BLとホモと男の娘の関係についての考察
「はぁ?
八代はツワリで、武居は忌み日で早退?
それは本当か?田中」
「そう言って出て行きました。
嘘じゃありません!」
「別に疑っているわけではないぞ。
まったく、何を考えているんだ!」
さて、キチクンとイッサは、サッサと教室を出て行ってしまった。
何か戸隠さんがトラブルに巻き込まれたみたいだった。
まぁ、キチクンも戸隠さんも只者じゃないオーラを放っているからねぇ。
で、友達思いの僕、新田小悟朗はココに残って、2人のバックアップをする事にした。
まぁ、委員長だしね?
さて、この時間は国語の授業で、担任の火元先生だ。
この先生なら、丸め込み易い。
体面さえ守ってやれば、すぐに言う事を聞いてくれる。
僕としては、良い先生だよ。
先輩方は、先生の事をすぐに保身に走る奴とか、酷い事を言っているけど、僕は評価しますよ。
先生はギブ&テイク、メリットとデメリット、そういった物を天秤に架けれる、柔軟な思考の持主だ。
青臭い理想論だけの、下手な熱血教師なんて必要ない。
邪魔だね。
さて、バックアップしますか。
「先生」
「ん?新田か、何だ」
「男女平等の世の中で、今の発言はどうかと思います」
「なにがだ?」
「八代君のツワリです」
「男がするわけ無いだろう!!」
「男女平等の前では、性差など関係ありません」
「いやいや、それはおかしいぞ。新田」
「性差などがあっては、男女平等が成り立ちませんよ!?
まさしく、差別です」
「差別でなく区別だ。
ふぅ、まぁ良い。
授業を始めるぞ」
「先生!八代と武居の2人の愛を認めてやってください!!」
「「「「「「は?」」」」」」
クラス全員が、聞き返した。
言葉というコミュニケーションツールは不完全だ。
言いたい事の半分も伝わらない。
でも、それに音の強弱、高低、発声、アクセント、様々な要素を加えると、不思議な事がおこる。
その不完全さゆえに、コミュニケーションツールとしての役割を飛び越え、感動を生み出す舞台装置の1つとなる事が出来る。
それを上手く使いこなすとヒトラーやリンカーンといった演説の上手い人といわれるわけだ。
さて、お立会い!!
僕は、朗々と語りだす。
「昨日、僕は偶然、知ってしまったんです。
2人の関係を!」ぐっ
「それは戸隠さんが、婚姻届を持ってきた事が原因でした。
彼女もきっと焦っていたのでしょう。
恋人の性癖に!」
両手を広げ、皆を見る。
「まさか、彼が……。
いえ、こんな考え方はおかしいのかもしれません。
歴史的にも、古くからある文化の1つです」
人差し指を立て、その場で4分の1ほど回転する。
「それが、いつからタブーになったのかは、先生の授業で必ずや知る事ができると思います」
信頼の眼差しを込めて火元を見、ヨイショをしておく。
「確かに、それは禁断の想いかもしれない!!
自然ではないかもしれない!!」ぐぐっ
「ですが!」
「今、やっと男女平等の世の中になり、二人の関係を阻むものは無くなったのです!!」
両腕を広げ胸を張る。
「供に手を取り、駆け出した、2人の甘い時間に祝福を与えてやって欲しいのです!」
教室内が静まり返る。
誰もが感動しているに違いない。
次の瞬間は拍手喝采こそが相応しい。
「待て、新田。確かにお前の言う文化……
衆道と言うんだが、これは歴史的にも古くからあるのは確かだ。
そうだな、判っている限りでは日本書紀にも、その記述があるぐらいでな。
平安時代の公家や、僧侶、戦国時代の武将、江戸時代の町人に至るまで、非常に幅広く栄えた文化だ」
よし、ノってきた!
拍手喝采こそ無かったが、これで、この時間中はキチクンとイッサの事を追求しようとは思わないだろう。
「また世界的に見ても、古代ギリシアやローマの少年愛に始まり、キリスト教会の少年聖歌隊と司祭における典型的な関係、修道士の男色などもある。
イスラムでも……そうだな、オスマン帝国の皇帝による少年への寵愛……
例えば、串刺し公ヴラドの弟、美男公ラドゥの例もある。
まぁ、文化的に見ても男性同士の性交渉はあったという事だ。
それ以上に女性に対するレイプまがいの行為も多かったのだが、ここでは割愛しよう」
先生は、開きかけていた教科書を閉じ、雑談の体勢に入った。
よし、上手くいった。
「だが、それが昨今のゲイやBL、やおい、男の娘といったサブカルチャーと、いきなり直結しているわけでは無いぞ?
