ビジネスです
「さて、時雨君」
「はい?」
「ゴキブリみたいにしつこい蟲の居た駅前で、
何が起こったのか知りたいのだけど……教えてもらえる?」
うう、墓穴を掘ったか……。
駅前の情報を五十鈴さんが聞いてきたので、知らぬ存ぜぬを通したかったけども、無理だったみたいだ。
「判りました」
しかし、無料で情報をあげるほど、僕だって落ちぶれていない。
「すいませんが、聞く以上は、この事について関係を持つという事になりますが、構いませんか?」
「ええ、構いません。
私達にも関係ある事なので」
関係ある事?
どういう事だろう。
「では、申し訳ないのですが、口約束はトラブルの元です。
コレに録音しても良いでしょうか?
確か、簡易契約として扱ってよいという話でしたが……」
五十鈴さんのスマホモドキを取り出す。
というか、何処をどう見てもスマホだ。
「はい。構いませんよ」
スマホモドキを五十鈴さんに返し、僕は、五十鈴さんの操作手順を見る。
正直、契約内容よりこっちがメインだ。
「では、契約内容を決めましょうか」
「はい」
まだ録音は開始していない。
ありがたい事に、皇國代理天は漢字文化圏の世界の様だ。
いや、もっと正確に言うと日本の様だ。
スマホモドキでカナを使用しているのが見えたのだ。
「では、契約内容は、駅前で起こった事を、僕の知っている限り話す。
その見返りに、五十鈴さんは、駅前で起こった事に、
僕とヴラドは関係ないという情報を作る……というのでどうですか?」
「それは……ちょっと、待って下さい。ん~……」
おや、五十鈴さんが難色を示したぞ。
「契約内容の変更を」
「え?はい……」
流石に、駅前の事件を事故にするには無理があったか?
「その見返りに“五十鈴さんは~”ではなく“皇國代理天は~”にして下さい」
「え?あ、はい。構いませんが……」
お金の問題かな?
あの事件に、企業が資金を出しても良いと判断するのかな?
ん?
いや、違うな。
確か、別働で回収班が動いていたみたいだし、蟲人捕獲の資金を流用するとか、かな?
「では、違約した場合について、ですが」
しかし、僕の話を五十鈴さんが止める。
「それについては、1つ。
情報が虚言だった場合についての罰則を入れたいのですが……?」
と、五十鈴さんが問う。
「虚言だった場合ですか……判りました。
再度確認しますが、契約内容は“駅前で起こった事を、僕の知っている限り話す”ですね?」
「ええ」
「虚言だった場合についてですが、僕の話と後からの調査で、違っていた場合、という事ですね?」
「そうですね、構いません」
うーん。
どうしよう……。
ここで、好感度でも上げておくか?
「その契約ですと、僕は殆ど目の見えない状態でしたので、大半の情報を“知らない”で答えますが、構いませんか?」
「?」
「いえ、その契約ですと、正確性にかける情報については、口を噤む必要があるので、どうした物かと」
「ふむ、それもそうですね、判りました。
罰則については取り下げましょう」
「では、それで、お願いします」
ふぅ。
僕はため息を1つ吐く。
「先程の条件ですと、今から話すことの大半が、真偽の確認が取れていないので“判らない”で終わってしまうんですよ」
「そういう事ですか」
さて、スマホモドキの扱い方もある程度は判ったけど、もう少し使用方法を見たいなぁ。
僕は、録音の終わったスマホモドキを貸してもらう。
「確認の為、再生しても構いませんか?」
「ええ、良いですよ」
再生方法を聞いた後、先程の契約内容の音声再生(正確には動画再生だったが)を行う。
ちゃんと取れている。
というか、ただ単に録画しただけの映像だ。
あとは、どのデータが最初の契約データかのチェックだ。
みた感じはやっぱりスマホだ。
どうやら、地球の世界法則[リアリティ]で使う為に、地球の科学技術で作ったようだけど……。
んー?
