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世界の 法則が 乱れる!  作者: JR
第02話 忘れられない夜になる
18/169

開幕前夜-探索開始-

「ふふふふふふ。

 競争だね?

 ヤシロ。

 どっちが先に、戸隠さんを見つけるか」

「えっ?」

「よ―――い」


響き渡る炸裂音


「!!」


今の音。

銃声だ。

間違いない。

聞き間違えるもんか。


いったい、何が?

頭が追いつかない。

理性が働かない。


早く、戸隠さんを見つけないと!

いや、先に警察に知らせて……

いや、駄目だ。

戸隠さんの身元に関して調査される。

どうしよう、いや、どうすれば……


はぁ、すー。

深呼吸。

闇雲に探し回っても……戸隠さんを見つけれる訳じゃない。

でも、探さないと、見つけれるものも見つけられなくなる!

よし。

逡巡したのは一瞬。今は行動する時だ。



「キチーフ、助太刀はいるか?」

思考の淵に落ちていた僕に声が掛かる。

「最後のは、少しヤバイ雰囲気だね」

小声で新田。


「あ」

助けてくれるのか?

こんな、僕を?


「おい、しゃきっとしろ!キチーフ。

 状況は歩きながら聞く。一刻を争うんだろ?」

「あ、ああ」

「うーん。じゃ、僕はココに残っておくよ。

 何か状況が変化したら、連絡よろ」

「おう。まかせた。……コゴロー」

「ん?なんだい?イッサ」

「取り合えず、何故、ココにあるのかという疑問はおいておく。

 だが、お前みたいな性癖の奴が、持っているのは危険極まりない。

 ……没収するぜ」

武居は、新田の学生服の中に手を突っ込み、スタンガンを取り出す。

「護身用だよ」

「俺より強いくせに。持ってけ。キチーフ」

ぽい。

「え?え?」

新田を見る。

いいのか?

「護身用だよ?」

新田は、笑って答える。

「本当は、3軒隣の咲ちゃん家で使うつもりだったんだけどね。」

洒落になってねぇ!!





「委員長。キチーフはツワリ、俺は忌み日で早退だ。よろしく」

「は?」

髪の毛をお下げにした、如何にもな感じの眼鏡少女に声をかけ、武居と僕は教室を出た。

「ちょっと、何処行くの、武居くん!あと、私は委員長じゃないっ!!」

そんな声をあとに、僕らは教室を出る。


「武居、あ、ありがとう」

「気にするな。まずは、キチーフ、何があった?」


言われて気づく。

何処まで話そう。

悩む。

信用してよいのか?

僕は、友達だと思っている。

でも、相手が僕と同じだとは限らない。

いや、もし、僕の想像が当たっていた場合、戸隠さんの問題に巻き込む事になる。

どうする?


「お前が話さないというなら、俺は戸隠さん家に、

 1人で行っちゃうぜ?やっちゃうぜ?」

「ちょ!いや、それより何で知ってるの!?」

僕だって知らないのに!!

くやしい……!でも感じちゃう……じゃなくて!


「ふふ。何故、知っているか。それはな……」

武居は、人差し指を唇に持っていく。

ウィンク。

「企業秘密」

昨日の戸隠さんのポーズだ。


きもっ


はぁ。

僕は、道すがら、武居に幾つかかいつまんで話す。

「戸隠さんは、ちょっと世間ずれしているのは判るよね?

