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世界の 法則が 乱れる!  作者: JR
第02話 忘れられない夜になる
29/169

開幕カウントダウン-Kissはすっぽんの味-


「お仕置き……して?御主人様……」



礼拝堂の扉を開け、月見里さんは僕を誘う。



いや、教団設備内で、それは不味いでしょう。

とは言えない、悲しい男の性……。

僕には、戸隠さんが居るんです。

とも言えない、意志薄弱さ……。

どっちしても、好きな女の子に言われたら、フラフラついていくしかできない。




ぎいぃぃ。

ぱたん。


礼拝堂の扉が閉まる。

中には電気が通ってないのか、暗いままだ。

しかし、真っ暗なわけではない。

どこかに採光装置があるのか、ステンドグラスや、奥の祭壇、十字架の代わりに置いてある薔薇の中の鈎十字に、天井からの光が降ってきて、ほのかに輝いている。

とても、幻想的な光景だった。


「凄い……綺麗だ……」

「そーでしょー。初体験には最高の舞台でしょ?」

「え?」


「ほら、こっち」

そう言って、月見里さんは、僕の手を取って、中央、祭壇へと歩いていく。


「あ、ちょっと待って」


「なによ?」

「そのまま、祭壇まで歩いていって?」

「いいけど?」

「少しゆっくりで」

「?」

少し、いぶかしんだが、彼女はゆっくりと綺麗な姿勢で、歩いていく。

ああ、やっぱり綺麗だなぁ。

シスターというコスプレと、非常にマッチした後姿が、幻想的な雰囲気をかもし出している。


祭壇には、天井から、淡い光が降ってきている。

月見里さんは、そのまま祭壇につくと、クルッと振り返る。

「で、どーするの?」


淡い光の中、闇の中に浮かぶシスター姿の月見里さんは、とても神秘的で。

「うん。そのままで……」


少し考量が足りなかったかもしれないが、僕はその姿を携帯へと納めた。

「綺麗だ……」


「あ……」

月見里さんが、息を飲む気配が伝わる。

どんどん、顔が赤くなっている。

「も、もう。と、撮るなら撮ると一言くらい……」

「そしたら、作った感じがして嫌だ。

 そのままの姿が好いんじゃないか」

僕も、祭壇の方へと歩いていく。

たたっと駆け寄ってきた月見里さんが、首に手を回し、抱きつき、そのまま、体重を預け、ひざから崩れる。


「ど、どしたのー?」

昔から何度か嗅いだ、月見里さんの体臭だ。

ちょっとドキドキする。


「うう……」


あれ?泣いてる。

何で?


「やっぱり、諦めきれないよ……」

ぎゅううう。


「愛するだけなんて無理!見てるだけなんて嫌!!

 やっぱり、欲しいよ、ヤシロが欲しい!!」

あー。

「御免、雲雀。僕は、雲雀が好きだよ。

 でも同じぐらいに、伊織も好きなんだ。」

ギュッと雲雀を抱き返す。


「だから、時間を……僕に……」


雲雀の目と目が合う。

彼女の緑色の目に、僕が写っている。

吸い込まれそう。

「雲雀……」ごくっ

「時雨……」

吐息が重なる。

雲雀の唇が欲しい。





―――ガタンッ





ビクンッ


ドンッ

え?


気がつくと僕は、飛ばされていた。

両手で押し出すというより、月見里さんの双掌打によって飛ばされた……が近い。

ぶべぇって感じの声付きで。

あうう。シスターこえぇ。






「こめんなさぃ!!オネーサマ!」


先程の、物音の主が、平謝りしている。

格好は、月見里さんと同じシスター姿だ。


僕と月見里さんが入る前から、彼女はココで昼寝、要はサボりをしていたらしい。

何でも静かで、人がなかなか来ない、それでいて少し硬いがベットとしては申し分ない木製の長椅子……。

まさに昼寝の為にあつらえたかの様な舞台!