いや、だけど、中はパソコンに近い感じだ。
うーん。
iPadに近い……いや、やっぱり感覚的にパソコンだろう。
テラ単位の内臓HDDをいくつか搭載したような……。
これなんてそのまま、窓のエクスプローラだし。
あー。
父が遺したPCが、こんな感じだった。
内臓HDDが4台、外付け4台の電力馬鹿食いPC……。
データが全てエロゲだった日には、もう……。
大喜びでした。
主に月見里さんが。
触らせないように、しといたはずなんだけどなぁ。
昨日の話だと、どっかでパスワードを入手したのか、自力で暴いたのか、色々とやっていたみたいで……。
でも、その頃の記憶なんて、しっかりと覚えてないから、僕よりも月見里さんの方が詳しいかも。
幾つかのフォルダを覗いてみる。
驚いた事に、mp4とか、jpgなど、大半のデータは地球製の拡張子だった。
という事は、契約は動画データだから、mp4か?
3GPPじゃないのか?
それとも他の拡張子かなぁ。
もしかして勝手に変換してくれるのか?
むむむ。
いや、別の場所に、皇國代理天製の形式であるとか……。
動画データがあるフォルダが見つかれば良いのだけど、探すのは骨が折れそうだ。
あとで、五十鈴さんに見せてもらおう。
それに操作上の問題点として、マウスやキーボードがない。
タッチパネルで、小さい画面の、小さいアイコンをダブルタップっていうのは、とてもやり辛い。
うう、いらだつ。
外がスマホなのに、何で中身もスマホじゃないんだ?
どうにか……
ん……?
いや、そういえば、五十鈴さんが何やら空中でピアノを叩くような指運びをしていたな……。
何らかの外部入力があるんじゃ……。
怪しまれては拙いので、一旦ココでストップしよう。
僕は、契約内容の駅前の事を話し始める。
「えーと、何処から話せば良いのか」
少し考える。
「戦っていた敵は、自称コクーン:キハ1011の体現者[ヘイタイ]という知性体です」
「コクーン……やっぱり……」
「知っているんですか?」
「少しはね」
「そういえば、皇國代理天では世界法則体現者の事を、体現者[ビジネスマン]って言うんですよね?」
「ええ」
「地球では、体現者[ビジネスマン]の事を体現者[シュトゥルム]と言います」
「あら?地球の守護者……体現者[ガーディアン]じゃないの?
秋霖殿に、以前お会いした時は……」
あれ?
そうなの?
でも、何でココで、ジーちゃんの名前?
「祖父と僕とでは、役割が違うので……」
取り合えず、誤魔化しておく。
「ああ!そうなんですね」
ポンと手を打つ。
「ヴラド君も体現者[シュトゥルム]なの?」
「はい、そうです」
さり気無くだが、探りを入れてきている。
やはり結構なやり手だ。
「それで、駅前の話なのですが、ある人物を体現者[シュトゥルム]だと見破った事から、ちょっとした交渉が、戦いに発展してしまって……」
「それは、どのような……?」
「順を追って説明しm」
僕が再び、話し始めようとした瞬間、身体がふわっと軽くなる錯覚と共にエレベーターが止まった。
「おっと」
かしゃんっ
からからっ
「しまった……」
スマホモドキが床に落ちた。
同時に、ゴォンと音がして、エレベーターの扉が開く。
僕は急いで、スマホモドキを拾う。
「五十鈴さん、これって、衝撃とか大丈夫ですか?
どこぞのゲーム機の様に、爆撃を受けても壊れたりしない仕様ですか?」
「え?」
戸惑う五十鈴さん。
「すいませんが、もう一度、全ての契約を再生してもらって良いでしょうか?」
「ええ、構いませんが……」
露骨過ぎただろうか?