 色々と問題を抱えているみたいで、

 それに極力、僕達を巻き込まないようにしている。

 僕が、それを言っちゃうと、その想いを、無にする事になる」

「じゃあ、話す事はできない……か?」

「戸隠さんの問題に、巻き込む事はできない」

「そうか……」

「まぁ、でも、

 僕の問題になら幾らでも巻き込むけどね。

 僕の人生なんて大した事ないし」

「?」

「電話に出たのは、月見里(やまなし) 雲雀(ひばり)さんといってね。

 中学校時代の級友なんだけど……」

僕は、戸隠さんの事を、上手くはぐらかしながら、電話でのやり取りを語る。


「ふーん。なんか、やばそうな感じの女だな」

「前は、誰にでもわけへだてなく接する活発な人だったんだけどね……。

 僕みたいなのでも、良く世話をしてくれたよ。

 なんで、拳銃なんか」


「取り合えず、警察沙汰にはできないんだな?」

「僕だけの事なら、幾らでも良いんだけどね」

「判った。じゃ、お前の携帯よこせ。代わりに俺のを使え」

「?」

「どーせ、相手はGPSで、お前の行動を、追っているんじゃないか?」

「いや、それはないと思うけど……」

「相手の携帯って戸隠さんのだろ?

 付き合い始めて、次の日には婚姻届まで持って来る美女だぜ?

 何か細工してても、不思議はないんじゃねーか?」

「あー」


否定はできない。

僕は、機械関係の事柄はあまり強くない。

そういった機能は切ってあるが、それ以外に居場所を知る機能だってあるかも知れない。

それ以上に、戸隠さんの事だ。

「ちょろい」

とか言って、昨日の内に発信機を仕掛けておいても、何故か信じられる。

ああ、うん。ありそうだ。

GPS、或いは、それに類する物を、仕掛けられている。

それを 月見里さんは使っていると考えて行動すべきだろう。


駅前の交差点についた。

昨日は、ココでみんなと別れて1人、駅に向かったのだ。

今日は、武居の案内で、駅前にある10階建てのマンションへと僕は案内された。

「ココだ。実は俺の知り合いがココに住んでいてな。

 昨日の帰り道にココに入っていくから、驚いたのなんのって。

 まぁ、部屋までは判らんから探すしかないけどな」


早速、エントランスに向かう僕を、武居は止める。

「ちょっと待った。アポ無しじゃ入れん」

そう言って、武居は、エントランス玄関口にあるインターホンで、知り合いと連絡を取ろうとするが、

「ダメだ。留守だ」

「え?」

「地下に行くぞ」

そう言って、武居は、地下駐車場へと僕を連れて行く。

15台ぐらい停めれそうなスペースだ。

奥には、監視カメラ付きの玄関口があった。

武居は、インターホンで誰かを呼び出すと、二言三言話すと、監視カメラに手を振る。

すると、ロックが解除される。






マンションに入ろうとすると、携帯のメロディが鳴る。

僕の携帯だ。

武居は無言で、僕に携帯を、渡しにくる。

戸隠さんから。

即ち、月見里さんからという事だ。



「はい、八代です」

「うふふふ、雲雀です。

 今、私が何処にいるか判りますかぁ〜?」

「いや」

「えー。GPSで調べてよ。ヤシロ。

 連れないなぁ。好きって言ってくれたのに〜」

「あ、貴女との競争に一所懸命だったんですよ」


「うふふふ。じゃ、そーいう事にしといてあ・げ・る」

ぞくっとした。何か怖い。

「でねぇ?」


うふふふふ

「今、私がいる所はぁ〜、じゃん。ヤシロの家〜」


え?

「コイビトなんだから、ココに居ると思ったんだけどな〜。

 はずれちゃった。てへ」

なんだ?今、何処に居るって言った?

「でね、でね、ヤシロ。

 せっかくなんだし、久しぶりだから、話そうよ。

 いっぱい。ね?」

「は?」

「だから、ここで待ってるね。ヤシロ」

「ちょ、ちょっと待って!月見里さん!」


話しながらも、僕と武居は、マンションの中に入る。

まっすぐ奥にはエレベーター。

右手には上がり階段だ。

左手には、守衛室がある。SECOMなど警備会社を使ってないのか、珍しい造りだ。

武居は守衛と話をした跡、エレベーターの前にある、透明な両開きの扉を開ける。

彼は、両開きの扉が閉まらないように、手で押さえながら、ボタンを押してエレベーターを呼んだ。

感謝しつつ、僕は急いで、両開きの扉を潜り抜ける。


「ねぇ、ヤシロが、普段使っている寝室ってどこなの?離れ?」

「いや、それは、不法侵入といってね。充分、犯罪だよ。」

「えー。良いじゃない。

 ちょっとくらい。あ、ここかな?」

ガラガラッ

「こんにちはー」


何だ?

