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世界の 法則が 乱れる!  作者: JR
第04話 スマイル0円、タダほど高いモノは無い
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いっぱしに人間気取りかい?ミュータント風情が


「―――笑うな」

僕は、今、はっきりと、認識した。

108、こいつは敵だ。


僕の人生で、今まで一度も感じたことの無い、感情だ。

こんなに、人を殺したいなんて。



顔については、108の責任じゃないのは判る。

クローンだから、仕方が無い。

でも、戸隠さんと似ているから、戸隠さんの事を、馬鹿にされているような気がするのだ。

凄く大事な物を、馬鹿にされ、あまつさえ、贋作としてデキの悪い物をオリジナルですと、大々的に吹聴された気がする。


だから、余計に殺意が沸く。

戸隠さんだったら、絶対にしないような顔、眼差しをする、この男に。



理屈ではない。

感情が迸る。

溢れ出る。

我慢ができない。

抑制が効かない。




「何か、言ったかな?」

「……黙れ」

「おいおい、なに怖い顔しているんだい?

 僕達は、君の命の恩人だよ?」

「……黙れと言っている」

こいつの声を聞いているだけで、腹が立ってくる。


「君の友人を生かしてやった、我々の恩を忘れるつもりかい?

 これだから地球の野蛮人は……」

「君じゃなくて、五十鈴さんだね。正確には」

「だから、我々、皇國代理天だろう?」


「我々って……

 いっぱしに人間気取りかい?

 ミュータント風情が」


こいつの弱点は、五十鈴さんの命令と、ミュータントと呼ばれる事、そして伊織だ。


「―――!!」

僕の狙いは外れてなかった。

108の顔が引きつり、笑顔の仮面が外れる。


「貴様っ!」

先程までの余裕をかなぐり捨てて、僕の胸倉を掴む。


「いいのかい、モニターは?」

僕は、余裕タップリの顔をして問う。


それについては、108は何も答えなかった。

代りに、歪んだ笑顔を浮かべ、僕の腹に拳を入れる。


ごふっ

汚いなさすが忍者きたない。

モニターに何か細工をしてあるのは確定的に明らか。

思わず、武論徒語で現実逃避する。

あー。どうして、僕はこんなに緊張感が続かないんだ?




まぁ、さっきのモニターを調査しようという108の口車に乗らなくて良かった。


“恥をかかされた”と言えば、充分な復讐の義務が発生している事になる。

108は合法的に、僕を殺す事ができたわけだ。



ん?

復讐?


ああ、もしかして、今のこの気持ちって、復讐心なのかな?

地球にいた頃は、感じた事の無い気持ちだからなぁ。



108が、憎くて、憎くて、殺したい。


その殺し方も、ただ殺すだけじゃ飽き足らない。


108の自尊心を叩き折った上で、殺したい。


泣きながら許しを請う108の命を、笑いながら奪いたい。


その行為は、誰からも、祝福されてしかるべきなんだ。





自己診断完了。


こえぇ。

自分が怖い。

なんだ、こりゃ。

いや、どう考えても、108を辱めて殺したら、戸隠さんに復讐の義務が発生するでしょ?身内なんだし。


深く暗く強い感情だけど、何て視野狭窄で短絡的な怒りなんだ。

まずい。

この感情に身を任せるのは、凄く拙い。

戸隠さんとの仲を決定的に破滅に追いやりそうだ。



唇をかみ締める。

くそぅ。


仕方ない。

少しココからの方針を変更だ。

108を破滅させようと思ったけど、生かしておかないと。


戸隠さんが悲しむような事はしたく無いんだ。





「再生槽から出たばかりなんだけど?」

身体をくの字に曲げながらも相手を見据える。


「安心しろよ。

 傷がつかないようにしてやる」

憎悪を隠した笑顔で、何かの薄いカードの様な機器を取り出す。


何だ?


……。


カードキー?

違う、リモコンか。

今、スイッチを入れたな。



「108、君はチョロイなぁ。伊織とちg」

僕が、108に話した瞬間、それは起こった。


ばちっ

「ぐっ」

身体中を電撃が走り回り、筋肉が硬直、その場に倒れる。


「はっ。誰がチョロイんだ?」がっ

108は倒れた僕の頭を踏みつける。


「どうだい、首輪の威力は?

