お勉強会 歴史→LHR
「さて、ラパ・ヌイじゃが、現在、この世界は世界侵略を基本にすえた政策をとっておる。
要は、万物構成物質[マナ]を使って富国強兵、侵略して補充というサイクルじゃな。
で、魔法の使えない落ちこぼれや、犯罪者、生きているだけで益なしの存在は、万物構成物質[マナ]に変換される。
お主様なぞ、油断していると後ろからバッサリじゃ。
さて、そんな世界の歴史について、妾の知り得た限りの事を教えていこうぞ」
「ちょっと待って」かちゃかちゃ
「うん?」
今、ふと閃いた事があった。
今まで、ヴラドが驚いていた事に、地球の概念という物がある。多様性とも言っていた。
ラパ・ヌイは、世界内統一されているらしい。
だけど、それが反対に、多様性を妨げている?
もしかしたら、敵を知るのも重要だが、自分達の世界、地球を知る事も攻略につながる事になるかもしれない。
キーワードは、概念だ。
地球上には存在しない、でも、何故か知っている。そんな物。
僕は、ノーパソで、ラパ・ヌイについて検索する。
こちらの世界にも何らかの手掛かりになる物が有るかもしれないからだ。
いや、ある。
そんな確信めいたものがあった。
「あった」
検索にヒットした。
うん?
結構多いぞ。
ラパ・ヌイ……、イースター島の事ぉ?
あの、モアイとかのか……。
ついでに、万物構成物質[マナ]も検索する。
やはり、あった。
色々なゲームや小説で、時々、目にした言葉だから、もしかと思っていたけど。
聖書にでてくる食べ物と、もう1つ、こっちが本命だ。
太平洋、メラネシアの国々の原始的宗教に伝わる、神秘的な力の源として信じられる概念……。
「どうしたんじゃ?お主様」
「うん。ちょっと調べ物をしたんだけど、こっちの世界に万物構成物質[マナ]は、概念としては存在するみたい」
「ほう。魔術師があまりおらぬ世界なのにか?
なんというか、概念だけは多いのぅ。
この世界の人間は、想像力があるのか……それとも、別の……?
いや、今は敵の事を話す時じゃな。判断は後にまわそうぞ」
ふるふるっ
「さて、妾の知る限りでは、ラパ・ヌイとは世界の中心という意味での。
元々は、太平洋に浮かぶ、ムーという王国で使われていた言葉じゃ。
この王国は、1万5千年前ぐらいから、万物構成物質[マナ]を使用した魔術による異常進化を興していてな。
えーと紀元前……で良いのか?使いづらい年号じゃの。
紀元前2000年頃に世界内の統一をはたしておる。
この世界内統一戦争中に様々な魔術的種族を作り出しておっての」
「魔術的種族?」
「うむ。動物との融合腫である獣人兵[テリアントローペ]じゃな」
「どうゆうの?こっちの概念である?」
「んー。しばし待つのじゃ。
……おお、結構あるぞ」
「どんなの?」
「猫耳少女、狐耳少女、兎耳少女って……
なんじゃの、お主様の知識はかなり偏っておるのぅ?」
にまぁ
「ヴラド、それ、今、意図的に拾った知識だよね?」
「ふふふ。さての?
まぁ、真面目に言うと、ハーピー、スフィンクス、オーク、マンティコア、パビルサク、ミノタウロスなど千差万別、色々じゃ」
「ファンタジーに出て来る半獣半人型モンスター、全部創り出したんだ」
「うむ。事実かどうかは判らぬ。
じゃが、ラパ・ヌイの一般常識ではそうなっておる。
今では野生化したり、独自の進化をとげているが、開発当初は、色々な名称が使われておったらしいのぅ。
ついでにじゃが、先程は、獣人兵[テリアントローペ]といったが、現在では、ただ単に獣人[テリアントローペ]と言っておってな。
まぁ、獣人兵[テリアントローペ]は彼らにとって、蔑称になるのでな。
向こうでは、そのニュアンスは含めぬ方が良い。
