんを見る。
「時雨君を待っている間に、色々と話をさせてもらったわ。
魔力素については、判らない概念だけど、睡眠が治療効果に絶大だったのは認めるわ」
「僕の血液より、睡眠の方がMP回復に役立ったみたいだけど?」
ヴラドに聞く。
「まぁ、それも一理あるがの。
触媒が無ければ、回復もせんじゃろう?
それより、そのMPという言葉はいただけんのじゃ」
「まぁ、ヴラドが無事で良かったよ」
「心配をかけたの」
棒は、五十鈴さんと坂崎さんの方を向く。
「ヴラドの事、有難うございました」
深々とお辞儀をする。
経緯はどうあれ、助けてくれた事実は間違いない。
ホッとしたら、なんか涙が出てきた。
五十鈴さんは笑顔で答える。
「いいのよ。私達も善意で助けたわけでは無いモノね。
えーと、ウィン×ウィンだったかしら?」
「いえ、ギブアンドテイクです」
「ミュータントを放置しておくと、犯罪者になりますからな」
相変わらず、愚劣さでは、優秀な遺伝子だ。
「……」
「……」
「あ、そうそう」
僕が五十鈴さんを見ていると、五十鈴さんは、僕の目の前に小箱を置いた。
「これは?えぇと、開けても?」
「どうぞ」
中にあったのは眼鏡。
デザインが、少し変わっているが、無料で直して貰ったんだから、文句はつけられない。
「良いデザインとして、この眼鏡のデータは役立ちそうでしたか?」
僕は少し、意地の悪い謝辞を述べる事にした。
五十鈴さんは答える。
「いいえ?全然」
「あらら」
「ふふ、そもそも眼鏡は、皇國代理天では無いんですよ」
「そうなんですか?」
僕はちらっと坂崎さんを見る。
彼の顔には、まごう事無き眼鏡がある。
「えっと、でも坂崎医師は、眼鏡、かけていますけど……?」
「あっと、言い方が拙かったですね。
正確には、作られていないという事です。
アンティークとして存在はしていますが、非効率的なので使用している者は殆どいないんですよ」
「ああ、例外なんですか」
「ええ、優良遺伝子ですから」くすくす
「この眼鏡は、優良遺伝子の証だよっ!!」
向こうから坂崎さんが、答える。
「そもそも、アンティークという物は、優良遺伝子のみが使用する事を許されたものでしてな」
説明に入った。
「優良遺伝子なのに、眼鏡が必要なんですね……」
「職業柄、仕方ありませんよ」くすくす
「私が、この仕事にいるのは!!
遺伝子による優劣が存在し、究極の!完璧なる!絶対的な遺伝子がっ……」
無視する。
僕は眼鏡を掛ける。
レンズにヒビは入って無いみたいだ。
良かった。
「アンティークですか……。
じゃあ、直すのは結構、時間がかかってしまったのでは?」
「そうですね」
僕は暫く、眼鏡の感触を確かめる。
重くもなく、きつい感じもしない。
「それじゃ、改めて謝辞を。
眼鏡、有難うございました」
「いえいえ、先行投資です」
息をぜぇぜぇとしながら、
「さて、では、コレで休憩に入れますかな?」
優良遺伝子の坂崎さんが、五十鈴さんに話しかけてくる。
「坂崎、ご苦労様。休息に入って頂戴」
「そうですか、では、私はコレで」
少しやつれた感じのする坂崎さんは、席を立ち、この場を後にする。
「今回の徹夜で、私の優秀な遺伝子がかなり死滅してしまった。
悲しい事ですな、人類の損失です。
この損失をどうやって補填するべきか……」
ぶつぶつ、つぶやいて。
「そんなに、優秀で優良なら、体ごと冷凍保存でもしておけよ」
今まで、状況を見守っていた108が、坂崎さんに、小声でつぶやく。
「108、貴方も休息に入って頂戴」
「あ、はい」
ビクッとした108が、おずおずと窺うように五十鈴さんを見ている。
「どうしたの?」
「い、いえ……し、失礼します」
「な、なんじゃ、あの2人の男は……」
「1人は、遺伝子だけは、優秀で優良な坂崎医師。
もう1人は、108というクローン体だね」
僕はヴラドに説明する。
「ふむ、珍しいのぅ。
お主様が憎悪を向けるなど。
昨日までは、殆どおらなんだのに……」
「僕だって、沸点が高いだけで、人並みには怒るよ」
「……」
「あら、もう108と106の取り合いをやったの?」
「え?」
…………。
……。
それだけでは無いような気がするけど。
あながち、間違ってはいない……のか?
