お勉強会 古典→政経
戸隠さんが来てるかと思ったんだけど……。
僕は、自分の寝室へと帰っていく。
案の定、ヴラドはお冠。
そりゃ、そうだよね。
自分と居る時は、他の女の事を考えるな、と言っていたのに、早速、これだからねぇ……
土下座
「御免なさい」
「ほほう、それで?」
「御免なさい」
「妾は言ったはずよな?1つ目は“妾と逢瀬を重ねておる時に、他の女の事を考えているのは、どーゆー了見じゃ。感心せんぞ”と。
2つ目は“せめて睦言の時ぐらいは妾の事を見よ”とな。
さて、3度目じゃ。
この世界の言葉に“仏の顔も3度まで”という諺がある。
知っておろう?元々お主の知識じゃ」
「御免なさい」
「そうか。1回分足りんが、謝罪するという事は、自分の非を認めるのじゃな」
ガッ
ヴラドの右足が、土下座している僕の頭の上に下ろされる。
ぞくぞくっ
背中に電撃が走る。
「?」
何だ、今の感覚?
あ、そういえば、まだ性魔術【恋人達の抱擁】の効果が残ってたんだっけ。
………………
…………
……
ヴラドは、足をどけるとそのまま、僕の額に足を当て、上向かせる。
「お主様、罪には罰を与えねばならぬ。
罰を受けた者は、償いをせねばならぬ」
そのまま、顎に足を滑らせ、上体を上げさせ、正座の形に戻す。
「ふふ」
足で頬をなでられる。
「返事は?」
ヴラドは僕のベッドに腰を下ろし、見下ろしている。
「は、はい、判りました」
「良い返事じゃ」
なでなで。足で。
「ん?ふふ、なんじゃ、これは!
今から罰っしてやろうというのに、この益荒男は?
猛り狂っておるではないか!変態め!」
ぞくぞくっ
「それとも、罰せられるのが、うれしいのか?ブタ!!」
「……」
踏みつける。
「こ・た・え・よ」ぐりぐり
「は、はい!」
「はははは!!
身体も嬉しくて、泣いておるぞ?
正直者よのぅ!!
そのまま果てるが良い!許すぞ!ははははは」
激しく右足を動かす。
ヴラドの目はもうトロンとして、凶悪な笑みが張り付いている。
ああ、いいなぁ……
同時に11回目終了。
「お主様よ。また罪を犯したな?」
さっきまで僕をいじめていた右足を見せる。
「汚れてしもうた。
どうすれば良いかの?」
「き、綺麗にします。ふ、ふきます」
口を開け、足の裏を舌で舐める。
「――――!!」
くすぐったいが、声を殺している。
さぁ、反撃だ。
「はむっ」
僕は指を全部、口に含む。
「いひぃっ、あ、ちょ、ちょっと、お主様?」
そのまま立ち上がり、ベッドにヴラドを押し倒す。
両腕、両足、口でヴラドの右脚だけをホールド。
「ちょ、くすぐったいのじゃっ、あはははは」
僕は、指と指の間を舐め、音を立て、すする。
同時に、右手で内股をさすり、左手でヒザをホールドしたまま、指でヒザ裏をなでる。
ヴラドが暴れるので、上半身を押さえるために、自身の位置を反転。
ヴラドの上に乗り、体重をかける。
のーみそピンクなのは、君もじゃん。ヴラド。
性魔術【恋人達の抱擁】で、相手の感情の全てが、リアルタイムで判る。
ヴラドが怒っていない事は明白だった。
それどころか、僕が戸隠さんを探している間、NTRと放置プレイを味わって、ゾクゾクしてたくせに!
確か、童には判らん感情じゃ、とか言ってなかったっけ?
変態め!