あまり詳しく無い人から見ると、これらは、どれも同じホモセクシャルを扱ったものだが、それなりに研究する様になれば、全く違うジャンルだと気づく」
偽・委員長がうんうんと頷いている。
そういえば、君も姉さんと一緒に有明の戦場に行っていたもんね……。
「簡単に説明すると、ホモセクシャルもそうだが、ゲイというのは男性同性愛者をさす。
主にリアルで使われ、広義として使われる」
「……」
「対してBL、ボーイズラブは少年から青年、まぁ良くて30代ぐらいまでの男性同士の恋愛を描いた作品の事だ。
この場合、決して肉体関係だけでなくとも良い。
精神的な物でも、それが恋愛と類似していればBLとなりうる。
やおい、男の娘も現実ではなく、作品のジャンルとして存在するがBLが広義なのに対して、こちらは狭義だ」
でもジャンルって……。
もしかして、先生も年末に有明に出かける、そっち方面な戦士か?
「まず、やおいだが、これはBLよりも前に出てきた言葉でな。
今と昔では意味合いが違ってきている。
昔は、今のBLの立場と同じだった。
要はBLにその立場を取られたといっても良い。
男性同士の恋愛を扱う作品全てが呼ばれていたが、現在では、肉体関係有りの作品に時々使われている、もしくは2次創作でみる程度だ」
有明の思い出といえば、やはり姉さんの事しか思い出せない。
姉さん……。
行方不明となって、もう3年近くになる。
その間、僕はと言えば、探偵業を営んでいる五十鈴各務乃という人物の元に探偵業のノウハウを学ぶ為、弟子入りをした。
まぁ、結果は未だ姉さんの手がかりを何1つ得られずじまいだけど。
正確には五十鈴さんは、所長なので弟子入りと言うのはおかしい。
だけど、労働基準法が邪魔で雇用する事ができないので、建て前上弟子入りと言う事になっている。
まぁ、そうだろうね。
その上で現在の僕の仮の身分は、とある映画制作会社に雇われた俳優と言う事になっている。
だから僕の活動には、撮影機をもったスタッフが必ずバックアップにつく。
まぁ、その結果として、不倫現場を押さえるわけだが。
良く考えたなぁと思う。
未成年者を雇う事はできないけど、映画制作なら雇ってもOK。
別れさせ屋で現場証拠を収める為には、探偵業のバックアップは必須。
だから、撮影スタッフに扮したバックアップがつく……。
依頼がある時は自由になる時間は殆ど無い。
場合によっては学校すら休む必要があるのだ。
これらの事に関しては、映画撮影に必要な事だと両親に話を通してあるからOKだけど。
ただ、真面目に俳優としての活動実績を作る為にCM撮影もやったりした。
これはTVで流れたし、実際に子役でなく、エキストラで出演した事もあった。
僕1人の為に、そこまで動かす五十鈴さんには感謝してもしきれない。
そこまでしてもらっていながら、僕の本来の目的、姉さんの行方を知る事は何の進展も無い。
ふぅ。
沈みがちになる気持ちを切り替える。
「さて男の娘だが、これは今までとは別格だ。
どちらかというと女装子と区別するべきだな。
女装子というのは、男性が女性の格好をする作品の事だ。
そういった意味では男の娘は女装子の1ジャンルといえる」
先生の話は、まだ続いていた。
「だが、相違点が1つ。
女装子はあくまでも男性が女装をしている、要はコスプレだ。
男の娘の場合、更に1歩突っ込んで、心まで女性化していると言う事だ。
そう、心の女性化がポイントだ。
当然、恋愛対象は異なる事になる。
女装子の恋愛対象は女性だが、男の娘は男性が恋愛の対象だ」
んんー?
やけに詳しいな。
どうやら僕は、担任の火元先生の妙なスイッチを押してしまった様だ。
「では、BLと男の娘の違いは?」
教室のどこからか声が上がる。
広瀬さん、貴女ですか……。
「良い質問だ!」びしっ
水を得た魚の様に、先生は生き生きと答える。
「では、BLと男の娘の違いは?