「ええ、取り合いました。
僕の恋人に幼馴染といえど、ちょっかいはかけさせません」
「あらら。108も可愛そうに」くくっ
なんか、五十鈴さんって、いつか後ろから刺されそうな人だな。
「どうしました?」
「あ、いえ……少しトイレに行きたいのですが、少々席を外しても構いませんか?」
「判るかしら?」
「ココに来る前に、確認済みです、10分程で戻りますので」
がたっ
席を立ち上がる。
「お主様、ゆるりとして来るが良い。
ん、あー、愛しておるぞ」
「ん。じゃ、後はよろしくね、ヴラド」
実は今、ヴラドと心で、やり取りをした。
とは言っても、僕は、ただ心で思っただけだ。
僕は、只の一般人だから、皇國代理天の世界法則[リアリティ]に邪魔されると、同調ができない。
でも、ヴラドは体現者[シュトゥルム]だ。
だから、皇國代理天の世界法則[リアリティ]下でも、僕と同調できているんじゃないかな、と思ったんだけど、五十鈴さん達がいる中で、直接、確かめるワケにはいかなかった。
そこでヴラドに“僕と知識共有できているなら、愛してるって答えて”と思ったのだが……。
うん、なかなかの羞恥プレイだ。
僕は一旦、退室する。
本来なら、自分自身で交渉したいところだが、僕の耳に仕掛けられたバイオチップが、五十鈴さん以外の、要するに108にも、同じ様に情報を送っている可能性が高い事から、僕では駄目だ。
だから、席を外した。
話す内容、交渉は、同調しているヴラドにしてもらう。
本来なら、心で会話ができると言う事は、隠しておきたかったけど、いつかは、ばれる。
それなら、交渉の材料の1つとして明かしてしまおう。
ラパ・ヌイの事も、すぐにばれるだろうから、契約内容の変更を餌に、こちらの言い分を通らせる。
内容は、108の事。
契約すらして無いのに、僕は約束を守る事にした。
でも、僕は、108の行動を“黙っといてやる”とは言ったけど“知らせない”とは言って無い。
声帯に仕掛けられたであろう入力装置と、僕の身体の何箇所かにあるバッテリーと発電装置に類する何か、要は契約外で仕掛けられた物全てを取り除く事と、耳にあるバイオチップが108にも使用される可能性が高い事、その情報漏洩は五十鈴さんの責任である事をヴラドに話してもらう。
流石に、毎度毎度、違約金を払うつもりは無いだろう。
そこで、今度は契約内容の変更を申し出る。
餌は、僕から得た情報を使用して良いという許可。
主にラパ・ヌイ関連と八代家のプライベートだろうか?
これにより、108が僕の情報を使用しても、五十鈴さんは責任を負う必要がなくなる。
ただし、何に使ったのかと言う詳細の提出と、108の行動監視をしてもらう。
代りに僕は、とある条件をのませる。
多分、今後、108が取るであろう行動に対する牽制として。
五十鈴さんは、108を気に入っているみたいだった。
だから、企業に対する裏切り行為として、108を断罪したくは無いだろうから、のまざるを得ないだろう。
要は、108に首輪をつけるだけの交換条件だ。
でも、こうでもしないと、108を断罪する事になる。
断罪したら、企業にダメージ=切腹なので、108は死ぬ。
僕としては、ベストなんだけど、戸隠さんと108の関係が、どんなものなのか判らないから、下手な手は打てない。
戸隠さんが「復讐の義務が生じた」とか言って寝込みを襲ってくる可能性がある。
はぁあ~。
気が重い。
何で、あんな奴と、戸隠さんは、同じクローンなんだ?
おかげで、こっちは気にしないで良い事まで、気にして、殴られ続けなきゃいけなかったんだし……。
あー、ムカムカしてきた。
やっぱり復讐を……
おっと、まずいまずい。
契約が結ばれたかどうかは、僕の方では判らない。
だから、五十鈴さんに疑問点や、契約内容の変更をして欲しい所があるなら、紙に書いておいてとヴラドに言っておく。
「ふぅ」
だいたい、15分ぐらいたっただろうか?
取り合えず、一息ついてから僕はトイレを出る。
確か、このトイレって盗聴されているんだっけ?
落ち着かないなぁ。
おや?
「こんにちは」
トイレにビジネススーツを着た、身なりの良い紳士が入ってきた。
「こんにちは」
僕も挨拶を返す。
紳士の背丈は、160cmと僕と同じくらいで、歳は40ぐらいか。
皺の多い猿のような顔つきをした、柔和な人物だ。
その人物の脇を通り過ぎ、通路に出る。
――!!