今も、僕を罵り、自分が罵られているのを夢想して悶えていた。
SとMは表裏一体とは良く言ったものだ。
今回は、今まで以上に激しく攻め立てる。
ヴラドが本心から望んでいたからだ。
そうする事で、償いとする。
ヴラドは、僕に求められているという証として、何よりも激しく愛される事を望んでいる。
ヴラドは、性魔術【恋人達の抱擁】の事を家庭円満の魔術とか言っていたけど、確かに凄い魔術だと思う。
独りよがりの気持ちで行うと、相手の事が判る分、冷めてしまう。
だから、相手の気持ちに合わせると、快楽が返ってくる。
相手も自分と同じ状況なら、相乗効果が働く。自分は相手で、相手は自分だ。
これは病みつきになる。
もう、何も考えなかった。
忘れちゃいけない2人の事も今は忘れた。
ただ、獣のように相手を求めた。
ヴラドが欲しい。
心ごと欲しい。
12回目終了と同時に13回目に突入。
流石にアレなので13回目終了後、もう一度、風呂場へ行って身体を洗う。
そこで14回目。
再び、寝室へ。
時間は真夜中1時を回っていた。
「ヴラド。流石にこの身体の異常は、おかしいと思うんだ。
君もそう思わない?」
「ふふ」
「?」
「いや“君”と呼んでくれた様なのでな」
「あ、そういえば」
「まぁ、身体の異常については、妾もじゃが、心当たりがある。
が、それは少し時間が欲しいのじゃ。
まだ確証には至っておらん」
「えーと、この状態は続くの?」
「おそらくはの。人間には発情期はないであろ?」
「うん。まぁ」
「逆説的に言うとじゃ、万年発情しているわけじゃ。
サルより始末に終えんな」
「えーと、どうすれば?」
「理性じゃ。
お主様の身体の益荒男っぷりは妾も認める。
なに、今度は心の益荒男っぷりを魅せれば良い。
それだけじゃ。愛しき君よ」
「無理」
「さて、夜も短い。話の続きといこうかの」
「うわぁ。無視ですか」
先程の性魔術【恋人達の抱擁】で、ヴラドの感情がかなり流れ込んできた時雨としては、溜まってきた疑問を消化したかったのだがスルーされた。
何故、絶望しているのか。
何故、時雨に依存と言ってよいほどの愛情を抱いているのか。
何故、スルターンを憎んでいるのか、愛し続けているのか。
そこで、彼ははたと気づく。
そうだ、まだ1日もたっていない。
そう、驚愕する。
まだ出会ってから数時間しか経っていなかった事に。
まだ、これからだ。
そう、言い聞かせて、狂おしい感情を押し留める。
「えーと、何処までじゃったかの?」
「パソコンの事知りたいんじゃなかったけ?」
「おお!それで性魔術【恋人達の抱擁】を使ったんじゃった。
ではもう一度、いこうかの?
さっそく、理性の魅せ所じゃな。お主様?」
魔術が発動する。
(そのまま、ごちゃごちゃ考えんと、目の前にある道具の事をイメージせよ)
時雨は、言われた通り、機能をイメージして伝える。
「ほー。だいたい判った。
遠見の水晶球と、英知の姿見の様な魔法具か」
僕にはヴラドの説明が判らなかったけど、まぁ本人が納得しているならいいか。
「ほほぅ、いや、これは凄いの。
この様なものが、一般に流布し、あまつさえ子供の頃から使えるように学習させるとは……」
「今みたいになったのは、ネットが普及してきてからだから、10年~20ぐらい前からだけどね」
「ふむ、最新の技術を隠蔽するでなく、世間に行き渡らせる……か。見上げた者達じゃな」
「え~っと……」
「では、検索とやらをしてもらおうか?
項目は武器と兵士の数、攻撃魔法に類する何か。あー、攻城兵器みたいな物じゃ」
「うん。ちょっと待って」
「いや、ふむぅ。正直、驚いた。
この世界、世界内統一すらされておらなかったんじゃなぁ。
言語、文化、宗教も、無秩序に発展していっておる。
それ故の多様性か……」
「統一ではないけど、国際連合という国同士の経済、社会的な協力、安全保障をになう、国際的な組織はあるよ」
「じゃが、それでは、大国の横暴が目立つ機関となってしまうであろ」
「うーん。実際、そうだねぇ。
まぁ、その大国の横暴を止める為の機関として、その前身の組織があったんだけど、反対に大国が加盟してないせいで結局、空中分解したからねぇ」
「この組織は、どれだけの軍事力を持っているのじゃ?」
「直属は無し。
各国の提供による……だと思う」
「あまり役にたたんな。
では、お主様が属する国は、何処に位置するのだ?」
「そういえば、さっき、地図を見たいって、言ってなかったっけ?」
「うむ、そうじゃな……」
「じゃ、ちょっと待ってね」
「?」
僕は、インターネットで良く使う検索エンジンから、地図を映し出す。
「……」
「のう、お主様?