で、現在、獣人[テリアントローペ]というと、ラパ・ヌイでは、言葉通り、獣の相をもった人型の知性体をさす。
お主様の知識で言う、半獣半人型モンスターや亜人は含まれぬ事になる」
「何でもありだな。この世界……」
「ただし、最初の時に話したと思うが、ラパ・ヌイ産の話じゃ。
他の侵略された世界からやってきた者の中には、創られたのではなく、自然発生的に生まれた種族もおる。
そうじゃな、エルフやドワーフ、ドラゴンニュート、ゴブリン、ハーピー、オークなどは多いの。
大きな街なら、見かける事もあろう」
ずずっとお茶をすするヴラド。
「彼ら自身は、自分達の種族の前に、真祖もしくは高貴という意味でハイ・~と名乗る事が多いから、みかけは同じでも人種、文化的な違いがあると覚えておいて欲しいのじゃ。
その出自ゆえに、プライドの高い者が殆どなのでな。
場合によっては、要らぬ諍いにまで発展する事になるやもしれぬ」
「ああー。なんとなく判る。
虐げられるとプライドのみ肥大化するのは、ユダヤ民族とか、自称・東洋のユダヤ人とか、昔のキリスト教徒とか、地球にもいるから」
実は、僕もそうだしね……。
ここ1週間の事を思い出して、ちょっと自己嫌悪。
「もう1つ。
ついでに同じハイオーク……エルフでもドワーフでも良いが、イプセプス産やアーラム産など出身世界でも大きな違いが存在する。
そこで、種族名の前に、出身世界を名乗る。アーラム・ハイ・オークといった感じにの」
「そんなに違うの?」
「アーラムでは支配3種族の片翼を担っておったからの。文化的にも洗練された理性的な者が多かった。まぁ、エルフ亜種じゃからの」
「え?」
「イプセプス産は粗野じゃが、勇猛果敢で、高潔な者が多い。こいつらは、ラパ・ヌイでも、傭兵をやっておる者が多く、遭遇率も高いの」
「は?」
「どちらにしろ、これだけ人種、文化、思想的背景が違うと、共通認識すら取れん。
それが、深刻な対立を生んでおる」
「そうなんだ……」
「……じゃから、まず、色眼鏡で見るのを止める事じゃな。
獣人兵[テリアントローペ]と蔑まないで、普通に接する事じゃ。
まぁ、お主様の事じゃから、差別とか迫害はないと思うが……」
「当然……と言いたいけど、ゴブリンやオークの話を聞いたら難しく感じたよ……。
でも、多分、知識として知った以上は、大丈夫だと思う」
「そうか。そうじゃな……世界中の者が、お主様みたいな者であるならば、どれだけ良かった事か……」
「ね?ココまで聞くと、ラパ・ヌイも多様性溢れる世界だと思うんだけど……」
「それが、相互作用をおこして、新たな文化を築くのならば、それは非常に喜ばしい事じゃがな!
支配種族が、自らの生み出した文化を最も格調高く、歴史がある文化で、他の文化を知りもしない癖に、低い物、低俗な物と見ている以上、それはありえん!!
そもそも、文化と言うのはじゃな、優劣のつく物ではn」
「はい、どーどー。
ところで、トールキンの指輪物語みたいなオークはいないの?」
「指輪物語?
……おお、この型のオークか。
スタンダードじゃ。オークと言えばこいつらと思ってよい」
「安心したよ。常識が崩れないで」
「人種問題は、ほぼ解決できない問題じゃ。
もし、ラパ・ヌイを攻めるなら、ここらへんを突付くのが良いじゃろうて、くふふふ」
うわぁ、悪そうな顔だ。
「ん?」
僕がジッと見てると、急に顔を赤くした。
「な、なんじゃ?」
「え?いや、何でもない」
「あ、う、そ、そうじゃな。あ、あー。
街へと行ったら、娼館へと足を運ぶのも良いやもしれぬ」
「娼館?」
なんでいきなりトートツに?
「うむ。お主様の捜し求めておる、けもみみっ娘が、必ずや見つかる事、うけあいじゃ!」
「う」
ヴラド、ごまかしたな?
「おにいちゃん。ヴラドね?今度、おにいちゃんの前で、猫になるね?