何故か全身総毛立った。
身なりの良い紳士は、僕をじろじろと見ている。
「あ、あの、何か?」
「ああ、これは失礼を。
いえね、何故、患者服を着た方が、このフロアにいるのか不思議に思いましてな……」
ああ、そういえば、患者服だっけ、僕。
「あ、契約についての、交渉中なんですよ」
「ほほぅ。それででしたか。これは重ね重ね失礼を。
ココであったのも何かの縁、某は木下籐吉郎と申す者」
皇國代理天には、握手の習慣は無く、右手を心臓の上にあてて挨拶。
「あ、これはご丁寧に。僕の名前は八代時雨と言います」
僕も同じ様に返礼する。
しかし、木下籐吉郎で猿顔って、出来過ぎの名前だろ?
人垂らしという異名を持つ戦国武将で、関白になった人物、豊臣秀吉の事だが、そもそも、そんな歴史が、皇國代理天の世界法則[リアリティ]下で残っているとは思えない。
まぁ、偶然の一致だろう。
昔の人の血液を使って、クローンを作っても仕方ないだろうしね。
あーる・おー・でーOVAでもあるまいし。
まぁ、深い事は考えない様にしよう。
「時雨殿の契約は、上手くいきそうですかな?」
「あはは、まぁ、ボチボチです」
木下さんは、世間話を始めた。
トイレに用事があったんじゃないのか?
「そうですか、契約の合意が上手くいくと良いですな」
「あはは、有難うございます」
人当たりの良さそうな人だ。
「木下さんも、こちらに入らした用件は……」
「あはは、某も、そんなところでしてな」
「あはは、ヘッドハンティングだと、思ってましたよ」
うん。冗談のつもりだったんだ。
人垂らしの藤吉郎に、かけただけなんだ。
でも。
気づいてしかるべきだった。
皇國代理天の世界法則[リアリティ]下にいる僕が、豊臣秀吉という人物を思い出せると言う不思議に。
珍しく存在否定されて無かった歴史に。
僕の言葉を聞いた、木下さんの瞳が驚愕に見開かれる。
言葉を出そうとして出ない。
そんな衝撃を受けた顔をしていたが、次の瞬間には、今までの柔和な雰囲気が消え去り、殺気が一気に膨れ上がる。
あ。
地雷踏んだ、かも。
僕は空気を読んだ。
う。
冷や汗がブワッと出る。
これは、殺されるっ!
やばい、やばい、やばい。
何で忘れていたんだ?
この人に会った瞬間の事を。
僕は全身が総毛立つ程、この人を恐ろしいと感じただろう?
「な、何て顔をしているんですか!木下さん」
機先を制して、先に行動する。
「……」
「契約が上手くいって無いって顔をしていましたよ?
大丈夫です、まだまだ、やれますって!
諦めずに粘り強く、どんな事にも妥協するんです。
そうして、半歩進んで、更に次回に繋げて行きましょう!
まだまだ、やれますよ!」
今の木下さんの殺意を込めた顔を、勘違いしたと思わせる様に、まくし立てる。
うあ、駄目だ。
殺気が全然消えてない。
それどころか、膨らんでいる!
プシュッ
どこかで扉がスライドする音が聞こえる。
「お主様っ!!」
ヴラドの焦りを含んだ声が聞こえる。
僕の異状を感知して動いてくれたらしい。
助かった!
そう思った瞬間に、それは起こった。
視界内に一瞬の煌き。
気がついたら、白刃が喉元に刺さってた。
早すぎて何が起こったのか判らない。
木下藤吉郎さんの右手には、タクティカルナイフが2本、姿を見せている。
右腕は、僕の方にまで伸び、僕の鮮血で紅く染まっている。
表情1つ変えずに木下さんは、更に深くタクティカルナイフを埋め込む。
死の直前だというのに、僕の目は、木下藤吉郎という人物の右手を追う。
2本のタクティカルナイフは、僕の首の左右両側から挟みこむようにして、突き刺さっている。
1本目は人差し指と中指で掴んでしっかりと固定している。
2本目は、薬指と中指の間から出しているのだが、しっかりと固定している。
良く見ると、親指がもう一本あり、それが2本目をしっかりと固定しているようだ。
その2本を、器用にハサミの様に使って、木下藤吉郎は、僕の首を刈り取る。
辺り一面に、僕の血が吹き出る。
何か言おうと思ったんだけど、口からは血の泡しかでない。
それどころか、喉から笛みたいにヒュー、ヒュー、と音が。
「お主様あぁぁぁっ!!」
ヴラドの叫び声が聞こえた。
そして、僕は死んだ。