もしやとは思うが……直に見れるのか?」
「うん」カチャカチャ
「まさか、アカデミーやラボに出向く必要がないのかや……?」
「はい。これが世界地図」
「お、おお……世界地図かや。
まぁ、世界地図ならどこでも入手は容易かろう。
ふむ、ラパ・ヌイのと同じ様な地図じゃな。
やはり、見やすいのぅ」
「そうなの?」
「うむ。イプセプスには地図がなかったから判らんが、
この地図は、ラパ・ヌイ製と良く似ておる。
違いはムー帝国がない事じゃな。」
「ムー?太平洋上の?」
「……概念として、あるのじゃな?」
「うん。名前だけは、結構有名だね。
こっちでは眉唾物の話となっているよ」
「いや、真偽はどうでも良いんじゃ。
概念として、あるかどうかじゃ。
ふむ、ムーの民について聞くが、えーと、コーカソイド、モンゴロイド、ネグロイド、カポイド、オーストラロイド、インディアン、エルフ、ダークエルフ、ドワーフ、ゴブリンでよいかや?」
「いや。それはない。
そもそもインディアンはモンゴロイドだし、エルフやドワーフは北欧神話が元、
ゴブリンに至っては雑魚なんじゃ……あ、そうか、脳内翻訳か」
「うむ。まぁお主の脳内で、妾のイメージ通りの翻訳が行われただけじゃ。
ラパ・ヌイでは、それらが、人類となっており、それ以上の知性体はおらなんだ」
「あれ?ドラゴンとか……」
「後で、歴史も語ろうぞ。
少し長くなる故にな」
「こっちでは……ちょっと待って」カチャカチャ
「こっちでは、10の肌の色の違う民となっているね。種族までは不明」
「ふむ。その代わり、似たような種族が、その他の神話で語り伝えられている、というわけじゃな?」
「そうなるね」
「ふむ……さて、話を戻そうかや。地図じゃったな。
ラパ・ヌイでは……現在の首都はアレキサンドリアじゃが、昔はムー帝国の帝都ヒラニプラが首都じゃった。
その名残で、ヒラニプラを中心とした地図が多い。
ところで、これも、話の途中じゃったな。こっちの世界、何と名づける?」
「あ、そういえば」
「うむ、お主様が、他の女子にうつつを抜かす、少し前の話よ」
「あー。御免って」
「まぁ。良い。
ではお主様、この世界を何と名づける?」
「そうだね。やっぱ地球がいいや。」
「ふむ。ではそれで」
「地球の日本国、この弓形の国じゃな?」
「うん。この国の……」
僕は、日本全図から地方、県と縮尺を拡大していく。
「ココが僕の家」
「……」
「どうしたの?」
「い、いや、これは……驚いた。
まさかココまで精度の高い地図があるとは……どんな魔法を……
いや、それよりもじゃ……一般人にココまで精密な地図を開示して大丈夫なのかや?
それだけ、精強な兵士がいるという事なのかや?
ううむ……。
いや、その前に、この国の兵士数じゃな……」
「兵士は、建て前上、居ない事になっているよ」
「は?」
「正確には兵士ではなく軍人だけどね。
今、誤訳がおこっていたから訂正するね」
「まて、兵士の居ない国なぞ、古今東西、聞いた事がない。
世界内統一を果たした世界ですら、もしもの反乱鎮圧の為に必ず何らかの軍団編成を行っておる」
「一応、兵士に順ずる人たちは居るよ」
「む、そうなのか……あー、判った。
ゴーレムとアンデット正規兵じゃな。」
「え?」
「確かに、あれは強力じゃ。
特に自前で戦力増強を行うアンデット正規兵は恐ろしいな」
「そんなのがいるんだ……」
「登録制でな。
キチンと家族に報酬も出る……っと、どうやら、その顔では違うようじゃな?