 お前みたいな豚には、勿体無いくらいの首輪だろう?」

やっぱり、身体に何か仕掛けられていた。


五十鈴さんと契約している時から、こいつの目は、僕に殺意を向けていた。

そして再生槽の調整は、108自身が行ったと言っていた。

あそこまでフラグが立っていたら、何もない方がおかしいぐらいだ。




むざむざ、敵の罠にはまったのは、勝算があったから。

流石に、気絶させられて再生槽に放り込まれるとは、思わなかったけど。



今回の件、108の単独犯である確率が高い事から、殺意があっても、すぐには殺されないと僕は判断した。

ただ、問題は、何をしてくるのかが判らなかった。

ならば、予測可能な状態の時を狙って、行動してもらうしかない。

五十鈴さんにある程度、お膳立てを頼もうと思っていたんだけど……。


ココにいたるまでの流れに関しては、早速仕掛けて来るあたり、108の方が上手だ。

実際、再生槽に入った時に、バイオチップ以外の何かを一緒に仕掛けるだろう、という予想は、当たっていたのだが、モニターに細工をする事までは、気がつかなかったのだから。





問題は、何を仕掛けられたのか、だ。

気がかりだったのはそれだ。


賭けの側面もあったが、爆発物じゃなかった事に、安堵している。

ロボトミーの可能性も考えたけど、地球の世界法則[リアリティ]で変質する可能性があるから、最悪の場合は、爆薬か毒物だろうと踏んでいたのだ。


地球の世界法則[リアリティ]で変質する入れ物に、即効性の毒物を入れ、体内に入れて置く。

僕の考えた、最悪の想定だ。

だから、命に関るような物を仕掛けられても、地球に着くまでは大丈夫と踏んだのだ。



また、命に関る程の物を仕掛けられる可能性についても、実は、かなり低いと判断していた。

108は、ミュータント……多分、遺伝子異常者の事を指す言葉だと思うけど、皇國代理天では、あまり良い顔をされない存在だとは、僕でも気づく。

だから、108には、味方は少ないはず。

そんな108に、親しそうに振舞うどころか、守るかのように行動する五十鈴さん。

多分、五十鈴さんが108を裏切らない限り、108は、狗の様に五十鈴さんに従うだろう。

坂崎が言った通り、異常なほどの忠誠心で。

その五十鈴さんが、僕をビジネスパートナーとした。

そうなると108は、五十鈴さんに不利になる様な事は、慎まなければならなくなる。





まぁ、それらの予想の結果として、現在、身体中が麻痺っているワケですが。

これは、モヒカン店員の攻撃と原理は同じ。

微弱な電流を、神経に流して混乱させ、筋肉に緊張状態を強いる。


思っていたよりも直接的で、嫌がらせに近いタイプだ。

もっと、狡猾な物を仕掛けられるかと思っていたけど……。


ある意味では、拍子抜けしている。


あ、

そうか。


戸隠さんが10歳なら、108も10歳なんだ。

知識と感情のすりあわせが上手く言って無い可能性があるんじゃ……。

狡猾さが足りなくて良かった。

良くも悪くも直情的なんだな。




じゃあ、僕は、もう少し狡猾に立ち回るとしよう。



「くっ!108、いったい、僕に、何をした……」ぐぐっ

「ははは、馬鹿だな、豚がっ!!

 お前が、伊織と名前を、言うからだ!!」

ああ、そういう理由か。

ありがとう、何となくだけど、全ての原因も判った気がする。

だけど、もう少し、お芝居に付き合ってもらおう。

情報は、幾らでも欲しいんだ。



「な、なにっ?そ、それは、いったいっ」

「あれは、106が俺だけに教えた名前だ!

 親しい奴以外は、語る事さえ許されないっ!!」がすっがすっ

2度、3度と頭を踏みつける。

五十鈴さんは特別枠なんだろうけど、こいつは歪んでるなぁ。



“イオリと呼んで欲しい。

 ある人物につけられたコードネームだが、存外気に入っている”

ああ、こいつが“伊織”の名付け親では無かった。

ちょっと嬉しい。

伊織と呼ばれた時の、戸隠さんの笑顔は、裏の無い心からの笑顔だったから。

こんな奴がつけた名前で、あの笑顔をされたら、凹むところだった。




「じゃあ、僕が語るのは当然だろう?

 恋人同士なんだから」

「嘘だ!」

いきなり全否定ですか。

鉈を持って暴れて無いだけ、まだマシな状況だけど。



「嘘なもんか。僕は伊織t」バチバチッ


身体中を電撃が走りぬける。

どうやら、イオリと言う単語に反応して、電撃を流す仕組みらしい。


と、言う事は、音声入力なのか?