そしたら、おにいちゃんの手で、入れて欲しいな……尻尾」
ふっと耳元に息を吹きかけられる。
「15回戦目は、ま、まだ早いから。ヴラド、自重しよ?……うう」
「あ、すまぬ。つい」てれっ
「ここからは少し長くなるぞ?」
そう言ってヴラドはラパ・ヌイの歴史を語り始める。
要約すると、以下のような感じか。
紀元前2000年頃に世界内の統一を果たしたムー帝国に敢然と挑んだ男がいた。
時は紀元前300年頃、マケドニアの地に生まれた獣人兵[テリアントローペ]が、帝国に対して反乱を起こした。
当時、マケドニアの地は統治者が暗殺されて、政治的空白状態ができていた。
その間隙をついての挙兵だった。
その獣人兵[テリアントローペ]は瞬く間にマケドニア州内を制圧すると、統治者の跡継ぎ争いに参加し、自らをアレクサンドロス3世と名乗り、マケドニア王国の建国を宣言。
そのまま、返す刀で、ムー帝国へ宣戦布告を行うと、部隊を二分に別け、片方をエジプトへ、片方をビザンティオンへと、共に転移門で送るという電撃作戦に出た。
エジプトには、ムー帝国の万物構成物質[マナ]貯蔵庫があり、3年分の備蓄があった。
ビザンティオンには、魔術師の育成所、図書館などの研究施設があり、それを抑える事に成功した。
その2つを武器に、各地の奴隷階級に属していた亜人や獣人を解放、勢力を強めながら、ガンダーラ州、クァ州、ユーラシア大陸全土へと進行する。
「凄いねー。アレキサンダー大王」
「うむ。妾らの世界、イプセプスでも有名であった。
イスカンダル・ズルカンナインという別名がつけられておってな」
「また、御大層な名前だねぇ」
「妾らの世界では、獣人兵[テリアントローペ]ではなく、ミノタウロウスじゃったがの。
それに従う兵士は、ラパ・ヌイと同じじゃな。
オークやケンタウロス、ハーピーなど様々な亜人、怪物じゃ」
「うわっ、何だその百鬼夜行!!」
ヴラドは続きを話し始める。
期限を良くしたのか、口調も変え、講談の語りや、吟遊詩人等のように、強弱を加え話し始める。
しかし、転機が訪れる。
ユーラシア大陸全土を治め、ムー帝国本土へと進攻しようとした矢先、アレキサンダー大王は突如として、その姿をくらます。
帝国に暗殺されたというのが、最も多い説だが、ヴラドは違うと明言した。
怒りに燃えたマケドニア軍は、ムー帝国の中枢、ムー大陸に総攻撃をかけるが、万全を期した帝国軍に大敗を喫っしてしまう。
元々、目的も嗜好も違う様々な種族を、アレキサンダーという英雄が楔となって、皆をまとめていた軍団だ。
1枚岩であるはずがなかった。
たった1回の敗北で、全軍が総崩れとなった。
生き残って再集結した軍団は、以前の3分の1となり、もはや、主戦論派は少数で、対等以下の講和でも良いから、国さえ残ればよいという不戦論者ばかりだった。
「けっこう、燃える展開だねぇ」
「そうかや?」
「うん。あとは帰還した英雄が、再び人々を率いて勝利を……」
「なんじゃ、その王道展開は……」
「王道ってのは誰からも指示されるから、故に、古今東西、使われ続けるんだよ」
「そんなモノかの?
妾には漢の浪漫は判らんのでな」
「それよりも、漫画の内容まで、知識共有で判る物なの?」
「うーむ。そこまで便利な能力ではなくての。
実は、今のは、たまたま、お主様の表層意識に浮かんだ言葉をそのまま使っただけじゃ」
「あー。じゃあ」
「うむ、表層意識に浮かんだ物は、直に判るが、深い所は、まぁ無理じゃ。
それに知識として浮かぶだけで、それに附随する感情などは別に探らねばならぬしの
さて、話の続きをいいかや?ここからじゃな。本番は」
「あ、御免」
しかし、アレキサンダーは現れなかった。
代りに、アレキサンダーの軍師の1人、ジョフクという男が、奇天烈な事を言い出した。
異世界に贄を捧げ、新たな英雄を召還するという。
誰もが笑う中、チャンドラグプタというダークエルフが、その生贄の役目を買って出た。
果たして、3日後。
空に切れ目が現れ、チャンドラグプタは、虚空へと身を躍らせた。
更に3日、チャンドラグプタは虚空より、何千という竜を連れて帰ってきた。
「ああ!遂に主役交代!!長く続くとこうなるんだよねー」
「いや、問題は、そこではなかろ?」
「え?」
「明らかに、これは世界侵略じゃろ」
「ああ、そういえば!!」
「忘れておったな?」
「チャンドラグプタが連れてきたのは人竜族[ドラゴノイド]といってな。
人間と同じ様な社会を形成するという独特な文化を持つ竜じゃ。
まぁ、それは彼らが竜族でありながら個体として純粋に弱いからなのじゃが。
彼らがマケドニア軍に着いた事で、ムー帝国の敗北という形で戦争は終結した」
「うーんと、さっき、ラパ・ヌイに竜はいなかったって言ってたけど、もしかして?」
「そうじゃ。よく覚えておったの。
この時に大量の竜種が入ってきておる。
地水火風光闇の精霊と契約した霊竜、神や魔と契約した神竜、魔竜。ここいらは高位知性体じゃな。
亜竜や恐竜、翼竜などはただのでかい爬虫類じゃ」
「ヴラドの言っている祖竜というのは?」
「古竜の類じゃ。
今の竜種は何らかの存在と契約する事で、強力な力を入手する。
じゃが、古からの竜は、妾らと同じでの、ある特殊能力を保持しておる」
「それは?」
「特殊能力【龍の進化】というものじゃ。
喰った相手の力を、己が物とする能力じゃ」
「あれ、それって?」
「うむ。妾がお主様に与えた力、特殊能力【真祖の進化】と同種じゃ。
相手の心臓を喰らう事で、その全てを体内に取り込む。
己の中で、汝には新たな生を得てもらう。そういった能力じゃ」
「―――!!」
「祖竜というのはの、古竜の中でも、更に古くからおる竜でな。
あー、古竜達にも、それぞれ出身氏族があるわけじゃが……その族長にあたるのが祖竜[ドラコ]じゃ。
妾が喰ったのはファーブニルと呼ばれる竜でな……」
ヴラドが何か考え込んでいるようだった。
多分、あまり話したくない事もあるのだろう。
僕も、話を変えたかった。
でないと、思い出してはいけない事を―――
考えてはいけない事を―――
特殊能力【真祖の進化】……人肉喰らい[マンイーター]
飛行機事故、笑みを浮かべた母の死体、心臓がない……
血塗れの両手、錆びた鉄の味
「―――ぐっ!!」
考えるな!!ブレーカーを落とせ!!