えーっと、こちらの言葉で……ロボットという兵士かの?」
取り合えず時雨は、自衛隊という存在について話をする。
国家を守る軍でありながら、その存在そのものを否定され、国を守る為に振るう力に、自ら足枷をつけて戦わねばならない兵士達を。
「あー。なんじゃ?
その馬鹿な国と軍団は?」
「えーと。僕の国と僕の国の軍団です」
「なんじゃな。1匹の羊に率いられた狼じゃな。これは。
どんなに強かろうと、トップが馬鹿では無意味じゃな。
うむ。この国は一度滅ぶべきじゃ。
さすれば目覚めよう。自らの帰る地が消えて始めてな。
ふっふっふ。愚か者には相応しい末路じゃ」
「へ、平和が一番という事で……」
「それは否定せんが、何じゃな。
この世界の退廃振りの理由に合点が行った。
まさに悪徳の町じゃ。
うむ。平和は毒じゃぞ。神の炎で塩の柱となって滅ぶが良い」
「うわー、酷い」
「なに。国敗れてサンガリアというではないか」
「いわないよ……あれ?言うのかな?」
カチャカチャ
「言うみたい……あれ?何で、僕、こんな事、知ってるんだ?
大阪ローカルじゃ無かったっけ?いや全国区か?
あれ?……まぁ、いいや。あー、とりあえず言っとくね、ヴラド。
正確には、中国という国の詩で、春望という題名。
國破山河在[くにやぶれてさんがあり]
城春草木深[しろはるにしてそうもくふかし]って続くんだけど、別にいいか?」
「うむ。すまぬが後で、知識共有で覚えるので、覚えておいてくれんかの?
良い言葉であり、そして、世界を知らぬが故の言葉じゃ」
「?」
「のう、お主様?
これから起こる戦争は、この世界の誰もが経験した事のない物となるぞ。
国が敗れれば次はない。
山河は残らぬ。
城に春は来ぬ。
草木は塵芥となり、痕跡そのものが消え去る戦いじゃ。
心するが良い」
「……」
「さて、その自衛隊であったかの、総兵士数24万か。
この中のどれだけが使い物になるかじゃな……」
「軍隊としては強いと聞くよ?弱いとも聞くけど」
「どっちじゃ」
「多分、部隊によるんじゃないかなぁ」
「ふむ。とはいえ、正直、これからの戦いの役にたたんじゃろ」
「いや、同国民として、彼らを信頼する民間人として、その意見には反対しておこう」
「う、いや、そういう意味で言ったわけではない。
少年が騎士団に憧れるのは当然じゃ。そうではない」
「じゃ、どういう意味?」
「そうじゃな……いま少し、世界の事を話そうかや」
「取り合えず、おさらいね」
僕は、メモを見ながら、ヴラドに確認をとる。
「ラパ・ヌイという世界からが侵略者が攻めてくる。
侵略者、ラパ・ヌイ軍[クンガヌ・マヌイ]は、
唯一の進行路である次元回廊[コレダー]を通ってくる。
今、現在、次元回廊[コレダー]は八代家の内蔵に繋がっている。
敵の目的は、
1・万物構成物質[マナ]の補充。
2・新たな魔法知識の収集。
3・名声。
これで、良いよね。ヴラド?」
「うむ」
「それを僕達だけで、迎撃する?」
「うむ。正確には、ラパ・ヌイ軍[クンガヌ・マヌイ]の先遣隊じゃな。
猶予はだいたい4日ぐらいじゃ。
ちなみに無謀という事は判っておるので、力を借りれそうな所はどんどん借りるぞ。
時間がないからの。