この月見里さんの壊れっぷりは……

背筋が寒くなる。

少し我侭なところはあったけど、それは、相手を愉しませようという意図の為の、彼女のチャ−ムポイントだったのに……


「……いったい、何があったの。月見里さん」

「……」

「前は、こんな……もっと、……素敵な感じだったのに」

何が、こんなに変えてしまったの?

そう、聞きたかった。

でも

「ふふふふ、私ね?

 今、幸せだよ……。前は不幸のどん底だったけど……。

 神様が助けてくれた」

「これから、失った物を全部、取り戻すの。

 幸せは義務なの……ふふふ」

「ヤシロも、戸隠って人より、私が良いって思ってるよね?

 判るよ。愛の力だもん……

 まだ、2ヶ月しかたって無いもんね?」


やばいやばいやばい。

寒い。

そんな時、戸隠さんの電話が、2時を知らせる時計の音を拾った。

聞き覚えのある音。

本宅、僕の寝室にある時計の音だ……。


「あ、そうだ。

 戸隠って人、邪魔だよね。

 ……あの女狐!!

 ……お礼しなくちゃ。くふふ」

ガタン、ゴトゴト。

家捜ししてる――――――!!!

急ごう。


まずはマンションに戸隠さんがいるか調べて、その後は自分家に。

確かに、戸隠さんだったら、僕の家に隠れていても、不思議じゃない気がする!

なんで、こんな事に気づかなかったんだ?

そのまま、武居とエレベーターに乗る。



プツン



「え?」

それは、エレベーターの扉が閉まった時におこった。

携帯が突如切れた。

電波が遮断された?


そこで、初めて、周りを見るだけの余裕ができた。


不思議なエレベーターだった。

材質は、継ぎ目のない灰色のカーボンみたいな何かでできていて、電灯も無いのに、壁や床、天井がほのかに輝いている。

何の材質だろう。

思い当たる物が無い。

エレベーターの操作パネルが、不自然に見えるぐらいの異質感を、エレベーター全体から感じる。

「どうした?キチーフ」

「あ、いや。何でもない」

それよりも、早く戸隠さんが居る場所を見つけないと。

そこで、僕は少しだけクールダウンする事ができたようだ。


何故、月見里さんが、戸隠さんを追うのか?

月見里さんはなんらかの新興宗教に入っている、その新興宗教を戸隠さんが調査したから……

多分、これで間違っては居ないはずだ。


結果として、ヤバイ情報を掴んでしまったのだろう。

戸隠さんは。

だから、月見里さんが追いかけてる。

拳銃まで持って。


では、何故、月見里さんは、僕に対して挑発するような、昔を語るような話を?

第1に、否定しようという話し振りから、僕と戸隠さんが、付き合っている、恋人同士だと思っている可能性が高い……?

可能性として、共犯者として見られている可能性もある……な。

第2に、恋人同士と思っていない場合、これは確実に共犯者とばれているだろう。

でなければ、拳銃の存在をわざわざ明かす必要性が無い。

第3に、ただ、話したかった……。ありえない。

あの時の告白の返事は、中々、痛烈だった。僕の事を嫌っている人間が、そんな事を思うわけが無い。

そうだな、ココは共犯者だと思われているのを、前提として行動するか。


さて、次に、戸隠さんの現在状況だ。

月見里さんの行動が、フェイクである可能性……無いとは言い切れないなぁ。

ならば、僕が共犯者で、戸隠さんの状況が……

1・捕まっている場合、戸隠さんではなく、僕を必要とする何かがあった。

2・捕まっていない場合、僕をえさに誘き出そうとしている……。

どちらにしろ、僕が目当てである可能性が高いなぁ。

どうしよう。

僕が姿を現すのはかなり不味そうだな……。



チーン


と、音がして10階の扉が開く。

1フロア8室の、北から東に湾曲した造りのマンションの1室1008号室。

そこが、戸隠さんの部屋だ。

何度か、インターホンを押したり、戸を叩くが、結局、戸隠さんは自分の家には居なかったようだ。


「さて、これ以上、ココに居るのは不味い。

 実際はどうだか判らんが、

 相手にはGPS機能で居場所は、ばれてると考えた方が良いだろう。

 さっきも言ったが、携帯をよこせ。

 俺が持って、うろうろしておこう」


「それなんだけど……」


「イッサ、僕の地元の駅で勧誘している宗教団体がどういう物か知らない?

