八代家案内
「ちょっと待って!ヴラド!」
かって知ったる我が家とばかりに動き始めたヴラド。
「なんじゃ?」
「いや、間取りとか判らないでしょ?案内するよ」
「知識共有でほとんど判るが……
ふむぅ、ココは案内してもらおうかの。
ただ、説明する際に、少し気をつけて欲しいことがあるんじゃが……」
「なに?」
「うむ。固有名詞を言う際にの、少し使い方などを、イメージしながら話してもらうと、翻訳しやすいのでの」
「ああ、魔法の誤訳だっけ?
僕が相手から受け取るイメージが、言葉に加味されて変換されるんだっけ?」
「そうじゃ。お主に判り易い話じゃと……。ふむぅ」
「……」
「ハシとハシとハシについて、説明せい」
「は?」
「そうなるワケじゃ。で、イメージを少し混ぜると……
箸[ハシ]と橋[ハシ]と端[ハシ]について、説明せい、となる」
「あー。これなら判る」
「どうも、お主の世界の言語は同音異義語が多い」
「確かにねー」
「文明として未発達なら判らんでもないが、その割には高度な社会システムのようじゃからのぅ」
自分の額を、人差し指でとんとんと叩く。
何か考えているみたいだ。
「む」
「どうしたの?」
「いや、どうも、お主の世界の言語体型がの……知識共有で少し調査したが、難解な言語じゃな」
「?」
「うむ、会話をするには不完全。
これは、同音異義語が多いのと、省略すればするほど良い、隠語が作り易い、という文化が合わさっているからじゃと思う。
是非はともかくとしてな。
そも、文化には優劣などなく、ただ、その土地に生きる人々の、生活の知恵と言う創意工夫とだn……」
「次いって?」
「んあ、すまぬ。熱くなった。
会話をするには不完全。
書き記すには、暗号よりも難解な読解力を要するが、省略された言葉すらをも使って、森羅万象の全てをイメージ化可能となれば、いや、興味深い」
「それは、言いすぎだよ」
「ふむ、いやいや、例えばのぅ」
「?」
「お主様?
妾の始めてを奪って感想もないとは。
妾は痛かったぞえ。
じゃが、お主様とは、これで結ばれたのじゃな……
(おにいちゃん。
私の始めてを、奪ってどうだった?
ヴラド、痛かったんだよ。
でも、これで、お兄ちゃんと結ばれたんだよね?)」
「イメージと言ってる事が全然違うよ!!!」
「成果は上々じゃ。
今のは、お主様に、可愛らしく思ってもらおう、年下に見てもらおうとして、イメージを伝えた。
妾自身が言っておることは、今までと変わっとらん。
魔法【トランスファコミュニケーション】の限界じゃな。
イメージの方が優先してしまい、受容側が、多様性を持った言語体系を持っている場合は、自身で、発信者側のイメージ通りの翻訳をしてしまう。
良く言えば、お主達の世界がコミュニケーションツールである言語を、多様性をもって発展させた、という事じゃ。
ただし、これは、ラパ・ヌイとの交渉では、マイナス要因になりかねんのぅ」
「……」
「ラパ・ヌイ側が、イメージを基にした交渉をしてくれば、情の深い人間でなくとも、心惑わされたり、動かされることもあろうし」
しばし、考え込むヴラド。
「ふむ。しかし、そうか。
師匠にして妹……。
どストライクのようじゃしのぅ
まぁ、これは、これでアリじゃな」
にまっ
「おにいちゃん。
ヴラドね。
この話し方で赤面するお兄ちゃんをもっと見たいな?
ロリコンって言うんだよね?
お兄ちゃんみたいな人の事」
「うわぁ」
「おにいちゃん。
ヴラド、そろそろ湯浴みに行きたいな……。
一緒に入ろ?」
ぎゅっと左腕に捕まり、無い胸を押し付ける。
「!!」
心拍数が上がる。
いや、待て、相手は男の娘だぞ。
同姓だ。
気をしっかり持て!
「恋に、そんな事は関係ないよ?
愛は育む物、恋は堕ちる物……だよ。
おにいちゃん」
少し、背を伸ばして、顔を近づけてくる。
うわぁ
にや。
「いや、これは面白いのぅ!!こんな遊び方があるとは!」
真に戻ったヴラドがヒザを叩き笑っている。
トム&ジェリーのトムの笑い方にそっくりだ。
いちいち、やる事が芝居がかってて、萌えるんですよ。
仕方ないじゃないですか!
免疫の無い、ブサメンなんです!
はぁ
「案内するけど、ちょっと待ってて。湯を張るのに時間が掛かるから」
そういえば、ヴラドの世界の風呂ってどういうのだろ?