硬直し、柔軟性を失った自衛隊は邪魔じゃ」
「うーん。じゃ、最終目標を何処にするか設定しようよ。
下手すれば、泥沼化するんじゃない?」
「ふむ。ならば、最終的な目標は、戦争に勝利する事だとしてのぅ。
今回は、どうすれば負けないか?が、目標となろうの」
「そっちが、重要だね」
「取りあえず、敗北すると、どうなるかは知って置いた方がよかろう」
「うん」
「ラパ・ヌイ軍[クンガヌ・マヌイ]の侵略の話をした時に、富とか奴隷という事を言っておったが、ラパ・ヌイでは奴隷はおらん。
正確に言うと、奴隷は必要ない。
全て、魔法が肩代わりするからの」
「そうなんだ」
「そこで、安心するとはのぅ……もっと酷いぞ。
奴隷だったら、どれだけマシか。」
「……」
「先ほど言ったであろう?奴らの戦争目的を。
万物構成物質[マナ]の補充……と。
万物を、構成する、物質の、補充じゃ。
そして、国が敗れれば次はない。
山河は残らぬ。
城に春は来ぬ。
草木は塵芥となり、痕跡そのものが消え去る戦いじゃ」
「まさか……」
「そうよ、ラパ・ヌイの世界法則[リアリティ]によって、世界そのものを変質させられ、
世界を構成する物質の1つとして吸収される。
美しければオブジェぐらいにはしてもらえようがの?」
「じゃ、じゃあ、負けたら……」
「世界は滅亡する。文字通り」
ごくっ
「……既に9つの世界が消えておるぞ?奴らのためにな」
怖気付いたか?とヴラド。
「さて、今回の目標じゃが、勝利が一番良いが、現状は難しかろう。
そこで、不可侵条約や攻守同盟を結ぶ、を目的とした方が良いと思うがどうじゃ?」
「それしかないだろうね。
取りあえず、先遣隊に、この世界が手強いと思ってもらえればこっちのもんなんだし」
「それも難しいがのぅ。
少なくとも、奴らの目の前にある世界が、同じ生命体で構成された存在である、という認識を持たさねばならんからのぅ」
「うへぇ。そこから?」
「で、この世界の兵器を検索してもらいたい。
できれば少人数で運用可能な、拠点防御用の物をじゃな。
バリスタに属するような物があれば良いんじゃが。
先遣隊が、いきなり攻撃する事はない。
まず、この地球の文明が、どのレベルにあるかを調査する為の偵察兵が数班、送られてくる。
その、偵察兵の調査が約1~4日じゃ。それまで戦端は開かれん。
全て含めると約4~8日じゃな」
「ちょっと待って、検索中」カチャカチャ
「先遣隊の目的は、拠点設営じゃ。
妾らは、設営の邪魔をする事で時間を稼ぐ」
「こんなもん、かな?」
時雨は、色々な軍事兵器について書かれた、いくつもの情報サイトをヴラドに見せる。
使える、使えないは別として、どちらにしろ、自分1人で戦うわけではない。
最終的は大人、軍隊に頼るわけだ。
民間人にできる事は、プロに情報を渡す事だ。
情報は、その精度と鮮度が価値を決める。
ココで得た情報を、広範囲にメールでばら撒けば、少しは信じてもらえるかも……と、甘く考えている。
大半は、そういったメールは、悪戯と判断されて駆除されるわけだが。
「お主様、存外、この世界はラパ・ヌイと対等に張り合えるやも知れん」
サイトを見ていたヴラドがワナワナと震えている。
えーと、これは歓喜かな?