―――そして、この一瞬の記憶を封印する。
「あー、続き、行こうか?」
「そうじゃな……すまぬな」
「何の事?」
ヴラドは、今の一瞬の事を感じなかったみたいだ。
自分の事に意識が向いている最中で助かった。
ヴラドは先程までの物語の語り口を止め、学者のように自分の調査した結果を、史実と照らし合わせながら話す。
ラパ・ヌイが最初に侵略した世界は、オルビドという世界で、この侵略はオルビド側にとって好都合だったらしい。
実は、このオルビドという世界は、伝染病が世界中に蔓延し、滅亡寸前の世界だった。
そこで、すぐにもノアの箱舟のように、様々な生命体が難民として移住してきた。
そして、もう1つ。
ムー帝国滅亡の際に一部の人間が、敗北するぐらいなら……と大規模な変成魔法【ビカム・アンデット】を発動。
後々まで問題となる、真なる吸血鬼[ヴァンパイアロード]化したという。
「侵略したのに、なんか、侵略された、みたいな感じだね」
「うむ、実際、ラパ・ヌイの当時と現在では、生態系は全く違うしの。
これは妾の憶測じゃが、ココで世界法則[リアリティ]が書き換わっている可能性もあるやもしれん」
「そんな事があるの?」
「うむ、可能ではあるな」
ずずっとお茶をすする。
「それで、結局ムー帝國は滅亡したんじゃがの。
別の問題が出てきた。
先程言った、伝染病がオルビドからもたらされたんじゃ」
「それっておかしくない?
そんな危険な物、世界法則[リアリティ]が認めたの?
世界の自己保存みたいな謎パワーとか、働かなかったの?」
「仮説としては、先程言った本来のラパ・ヌイの世界法則[リアリティ]が、オルビドの世界法則[リアリティ]に、変えられてしまっておる可能性。
もう1つは、ラパ・ヌイの世界法則[リアリティ]が伝染病を認めたという事じゃ」
「可能性としては、世界法則[リアリティ]変化の方が高いのかな?」
「いや、そうでもない。
続きを話して良いかや?」
「あー。もしかして、僕って聞き下手?話の腰、折り過ぎ?」
「ふふ。良いぞ、気にする必要は無い。
伝染病の名前は、獣人症[ライカンスロープ]と呼ばれる物でな。
伝染病の発生源は、狼王ウゴドラクと呼ばれる生命体からじゃ。
この病にかかると、潜伏に1~15日、必ず満月の夜に発症するという呪術的要素をもっておる。
そして、発症すると同時に、狂ったように熱に浮かされ、凶暴性を増すんじゃ。
その後、1昼夜、暴れて死ぬ」
「獣人症[ライカンスロープ]って……。
でも、あれ?