素晴らしい質問だ。
単純に言うなら、BLは広義、男の娘は狭義、BLの中の1ジャンルと見れる……」
「……」
「が、実は、これでは物事の本質を捉えていない。
これについては、先程までのアプローチとは違った方法で見ると判り易い」
「「「「「?」」」」」
クラス全員なんじゃそりゃ、と言う感じだ。
「俺はBLも、やおいも女装子、男の娘も全て作品のジャンルと言った。
ならば、そのジャンルを支える人、購買層がある。
購買層、それをみれば一目瞭然だ」
先生は黒板に購買層と書く。
要するにその作品を買う人、欲しがる人だ。
「本屋のアダルトコーナーでも良いし、ビデオ屋の奥のカーテンに阻まれたゾーンでも良い。
中に入って調査すると判るが、BL、やおいは主に女性をターゲットとしている」
「対して女装子や男の娘は、男性をターゲットとしている作品が多い。
当然、内容も、そっち向けだ」
「じゃあ、男の娘は男性向けホモ作品なんですか?」
また、どこからか声が上がる。
面白がっているようだ。
「そう取ってもらって構わない。
だが実際にジャンルとしてみるなら、男の娘はロリ亜種と女装子にまたがる作品と見るべきだ」
―――――!!!
な、なんだって……?
今の一言は僕を愕然とさせた。
まさに驚天動地の一言だ。
その時、世界は動いた――――!!!
「ま、待って下さい……」
僕は声を絞り出す。
「な、納得できません……
男の娘が、えるおう系に並び立つ存在だなんて、馬鹿なっ!!」
「並び立つ存在ではない、あくまでもロリータ物の底辺に位置するジャンルだ。
ただ、BLにも片足を突っ込んでいると言う蝙蝠的な存在というわけだな。
まぁ、ここまで言っといてなんだが、実際の所の明確な線引きは難しい」
「……」
まだ言いたい事は有ったが、仕方ないので黙る。
こちらだって、そう言われて反論できるだけの根拠が有るわけではない。
「話は同性愛の歴史に戻るぞ。
先程までのジャンル分けと同じだが、衆道と一口に言って同性愛の文化を一括りにまとめ、判った気になるのも危険だ」
「……」
「時代によっては、その意味するところが、全く違う場合がある。
例えば戦国時代、武家における衆道は、ファッションやステイタスシンボルとしての側面を強く持ち合わせていたのは確かだ」
話がサブカルチャーから歴史に一気に飛んだ。
「では、江戸時代もそうだったのかと言うと、微妙に違う。
恋愛の要素を多分に含んで来ている。
要は性交以外にも恋愛としての対象として、同姓愛が視野に入っていたという事だ。
もちろん民衆の文化、町民文化でも同じだ。
というか、武家の文化よりも、こちらの方が主となって来ているな。
また、年齢が若干上がってきている。
今まではどちらかと言えば少年愛に分類される話だが、青年まで視野に入ってきている。
理由は歌舞伎だ」
そこで、火元先生は時計を見て安堵した様だ。
今日の教育スケジュールでテスト期間内まで間に合うかどうかの確認をしたのだろう。
先生と言っても所詮は公務員だ。
1年に1回、何の問題もなく規定どおりに、自分の受け持った生徒を出荷できればいい。
その割にハイリスク、ロウリターンなんだけど。
子供のうちから“洗脳”でもしようと思わない限り、誰もこんな仕事やらないよなぁ。
あ、でも、撮影やるんならこんなにおいしい職場も無いか……。
将来の夢は先生(兼撮影監督)です。
いいね!
「んんっ。
正確には、理由のその1つとして歌舞伎を挙げる事ができる。
知ってるとは思うが、歌舞伎は日本の伝統芸能の1つで、重要無形文化財の1つになっている。
その歌舞伎には、女性俳優は存在しない。
何故か?
その発端がこの江戸時代にある」
たかだかBLの話を、ここまで膨らませるとは……
これは失敗したか?
興に乗って、語りだしているし……
あ、さっき時間見たのって、もしかしてスケジュールじゃなくて、この時間めいっぱい使ってホモとかゲイの話する気か?
勘弁して欲しいなぁ。
「その昔、歌舞伎にも女性俳優はいた。
今では女歌舞伎と呼ばれている。
しかし、女歌舞伎は当局によって取りしまられた。
これは、歌舞伎の盛況とともに、舞台後の逢引……
まぁ、客を取る事があったからだが、反対に売春が目的とされている事も多くなり、風営上の問題としてらしい。
その結果として、女性を排除した若衆歌舞伎から野郎歌舞伎へと発展していく事となったんだが……まぁ、若衆歌舞伎で相も変わらずだ。
それどころか、今までは侍や僧侶の文化……仏教用語でお稚児趣味と言うのだが、少年愛の事でな。
上流階級、ハイソサエティのたしなみだったのだが、町民、商人や職人に至るまで幅広く知れ渡るようになった」
えぇと、待って下さい、先生。
少なくともお稚児趣味はハイソサエティのたしなみとは思えません。
当時としてもマイノリティだと思います。
それに仏教用語ですらありません、ありえません。
激しく、つっこみを入れたかったが、止めて置く。
これは、逃げたい。
なんで延々とホモの話を聞かないといけないんだ?
