そうだ。探ってみよう
ドネルケバブ屋のモヒカン店員さん。
陽気な外人さんだが、どうも裏の顔がありそうだ。
何故、五十鈴マンションでおこった事件を知りたいんだろう?
何か、きなくさい。
もしかしたら僕の妄想が、あたったのかもしれない。
ヴラドも、僕と同じ結論に辿り着いたみたいだ。
(それが情報収集か、捜査の霍乱、煽動……何かは判らぬがの……。
ラパ・ヌイでも乞食に扮する者達が、よく使う手よ)
「あのマンションの室内で何があったか、知りたくはありませんか?」
「それと肉を交換するという取引ネ?
仕方ないネー。
でも、その話が、ガセでない証拠ハー?」
う。
ガセでない証拠?
うあ、どうしよう。
出来れば、ヴラドの心を読む魔法を構築する為の時間稼ぎをしたい。
……。
うん。
強気で行こう。
主導権は、こっちにある。
「証拠はありません。
でも、噂話よりかは、信憑性はあると思いますよ?」
「フムム」
「……」
うーん。戸隠さんみたいに上手くいかないなぁ。
「そーいえば……」
「ん?どーしたノー?」
「あ、いえ、なんでもないんです」
ただの時間稼ぎです。
さて、どうしよう。
もう、こっちの打つ手なんてないよ。
ヴラド、そろそろ良い?
(あと少しじゃ。お主様。
精神を削る上に、バックラッシュ回避の為の手段が使えんのでのぅ。
どうしても強度不足じゃ)
ああ、そういえば、ばれないようにしないといけないから、結印[シンボル]や真言[パワーワード]は使えないんだ……。
うーん。
別の情報で、後詰めするか。
「そーいえば、店員さんは、五十鈴マンションの管理人さんがどういう方か、どれぐらい知っていますか?」
「え?全然知らないヨー。見たこともないネ。
ケバブ買ってくれるといいネー」
それなのに、女性と知っていたわけか……。
「友人が言ってましたが、武術の達人だそうです」
「オー、そーなノー」
この店員さんは、五十鈴さんの事をどれぐらい調べているんだろう?
既に、確信になっている。
この店員さんは、ドネルケバブの販売よりも、ココにいることを目的としている。
間違いなく、何らかの組織に属しているエージェントだ。
にわかには、信じられない事だが。
だけど、日本はスパイ天国だって聞いてたけど……
この人、諜報関係については素人なんだろうか?
僕ごとき素人に看破されるなんて。
戸隠さんの口車の方が鮮やかだったなぁ。
で、やっぱり最初の疑問に、戻るわけだ。
何故、五十鈴マンションでおこった事件を知りたいんだろう?
あの、マンションにはどんな秘密があるんだろう?
いや、それとも、五十鈴さんに秘密があって、それを探っている……?
「武術って言っても色々ありますからね、流派1つとっても、違いますし」
「どんな武道なノー?」
「さぁ?」
「ええっ、ココまでで、それはないヨー」
「そうは、言われても……武道の達人以外にも、様々なスペシャリストみたいですよ?
これで、充分なデータじゃないですか」
「むむ、ショーバイジョーズネー」
この店員さんが、諜報員なのか工作員なのか判らないのが、いたいなぁ。
今になって気づいたけど、昨日のマンションに関する話って、明らかに噂による扇動とか、撹乱に類する様な話だと思う。
マンションの事故が、事件だという噂を立てて、どうしたいんだろう?
もし、五十鈴さんの根回しがしっかりとしていたなら、この店員さんが妙な噂をたてなければ、誰も気にしなかったんじゃあないだろうか?
ん?
もしかして、雇い主は保険屋とか?
今回、火災保険は、下りないとか言ってたっけ。
個人賠償責任保険と私費でカバーとか戸隠さんは言っていた……。
おっと。
今は目の前の事に集中しよう。
「どうです?決心はつきましたか?」
言いつつ、ちらと、携帯の時計を見る。
4時が近い。
これから、少し買い物をして、帰宅、今日1日で何処までやれるだろう?
戸隠さんや月見里さんは助けてくれるだろうか?