人狼[ヴェアウルフ]になるんじゃなかったっけ?」
「……。
やはり、その概念も、地球にはあったかや……。
ますます面白いのぅ」
「?」
「実はの、お主様の言った人狼[ヴェアウルフ]という者はの。
オルビドにはおらん。
ラパ・ヌイで獣人症[ライカンスロープ]にかかった人間が初めて、人狼[ヴェアウルフ]になったんじゃ」
「え?」
「ラパ・ヌイの世界法則[リアリティ]が伝染病を変質させておるんじゃよ。
元々、オルビドには、一般に言う“猿から進化した”人類は存在せんかった。
恐竜[ダイノサウルス]から、魔力素を糧に進化した生命体が人類でな。
先程言った、人竜族[ドラゴノイド]がそれじゃ。
そこに突然、狼王ウゴドラク率いる“狼から進化した”人類が虚空より侵略してきての」
「え?じゃ、オルビドって別の世界から侵略を受けてたの?」
「そうなるの。
で、死滅を待つなら……と新天地を目指したグループが、チャンドラグプタに手を貸したんじゃろう。
最終的には、次元回廊[コレダー]を破壊してオルビドとは別れておるので、その後、オルビドがどうなったかまでは判らぬがの」
「ふーん。
だから、仮説が2つなんだ……
狼王ウゴドラクはどうなったの?」
「判らんのぅ、多分、オルビドにいると思うが……」
その後も、ヴラドはラパ・ヌイの歴史を語ったが、特筆すべき事は、2つぐらいだった。
イプセプスとの戦いは、どうも、ヴラドが隠してる事がある。
ただ、知識共有を使って調べる気にはならなかった。
きっと、その内、話して貰える様な気がしたから。
もう1つは、ラブラドルという異世界。
この世界にも、万物構成物質[エーテル]という物が存在しており、非常に魔法文明が発達していたという。
ただ、万物構成物質[マナ]と違い、この世界の万物構成物質[エーテル]という物質は、万物構成物質[マナ]が生物、非生物を問わずに循環するのに対し、循環性が無く、生物なら生物のみ、非生物なら非生物のみと、作用範囲が限られていたという事が上げられる。
その為、万物構成物質[エーテル]を魔力素として使用する場合、生物から非生物へと意思を伝達、万物構成物質[エーテル]を外気より取り入れて、そこから魔法を行使する必要があった。
そこで、ラブラドルでは元素転換機関【エーテルリアクター】という機械によって魔法を発動していた。
ずずっ
お茶を飲むヴラドに質問する。
「あー。今更ながら質問なんだけど、いいかな?
あまり関係ないんだけども」
「妾は構わんぞ。
何を聞きたいのじゃ?
スリーサイズかや?
ふふ、ほんに暴れん坊じゃのぅ」
「ちょっと、真面目に聞くよ?」
「スルーかや……。悲しいのぅ」
言いながら、暴れん坊へと伸びてくる手をやんわりと外す。
「拒絶までされた。
もう、妾らは、お終いなのじゃな……」
始まってもいません、とは言えないよなぁ。ココまで激しくやっといて……。
どうしても、形から入りたがろうとする。
恋愛に決まった形なんて無いのに……。
きっと、僕が、まだ子供だからなんだろうなぁ……。
ふぅ。
炬燵の中で、手を握る。
今はコレだけで、我慢してもらおう。
「じゃ、質問ね。
魔法、魔術、呪法、呪術、妖術、道術、仙術、性魔術、魔女術、錬金術、万能科学、その他色々って何?」
ヴラドは一瞬キョトンとした顔をするが
「今、色々と名前が出てきたようじゃがの。
妾も知らぬ技が地球にはあるようじゃ……
あー。
取り合えず、疑問全てに答えるのは難しいので“法”と“術”の違いだけでよいかや?」
「御免、御免。それだけです。聞きたいのは」
心を読まれました。
結構、筒抜けだな。共有化って。
「なに。読まれたくないなら、ガード方法もある。おいおい慣れるじゃろ?」
「……」
「取り合えず、疑問から答えようぞ。
厳密な違いがある物と、無い物があるが、概ね“法”という物は文献として残っている。
元々“術”としてあった物を、誰かが研究対象として分析の目を向け、論理的な説明が可能なようにした物。
それが“法”じゃ」
「という事は、それ以前のものが……」
「うむ。総じて“術”と呼ばれる。それ故に“法”は“術”に比べて、自由度が高く、誰が発動しても効果が一定なのじゃ」
「じゃあ、“術”というのは“法”に比べて使えないのk」
「あ、待つのじゃ。
言いたい事は判っておる。
次は“術”の利点について語ろうぞ」
「……やっぱり、何かしらのメリットがあるから、廃れずに残っているんだね?」
「うむ。先程“法”とは“術”を分析した物と言ったであろう?
その分析の際に、必ずといってよいほど、例外が発生する。
この例外という物は、簡単に言うと分析ができなかった物と考えてよい。
この例外項目という物が“術”が廃れない原因じゃ」
「何らかの秘匿技術とか、一子相伝とか、匠の技みたいなものかな?」
「そうじゃ。
例外項目の入った“術”は“法”で同じ物を組み上げた時と、効果に格段の差が出る。
だから、その例外項目が分析されない限りは“術”は廃れないという事じゃ。
又、もう1つの利点として“術”は個人差が出やすい。
同じ“術”でも妾の使う呪術と………おや、これもあるのぅ」
「何か僕の知識内で似たような物があった?」
「うむ。どうやら、炎の魔法について語り合っているらしいのじゃがな?