だそうだ。


いや、だけど、それよりも。

「オネーサマ?」

月見里さんを指差す。

「出歯亀するつもりは無かったんですよぅ。マジですぅ!」

僕の疑問には誰も答えてくれない。


月見里さんは、テンパッてる感じだ。

「あうあう、これは、違うの、ちょっとした……」

なんて言ってる。


「でもでもぉ、ほら、しょうがないですよねっ!」

出歯亀さんは、ちらと僕を見る。


「あの、成績優秀で、美人で、お固い4期生筆頭ノンネが、

 “お仕置き……して?御主人様……”って。

 そんな事、言われたら、誰でも出歯亀したくなっちゃいますよぅ〜〜!!」

「そこから、聞いてたの!?」


「あ、あはは、ははは……。

 御免なさいぃ、も、もっと前から……。

 礼拝堂に男を連れ込もうとしてる辺りから……ですぅ」

「最初からじゃない!!」


「それで“愛するだけなんて無理!”“ヤシロが欲しい!!”って……あぁあん」

「あうあう」


「筆頭ノンネが、男にたぶらかされたどころか、いつの間にか、女になっちゃって……」

「ち、ちが、その、まだヤシロとは」


「でもでもぉ、そこが、また良いんですぅ」ふるふる

「ああ……」


「筆頭ノンネの女が目覚めたら、私をメロメロにするフェロモンが全開で!はぁはぁ」

「ええっ?」


「もう、筆頭ノンネなんて、お堅く呼ぶような関係じゃ嫌なんですぅ!

 “オネーサマ”と呼びたいんですぅ」がばぁ

「ちょ、ちょっと……ノンネ・イルゼ」

月見里さんがパニックから立ち直ったようだ。

ぎゅうう。

「ちょ、抱きつくな!」あわわ

「はぁはぁ……すいません。ちょっとヨダレが……」つー。

いやぁ、1人でヒートアップしてるなぁ。




「で、アンタ、八代だっけ?」ジロ

月見里さんの胸に抱きつきながら、僕を睨む、ちょっとイっちゃった少女。

いいなぁ、僕もあの双丘に顔をうずめたいなぁ。


「あに、見てんだよぉ」

「え、ああ、うん。初めましt」

「アンタもさぁ、男でしょ!?」

「は、はぁ」


「“僕に時間を……”じゃないでしょ!

 オネーサマが、欲しいって言ってんだから、

 ぶちゅうううううって熱いベーゼを交わすぐらい、できないんですかぁ!?」

邪魔したのは、貴女です。ええ。


「私だったら、躊躇わないですぅ!」


「「は?」」



「オネーサマ!」

ぶちゅうううう



「んんんー!!!!」

月見里さんは、必死に両肩に手を置き、引き離そうとしている。


だけど……。



凄い。

何て、スッポンみたいな……。


れろれろ

じゅるるるっ

るろんるおん

じゅるっじゅるっ

ずぞぞぞぞぞぉ



ちゅぽん。



はぁ、はぁ。

れろん。


「はぁ、素敵……。オネーサマ……」




しまった。魅入ってた。


胸に“の”の字を書く出歯亀。

月見里さんは、酸素が足りないのか、ボーっとしている。





その後は、阿鼻叫喚だった。




茫然自失としていた月見里さんだが、復活するや否や、密着状態から、心臓にブロー。

動きが止まった瞬間を見逃さずに、掌底で顎を打ち上げる。

で、立ち上がりながら、今度は、下から大降りのボディブロー。

空中に浮いて、くの字になった身体に、踵落し。



あー。アレ決まると、しばらくキツイです。

でも、しょうがないよね?

僕だって、まだだったのに……。


はっ。


違う、違う。

ドクターストップだ。

「ちょっと!月見里さん!」

間に割ってはいる。

「あー!?」

ひいぃ、怖い。

「ひ・ば・りっ!!」

え?

「って、言えって言ってるでしょーが!!」ボグゥ

ひぎぃ。





「御免なさい。やりすぎました」

土下座。

「申し訳ありません」

深々と、一礼。


「ご、御主人様を張り倒すのは、どうかと思うんだ」

土下座している月見里さんに言う。

「だって、いつまでも月見里、月見里って……。

 雲雀って呼んでって言ったのに……」

「あー。それは、ほら、人は急には変われないんだよ。

 少しづつで良いでしょ?」

「たった2ヶ月で、他の女を好きになって、モノにしてるくせにー!」

なんか、一生言われ続けそうだな。


はふぅ



「で、そっちの娘も大丈夫ですか?

 綺麗に掌底が決まっていたけど……」

「だ、大丈夫ですぅ。

 こんなのオネーサマの唇を奪えた感動に比べたらぁ。

 うふ、うふふふふふふふふ」


「そ、そうよ!元をただせば、イルゼ、アンタが悪いんだから!