「さて、話がお稚児趣味に行ってしまったが、侍において衆道は廃れたかと言うと、そうでもない。
男色は残っている、というか、より洗練される。
武士道の教典の1つに葉隠という書物がある。
これには衆道についての記述があるが、同性愛の究極が忠義であると説く書物だ。
これは、より精神的な高尚な物として扱っているわけだ。
まぁ、言ってしまえば二極化したわけだな。
極端に言うならエロスとアガペーに別れたと考えてもよいかもしれん」
くそぅ。
ギリシャ哲学まで取り出して、BLを語られても……。
ロリこそ嗜好にして至高、志向の為の思考だ。
これは絶対だ。
「江戸時代に書かれた小説で井原西鶴の「好色一代男」と言うのがあるんだが、これを発端にして浮世草子というジャンルが発展する」
先生、そこの専門用語の置き換えはまずいです。
ジャンルではなく文学です。
もう、ツッコミが厳しくなってきた。
「時代は、文禄期。
これは、民衆生活の幅広い主題を扱っていてな。
当然、衆道についても今の恋愛小説の様に……あー、そこ、広瀬、元祖BLだとかキラキラした目をするな、元祖はもっと古い。
そもそも、BLなどと言うのはJANEやショタ、やおいよりも後発な言葉だ。
さて、そんな同性愛だが、江戸時代の終わりと共に消えたかと言うと、そうではない。
人間の営みが劇的に変わる事はあまりない。
しかし……」
「……」
「しかし、明治時代は別だ。
外国の文化が流入してきた事により、それまでの日本が否定される風潮が出てきた。
江戸時代の全ての物が否定的に捉えられ、日本語も捨ててしまえと言う愚かな思想があったぐらいだ。
特にキリスト教的な歴史観、思想は、毒物の様に日本を腐らせ始めた」
熱弁を振るう。
「おい、田中、腐るとは、その意味じゃない。
文字通り腐敗していったの意味だ。
だから違う、いや、いいのか。だが違う」
びしっと指差す。
「明治は良いが、大正、昭和初期ともなると、キリスト的な視点による変化が見られる。
どういう事かと言うと、同性愛は“悪”という考えだ。
日本的な意味合いでは、悪には強いという意味もあるのだが、キリスト教の思想ではただ単にイビルという思想だ」
まったく百害あって一利なし、クリスマスなど必要ないとぼやく先生。
キチクンと気があうかもね?
「これは、森鴎外の出した自分の性に関するエッセイが発禁を喰らった事からも判る事だが……
男は男らしく、女は女らしくある事が望ましいとされ、更には女性蔑視へと拍車のかかる風潮だ。
当然、衆道などケシカラン!と言う事になる」
なんて頭の痛い内容だ。
こんなのを僕だけが聞いていて、イッサとキチクンは聴かずにすむなんて、納得できないじゃないか。
そうだ、納得できない。
「後は判るな?」と先生。
その価値観が、戦前戦後を通してずっと残っており、今に至るまで日本を腐らせていると言う。
いや、僕はそれで充分です。
戦前のキリスト教万歳。
貴方達はたった1つだけ良い事をした。
「さて、話を最初に戻そう」
ええっ、まだ続けるの!?
「新田」
「は、はい」
「これらの同性愛の文化と、20年代初頭のウーマンリブに始まった、女性差別廃止運動は、同一にすべきでは無いし、意味するものも違う」
黒板に大きく、男、女と書く。
「そもそも女性差別という思想そのものがキリスト教的な物だ。
もとより日本にはそのような差別などない。
あったのは男女による仕事の分業だ。
これがキリスト教的思想に毒され、差別があるという事になった」
先生は次々と黒板に様々な業種を書く。
掃除、家事、大工、酒屋、番頭、畑仕事、商売、漫画家、先生……。
それら書かれた業種は男か、女か、その中間かに別れて書き連ねられていた。
「分業されている仕事体系の中、女が男の仕事に就けば当然ペナルティが入る。
これが、日本における女性差別の実態だ」
カッカッとチョ-クでペナルティを描いていく。
給料が少ない、休暇が少ない、昇進しない等。
「逆を考えてみろ。
男が専業主婦をやったら、ヒモと見られるだろう?