五十鈴さんは、エレベーターから出ると、スマホモドキを再生する。
やはり、空中でタップしている。
画面の操作は、タッチパネルと空中、どちらでも可能なようだ。
「ところで、そのスマホに似ている機械は、何て名前なんですか?」
「え?」
「皇國代理天では、誰もが持っているような物なのでしょうか?」
「ええ、誰もが持っています。必需品ですね」
「ああ、だから、先ほど、人手に、要は僕に渡したくなかったんですね?」
「いえ、そんな事は……」
「申し訳ありません。そんな大事な物なのに、粗野に扱ってしまって」
「あ、いいんですよ」
「それって、僕が地球でも使用できますか?」
「全ての機能を使おうとすると……少し難しいかと……
脳にチップを埋め込む必要がありますが……
その、地球の科学力では、少し……」
「そうですか。残念。スマホで我慢します」
エレベーターから降りた階は、何階かは判らない。
上に昇ったことは確かなのだが、通路には、ガラス窓ひとつなく、観葉植物を置いてなければ、絨毯も敷かれていない。
飾り気も何もない、実用一点張りの通路だ。
天井から光がさし、白く清潔な感じのする通路を明るく照らす。
五十鈴さんは地上近くだとは行っていたけど……。
僕は、再び歩き出した五十鈴さんの後ろを付いて行く。
歩いている最中、僕は周りを観察する。
カメラや警報に類するようなセンサーの類の思われるものは、そこかしこにある。
何しろ何もない壁だから、何かがあると、逆に目立つのだ。
その量の多さから判断すると、よほど重要なエリアなのかもしれない。
黙っているのも観察されそうで嫌なので、駅前であった事を、順を追って話す。
もちろん、幾つかの話には嘘が入っているのだが。
昼御飯を、ドネルケバブにしようとして、途中で気が変わって家にもって帰ろうと思った事。
モヒカン店員が、一昨日、不振な噂を流していて、それで何かがおかしいと思った事。
気づいた時には、敵の術中にはまって、身動きが取れなくなっていた事。
途中で、異世界の体現者[シュトゥルム]だと気づいて戦闘になった事。
何か思うところがあるのだろう。
五十鈴さんは、いつの間にか黙っていた。
僕は、話をある程度で切り上げる。
五十鈴さんの質問待ちの状態だ。
僕には、その間、スマホモドキを弄る時間が与えられた。
五十鈴さんの、後ろについて行っている格好なので、音さえ気をつければ、後はやりやすい状態だ。
そうして、僕と五十鈴さんは、邪魔な物を廃し、効率的な空間設計が成された通路を進む。
スライドするドアをくぐり、奥の通路へ。
その奥には、両側に個室が、たくさん並んだ部屋があった。
カラオケボックスに似ている、と脳裏に言葉が浮かんだが、それが一体なんだったか、今の僕には思い出す事ができない。
部屋の扉には、それぞれに『空室』と書かれた札が架けてあり、ナンバープレートが割り振ってある。
五十鈴さんは、そのうちの1つのナンバープレートに触れると、ピッと音がし『使用中』に変わった。
「どうぞ」
プシュッと音がして、自動扉がスライドすると、五十鈴さんは僕に中に入るよう、促す。
室内は、やはり窓1つない、白い壁の部屋だった。
対面の壁は、スクリーンの様になっていて、中央にはプラスチック製のテーブルと椅子。
どれも飾り気のない、シンプルだが実用性に重点をおいた作りの一品が置いてある。
テーブルの上には、ノーパソみたいな物が置かれている。
僕と五十鈴さんは席に着くと、五十鈴さんは、テーブルの上のノーパソっぽい物を操作する。
すると、テーブルが輝き、ホログラムみたいな物が浮かび上がる。
「こちらをどうぞ」
そういって、五十鈴さんは、僕に眼鏡というよりもゴーグルに近い形状の物体を持たせる。
「私達には、脳内に埋め込まれていますので、必要ないのです」
あー、えーと、NHKの電脳コイン……
あれ?題名は思い出せても内容が……何だっけ?