 時々だけど、こっちの学校側の駅でも見かけたりするけど……」

イッサに、その宗教団体の特徴的な部分を、思い出しながら話す。

全員が特徴的な十字架”薔薇の中の鉤十字”をかけているから、判断は簡単だと思うんだけど……。

「いいか?キチーフ。

 俺の、得意分野はオカルトだ。似ている様だが、オカルトと宗教は違うぞ?

 と……言っても、俺はあの団体の事を少々、知っている。

 運が良かったな?」

「え?知ってるの?」

「まぁな。んー。

 俺の知り合いって事に、しておこうか……が、あの宗教にはまっててな。

 やばそうだったら、止めさせようと思って、ちょっと調査をしたんだよ。」

「それで?」

「しろ、全くの無害。……なんだが、所詮、素人の調査だったな。

 もし、その、月見里って娘が、教団関係者なら、

 無害どころか、暴力団と関係があるかもな……。

 今日は運が良いぜ、

 ラッキカラーは赤、

 アイテムはピアス、

 ナンバーは2、

 行動は自分からすると吉!!

 全部、当たってやがる。

 今日の俺はついてる!よっしゃ!!

 このネックレスの力、見せてもらうぜ!!!

 頼むぜ!ドラゴンズティアー!!」

「なにそれ?」

「おう、豪運が唸り、爆運が炸裂する、阿修羅級の光徳兵器だぜ!!」

「いや、それは良いから」

「なに言ってる!そのおかげで、戸隠の家、敵宗教団体までわかるんだぜ?奇跡だろ!!」

「あー。はい。そーですねー」






「奴らの教団名は、ニューエルサレム。

 風変わりなキリスト教系の団体だ」

「どんなの?」

「まず、新約聖書のヨハネの黙示録は終わった」

「は?」

「あーっと、だな。

 要は、新約聖書の最後に、ヨハネの黙示録という預言が描かれている。

 これは、世界の終末が訪れ、ハルマゲドンが発生、

 その後、神の千年王国が打ち立てられる……といった内容だ」

「うん」

「実は続きがある。千年の後に、悪魔との最終決戦が起こる」

「漫画やアニメで、手垢のつきすぎた設定だね?」

「そう言うなよ。面白いんだぜ?聖書。

 あと、ハルマゲドンと悪魔達との最終決戦は一緒……と見てる宗派もあるが、

 この際は関係ないのでほっておく。

 で、その後に、キリストが再臨して、最後の審判って奴をやる。

 人間を2つ、悪人と善人に別ける」

「ああ、ヒヨコの選別みたいなやつね?

 自分にとって使える奴か、そうでないかってのを基準に、使えない奴を殺戮するっていう……」

「けっこう、きつい事言うな?」

「独善的なのは、嫌いなんですよ」

「まぁ、キチーフ先生の主義主張は、今回は関係ない」

「ごもっとも」

「で、この審判のあとに来るのが、ニューエルサレム。

 要は、全てが終わって幸せになりましたっていう世界」

「なんか、しょぼい名前の割りに、凄い事いってる?その教団」

「ああ、だから、この教団は、必ず、幸せは義務ですって言うんだ」


「義務……ねぇ。幸せになる義務か、幸せである義務かで、だいぶ変わるね。

 そーいえば、月見里さんも、それっぽい事を……」

「じゃ、間違いねーな。本部は知らんけど、日本支部なら、この近くだぜ。

 3駅向こうの、川沿いを山に向かって行った所にある巨大な建物だ」

「もしかして、山を挟んで、お隣さんかな……?」

「ブルジョワジーめ!