「時間が気になるノー?」
「ええ、そろそろ、他の所に行く必要がありまして……」
「……」
「とある人と約束をしていまして……遅れるわけには行かないんですよ。
新鮮さが売りですから」
「新鮮?」
「買うなら、食材と情報は、新鮮な方が良いでしょ?」
「―――!!」
直接的な言葉過ぎたかな?
もっと良い言い回しがあれば良かったんだけど。
「……」
「……」
んー。
まだ足りないか。
じゃあ、情報じゃないのかな?
よし、そろそろ、ヴラドに頼んで、魔法で心を読んでもらおうか。
「さて、そろそろ、時間なのd」
「待ッタ!」
「……」
「ふぅ、判ったよー。おじさんの負けネー。
冷凍食品だけど、ケバブ肉と交換ヨー」
あ……。
やった!!
「ん?良いんですか?」
「いいヨー。今日は店じまいネー」
「それは、申し訳ありません……」
「いいのいいノー」
「ちょっと待っててネー」と言って、移動販売車の奥へと入っていく店員さん。
「やってみるもんだねぇ……」
感無量。
「口下手という割りに、なかなかやるではないか。お主様よ」
ヴラドが、ふりかえり、僕の方を見る。
すると、僕の視界も動き、僕の顔が映る。
相変わらずのブサメンだ。
「なんだねぇ。
視覚同調して、自分の顔が視界に入ると、微妙に嫌な気分になるなぁ……」
「そこまで、自分の顔や身体が嫌いかや?」
「そうだねー」
「妾は、そう嫌いではないぞ?お主様よ……」
ヴラドは、少し背伸びをして、僕の頬を両手で挟む。
そのまま、顔を近づけてくる。
勝者への口づけですか?
うれしいなぁ。
ん?
何か、甘い臭いが……。
くんくん。
何だろう?
何の臭いだろう。
バニラエッセンスに似ているが……この臭いは、ヴラドじゃない。
今の臭いはどこか下品な甘ったるさを感じる。
「お主様、今、妾の事を乳臭いとか思わなんだかや?」
「思ってないよ。
ただ、どことなく、ヴラドの香りの方が好いなって思っただけで……
だいたい、何でバニラエッセンスが乳臭いになるのさ?」
うう。
この甘ったるい臭い、鼻が曲がりそうだ。
ヴラド分を補充しておこう。
背伸びしていたヴラドを抱き寄せ、首筋に顔をうずめ、匂いをかぐ。
「やっぱりヴラドって好い匂いだよね?
魔術かなんか使っているの?」
「ん、いや、そのぅ、汗臭いのは嫌じゃろ?
じゃからの、いつも、この袋に香草を入れておくのじゃ」
首筋からかけた、小さな袋を出す。
匂い袋といったところか。
「それで、この袋の中の匂いを呪法【秘めたる香】で、体臭と変えるのじゃ」
「ああ、それで、バニラなんだ……そういえば、他にもあるよね?
昨日は違った匂いだったし……」
「ん?ああ、気分によって、色々と変えているのぅ……」
「次は、どんな香りか、楽しみができたよ」
首筋に顔をうずめ、匂いを楽しむ。
くんかくんか。
「うう。お主様は匂いフェチじゃ」
満更でもないくせに。
れろん。
「あひぃっ」
首筋をひとなめしておく。
勝者への口付けの代わりだ。
「あ、そうだ」
「なんじゃ?」
僕は、ポケットから眼鏡を取り出す。
レンズが取れてしまった眼鏡は、地面に激突した時のショックで、フレームは曲がり、折れて、蝶番からテンプルが外れ、耳に引っ掛ける事ができない状況だ。
幸い、部品はヴラドが回収しておいてくれたようなので、魔法で直すことができる。
「眼鏡、直してもらえる?ヴラド」
―――ヴ
「別に構わぬが……」
ん?
―――ヴヴ
おや?
羽虫かな?
―――ヴヴヴヴ
違うな……。
―――ヴヴヴヴヴヴヴ
耳鳴りまでしてきた。
(お主様、これは耳鳴りではないぞ?
低周波じゃが、一定のリズムを刻んでおる……)
そうなの?ヴラド、どこから?