どうも思い出せない記憶が多い。
要するにAR,拡張現実用のヘッドマウントディスプレイなんだろう。
「紙ではないのですか?」
「ええ、契約がまとまり次第、清書致します。
無駄な紙を使用しないので効率的なのですよ」
「はぁ」
僕は、ゴーグルをかける。
そして、世界は変わった。
白かった壁は、茶色の落ち着いた雰囲気の物に。
何もなかった殺風景な部屋には、観葉植物の緑が溢れ、窓からは太陽のやさしい光が降り注いでいる。
プラスチック製のテーブルは、がっしりとした黒いテーブルに。
な、なんじゃ、こりゃ。
「え、えと、五十鈴さんにはずっと風景がm」
この風景が見えていたんですか?と聞こうと思ったんだけど……何か引っかかった。
何故か判らないが、直感的に言わない方がよい様な気がした。
「ふ、風景が綺麗ですが、実際の外はどんな感じなんです?」
窓の外を見る感じで、誤魔化す。
「外界ですか?そうですね……」
耳の後ろあたりに手をやって、何かデータを所得しているのか、五十鈴さんは少し黙り込む。
「今日は……海上は嵐の様ですね」
「海の上なんですか?ここは?」
「ここは、元々は陸地だったのですが、海面の上昇と共に水没しまして……」
「はい」
「最終的には地下都市計画の上に、海底都市、海上都市と、とりとめなく作られた都市ですね。
一応は、この世界の中心都市ですよ」
「凄い街ですねぇ」
ジオフロントの上に、メガフロートを作った様な物なんだろうか?
僕は、目線を戻して、テーブルの上にあるデジタルな紙に触れる。
質感はないけども、触るとその部分に影響を与える事ができるみたいで、摘むとしわが出来る。
ん?
ヘッドマウントディスプレイ右手の方を少し見る。
キーボードらしき物とマウスっぽい物があった。
あ。
これは、やれるか?
コンコン。
ノックされる。
「108(イチマルハチ)です」
「入りなさい。108」
「失礼します」
スッと、扉が横にスライドし、戸隠さんが入ってくる。
あれ?
何でココに戸隠さんが……?
あ、いや、違う。
106とは、言ってなかった。
「この子は108.こちらでの秘書をしてもらっているの。
106(イチマルロク)……伊織とは同型よ」
確かに、細部で伊織との相違点が見られる。
スレンダーなボディは、よりスリムに。
鳥の濡れ羽色の髪の毛は、短くウルフカットにしている。
目じりが若干つり目がちなのと、口元が真一文字なのぐらいか。
108と呼ばれた人物は、紺色の男性用ビジネススーツに刀を携え、紙とペン、朱肉をのせて来ている。
全体的に美人だがボーイッシュ、男装の麗人といった印象を受ける。
「紙とペン、朱肉をお持ちしました」
コトッと僕の方に、ペン、朱肉を置く。
「粗品ですが……」
ペンは漆に全細工の飾りを使った万年筆で、朱肉の上蓋も同じ柄、造りだ。
粗品?
ソチャでなく?
何だろう、今、なにか凄い違和感を感じた。
何かが地球と違うからだろう。
だけど、それが何かは、忘れてしまった……。
「何か?」
ボーっとしていたら、108さんを凝視していたみたいだ。
怪訝そうな目で見られている。
「あ、いえ、戸隠さんに、えと、106に似ていたから、ちょっとびっくりして」
108さんの目付きが鋭くなる。
「ああ、僕と彼女は、ある目的の為にデザインされた素体のクローンですから」
ちょっとムッとした感じで108さんは答える。
「失礼ですが、106とはどういう関係で?」
顔は笑っていない。
まるで詰問するかのように、訊ねて来る。
「恋人同士よ」
横から五十鈴さんが答える。
「「え?」」
同時に僕と108さんが驚いて声を上げる。
戸隠さん、バレバレですよーーっ!!
いや、待て。
まだバレバレというわけではない。
新田や武居から、情報が言ったのだろう。
それなら、まだ、戸隠さんの嘘は、ばれていない事になる。
戸隠さんの設定した僕という駒の役割を思い出せ。
僕の役割は、月見里さんがニューエルサレム教団を裏切る為の布石だ。
そのために、戸隠さんは僕を使っていると、五十鈴さんに思わせているはずだ。
戸隠さんの祖国を裏切るという考えは伝わっていないはず……?