 いつか、我らプロレタリアートの力、見せてやる!!

 立ち上がれ!!共産革命だ!!!」

「いやいや、元・地主で、今は先祖の遺産を食い潰しているだけだよ。

 共産主義とは関係ないよ。……赤いなぁ」



僕は、武居に、先程まとめた考えを話す。


何か良い案はないかと、無い知恵を絞って考えたが、結局は無理だった事。

こういった状況になった時、漫画の主人公は何をしたか、というのを色々と考えたが結論は、僕みたいな一般人以下では実力的に無理。

かろうじて、仲間を信じようぜ。ぐらいか。


そこで、

「戸隠さんを助ける為に、月見里さんを押さえようと思う。

 僕たちだけじゃ無理だ。新田の力は借りれないかな?」

「貸してくれてるだろ?呼ぶか?」

「え?」

武居は新田にメールを打ちながら、

「早退の言い訳とかの、フォローやってもらってたんだよ。一応、委員長だしな」




そして、20分もしないうちに、新田がカバンをもってやってくる。


「早退理由は、キチクンとイッサは愛の逃避行、僕は持病の水虫が悪化、口裏あわせといてね」


「「なんじゃ、そりゃ!!」」

「キチクンを頂点とした、イッサと戸隠さんのトライアングルは、

 2人の男女平等を謡った愛によって幕を閉じたのさ。

 戸隠さんは、自ら身を引いたんだよ」

「待って!何故に、男女平等が愛の逃避行に?」

「明日から、キチクン×イッサって感じでよろしく。

 偽委員長もそれを望んでいるよ」


2度とフォローしてもらうまい。反省文は確実だ。




武居と新田に、状況を簡単に説明する。


僕の目的としては、月見里さんを捕らえ、戸隠さんの情報を聞き出す事。

実際のところ、僕らは巻き込まれただけだから、何も情報がない。

その情報を得るためにも、月見里さんが必要だ。


月見里さんの目的は、僕を手中に収める事であると考えられる。

これは教団側が、僕を戸隠さんの共犯者と見ている可能性が高いという事。


そして、月見里さんは、僕の家に居る。これは間違いない。

教団側の目的としては、これは戸隠さんに対して僕、僕には祖父という人質を取ったような物だ。


問題点は、戸隠さんの居場所だ。逃亡中か、敵の手か?

もう1つ、教団側の兵力を僕達は知らない。状況的に考えると、彼女1人とは思えない。




そこから2人に、僕の考えを語る。


教団側が僕達に有利なように動いてもらう。

その為のブラフとして、学校側の駅で、戸隠さんを発見した事にし、教団側の兵力を割いてもらう。

その間に僕と新田はタクシーで八代邸に移動。新田が潜入、月見里を捕まえる。


「キチクン、これは穴があるよ」

「お前にしては珍しい大穴だな。

 これ、前提条件で、戸隠が逃亡中で無いとダメだろ」

「うん。それなんだけど。見て」


僕は、駅前ロータリーを指差す。

ココは学校側の駅前ロータリーだが、教団の信徒達が、鋭い目つきでビラ配りをしている。

多分、地元の駅も同じ状況だろう。

皆、普通の人のようだが、会社や学校はどうしたんだろう?

まさか、僕達みたいにサボりだろうか。


明らかにおかしい状況ではあった。

昼過ぎ、片田舎のロータリーに8名ほどの教団員。皆、ビラを持っているが、あちこちへと眼をやっている。

それは、正に誰かを探してます、というサインだ。


「いるねー。大勢」

「あいつらの誰かを、締め上げるのか?」

「いや。危険だけど、ココで確かめようと思うんだ。」

「「?」」

「教団が誰を探しているのかをね。教団の人が僕を見て、追跡しないなら作戦開始。

 追跡するなら、幾つかに分断して、悪いけど武居、さっきの締め上げるっていうのを、やって貰っていいかい?」

「あまり、スマートな作戦じゃねーな」

「うん。現状、打つ手が殆ど無いんだよ」

「そっか。キチクンが言うんなら、そーだろ」


「じゃ、ちょっと行って来る」






拍子抜けした。

彼らは、僕が近づいても、ビラを渡そうともせず、まだ誰かを探しているようだった。


もしかして、別働班で情報共有ができてないとか……。

ありえないな。


だから、月見里さんを捕らえる作戦に出る。

この作戦が、思い通りに行くと、このロータリーの教団員全員を振り切らないといけないので、ロータリーより少し離れた、それでいて、駅のアナウンスが良く通る線路脇の道に3人で移動する。