 自業自得よ!ひ、人の唇を勝手に奪うn……」

「でもでもぉ、教団規則に不順同姓交遊は駄目って書いてないですぅ」

「駄目な物は駄目よ!」

少し威厳を含めた声音で、彼女は出歯亀さんに注意を促す。





「で?ノンネ・イルゼ」

「なに?オネーサマ!」

「それよ、何で私がオネーサマなの?」


「だって今までは、ルームメイトでも、どこか超然としていてぇ、雲の上の人だなぁって思っていたんです。

 でもでも、筆頭ノンネも女なんだなぁって思ったら、急に親近感が湧いて」

「あ、ああ、そうなんだ」ひきっ

「教団敷地内で逢引なんて、普通やりませんよぅ。

 監視カメラがあちこちにあるんだもん」

あるんだ……。いっぱい。

「規則を破ってでも、男と一緒に居たかったなんて……くうぅー!燃えますぅ」

「……」


「でも!」

急に僕を見る。


「オネーサマと私は、愛部屋という固い絆で結ばれているんですぅ」びしっ

「はぁ」

「顔の悪い間男の出る幕なんて、コレッッッッぽっちもないんですよぅーだ」


テンション高いなぁ。この娘。

年齢は、僕と同じか1つ2つ上ぐらいで、身長は月見里さんぐらい。

ヘアスタイルは、隠れていて判らないが、ボブっぽい気がする。

暗く濁った赤い髪の毛で、ソバカスの白人さんだ。


「でも、僕は雲雀と主従契約を結んでるよ?

 一生こき使ってやる約束だよ?

 相部屋はもって3年から6年だよね?」

無駄に張り合ってみる。


「それぐらい、判ってますぅ。

 オネーサマは、これから沢山の男と付き合って、騙され、好い様に使われ、快楽と薬の虜になって、ボロボロになっていくんですぅ」

「そんな事しないよ、させないよ!」

「そんなオネーサマを、やさしく包むのが私、イルゼですぅ!間男はお呼びじゃないですぅ」

「そんな事ない!僕は次こそ、次こそ必ず守る!守り抜くんだ!」

「鏡を見て、物を言え、ですぅ。

 次も失敗するって書いてあるですぅ」

ぐぬぬ……。


「雲雀!誓うよ!絶対に守るって!前は、僕の力が足りなかったけど、もう2度と、あんな顔はさせない!」

「オネーサマっ!例えどんなにオネーサマが男に溺れ様と、イルゼは、イルゼは、オネーサマという船を癒す港ですぅ!」


「「あれ?」」

「どうしたの?雲雀、変態シスターに何かされたの?」

「オネーサマ、大丈夫ですか?ブ男の毒気にやられたのですかぁ」

何故か、月見里さんがうなだれている。


「ハハ、ソウダ、フシダラダ。

 ナンテ、汚インダ。

 ソウダ、コンナ私ガ時雨ヲ愛シテルダナンテ……」

ブツブツと小声で呟やく月見里さん。



「雲雀っ!」

声をかける。


「……はっ!」



ふぅ、立ち直ったみたいだ。




「というかノンネ・イルゼ、貴女の気持ちはうれs……しくない。

 私は、この男が、八代時雨が好きなの。だから諦めて?」

そっと、僕に身体を寄せてくる月見里さん。


僕は、肩をぐっと抱き寄せる。

わざとらしいまでに。

「そういう事だ」

ふふん。



「ああっ!そんな!オネーサマが、私のオネーサマが!」

ショックを受けているみたいだ。

うむ。


「がくぅ」orz


両手両膝を地面について、頭をたれる。

「し、仕方ありません。今日の所は、オネーサマを貸してあげます……」ぐすん

拳を握る。ぎゅむぅ。


「そこの、光に満ちた祭壇で、ズッコンバッコンやるのが良いですわっ!うわぁーん!」

そういって、礼拝堂入り口へと掛けて行く。

「しない、しない」

「え?」

いや、え?って何を……月見里さん。

そんな……。



ごくり。



「その、雲雀……」

「うん、御主人様……」





「そこです!ぶちゅぅぅぅっと!」

赤髪の白人、イルゼさんは、礼拝堂の隅のところで、ガン見している。


「なに、してるの?」

引きつり気味な月見里さん。

「私はココでお暇してますんで、どうぞ、ごゆっくり!