知識共有とやらで見てみようか。
少し、意識を頭の奥底、イメージに浮かぶヴラドに焦点を当てる。
更に、ヴラドの内側に入るように……
「お前様?知識共有は構わんが、余り深入りはするではないぞ?」
「あ、ごめん」
「いや、覗くなと言っているワケではない」
「?」
「600年近く生きておると、色々と知識だけは、溜め込むのでな。
覗く時は、バックラッシュの可能性を考慮に入れておいて欲しいんじゃ」
「バックラッシュ?」
「ふむ。かなり要点を絞って、妾の中を視るが良い」
ヴラドは、自分が持つ右手の獲物へと、眼を落とす。
「そうじゃな……槍、妾が使用しておる槍で、どうじゃ?」
「ん。判った」
意識内に、先程と同じイメージを浮かべ、今度はヴラドの持つ槍へと、焦点をあてる。
見えてきた。
魔力伝導体である、銀製の幅広い穂先に、柄は鋼鉄製で、内部に銀製の鎖を通し、外側を木材で偽装、龍皮でコーティングしてある。
見た目はしょぼいが、中身は強力な呪術と、魔法による強化で、並ぶ物の無い一品となっている、らしい。
奥へ。
色々と槍の姿が浮かんでくる。投擲槍や、長槍、歩兵槍、ハルバードみたいな物もある。
ここら辺が、ヴラドの言っていた知識共有の真骨頂なのだろうか?
異世界の槍の知識が、少しづつ判るように……。
更に奥へ。
イメージがどんどん流れ込んでくる。
もう視たくないんだけど、止められない。
ダムが決壊したかのように溢れてくる。
柄の長さ5m、直径5cm程の槍を、軽々と投擲している誰か。いくつも、いくつも。
地平線まで続く、串刺しにされた敵兵士達。
地面から生えた槍で、天高く捧げられた、異世界人。
1人の串刺しされた裸の男。
でも、顔はヴラドそっくりだ。
何か、喋っている。聞き取りたい、凄く大事な事のような気がする。
でも、次の瞬間、身体中から槍を生やして、四散してしまう。
肉片は、血煙と供に回りに降り注ぐ……
ぱんっ
「おい!しっかりせぬか!」
「あ」
「今のが、まぁ……バックラッシュというものの、序の口じゃ」
「序の口?」
「酷くなると、トラウマや自我崩壊に至るでの。
他人の記憶を自分の物として勘違いしてしまうとか……な」
「ああ、そう言う事か……」
「今ので、だいたいの引き返し地点は、判ったであろ?」
「うん」
「ならば、それを踏み越えねば良いだけじゃ」
「さて、それでは、主殿の城を案内してもらおうとするかの?
色々と、邪魔が入っておるが、何よりも風呂じゃ、湯浴みじゃ」
僕の家、つまり、八代家は、1戸建てではあるが、大きく分けると3棟の家屋からなる。
武家屋敷のような壁に覆われた敷地内は、コの字型に建築物が建ち、瓦葺の通路で繋がっている。
屋敷内の裏には、車4台分の車庫があり、そこにも通路で繋がっている。
正門は車両が入るように作られていないので、歩行者専用。
反対に裏門は車両専用の出口となっている。
「大きく分けると……離れと、生活スペース、客間兼行事用、車庫に分けられるんだけど、今、出てきた内蔵は、行事用スペースにあるんだ」
「木造とは、珍しいの。東国の文化圏かや?」
「あー。日本って国だけど……」
「ふーむ。どこかで聞いたような気がするの……
すまんが、後で地図を見せてくれんかや?」
「いいよ」
内蔵から出てきた僕達は、仏間に入る。
というか、仏間の一角に、内蔵の扉がある。
僕の家、八代家の仏間は、ちょっとばかり変わっている。
仏間というよりも、お寺の本堂の様な造りとなっている。
総板間で、奥行き20m、横幅8m、中央付近に柱が2本という造りの仏間は、一番奥に仏壇がある。
実は僕は、この家の宗派を知らない。
そもそも、仏教ですら怪しいだろう。
村のお寺の檀家にも入ってない事から、かなり特殊な宗派であると思うけど、知る機会なんてなかった。
なにより、両親の死後、1回忌も3回忌もやってないのだ。
祖母が死んだ時の事なんて、記憶の彼方だ。
むろん、坊さんも呼んでない。
だから、本殿で一番場所をとっている、この板間は、今の今まで一度も本来の理由で使われた事はない。
むしろ、この仏間の奥にある、内蔵への通路として活用されている。