「ん?良い物でもあった?」
「うむ。気化爆弾、核弾頭、毒ガス、クラスター爆弾。地球にも色々と良い物があるではないか。
100年ファイヤーボールに匹敵するのぅ」
「100年ファイヤーボールって?」
「そのままの意味じゃ。
100年間、丹精込めて万物構成物質[マナ]を、圧縮封印[メモリー]させた魔法具じゃな。
まぁ、魔法名ではなく、そういった物の俗称じゃ。
貴族どもが自家の歴史を語る際に“これが、歴代~年分の魔力を詰め込んだ魔法【~~】を使った魔法具です”と言っての」
「それは凄そう」
「地形が変わりよる。
とはいえ、核とやらも凄いではないか。
焦土作戦にはピッタリじゃ。すばらしいのぅ。
使用後にも生命を殺す息吹を撒き散らし、長きに渡り、大地を不毛の地とする……」うっとり
「いや。それはダメ」
「ん?あんずるな。
焦土作戦は基本的に防御用じゃからの。
攻撃用も良い案がある」
「?」
「核も爆弾も、そのままでは世界法則[リアリティ]に阻まれて爆発すらおこせんが、手はある。
それぞれを、ゴーレム化すれば良い。
推進には魔法【クリエイトファイヤーボール】の爆風を使用して……」
「いや、そこから離れよう」
「むぅ。大丈夫じゃ。
ゴーレム化の魔法ぐらい、妾が何とかして……」
「いや、そこから離れよう」
「ぬむぅ。キノコ雲とやらが見たいんじゃ」
「いや、そこから離れよう」
「ならば、もう少しマシな迎撃法を考えようぞ。残念じゃ」
はぁ…
ずずっ
「緑茶といったかや?これは。
変わった風味じゃのぅ」
お茶を飲むヴラド。
「音をたてて飲むのが礼儀なのかや?」
と先程聞いてきたので、その通りだと答えたら、もう緑茶の飲み方をマスターしていた。
「この味は、嫌いではない、どことなくじゃが紅茶と似ておる。
ふむ……というか、水質が違うのかや?」ずずっ
「……」
「このセンベとやらは硬いのぅ。
甘くもないし。少し、音も出て下品じゃのぅ」ばりぼり
「……」
「なんじゃ、お主様。そのセンベ、喰わんのかや?
妾が喰ってやろうぞ」ひょい。ばりぼり
夜のドカ喰いは太りますよ。ヴラドさん。
ええ、経験者だからこそ、語れます。
「しかしのぅ。見たいと思わんかや?」
「何を」
「キノコ雲」
「いや、そこから離れようよ」
「少し質問だけど良いかな?」
「なんじゃ?」ずず~っ、はふぅ。
「話は少し戻るよ?いや、キノコ雲じゃない。
ちょっと上げ足取りかもしれないけども……
矛盾が発生していないかい?」
時雨は、少し、疑問に思っていた事を話し出す。
「?」
「不滅存在[イモータル]は、世界の理[ベースリアリティ]から外れた者だよね」
「そうじゃな」
「じゃあ、世界は、それを発生できないような、世界法則[リアリティ]を作り上げているんじゃないの?」
「おお、そこか!
良いところに気づくのぅ。お主様」
「いやぁ」てれっ
「褒美に、妾のカップに、緑茶を注ぐ義務をやろう」
「えー、いらないよ。オプーナか」
「?」
「で、さっきの話だけど、理由でもあるの?」
「うむ、そこで、リアリティ体現者という者が現れる」
「なにそれ?」
「特殊能力者」
「どんなの?」
「普通に生活している分には、絶対に気づかれない存在じゃ」
「?」
「リアリティ体現者が、活躍できる場所は非常に少ない」
「……」
「ところで、緑茶が無くなってしもうた。我が愛しの君よ」
はぁ
「判った、少し待ってて。入れるから」
「さて、リアリティ体現者達じゃがの。
簡単に言うと、己の世界の世界法則[リアリティ]を、何処の世界でも体現できる者じゃ。
実際の所は、世界ごとに呼び名が変わるのじゃがの。
ラパ・ヌイでは体現者[コマリ]と呼んでおったの。
妾達イプセプスは体現者[ムジャーヒド]と呼んでおったの」
「?」
「どのような強力な魔法使いでもの、リアリティ体現者ではない一般人では、世界法則[リアリティ]の違う場所へと赴くと、自らの世界法則[リアリティ]を維持できぬ」
とぽとぽとぽ……
「別の世界の世界法則[リアリティ]の支配下に入るって言う事?」
「うむ。
その世界の世界法則[リアリティ]に変質してしまう。
強力な魔法使いが、魔法の使えぬ世界にいけば、どうなるか?