 邪魔は、しません。やりません。むしろ、眺めさせて?」はぁはぁ

「「できるか!!」」

「ケチー。日本人でしょ、ケチケチすんなぁー!」

はぁ。






「ねぇ、雲雀、一応、紹介ぐらいはしてくれる?」

「えー。やだ」

「いや、あのね?せめて、自己紹介ぐらいはさせてよ?」

対人関係を円滑にすすめるコツの1つです。

「むー。また、そうやって、女を作ろうとしてるっ!」

僕の言葉に過剰に反応する月見里さん。

「この顔でどうやったら、その発想に辿り着くのさ?

 ねぇ?あの娘も言ってたじゃん。顔が悪いって」

「ううー」

「な、なに?月見里さん?」

「納得できない!」

「そんな事、言われても……」

「月見里さんの友d」

「雲雀って呼ぶの!」

ぼぐぅ

「ひゃい。しゅいましぇん」


「おおぅ。2人はそんな関係なんですね?

 御主人様と奴隷でありながら、殴り殴られ、深まる禁断の愛……いいなぁ」うっとり

良くないよ。痛いよ!





「じゃあ、一応、それぞれを紹介するよ?」

「はぁい!遂に、私とオネーサマを奪い合う、ライバル登場ですね!」

「あー、ええと……じゃあ、その言葉、そっくりそのままお前に返すぜ」

無駄に張り合ってみる。

「時雨……」ぽっ

「オネーサマ、赤くなっている場合ではないですぅ!早く第一ラウンドを!」

「こほん。じゃあ、ヤシロ」

「ええー。オネーサマ、ち・が・うー!

 御主人様ってキチンと言わないと!」

「そ、そうだぞー。雲雀ぃ。僕だけ、殴られ損じゃないか」

「あうあう」






「ええーと、じゃ、じゃあ御主人様。

 彼女は、ノンネ・イルゼ。

 本名、イルゼ・ハーシュは、私と同じ同期生で、ルームメイトなの」


「はい。オネーサマと私とで、愛の巣を作っているんです」

「見ての通り、馬鹿な娘よ」

「ああん。いけずぅ。

 そりゃ、成績を上から数えた方が早いオネーサマに比べれば、下から常に1番の私は、馬鹿ですよぅ」

「そ、そうなんだ。

 でも、ちょっと驚いた」

「何が?御主人様」

「や、だって、雲雀が成績優秀って……」

「あー!このブサメン!オネーサマを馬鹿にしたなっ!!」

ブサメン……。

はっきり言う娘だなぁ。

でも、まぁ、事実か。

「む」

「えぇー、なんでオネーサマが怒るのぉー?」

「本当の事を言うからだ」

うわっ。

今までで一番痛い。






「さて、ノンネ・イルゼ。紹介の続きをするわね?」

「はいですぅ、オネーサマ!」

「これが私の御主人様、八代時雨よ。

 まぁ、幼馴染みとはいえないけども、感覚的には一番近いわね」

忘れられる前に、紹介してくれた。よかった……。

「ま、まぁ、よろしく、ノンネ・イルゼ」

「へっ、てめぇの面ぁ、覚えたぜ。夜道を歩く時は気をつけるんだなぁ!ですぅ」

怖い事を言うイルゼさん。

ならば

「最後の“ですぅ”で、だいなしですぅ」

張り合ってみた。

「ちょむか!ブサイクのくせにぃ!」






「えーと。質問。本当に、雲雀はこの学校で成績上位者なの?」

「当たり前ですよぅ。ブサメン」ふふん

「何で、ノンネ・イルゼが威張るのよ!」

「だって、オネーサマは、私の初めてを奪った……」ポッ

「「は?」」

「えーと、雲雀。この娘と、そーゆー関係?」

「してないよ!今までそんな素振りだって全然っ!」

「そんな事ないですよ!オネーサマがシャワー中は、下着ではぁはぁしたり、オネーサマは朝早く登校するから、オネーサマのベットに移ってはぁはぁしたり、オネーサマがいつも使ってる箸を舐めてはぁはぁしたり、昨日なんて、全然お勤めから帰って来ないから、オネーサマのシャープペンで、はぁはぁしたり……とりあえず、オネーサマで一日3回は、はぁはぁするんですぅ!」ふふん

「うわぁ」

いきなりカミングアウト。

事実だとしたら、ドン引きだ。

ボゴグゥ

あ、月見里さんの黄金の右腕が、光って唸った。

「痛いっ、痛いですよ!オネーサマ!」

「五月蝿い」

こえぇ。シスターこえぇ。


「いきなり、変態をカミングアウトしくさって。

 だいたい、アンタと私で、そんな色気のあるような話なんて無かったでしょーが!

