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世界の 法則が 乱れる!  作者: JR
第01裏話
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悪戯


妾の名前は、ヴラド。

串刺す者[ツェペシュ]、祖龍喰らい[ドラコエド]と二つ名を持つ、真祖たる吸血鬼[ムロゥイ]じゃ。

まぁ、今となっては、妾の同属なぞ見たことも無いので、妾が最後の1人じゃろう。

そんな事を思っていた時期もあったのじゃ。



今、妾は柔らかな布団で横になっておる。

信じられぬ事に、人肌の温もりを感じながらじゃ。

腕枕と言うらしい、小太りの男子(おのこ)に抱かれておる。

いや、正確には抱きつかれておる。


抱きついたまま、男子(おのこ)は泣いておる。

寝ながら。

器用じゃのう。



妾の胸で泣いておる男子(おのこ)の名は八代(やしろ) 時雨(しぐれ)

今日見知ったばかりの人物じゃ。


行きずりの恋。

いやいやまさか、貞淑で、一途で、たおやかな、妾が一目ぼれとは……。


昨日一晩だけで、太き(かいな)で抱きしめられ、荒々しく組み伏せられ、全身という全身を、肌と言う肌を舐められ、口付けされ、貫かれ。

あのように激しく求められる事なぞ久しく無かったので思わず、何度も、何度も肌を重ね合わせてしもうた。

ふふ。もうダメじゃ。

離れられん。

これは、あれか、地球の世界法則[リアリティ]でいう所のNTR、寝取られたというわけじゃな、妾が。

我が主様より。


我が主様……愛しくて、憎くて、引き裂いてやりたくて、血を飲み干してやりたくて、あの酷い裏切りですら快感な我が主様。

今宵より妾は、この者を新たな主として、ついて行きます。

御側(おそば)近くに(はべ)ります。


ふふ、次、出会った時は容赦はせぬぞ。

くびり殺して、その全身の血を飲み干して、敵討ちを終わりとしよう。

あの時、殺された全員に誓って必ずじゃ。






時雨の頭をかき抱く。

一人寝の寂しさを嫌がり、孤独に涙する、まだ幼き殿方を。



しかしの。

少し困った。


英雄、色を好むとは言うが……。


寝る前は、あんなに激しく燃えたというのにの。

今は、他の女子(おなご)の事を夢見ておる。


ほんに気が多いの。

そんなに人から愛されたいかや?

愛の深さより、数かや?


ふぅ。

寝る前に散々、言ったんじゃがのぅ。


妾と(しとね)を共にするならば、妾だけを見よと。



のう?お主様?


後悔、結構。

自分の行いを確認する事もたまには重要じゃ。


自己嫌悪、結構。

その分、妾が好きになってみせようぞ。


しかしの。


反省はしておるかの?

何より、重要じゃぞ。

同じ過ちを繰り返さないという意気込みだけでは駄目じゃ。

その方法論を、考える。

そうする事でしか、失敗から学び取った事にはならないのじゃ。


涙を舌でぬぐう。


お主様?

仏の顔も3度までといったじゃろうに、の?



ふふふ。

仕置きじゃ。



さてさて、レオナルド、我が友よ、お主の知恵を少々、拝借させてもらうぞ。鏡文字を。

愛しの君より知識共有で、日本文字を書けるようにする。

そして、最後に、地球文明の力の結晶。油性マジックペン!!




かきかきかき……。


もう、朝じゃな……。





あふぅ。




この異世界での一夜が明けようとしておる。




今、妾がいるのは地球と名づけられた異世界の、弓なりに連なる奇妙な島国じゃ。

主様の知識じゃと朝は少し寒く、日中は過ごしやすいらしい。


ぶるぶるっと身体が震えた。

流石に裸はこたえるのぅ、風邪を引くかもしれん。

布団をしっかりとかぶりなおし、殿方と抱き合いながら暖を取る。


のんびりとくつろげるのは何十年ぶりかのぅ。

昨晩の事を考えただけで身体が火照り、肌の温もりを求めてしまう。

少し別の事を考えねばの。


何故、イプセプスに繋がるはずの異界門[ゲイト]が地球に繋がっているのか?

答えは、ほぼ出ておる。

が、信じられん、信じたくない、何かの間違いじゃ。保留っと。


地球の世界法則[リアリティ]について。

正直、ここまで魔力素が希薄な世界も珍しい、というか、妾が初めてなだけなのじゃろうが……。

魔法も上手く使いこなせんし、体内の魔力素を使用しすぎるのもまずい。

ここまで希薄じゃと、体内魔力素の回復には時間がかかるじゃろう。

魔力素を糧としている生命体にとって、地球と言う戦場は、少々過酷じゃ。


それに加えて、地球の攻撃的な世界法則[リアリティ]じゃ。

今度の戦いは勝機があるやも知れぬ。


ラブラドルの魔導学に似ていながら、根本からして違う科学という名の技術体系。

錬金術から発達したらしいが、正直に言うと「冗談じゃろう?」と言わざるを得ない。


世界内の統一すらされておらず、未だに同じ世界の人間同士で争い、異世界からの侵略に何も備えていない。

異世界の存在を独自の不思議な理論で判っていながら、じゃ。

それどころか、異世界からの侵略は夢物語と思われているみたいだしのぅ。


暢気な。

楽観的というか地球に住む人類は皆、平和ボケしているようじゃな。


敵の存在を仮定しておきながら、それに備えようともしないのじゃ。

……もしかしたら、それすらも、この地球の世界法則[リアリティ]なのやもしれんが。




さて、ラパ・ヌイの先遣隊をどうやって滅ぼしてくれようか。

魔法は使えぬが、それは敵も同じ事じゃ……。



もう、1人でいるのは、いささか飽きた。

このぬくもりは、離しとうないのじゃ。


妾は、新たな主様の匂いに包まれながら、いつの間にか安らかな眠りについていた。

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