裏を返せば、これは男性差別だ。
また、女性差別廃止論が行き過ぎて、男女平等論みたいな無茶苦茶な理論になっているのも事実だ」
「新田」
再び、僕の名を呼ぶ先生。
「何故、男女平等論が無茶苦茶かと言うと、差別と区別の違いが判っていないからだ。
もとより性差があるのに、その区別を忘れて、自分達に都合よく使われているのが現状だ。
男女平等論を本格的に適用しだしたら、人間の文化は一気に変わるだろう。
トイレや風呂、婚姻、服装と言ったものだ。
勤務体系も変わるだろうな、休日は少なくなるだろう。
例えば、女性の月経による休みを認めるわけにはいかなくなる。男女差別だからだ」
「トイレは、差別の象徴ともなる男性用小便器は撤去され、男女両用になるだろうし、風呂や更衣室は一部屋で住む。
男女共用にしないと差別だからだ」
痛いところをつかれた。
まさか、真面目に反論してくるとは思わなかった。
「まさに今、新田が言った八代のツワリ、男性同士の恋愛は容認どころか自然な話となる。
これ以上、不自然な話など無いのにだ。
だからこそ、性差を考えた男女平等論というワケのわからないナンセンスな理論があるのだが、この辺りになると馬鹿馬鹿しい話だ。
利害関係が最初にある、骨子の外れた理論に意味は無い」
「そういうワケで、だ。新田。
男女平等論を盾にしての女子更衣室の覗きや、トイレにカメラを仕掛けるのを禁止するぞ」
な・ん・だ・と……。
しまった、揚足を取られた!
やってくれるっ!!
「待って下さい!先生っ!」
「なんだ?」
授業に戻ろうとした先生に反論する。
このままでは、僕は女子高生の着替えを覗きたい変態じゃないか。
「僕は女子高生の着替え如きには興味がありません!!
小学生で無い限り、僕には何の影響も与えません」
教室がドン引きした。
「そ、そう、か……」
火元先生も顔が引きつっている。
良かった。
これで、僕の名誉も守られた。
「せ、先生は、お前の将来が心配だぞ、新田……」
「大丈夫です、犯罪者にはなりませんよ。
今の所、教育大志望ですが、将来的には小学校の先生になるつもりです」
「よけい悪いわっ!」
「趣味と実益を兼ねていますが……?
どんなにブラックな現場でも、やり抜く覚悟があります!
小学生さえいれば!!」
僕は高らかに宣言する。
ぶぶぶぶぶ。
ん?
携帯に着信だ。
さて、どうしようかな?
「先生」
偽・委員長の田中さんが手を上げる。
「ん?何だ、田中?」
「あ、その、新田君の顔色が悪い様なので保健室に……」
「ん?いや、元気ビンビンにさっきまで問題発言を……」
―――!!
「う、うわぁぁぁ、苦しいぃぃっ!」
僕は苦しみだす。
「何だ新田、どうした?」
「皆が、あまりにも笑わないので、禁断のゾナハ症がっ!!
ぐはっ、くるしぃぃっ!!」
「な、なんだ?それはっ!」
「先生っ、私、新田君を保健室まで連れて行きます!」
「え?あ、いy」
「くるしぃぃっ!!」
「あ、ああ、よろしく頼む、委員長」
遂に火元先生は、保健室へ行く為に退室許可を出した。
「ありがとうね、委員長」
「コ、コゴローくぅん……」
今現在、僕と偽・委員長は保健室にいる。
「なにか、お礼しないとね」
「え?いいよ、そんな……」
僕が顔を近づけると、面白いほどに赤面する。
あははは、かわいいなぁ。
偽・委員長は、からかいがいがあって心が安らぐよ、ホント。
「そんな事言わないで」
「あ、う……
じゃ、じゃあ、今度の日曜日、で、で、デーt」
「そうだ!確か、小学校の時に姉さんと一緒に、委員長が買っていた本」
「え?」
「ほら、男同士の恋愛を描いたエロ本」
「わーっ、お願い、それは皆にはっ!」
「アレにある様な寸劇を、キチクンとイッサにやらせよう!」
「え?」
「どう?」
「え?いや、あの、その、私は、そんな事よりコゴローくんとの、デ、デーt、」
「よし、決まり!」
「え?」
「じゃあ、明日楽しみにしていてね、委員長!」
「あ、コゴローくん……」
僕は保健室を出て行く。
キチクン達からSOSだ。
っと、その前にフォローフォロー……。
「じゃね、委員長。
僕は帰るけど、今度、時間あるときにお茶しようよ。
お礼に何でも奢っちゃうからさ」
「え?」
「嫌だった?」
「う、ううん!
そんな事無い、そんな事無いよ!!」
「じゃあ、決まりねー。
金曜日、夕方空けといてよ?」
「う、うん!」
「じゃ!」
扱いやすくて良いね!
さて、急ごうか。
イッサとキチクンが待っている。