(判らぬ……危害を加えるような物では、なさそうなのじゃが……)
「はい、お待たせネー」
しばらくすると、店員さんが、ジュースカップと一緒に、一抱えもありそうな、ラップで包まれた肉を持ってくる。
「ついでにこっちも」
そう言って、チャイに似た何かを渡される。
「どーせ、今日は余っちゃうネー。サービスサービス」
おなかも減っていた僕は、有難く受け取り、1つをヴラドに渡す。
ずずっ
はぁ。すきっ腹には応えるねー。
「はい、これ」
チャイみたいな物を飲み干すと、ラップで包まれた、でかい肉が渡される。
「おもっ」
僕はドネルケバブ用の冷凍肉を入手した。
ちゃららら、ちゃんちゃん、ちゃーん。
おお、脳内でドラハイクエスト、通称ドラクエのファンファーレが。
「ところで、どーやって持って帰るノー?」
「え?」
「肉はラップしてあるけど、結構重いヨー?」
「あ」
「いや、お主様、そこら辺は大丈夫じゃ。
お主様の背負い袋に入れて帰ると、伝えて欲しいのじゃ」
横からヴラドが話してくる。
判った。
それで、魔法は構築できたの?
「構築完了じゃ。発動には、10秒ほど掛かる。
時間を合わせるのじゃぞ?」
「ん」
「しかしのぉ、お主様?」
「?」
「魔法を使う意味がなくなってしまったのぅ」
「あ」
「それとも、こやつの正体でも探ってみるかや?」
あ、それ、いいかも!
せっかくだから、やってみようか。
「好奇心、猫をも殺すという諺もあるのじゃがのぅ……」
自分だって楽しみなくせに。
「ふふ。では、タイミング良く聞きたい事を、心で思い浮かべる様に誘導するのじゃ」
「了解」
「何の話?」
店員さんが聞いてくる。
「ああ、彼女が大丈夫って。
持って帰る方法があるって事を伝えて欲しい……と」
「それは良かったヨ」
ビニール袋があれば良かったけど、ないので、そのままタオルでくるんでナップサックにしまう。
「とりあえず、そちらで保管しておいて貰っていいですか?」
さて、今度はこっちが報酬を払う番だ。
「マンション管理人と、室内の出来事の情報、どっちが先が良いですか?」
「ふむ、それについてだけど、僕から質問するという形で良いかナー?」
「質問する?」
「うん。僕が質問し1号さんが答える。
言いたくない事、知らない事は、話さないで良い。ドウ?」
「規定されている情報までなら良いですよ」
―――ヴヴヴヴヴヴヴ
耳鳴り、低い音波だっけ?がきつくなった気がする。
「では、質問ネー」
「……」
「あの室内で起こった事は何?」
五十鈴さんによる自作自演だけど、ココは予定通り答える。
「あの室内で、起こった事は戦闘。
戸隠さおりという人物と、エンゲル・パトリオットと呼ばれる存在が戦ったようですね」
「ふむ。戦っていた者達の詳しいデータはあるノー?」
「ないですねー。
ただ、1人は甲冑を着た騎士のような姿だったらしいです」
戸隠さんと月見里さんだからなぁ。
色々と知っているんだけど、言わない。
―――ヴヴヴヴヴヴヴ
何だろう。どんどん、耳鳴りが大きくなっている。
凄く不快な気分になる。
「じゃ、次」
「はいはい」
「死んだ人物は誰?」
「わk……戸隠さおり……だと思います」
一瞬だが、誰だか判らないと応えそうになったが、こらえ、用意していた回答を応える。
あー、やばかった。
知らないって答える所だった……。
―――ヴヴヴヴヴヴヴ
何か、心臓の鼓動まで早くなってきた様な、そんな気さえする。
凄く、嫌な感じだ。
「エンゲル・パトリオットって何ヨー?」
「判りませんが、光り輝く甲冑を着た騎士の事だと思います」
(お主様!)
何、ヴラド?
(これは、明らかにおかしい!何らかの攻撃を受けておる!)
へ?
どういう攻撃なの?
(妾とて、判るわけなかろう!じゃが、これは……)
―――ヴヴヴヴヴヴヴ
耳鳴りに耐えれなくなってきた。
うう。
いったい、どうなってるんだ?