こんな感じのじゃ。
……今のはメラゾーマではない……メラだ……」
あ、ココでソレ来るかー。
「ところで、今の話は、あくまでも、ラパ・ヌイとかの話だよね」
「そうじゃ」
「地球だと、今の説明に当てはまらない物とかあるからね。錬金術とか。
で、話は戻るけど、ラブラドルだっけ?
魔法と科学が発達していたの?」
「そうじゃな。
科学は知らんが、魔導学と呼んどったの」
「えーと、こんな感じの世界?」
知識共有しているから、最終幻想6みたいな魔法+科学な世界観をイメージする。
それともワイルドウェポンズや古の羊皮紙Ⅲみたいなのかな?
「ん?おお、そうじゃ。
こんな感じの世界じゃった。
……漫画じゃと、魔法先生ツクネなんかがそうじゃな」
「この世界も結局、滅ぼされたんだ」
「そうじゃ。与えた影響は計り知れないがの」
この2つの世界の戦争は、激しかったとヴラドは言った。
次元回廊[ラビリンス]内が、異様に広大になり、通路幅が30km、高さ5kmの迷路だったそうで、次元回廊[ラビリンス]制圧まで、28年の歳月と、双方の世界の死者が何千万人も出たらしい。
先程から聞いているとヴラドは、侵略戦争が始まると、ラパ・ヌイと敵対している陣営へと常に力を貸している。
この時も、今の僕みたいに、ラブラドル陣営に世界法則[リアリティ]やラパ・ヌイの事を色々と教えたそうだ。
知識共有で当時の記憶を見せて貰ったが、次元回廊[ラビリンス]内は、空一面、灰色。地平線も灰色。景色は、どこもかしこも灰色一色だった。
あれ、最近、この灰色、どこかで見た覚えがあった様な気が……。
まぁ、いいや。
そんな、灰色一色の中を、戦争物FPSの視点で記憶が再構成される。
ヴラドは小型の4足歩行戦車、魔導機獣に乗っているようだ。
その横を、身長10m程の人型の魔導機が、何百機と整列している。
列車砲の支援を受け、無線機で突撃命令を下す。
対するは、齢2000歳にもなろうかというダークエルフ、老将チャンドラグプタ率いるラパ・ヌイ軍[クンガヌ・マヌイ]。
飛行型の魔導機獣に、完全武装の人竜族、竜騎兵、空を飛ぶフレッシュゴーレムがあたり、後方霍乱の為に獣人兵と、転移魔法師が送り出す、自爆杖を持ったカミカゼゾンビが列車砲を襲う。
ヴラドが目指す先には、リビングフォートレス。何百もの巨大な昆虫の足を生やした要塞だ。
たった1発の火球の攻撃により、直径3kmが消し炭になる、そんな攻撃を無尽蔵に行える化物だ。
「我らの魔導【アンチマジックフィールド】を信じよ!!
ラパ・ヌイの魔法など届きはせぬ!突撃ぃ!!」
ヴラドが叫ぶ。
その攻撃は、多分、通じないんじゃないかな?ヴラド。
その防御の突破方法は、地球のアニメ、魔砲少女りりかれ!なのはSSでもやっていたんだ。
案の定、敵も同じ方法を取ったようだ。
地球で言うと、召還魔法メテオストライクとかの類になる呪文だろう。
移送魔法で、岩塊を天空に空間転移、地面に向かって打ち出す。何百と。
これが同じ効果を発揮する変性魔法による石の巨大化や、創造魔法による岩塊の作成だったら、ヴラドの読み勝ちだったんだろうけど。
移送されてきた岩塊は、重力に従って落下しているだけだから、移送終了後は魔法の影響を何も受けてないから……。
AMFは関係がなくなってしまう。
次々と破壊される魔導機人。
その中を、ただ1機の魔導機人が、駆ける。
ヴラドが叫ぶ。
そして、爆発。
沈むリビングフォートレス。
その背後より、浮遊城と新たに戦線投入された2機のリビングフォートレス。
奮戦むなしく、ラパヌイの軍門に下ったラブラドルは、世界法則[リアリティ]に従って、人、建物、大地、全ての物質が万物構成物質[マナ]へと変換されていく。
空へと上っていく、雪のような白い物体。
1つ1つが世界を形作っていた、大切なパーツが、全ての結合を解かれて、その役目を終えてラパ・ヌイへと吸い込まれていく。
僕はいつの間にか、泣いていた。
ヴラドの記憶と感情に引きずられたらしい。
そういえば、知識共有と感覚共有もやっていたんだっけ……
「軍を率いていたんだ……」
「元々は、教官での……あれは最後の決戦じゃった」
ぐす
「単に、妾の読みの甘さが原因よ……すまなんだ……、すまなんだ……」
よほど、辛い目にあったんだろう。
唇を噛んで、頭をたれている。
話題を変えよう。
聞かれたくない事も多いだろうし……