 そもそも、アンタの初めてって何よ!」

「はぁはぁ、オネーサマが私を殴った……殴り殴られ、深まる禁断の愛……素敵……」

ボゴグゥ

光る、廻る、唸る。




「オネーサマには色気のある話じゃなくても、私には充分、色気のある話があったんですよぅ」

「うーん、あったっけ?

 覚えにないなぁ……」

「あ、ありましたよぅ。

 恋に恋する哀れな子羊を、真の愛に目覚めさせてくれたんですぅ」

「んー?思い出せない。

 ていうか、今までの生活スタイルだと、真の愛に目覚める要素なんてないんだけど?」

「あの時の事、今でも忘れられなくて、思い出すだけで、私の蕾が、蜜でしとどに溢れるんですぅ……」ポッ

「気色悪いから止めなさい」

「いけずぅ」





「あれは……第4期生入園日から、1週間ぐらいたった頃の話ですぅ……」


「いきなり、モノローグ調で語りだしたけど、大丈夫なの?」

「ああー。この娘、コレに入ると長いから、いつもは放って置くんだけど……

 今回はちょっと聞いておく。私にも関係ある事みたいだし……」

「2人の馴れ初めだね?」

ボグゥ

「事実じゃん!」

「五月蝿い」ボゴッ


「私にルームメイトが来るって、メンヒ・アルトゥールから知らせがあったんですぅ。

 なんでも、副助祭様自らがスカウトなされたそうで……

 非常に良い成績で、試験をクリアーしたって言っていましたぁ……」

シスター・イルゼは、うっとりと虚空を見ている。

「そうなの?雲雀」

「えー。私、試験なんて受けてないよ?

 簡単な質疑応答と、体力検査、健康診断だけだもん」

ふーん。どういう事だろ?

でも、月見里さんが成績上位者なのは、どうやら事実みたいだし。


「正直、嫌だなぁって思ったんですぅ。

 だって今までのエンジョイ1人暮らしが邪魔されるじゃないですかぁ。

 これから先、1人エッチも出来なくなるんですよぅ」

「何か凄いね。彼女……いや、聞いてる僕の方が、恥ずかしくなってくるよ……」

「彼女、馬鹿なのよ。馬鹿な娘なの。馬鹿なの」

その割りになんか、シスター・イルゼを見る目が、友達を見る目だよね?