これから行う作戦を2人に告げる。


月見里さんが、僕の居場所を知らないという可能性もあるために、駅停車の列車が来る事を告げる駅のアナウンスが、電話中に入るように、月見里さんに電話する。今から5分後ぐらいだ。


作戦開始後、すぐに移動できるように、新田にタクシーを確保してもらう。

僕の携帯は、月見里さんに電話後、武居の携帯と交換し、適当に動いてもらう。





時間だ。

僕は、月見里さんに電話する。

同時に、新田はタクシーを確保に向かう。


「やっほ、ヤシロ、どうしたの?」


明るい声で月見里さんがでる。

その声が、昔みたいだったから、僕は少し躊躇する。

明るく、元気で、活発な……


「や、やぁ、月見里さん?」

「ふふふふ、ヤシロから連絡くれると思わなかったな?な〜に?」

「うん。賭けは、僕の勝ちのようだから、勝利宣言をね!」

ゆっくりと、勝ち誇るように。


「見つかったんだ?」

「うん」

「そっか。残念」はぁ

「ねぇ、月見里さん。君に何があったか、教えてくr」

「私、不幸になっちゃった。

 私を不幸にしようとするのは悪魔の仕業なんだよ?

 ヤシロが来てくれれば、それで、それだけで幸せになれたのに……

「い、いったい、何の話……」

「ねぇ、私ね。あの時、ヤシロに言った言葉、凄く後悔してる」

「?」

「ヤシロが告白してくれて嬉しかった。凄く嬉しかったよ。

 でも、タイミングが悪すぎるよ。

 何もあいつらのいる所で、言わなくても……

 もっと私が強かったら、言わなかったかもしれない。

 だけど、あの時は自分だけで精一杯で……」


「あ」

彼女は、あの時、僕に人肉喰らい[マンイーター]って言ったんだ。

どんな顔だった?

蔑んでいたんだっけ?

笑っていたっけ?


そうだ、泣きそうな顔だった。

今まで、観た事がない程、追い詰められ、歪んだ笑顔だった。


「ヤシロ?」

「……」

「あの時の事、怒ってる?嫌ってない?

 酷い事、言ったよね?

 だから、これは、あの時の罰だよね……

 罪を犯したら、罰を受ける。

 当然だよね?

 ごめんね?

 ほんとに、ごめんね?

 私、ヤシロを幸せにしたかったよ……」


「いや、あの……」

何だ?この脈絡のない、会話の飛びようは?

彼女は、戸隠さんを追っていたんじゃ?

何で、僕に謝る必要があるんだ?


「ヤシロ。あの時の事、許して欲しいの」

「いや、僕は別に気にしてないよ?」

ちょっとズキリと胸が痛むけど。



ぷるるるるるるるる――――――――――――



「そっか。ありがとう、ヤシロ」

「それよりも、いったい、どうして、月見里さんg」




――――まもなく2番線に電車が参ります――――



「告白、本当に、本当に嬉しかった。

 好きだよ……ヤシロ」



――――黄色い線にお下がり下さい――――



ああ、もう、作戦とはいえ、うるさいな。

全然聞こえない。


「月見里さん、ね?どうして、こんな事を……」


電話口の向こうで、拳銃を操作する音が聞こえた。


「じゃあ……サヨナラ……」


彼女は、拳銃に引き金を引いたようだった。


爆音。


携帯が床に叩きつけられたのか、ガシャンという音と供に、通話が切れた。




まさか……。







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