歴史を聞き始めてから、触れないほうが良い話題が多くなったな。
それだけ、ヴラドも悲しい思いをしているという事なんだろうけど……
僕は、ヴラドとつないだ手を、しばらくギュッと握って、泣き止むのを待つ。
「……次元回廊[コレダー]って伸縮自在なんだね。
誰が大きさとか決定してるんだろ?」
はい、これ、ティッシュ。
ぐす。ごそごそ、ちーん。
「判らぬ。最初に造った者かも知れぬし、不滅存在[イモータル]や世界の意思とやらかもしれぬ。
じゃが、ラパ・ヌイの次元回廊[ラビリンス]に限っては、判っておる。
ラパ・ヌイの不滅存在[イモータル]であるアレキサンダー大王、その人じゃ」
「戦争途中でリタイヤしたと思ったら、そんな事になっていたんだ」
「まぁ、少なくとも、不滅存在[イモータル]になった時に、人の姿は捨てているのであろうな。
今の今まで、人前にその姿を晒していないのならば、
もはや、アレキサンダー大王として、人に認識はされぬ姿なのであろう」
「それで、どうしてヴラドには、アレキサンダー大王が次元回廊[コレダー]を作っているって判るの?」
「1つはスルターン情報。
もう1つは、本人とおぼしき者が、言っておったから鵜呑みにしておる」
「あった事あるんだ」
あふぅ。
ヴラドが欠伸をした。
僕もつられて欠伸をする。
う?。こしこし。
「あったというか、話をしただけじゃが……。
なにしろ、妾もそれが何かと聞かれると判らん。
なにしろ、姿を見せん。
ただ、風に言葉を乗せて来るだけじゃ。
変な進化を遂げたもんじゃ」
「進化?」
「ん?おお……その説明もした方が良いか。
不滅存在[イモータル]は究極存在じゃ。
故に不老不滅じゃが、反対に生命体のように成長もせん」
存在が固定されていると考えれば良いのかな?
「自然の理[ベースリアリティ]で成長しないなら、別の方法で成長するしかない。
その答えが、個体進化じゃ」
あー。それもあるなぁ……
バケットモンスター、通称バケモンというゲームとそこから派生した物が、それをメインとしているなぁ……
「いや、そこは妾が驚く所で、お主様が呆れる所ではないぞえ?」
「いやいや、何というか、全てが概念としてあるんじゃないかって思うぐらいだよ」
「そうじゃな。まるで、始まりの世界[オリジン]か、終末の世界[ドゥーム]じゃな」
「うん?始まりの世界[オリジン]は聞いたけど、終末の世界[ドゥーム]って何?」
「どこの世界にもある、おとぎ話じゃ。全ての世界が最後に行き着くという……な」
そう言ってヴラドは詩を謡い始める。
夜を塗りつぶす闇より深き、光なき暗黒の世界。
その中央に住まう王の中の王、
暗愚にして賢知。
惰弱にして精強。
豪放にして繊細。
永の時を刻み、人も、海も、空も、魔も、未来永劫、全てを喰らう。
ただ、残るは虚無のみ。
「そんな世界じゃ」
「何?その世界は?」
「まぁ、実際、考えてもみよ。
パラレルワールドといっても、始まりの世界[オリジン]から始まって、無限に増殖していたら、いつかパンクする。
それで、終末の世界[ドゥーム]という考えじゃ。
この世界を侵略してはならん。
必ず負ける。
自然の理[ベースリアリティ]でそうなっておる。
という話じゃな」
「何、そのチート」
あふぅ。
「少し、話しすぎたかや。眠くなってきた……
なにせ、次元回廊[ラビリンス]で一日中、走っておってのぅ」
ふぅあ
「取り合えず、最後まで行くかの。
ラブラドルじゃがの。
万物構成物質[マナ]に変質しなかった物が多いんじゃ。
滅亡時にいくつかの元素転換機関[エーテルリアクター]がそのままの形で変質してな。
ラパ・ヌイの世界法則[リアリティ]に取り込まれたんじゃ」
「……」
「今では、万物構成物質[エーテル]の代わりに万物構成物質[マナ]を使った元素転換機関[マナリアクター]として色々と研究されておる。
人間が魔法を行使するより、遥かに高効率なので、ラブラドルの魔導は研究しておくべきであったという意見が大半じゃ。
これが俗に言う遺失技術品[アーティファクト]という物でな。高値で取引される」
ヴラドは最後に残ったお茶をずずっと飲む。
「これ以降、ラパ・ヌイは先遣隊の諜報能力に力を注ぐようになってな。
力任せの侵略を行う前に必ず、侵略世界の価値を多面的に見る傾向が強くなったんじゃ」
100年前の話じゃがな、と話を締めくくる。
ふぅ。
「さて、ココまでで疑問、質問は?