ただの偉そうな人間じゃ。
どれだけ混乱が起こるかわかるであろう?」
「どうぞ」コトッ
お茶を置く。
気に入ってくれたようで何より。
「うむ、すまんの。愛しておるぞ」
ずずっ
「もっと酷い話もある。
世界法則[リアリティ]による存在の否定じゃ。
これをされると、存在そのものが消される。
要は、死んでしまうのじゃ」
「うん?」
「ラパ・ヌイには竜がおる。しかし、この世界に竜はいないであろ?」
「まあ、想像上の生物だねぇ」
「こちらに来た竜は、こちらの世界法則[リアリティ]に存在を否定され、その場で消滅してしまう、という事じゃ。
まぁ……実際はそうはならんとは思うがの。
あくまで一例としてじゃ。
地球では、竜の存在否定は、ほぼ、おこらんと見て良い」
「どうして?」
「竜という、概念があるからじゃな。
ただ、遠からず死ぬ事にはなる」
「?」
「世界法則[リアリティ]以外の問題でな。
地球には、効率的な魔力素がなさそうじゃからのぅ。
生命維持に必要な食い物がなければ、餓死するだけじゃ」
「……」
「話を戻そうかの。で、リアリティ体現者じゃ」
「うん」
「この特殊能力者は、自らの世界法則[リアリティ]を保ったまま、他の世界にいける。
それどころか、世界法則[リアリティ]の一部を捻じ曲げる事もできるのじゃ」
「あ、それが不滅存在[イモータル]の……」
「そう、己の世界法則[リアリティ]を捻じ曲げる事によって、不滅存在[イモータル]化するんじゃ」
「ふーん。捻じ曲げるって、どれぐらいの事ができるの?」
「実を言うと、妾も良く知らぬ」
ずずっ
「……」
「あー。そのな?妾も全知全能ではないぞ?
ココまでの事でも、殆どが特殊能力【龍の英知】で知りえた世界の知識じゃ」
うう……。
「実際、そうであろ?
世界に意思がある、と言ったところでのぅ、良い医者を紹介しようかや?と切り返されるのが普通じゃ」
「あー。確かに」
「じゃろう?
まぁ、世界の意思といってものぅ、自我なんてないからの、話なぞできん。
そんなのが決めたのが、世界法則[リアリティ]じゃ。
当然、法令のように明文化なんぞされておらん」
「うん」
「じゃから、捻じ曲げるといっても、例として出すのは難しくての。
あー、ある滅んだ世界の冒険者が、面白い事を言っておったんじゃが……」
「?」
「何でも良いから、リアリティ体現者が行った事で、奇跡だ……と思える事があったら、それは、世界法則[リアリティ]を捻じ曲げた。
一般人が起こした奇跡なら、世界が力を貸した。じゃったかな?」
「うわぁ、凄い適当だねぇ」
「至言じゃ」
ずずっ
「そーかなぁ……うーん。まぁ、いいか」
「それとな、こっちが重要なんじゃが、
リアリティ体現者は、他の世界法則[リアリティ]を取り込むという事ができる」
「なに、そのチートっぷり」
「チート?どういう意味じゃ?」
「いや、いいよ。気にしないで」
「世界法則[リアリティ]を取り込むとじゃ。
他の世界法則[リアリティ]との良いとこどりができるという、まぁ、そのままの意味じゃ。
要は、魔術や呪術しか使えん妾でも、ラパ・ヌイの魔法を使えるようになる、という事じゃな」
ふぅ。
「じゃが、代償も大きくてな。
そんな中途半端な存在は、どちらの世界からも見放されるのじゃ。
まぁ、色々と弱くなる」
「それも、どれぐらい弱くなるのって聞いても、判りづらい?」
「病気になりやすい。
魔術や特殊能力の効果が半分以下になる。
相手の言う事に納得してしまう、とか。
夜の営みなどは最悪じゃな。」
「あれで、そーなんだ」
ふふん。
「そうじゃのぅ、もっと判りやすい概念じゃと……」
んんー。
「お」
「どうしたの」
「なんじゃ。お主達の世界に、既に同じ概念の話があるではないか!」
「ええっ?」
「お主様の知識にもあるぞ?」
そんなの、あったっけ?