しかし、僕のその思考は横からの声にかき消される。
「……恋……人?」
108さんだ。
「ど、どういう事です?主任!」
五十鈴さんに問いかけている。
しかし、管理人とか、主任とか、師匠とか、忙しい人だね。
「106と八代時雨君が、恋人同士という事よ?」
「そ、それは……
一緒に食事をしたり、
仲良く復讐したり、
遺伝子を提供したり……のですか?」
「ええ、そう」
108さんは伊織と違って、凄く表情が読みやすい。
驚愕 → 愕然 → 困惑 → 絶望 → 怒り。
ころころ変わるなぁ。
「そ、そうですか。こ、こ、恋人同士ですか……」よろっ
108さんは、五十鈴さんに見えないように、僕を睨む。
何で?
もしかして、シスター・イルゼみたいな性癖の人なのか?
伊織の事を「オネーサマ……」っていう仲だったりとか……。
いや、クローンだと言うなら、自己愛、ナルキッソスになるのか?
うぅむ。
まぁ、いいや。
今の僕は、それどころではない。
何とかして口約束を撮ったデータを消去できれば!
しかし、下手にスマホモドキを弄っているのが、ばれるわけにはいかない。
それに、消したくないデータまで消去するわけにもいかない……。
「それでは、失礼します」
一礼すると、108さんは退室する。
最後に僕を睨んで。
扉が閉まるやいなや、
プッ
口に手を当てて声を出さずに笑う五十鈴さん。
震えている。
あー。結構、趣味悪い人?
もしかして。
「失礼しました。時雨君。
彼はからかうと、とても面白いので」
そうですか。
ん?
ぷれいばっく。
……。
「彼?」
「ええ、そうです。
彼は……正確には、オリジナル体の性能なんですけどね。
非常に面白い個体なんですよ」
「はぁ」
「彼は簡単に説明すると、クラインフェルター症候群なんです。
X染色体が過剰である為に、男性としての2次性徴が欠如してしまっているのです」
「……と言う事は、戸隠さんも実はY染色体を持っているのですか?」
「いいえ。彼だけです。
他の9人のクローン体は、遺伝子異常を除去済みです」
「それで、彼だけが男性という事なんですね」
「本来ならば、こういったオリジナル体に起因する遺伝子異常は、クローニング時に取り除くのが常なのですが……。
まぁ、要するに彼は、クローニング失敗作なのです。
本来なら、廃棄処分になるはずだったのですが……色々とありまして……」
ふふっと笑う。
そういえば、三十路を越えているって、言ってたっけ。
遺伝子提供者[ハハオヤ]みたいな心境なのだろうか?
「さて、それでは、本題に入らせてもらいますが……」
急に真顔になる。
ああ、多分、今の108をからかったのは、趣味と僕の緊張をほぐす為か……。
侮れない人だなぁ。
さて、ココからが勝負だ。
「順を追って説明します。
まず最初に、106……戸隠伊織の事からなんですが」
「戸隠さんの事?」
「はい。一昨日、全ての作戦終了後に、彼女の新たな家を用意しようと、幾つかのプランを立てて、見積もりに入っていたのですが……」
さて、気をつけないと。
ココから先の商談は、下手な一言から、全てが台無しになる場合がある。
頭を切り替える。
冷静に、冷徹に、冷酷に、裏切りとは最高のタイミングで行わなければ、意味がないんだ。
「106から話を聞いたのですが、時雨君の方から八代邸に住んでも良い、という打診があったとか」
さて……。
戸隠さんの言葉が蘇る。
“私達が、共犯者[コイビト]であるという事を、管理人に悟られないようにして欲しい”
“あくまでもクラスメートとして振舞って欲しい”
ならば……。
「確かに言いました。ただし、少し語弊があります。
住んでも良いのですが、あくまでも間借り……
家賃は貰う事になります」
「そうですか」
「それと、もう1つ」
「何でしょう?」
「一昨日は、貴女方が侵略者だとは知りませんでしたので、その様な事を言いましたが……
できれば貴女方の侵略目的を教えて下さい」
マトモに話すとは思えないけど、何かの糸口ぐらいにはなるだろう。
あとで、戸隠さんにに聞けば良いだけなんだし。
「私達の目的ですか……」
「はい」
「我々、皇國代理天の侵略目的、それは……」
「我々と貴方がたに、富と繁栄をもたらす事です」
「え?」
「経済活動による社会の活性化、ひいては市場の拡大に伴う投資活動……」
「ビジネスです」
「は?」