もう、月見里さんからは、昨日の狂気の様な雰囲気は感じない。


「入って来た人は、正直怖かったですぅ。

 だって全然、笑わないし、全てに興味無さそうだったしぃ。

 で、私、判ったんですぅ。この人は人間嫌いなんだってぇ」

「そうなの?雲雀」

「え、いやぁ。まぁ、あの頃は荒れてたんです」

「2週間前の話だよね?」

「若気の至りって奴で……」


「でも、人間が嫌いな割りに、4期生筆頭シスターは、面倒見が良かったんですぅ……。

 私が叱られて帰ってくると、お風呂に一緒に行ってくれて、愚痴聞いてくれるしぃ。

 食堂は閉まっていた時には、晩御飯を作ってくれたしぃ。

 宿題のノートを、机の上に出しっぱなしにしておいて、私に映させてくれるしぃ」

「おい!最後のは違うでしょ。アンタ、勝手に……」


ぷっ

「確かに、面倒見が良いね。

 僕も同じ事してもらった事がある。

 間違いだらけだったけど」

「嫌味か、嫌味かー!これだから、頭いい奴は!」

「そんな事ないよ。充分、救われたよ、あの時は。

 誰も味方が居ない時に、助けてくれる存在ってのは、何よりも心の支えになるから。

 彼女もきっと、ね」

「あう、だって、誰かさんと被って、どうしても、ほっとけなかったんだもん」


「そんなこんなで、美人で、頭が良くて、面倒見の良いオネーサマに、私が惚れるのに時間はかからなかったのですぅ」

「終わり?」

なんかあっけない。

もう1エピソード欲しいな。


「いえ、最後にもう1つ……」


「あ!もしかして!」


何かに気づいたかのように、月見里さんがハッとしている。

「ふふ、ですが、これは言えませぇーん。

 オネーサマも、気付いて下さった様だし」

「ええー」

そんなー。

「この話は、私とオネーサマだけの物ですぅ。

 乙女の秘め事、殿方には御遠慮願いますぅ」

「……じゃあ、しょうがないか」

「そこで、引き下がるから、お前は馬鹿なのだぁーっですぅ」

がーーーん

月見里さんも頷いてるよ……。




「次は、貴方の番ですぅ。

 オネーサマの素晴らしさを、存分に語りやがれぃ。

 こんちくしょー!」


「え?僕の番なの?」

「私だけ情報提供したのでは、割が合いませんよぉ!

 キチンと、好きな食べ物、好きな体位、何処が感じるのかを、さっさと言いなさぁい!」

おっとり口調の癖に、妙に迫力がある。


「いや、でも僕、今言った君の欲しがっているデータは持ってないよ?」

「嘘吐くなですぅ、このヤロー!!やる事やってるくせにぃ!」

うーん。

この娘は、僕の時だけ辛く当たるなぁ。

「何で、僕の時だけ、口調変えるのー?」

「ブサメンに振りまく愛想なんてないからですぅ!ブサメン!」

うあああ。

「イルゼ、結構、猫被ってたんだね……」

苦笑いしている月見里さん。

「2〜3匹は常駐ですぅ」

「私にも、猫被ってるんだ……。

 それは、それで、何か、嫌だな……」

「あーん。

 好きな人には、可愛い自分だけ見てもらいたいんですぅ。

 オネーサマだってそうでしょう?」

「あ……」

「オネーサマの恋愛の邪魔はしませんよぅ。

 悔しいですが、ブサメンがオネーサマに“お仕置き……して?御主人様……”と言わせているのは事実なんですぅ」

「あうあう」

「それに“愛するだけなんて無理!”“ヤシロが欲しい!”とまで言わせているんなら、並々ならぬ過去があったに違いないんですぅ」

「……」

この娘、月見里さんの事、よく見てるんだなぁ。



「ブサメンは、現在、オネーサマを振った状態だと思うですっ!」

「え?うん、そう、だけど、何で知ってるの?」

「だって、オネーサマに期待させるような事をしでかしながら、時間が欲しいとか、御主人様と奴隷の関係だとか、逃げてばかりぃ!」

がーん。

事実を、まさか、こうもあっさり衝き付けられるとは……。

ああ、月見里さんも、我が意を得たり、とばかりに後ろからシスター・イルゼを応援している。

「ですからぁ、オネーサマの恋愛の邪魔はしませんっ。

 ただ単に恋愛対象が、いつのまにか、私になるだけですぅ!」

「「は?」」

「さぁ、オネーサマ、私と熱いべーぜをぉおおおぅ」

抱きつこうとして、月見里さんに投げられた。


あれ、なんか、こういう関係って……。

えーと。

「ああ、そうだ!どっかで似てると思ったら、りある魔術の禁書目録に出て来るお嬢様2人組の関係に似てるんだ!」

「何よ。それ、ブサメンのくせに」いてて

投げられたシスター・イルゼがムクッと起き上がる。


「ああ、言われると確かに……行動がクロコっぽいわね。この馬鹿」

「ええっ!?オネーサマ、今の通じるんですか!?」

「そりゃ、御主人様とは、昔からの付き合いだもの」

「んーと、中学の2年ぐらいだっけ?」

「ヤシロはね……」

「?」

ん?何だろう、今の間は……。



「ずぅーるぅーいぃー!私も交ぜろ!」


言いつつ、シスター・イルゼは「爆ぜろリア充!」と僕に殴りかかってくる。

「それは、捨て置けないぞ」

いかにも不服とばかりに、月見里さん。


「イルゼだって、幸せになりたくて、ココに来たんじゃないの?」

やんわりと、ノンネ・イルゼの拳を両手で包む。


「そうですよぅ」

「うらやましいからといって、他人を陥れるような言動、行動は駄目よ」

うわぁ、月見里さん、本当に昨日の狂気が嘘のように引いているよ。

確かにコレなら、オネーサマっぽいかも。


「はぁい。でも、流石、オネーサマ。

 自分が殴るのは良くて、私が殴るのは許せないんですね?」

「え?そんな事は……」



「いいなぁ、殴り愛……」うっとり



「「……」」


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