「うむ。ある」
「?」
「敵だと強いのに、仲間になった途端、弱くなる」
「え?」
「凄いのぉ。お主達の世界は……。
このような事まで、一般の知識として存在するとは……」
「いやいや。ソレは、漫画やアニメの話であって……」
「ちなみに妾は、全盛期の5分の1じゃ。
4つ分の世界法則[リアリティ]を取り込んでおるのでの」
「さて、リアリティ体現者じゃが、お主様はこの世界のリアリティ体現者を何と名づける?」
「うーん。鉄砲玉とか、カミカゼとか……。
……じゃあ、体現者[シュトゥルム]で」
「では、それで。ところでの、お主様」
「なに?」
「先程からの命名法じゃが、法則性がないの。何故じゃ?
主に、ラテン語からと思えるが、中にはふむ、独語……?ゲルマンの奴らの言葉か。
それに日本語……お主様の言語体系じゃな。複雑怪奇な。
やはり面白いのぉ。地球は。
多様性に満ちておる」
「そーかな?普通だと思うけど」
「そこで暮らしておればそーなるじゃろ。
お主にとっての常識は、妾の非常識。妾の常識は、お主の非常識じゃ」
「格言だねぇ」
「で、法則性がないのは、どうも、お主様が、軽く病を患っておるからじゃと、知識共有が言っておる」
「病?」
「うむ。厨二病とかいう病での。
その、どうも潜伏期間の長い病気のようじゃが、伝染性はあるのかの?」
「あーいや。うん。それは、痛い病気だね。
大丈夫。
僕のはどっちかと言うと知識の方に偏ってるみたいだし」
そっかー。
知識共有、そこまで判るかぁ。
侮りがたし。
「ふむぅ。
いや、実に胸をうつ、響きの良い言葉が多いと思ってな。
厨二病か……
地球には素晴らしい病もあるものじゃの」
あー。
もう、伝染っていましたか……。
「さて、体現者[シュトゥルム]の話も出たので、ついでじゃ。
戦争終結へ至る方法を教えて置こう。
1、次元回廊[コレダー]の破壊。
時間が掛かるが、確実な方法じゃ。なにせ、侵略できないようにするんじゃからな。
2、キーとなる不死存在[イモータル]を倒す。
この上なく難しいが、一番、犠牲の少ない方法じゃ。
3、敵側世界の、体現者[シュトゥルム]を、半数以上、自分達の世界法則[リアリティ]に感染させる。
一番楽な方法じゃ。
4、侵略側世界の物理的破壊。
下策じゃ、以上じゃな」
「ところで、さっき言ってた自衛隊が使えないってのは……もしかして」
「そうじゃ。
体現者[シュトゥルム]と世界法則[リアリティ]じゃ。
地球にどれだけの数の体現者[シュトゥルム]がいるか?
どれだけの地球の兵器がラパ・ヌイの世界法則[リアリティ]下で起動するのか?
言い直そう。
どうすれば、ラパ・ヌイでキノコ雲が見れるのか、じゃ」
「いや、そこから離れよう。
だけど、そういう事か。
強力な武器を持っていても、ラパ・ヌイに侵攻したら、世界法則[リアリティ]に阻まれ、使用できない。
それは敵も同じで、体現者[シュトゥルム]でなければ地球で魔法は使えない。
要は体現者[シュトゥルム]の人数が侵攻戦の成否を決める」
「まぁ、だいたいはの。
防御する側は、無尽蔵に近い自分達の力を使用できる。
じゃが、侵攻側は、体現者[シュトゥルム]の能力と数によって決まる」
「体現者[シュトゥルム]の判別方法ってあるの?」
「うむ。同じ世界法則[リアリティ]の人間は判らんが、異質の世界法則[リアリティ]を持った体現者[シュトゥルム]同士ならば、感じ取る事ができる時がある。
近くに居ると、何となくじゃが、風を感じるんじゃ……。
あー。
これも地球の概念にあるの。
強敵[とも]は強敵[とも]を知るというものじゃな」
「そーですか」
ドンだけ凄いんだよ、地球。