「まだ行くヨー」
「……」
「戸隠さおりについて質問ネー」
「はい。戸隠さおりという人物は、あの部屋の持主です」
「それ以外にハー?」
「戸隠さおりは、実在する人物ではありません。
多分、養子縁組による書類上で作られた人物だと思います」
僕は、ありませんと答えたつもりだった。
「誰が作ったノー?」
「はい、それは戸隠い―――!!」
僕は、何を話そうとしている!?
ガッ。
舌を無理矢理に噛む。
「戸隠……誰ヨー?」
ぐっ。
何だ?
話したくなる。
今にも、全てを……
―――!!
さっき、ヴラドが何らかの攻撃だって!
もしかして!
そう、考えた瞬間、既に僕の意思とは関係なく、口は語り始めていた。
「はい、同じ学校の……」
名前までは言わない!
「戸隠さんです」
そして、僕は、正確に言うと、僕とヴラドは、身体が動かせなくなっているのに気づいた。
くそっ。
身体が言う事を効かない!
ヴラドの金縛りとは、種類が違う。
こっちは、身体が麻痺して動かせない感じだ。
なのに、口だけ勝手にペラペラと……!
ヴラド!
(判っておる!
今、火球の創造魔法【コンジャードファイヤボール】を……)
ちょっと待った!!
(なんじゃ!)
着弾して爆発する魔法だろ!?それ?
(うむ!!こんな奴、消し炭にしてやろうぞ!)
それは、駄目!!近すぎる!
僕達も、消し炭になるよ!!
(ぐぬぬ……)
それよりも先に、心を覗く魔法を、この店員に!
(しかし!)
大丈夫!まだ、情報を引き出し終わるまでは、命までは、とられないから!
それに、攻撃をしようとしていたのは、こっちも同じなんだ!
相手の方が1枚上手だった、それだけの事。
悔しいけど。
それよりも、多分……この人……。
(そうじゃ、この者、世界法則[リアリティ]が違うぞ!!
敵の体現者[シュトゥルム]じゃ!)
もう、ラパ・ヌイの魔の手が……。
僕は、いったい、何をしていたんだろう。
デートなんかしてる前に、もっと別の……。
(違うぞ!お主様!この者はラパ・ヌイの者ではない!)
え?
(この者から感じる世界法則[リアリティ]は、妾の知らぬ物じゃ!!)
え?じゃあ……
(そうじゃ!既に地球は、他の世界に侵略されておる!!)
―――ヴヴヴヴヴヴヴ
「僕の名はヴラド、地球は狙われている!」
突如、僕の蔵から現れた男の娘は、地球の危機を告げに来た異世界からのメッセンジャーだった……。
最初は、疑心暗鬼だった僕だけど、彼の人柄に触れるうちに、友情を育んでいく。
主に性的な。
ところが、地球を守らずに放っておいた為に、後半は北都の拳みたいな世界観になってしまう。
そんで打ち切り。
そんな感じ。
なんだったっけ?
ああ、月見里さんと一緒に見た昔のアニメだ。
コレに出て来る敵キャラが好きだったらしい。
(お主様!ぼーっとしておる暇は、ないぞぇ!!)
はっ!
そ、そうだ。
まだ、何も解決していなかった。
目の前の人物、ドネルケバブ屋のモヒカン店員さんが、どこかのエージェントだと思っていたが、半分あたって、半分はずれだ。
ヴラド!体現者[シュトゥルム]というのは、間違いないね?
(もちろんじゃ!)
じゃあ、この現在の状況、金縛り状態も、店員の何らかの攻撃だろう。
(いや、お主様、それに加えて、人払いの結界と精神弱体化も附随しておる。
これ以上、精神を削るような攻撃は、不味い。
こちらの魔法が消される!)
と、ヴラドから追加情報が来た。
わぁお。
―――ヴヴヴヴヴヴヴ
この、耳鳴り、じゃなくて低周波が、何らかのキーだとは判っているんだけど、いったいどこから?
「なかなか頑張るネー。じゃ、元に戻って」
「……」
「あの室内で起こった事は何?」
さっき言ったじゃないか!
「ガス爆発を装った、五十鈴さんによる自作自演」
え?
今、話したのは、僕?