妾も少し話しすぎて、頭の中を整理する時間が欲しいのでな」
「いや?それより、そろそろ眠るかい?時間も4時を廻ってる」
「そうじゃの。かなり疲れた。
続きは明日で良いかの?」
もそもそ
「これも、ココの世界法則[リアリティ]を取り込んだせいかの……」
ぬくぬく
「この炬燵とやらの気持ち良さは、まさしく魔性の兵器じゃ。
何人たりともこの誘惑には逆らえん」
くいっ
「お前さま、お前さま。もそっと近うよってくれ。そうそう、身体を借りるぞ」
「えっ」
ごそごそ
「では、休むとするかの」
そう言ってヴラドは、僕を背もたれとして胸に寄りかかる。
僕は身体の半分以上が炬燵の外に出てしまった。
「これじゃ、僕が風邪引くよ?
それに、寝るなら横になろうよ?」
「ふむ、確かにそれもそうかの……。
ココには襲ってくる敵もいないしのぅ……」
何となく、ヴラドの生活が垣間見える言葉だな……。
にまっ
「襲ってくる暴れん坊ならいるかもしれぬがの?」
「しません」
と言いつつ、がばっと後ろから抱きしめる。
「あ」
くんか、くんか
ヴラドの首元で匂いをかぐ。
でも、我慢。
「明日、起きたら早速やるから。今は我慢して寝よ?」
「胸が高鳴って、眠るどころでは無くなってしもうたのにか?
ふふ、鬼じゃの。お主様は」
ぺろっ
首筋を舐める。
「んんっ」はぁ
息に熱いものが混じり始めてる。
「これ以上は……ちと、まずいぞ。押えがきかぬ」
ちょっと、やりすぎた。
ヴラドと出会って、初めての経験をしてから、僕の身体がおかしくなった。
考えられるのは、ウィルス……?怖いから保留。
僕の野獣の本能……?ないない。
ヴラドフェロモン?あー、ありそう。でも、そうすると、おかしい事が1つ。
僕がおかしくなると同時に、ヴラドにも同じ徴候が出ているって事。
だから、僕もフェロモンを出しているって事になる。
シグレフェロモン?汗の臭いか、腋臭では?あっはっはっー。はぁ……。
特殊能力【真祖の魔眼】による性欲増加……?
これも、ヴラドにも影響がでているのが説明できない。
2人揃うと、この状態になる……だけど、誰とでも、性交渉したいワケじゃない。
多分、目の前のヴラドだけだ、こんなになるのは。
戸隠さんも、月見里さんにもココまで強く執着することは無いだろう。
言ったら、後ろから刺されるのは確実だけど。
身体が求めている、だけど、心がついていってない。
2人の関係とは、真逆なんだ。
まず性交渉ありきの関係と、心と心を通わせての結果としての性交渉と……。
うーん。やっぱりフェロモンかなぁ……違う気もするしなぁ……。
あー。
くんかくんか
れろっ
「あひぃっ。お主様?」
「あ、御免。で、どこで寝る?」
「では、お主様?
2人ベッドで抱き合うのと、2人炬燵で横に並ぶのと、どっちが好きじゃ?」
「あー。今日は炬燵で」
「そうか、では寝るとしようかや……あー。今、口づけすると、何かそのまま雪崩れ込みそうな気がするのぅ」
「ん?あー、お休み前の口付け?」
日本では、あまり馴染みの無い風習だなぁ。
んっ
「お休みじゃ。愛しの君よ」
ヴラドが顔を少しあげる。
「ん」くちゅ
唇と唇を軽く合わせる。
お休み前の軽いキスd……
あー。駄目だ。堕ちた。
れろ。
口ん中に舌を入れたのは、どちらが先だったか判らない。
首に手を回し、蛇のような目をして、激しく僕の唾をすするヴラド。
荒々しくヴラドを押し倒し、相手の事なんか考えずに、ただ、快楽だけを求めて、15回戦目に突入。
嵐は去った。
ふぅ
z
zzz
zzzzz
心身ともに疲れていたんだろう。
ヴラドは絶頂と同時に眠ってしまった。
僕は、幾つかの気になっている事を、脳内でピックアップしている。
自分の身体の変調。
明日からの学校と、家の中にある戦争への扉。
戸隠さんと、月見里さんの事。
そして、最後にヴラドが行っていた言葉。
ヴラド。
さっき、どこの世界にもあるって言ってたけど。
でもね。
地球にはね、終末の世界[ドゥーム]なんて概念はないよ。
どんな概念でもありそうなのにね?
「多分、その概念だけがないよ」
僕は、その言葉を飲み込む。