仏壇に何が配置されているのか、どのようなお経を使っているのかすらも、調査しようと思った事もなければ、そこまで余裕もなかった。
そんな仏間も、昨日の戦いで激しい損傷をしていた。
木の床には、火事跡、焦げ跡、小指大の穴。おびただしい血痕。
柱にも同様に、小指大の穴、焼け跡。
仏壇の観音開きの扉は、ひしゃげて使い物にならないし、まだ吐瀉物がそのままだ。
ふぅ
ちょっと溜息が出る。
今はココに居ない2人に恨み言を告げたい気持ちになった。
もう少し何とかならなかった物かなぁ……。
コの字型になっている八代の家屋のうち、中央に位置するのが、本宅の部分で、江戸時代の建物のような外見の、和風建築である。
仏間や内蔵、玄関を含み、入母屋造りの屋根だ。
築80年以上を経過していると言われているが、改修などを頻繁に行っているらしく、歴史を感じさせはするが、古さは感じない。
外側からだと判らないが、3階建てで屋根裏部屋まである、忍者屋敷の様な造りだ。
客間、リビング、台所、風呂などの生活に必要な部分は、増築された方に全て移してあり、今居る所は、客間や行事に使用される部屋がメインと成っている。
とはいっても、現在では、母屋の生活空間そのものが使用されていない。
僕が、祖父のいる離れを生活空間として使用している為で、母屋は、1週間に1回、家政婦さんが掃除をしているだけだ。
「今から、向かう所は、いつも使用している生活空間とは別のところに向かうよ。
お客様だしね」
「他人行儀にしなくても良いぞ?旦那様」
「いえいえ」
「ふむ。あっちの反対側に見えるのが、離れと言うのかや?」
「うん。普段はあっちを使っているんだ。
風呂は小さいけどね、掃除が楽なんだよ」
「家政婦と言ったかや?下女がいるのであろ?」
「えーと、下女でなくて、ですね。
うーん。メイド?女中?」
「ふむ。やはり、いくらかイメージの違いによる誤訳があるかや?」
「そうみたい」
「ふむ、そういえば祖父殿がいるのであったな。
挨拶はしておきたいのじゃが」
「今、居ないみたいなんだ。時々、ふらりと出かけて、3日ぐらい帰って来ないって時があるんだよね。
最初はびっくりしたけど、アレは多分、狩りに行ってるんじゃないかって思う」
時雨の一族、八代家は、趣味人が多かったのか、父の漫画収集癖に始まり、父の従妹だった母は、切手とコイン収集の他に、植物栽培という、良識的で、実益を伴った趣味を持っていた。
祖父に至っては、バードウォッチングとか、フィッシングが趣味と言っているが、時雨はそれをカモフラージュだと知っている。
祖父の書斎に飾られた、猟銃やエアガン。時々、言葉の端に出る、猟奇的な物に関する深い造詣。
どう見てもアレは、スポーツではなく、食べる事や狩りを前提としている気がする。
又、一昨年、他界した祖母については、祖父に話を聞いた所、脂汗をたらして「趣味は無かった」とキョドられた。
きっと人には言えないような趣味だったんだろう。
祖母も祖父の従妹だった(関係を聞いた時もキョドられた)らしく、なんか、この家は血が濃い気がする。
無趣味な僕は、鬼子だろうか?
と変な所で時雨は再び、鬱になりかける。
しかし、
ぐいっ
腕を引っ張られる。
「わわっ」
「落ち込むのも結構じゃが、妾がいるのじゃ。
愛しの君よ、愚痴や弱音は、吐いてもらおうかや?」
両頬に手を当てられ、上目づかいに眼と眼が合う。
紅い魔性の瞳だ。
目を放す事ができない。
引き込まれる。
まて、相手は男だ。
男なんだ。
それが、どうした……?
「ん」
唇が重なり、舌を絡め取られる。
その場に押し倒したい衝動に駆られる。
抑えが効かない。
多分、ヴラドもだ。
ああ、きっと、恋に堕ちるってのは、こういう事を言うんだなと、ストンと納得した。
相手は、売女[ビッチ]のロリババァならぬ、ロリジジィ?
外道な自分には、お似合いd……
「だ、誰が、売女[ビッチ]のロリジジィじゃ――――!!!」ぐぼぅっ
「はぅ」
流石に今のは自分が悪かった……
「ふー、ふー、ふー」
「ごめ……」
でも、殴られる瞬間、変なイメージが入ってきたな……
大人になったヴラドのような、妖艶な美人.