……そうか、これが店員さんの狙っていた効果か。
現在の敵の攻撃、つまり、金縛り状態に加え、人払いの結界と精神弱体化は、最終的には自白強要という効果を出す為に行われたもののようだ。
これは、思ったより不味い状況だ。
知らせたい情報、教えたくない情報、まとめて全部、持って行かれる。
―――ヴヴヴヴヴヴヴ
くそ。
この音が何なのか……。
いや、待てよ。
音だけか?
「じゃ、次ネー。死んだ人物は誰?」
「判りません。僕もそれを知りたいぐらいで……」
「フムゥ。戸隠さおりではないのネー」
「はい」
「じゃ、誰ヨー」
「判りません。僕もそれを知りたいぐらいで……」
「ふむ。真実の様ネー」
―――ヴヴヴヴヴヴヴ
この音だけじゃない。
その前に……。
そうだ、腐ったような、嫌な甘い臭いがした。
チャイみたいな物を、僕とヴラドは飲んだ。
「エンゲル・パトリオットって何ヨー?」
「僕の友達曰く、ニューエルサレムの天国に住む超次元生命体で、人間の身体を借りて顕現、正義の為に戦うそうです」
「どうやって、顕現するノー?」
くそ。何とかして、脱出方法を……。
ん?
いや、待てよ。
……この状況は、あくまでも自白を強要されている状況だ。
なら、真実を話せば良いんだ。
一部を曲解し、その説明をすれば、時間稼ぎは可能だ。
話さないではなく、話しすぎるという状態にすれば……。
「顕現する方法は、地球の特撮である、宇宙警察ギャバンと非常に似ています。その方法は……」
「方法ハー?」
「謎の金属筒、天使の卵[エンゲルアイ]を首筋に突き刺して、僅か1ミリ秒で、顕現を完了する……では、その顕現プロセスを見てみよう……」
僕は、自白強要の一部に宇宙警察ギャバンのナレーターを上書きして、時間を稼ぐ事にする。
ちょっと、驚いたヴラドの思考が伝わってくる。
今の行動、結構凄い事らしい。
対精神系術法の抵抗能力が高いとか言われている。
有難う、冗談でも結構嬉しい。
きっと、僕は褒められて伸びる子だね!
(お主様もなかなか、この状況で余裕の様じゃな)怒怒怒
うあ。御免。
さて、ヴラド!魔法は使える!?
(もう発動準備は終了じゃ!
後はお主様の合図で、投射するのを待っておる!)
じゃ、こっちもそろそろこの状態から脱出する糸口を見つけないと!
―――ヴヴヴヴヴヴヴ
「なかなか落ちないネー。次は、戸隠さおりは、誰が作ったノー?」
「それは戸隠い……」
くっそ!
言ってたまるかぁ!!
自白のベクトルを少しいじる。
戸隠さんの上司は、五十鈴さんだ。
つまり、五十鈴さんが、指示して作らせたんだよ!!
な、なんだってー!!とMMR的な感じに!
「戸隠さおりは、五十鈴さんの指示で作られた」
―――ヴヴヴヴヴヴヴ
「じゃあ、五十鈴という人物、マンションの管理人について質問ヨー」
ここで、反撃に!
ヴラド!
(応!)と返事が返ってくる。
「と、ところで、店員さん、五十鈴マンションのオーナーが女性って、どうして判ったんですか?」
意識が朦朧としている。
正直、ろれつが回らない。
モヒカンの店員の顔が強張った。
「な、何の事か、さぱーりネー」
「でも、昨日はほら、凄い女傑って言ってたじゃないですか?
友達は占い師と探偵とは言っていましたけど、女とは全然、言ってませんでしたし……」
「……」
「店員さん、この術法って、どうすれば解除できるんですか?」
店員が驚きの顔で見ている。
「いや、良くこの中で、そこまで自意識を保てるものネー」
「……」
(お主様……)
ん?どうだった、ヴラド?
(いや、これは……。
結果から言うぞ。
失敗じゃ……)
ええっ!?
うまくやったと思ったんだけど……じゃ、しょうがないか。
(いや、魔法【リードパーパス】は発動成功しておる……)
どういう事?
(じゃが……)ごくっ
「?」
(こんな事は……)
(ど、どういう事?)
(目の前の、男じゃが……)
うん。
「既に死んでおる……」