僕が、思考している段階でイオリと思っても、何も無い。

反対に、108が伊織と言っても、電撃は流れなかった。



状況としては、“僕”が“伊織”と言うと、電撃が走る。



あー、多分、声帯の振動を、入力装置にしているな。


「ぼ、僕は戸隠さんと、食事をした程の仲だよ?」

「はっ、そんなデマカセを!!」

「緑溢れる森林浴でマイナスイオンを楽しみながら、シオリさん含めて、囲炉裏でカロリ満点の食事をね。

 ピロリ菌の心配はあったけど、1キロ陸路でセオリ通りデートしたのさ」

おお、凄いな。

この声帯に仕掛けられた入力装置は、結構、高性能だ。

戸隠さんの作った翻訳機の力では無いだろうけど、前任者も良い仕事をしているのではなかろうか?

そんな人物ですら、納期が間に合わなかったからという理由で切腹って……。

それだけ、社会に重点が置かれた世界なんだろうけど、まさに企業の歯車だなぁ。


さて、この声帯に仕掛けられたと思われる入力装置だけど、日本語の音韻は基本的に、子音+母音で構成されていて、母音は5つしかない。

判りやすい構造だけに、入力装置には、よりシビアさが求められる。

今、伊織“i−o−ri”と、似たような音の言葉を、語ったけど、どれも反応しない。

流石にシオリ“S+i−o−ri”や囲炉裏“i−r+o−ri”には誤作動するかなと思ったんだけど、伊織“i−o−ri”にのみ反応するんだ。


変な言い方をすると、あいまいさが無い、とも言える。

なら、その高性能さを、仇にできる。




「君は、した事があるのかい?デェト。

 自分が特別と思うなら、あるんだろう?」ひひひ

僕は坂崎さんの笑いを真似る。

「デートに食事だとっ!」

108は、僕のデマカセの話を聞いて、驚いているようだ。


「そ、その様な、獣の所業なぞっ……!!」

「ないの?じゃあ、僕の敵じゃないね」

「貴様……」

108の歯軋りの音がココまで聞こえてきそう。


「んんー?その拳は何かな?

 今度は、僕を爆破でもするかい?」ひひひ

「……」ぐぐっ


「まぁ、どっちにしろ、君みたいな男では、ヰオリには似合わないけどね」


成功だ、電撃は流れない。

イントネーションを少し変えた。

イオリではなく、ヰオリ。ウィオリに近い。




四肢に力を入れる。

倒れている状態から起き上がる。

2度、3度と108が僕を踏みつけるが、その足を払い、立つ。


真正面から、睨みつける。






「とりあえず、忠告しておくよ」

「何をだ?」


「今、君が攻撃すると、五十鈴さんは腹を切る羽目になる」

「ふっ。何を馬鹿な」


「ココに入る前に契約してね」

「?」

「僕とヴラドのジンケンを守るって」

嘘です。

守るのはヴラドだけです。


「ふん。証明できねば、意味が無い!」

「108……

 君、馬鹿かい?馬鹿だろ?いや、馬鹿に違いない」

「なんだとっ!」

「自分がした事を思い出せよ」

「……」





「悪いね?耳にバイオチップが入ってんだ。

 調査してくれっていえば、全て筒抜けだよ?」


「―――!!……貴様」ぎりっ


「僕をココで、殺したら、貿易を望んでいる五十鈴さんにも、ヰオリにも迷惑がかかるぞ」

108は急に押し黙る。



「聞いて見ると良い、君の御主人様に。

 君の御主人様が、ビジネスパートナーを、契約したその日に、暗殺する狗を大切に飼っている。

 その事について今後、現れるであろう、様々なビジネスパートナーに、皇國代理天の五十鈴は、ミュータント狂いの契約不履行者だって、悪印象を植え付けて良い物かどうかってな」



「……」ぎりっ



僕は勝ち誇ったように、微笑んでみせる。

こういった時ばかり、悪人面が役に立つ。




「さぁ、僕を君の御主人様の所に案内してくれないか?

 なに、安心しろよ。

 躾のなってない、狗の事は黙っといてやる。

 な?ミュータント君」




力もコネも無いんだ。

虎の威を借りるぐらいは、仕方が無いでしょう?




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