「厳密にはの。
妾は男でも、女でもない中性という状態にあるんじゃ」
「両性具有とかでなく?」
「それが種族としては、理想形ではあるな。
妾たち、真祖たる吸血鬼[ムロゥイ]は絶対数が少ない。
そこで、進化の過程でだと思うんじゃが、性別を第2次性徴まで不定とする事にした。
要は、自分の意思で、男か女かを選択できるんじゃよ。妾は」
「でも、ヴラドは」
「うむ。妾は大人には成れない。
いや、もしかしたら、成れるやもしれんが、多分、今のままで、いたいんじゃろうな……」
「幼生固定だっけ?」
「いや、特殊能力【不老】じゃな。
いくら長寿種族といえども、老いはする。
妾の場合は、スルターンに植えられた能力じゃ。
ふふ。でも、今では感謝すらしておる……」
お主に会えたのじゃから……と、
倒れたままの時雨の頭を掻き抱く。
くんくん
「これは、これで、良いが……やっぱり、まずは湯浴みじゃ。
えちぃ事は、そこでじゃな」
上気した顔で、未練がましそうに身体を離す。
「あ、う、うん……」ごくっ
離れの反対側にあるのが、僕が普段使用する家屋だ。
これは本宅に増築された部分で、当初は欧風モダンな建築様式だったらしいが、15年前の大改修の際に、骨組みごと建てかえられた。
今は、外側は和風建築、中は離れと同じ、規格化された和洋折衷の2階建てという造りとなっている。
ココには、父の書斎や僕の寝室がある。
又、台所やトイレなどの、生活に必要な設備は、全てここに揃っている。
ただし、今は使用されていないため、宝の持ち腐れではあるけど。
水曜日に、家政婦さんが風呂場を掃除しておいてくれたので、さっと水で流した後、湯を張る事にした。
横幅3m、奥行き2mの木目調特注サイズの湯船は、大理石じみたタイル張りの床に埋め込んである。
これが、母屋の設備を使わない理由の大半だ。
僕と祖父の2人だけで使うには、無駄に豪華すぎるんだよなぁ。
これは台所にある大型の冷蔵庫や食器乾燥機、質の良い食器などにもあてはまる。
これらは、たぶんに客の目を意識した造りとなっている。
正直、僕は、3年前にココに来てから、未だに慣れない。
自動湯沸かし器を操作して、湯が張るのを待つ間、洗濯をする。
洗濯に必要な風呂場の水や、洗濯物かごは、こちらには無いので、僕は離れへと向かう。
「ああ、待つのじゃ。妾も行くぞ」
「ん?10分もすれば、湯は張れると思うけど……」
「愛しい殿方と、片時も離れたくないという、
乙女心を理解しようとは、思わないかの?」
「はいはい」
「むむ……おにいちゃん、私を離さないで!!
私はおにいちゃん無しじゃ、もう生きていけないの!」
「!!」
にまっ
「つかえるのぅ」
ヴラドは急いで、僕に追いつくと、僕の腕に腕をからめてくる。
「あ……」
汗と、ヴラド自身と自分の体液の香りが、鼻孔をくすぐる。
それは、ヴラドも同じだったようで顔を赤く上気させている。
「こ、これは、風呂場まで持たぬかも知れぬ……かや?」
期待した目で見上げている。
ここは理性を総動員!!
「お、乙女は普通、自分からさそってはこないと、思うけど?」
意地悪く言えただろうか?
規格化された部品を使って、建てられた現代建築、形は良くある2階建ての和洋折衷様式の、離れ。
ココは生活の場としての全てが揃っており、台所、風呂、トイレなども普段はこちらを使用する。
この離れは、普段から祖父が使用しており、ココには祖父の書斎や寝室がある。
特に祖父の書斎は、魔窟と化しており、猟銃の他にもX−ファイルじみた内容の書籍や、謎のファイル群、昔の猟奇的エロゲ、何に使うのか判らない機械が所狭しと置いてある。
掃除は、祖父がしているので、滅多に入る事は無いが、オカルトマニアの武居でもなければ、入りたがらない部屋だ。
「ふむ、なかなか、似合うとるではないか」
室内着の作務衣に着替えた僕に、ヴラドは微笑みながら、前から、後ろからと、じろじろ見る。
「あ、うん。ありがとう。
それよりも、ヴラドの替えの服なんだけど……」
「あ、それなら、良い。
お前様の知識の中に、興味深い逸品があった」
「え?」
ヴラドは、そういうと、洗濯物かごに入れた、僕のワイシャツを取り出し、着替える。
「あ……」
「ふむ。これが、伝説のアイテムか。
何だか、お手軽で安っぽいのぅ」
ワイシャツだけを着ている姿は、非常に扇情的で、どうにかなってしまいそうだ。
今すぐ、押し倒して、心ごと自分の物に……
スルターンの事なんか忘れさせてやr
え!?
あ、いや、今、何を、僕は考えた……?
くんくんと、ワイシャツの匂いを嗅ぐヴラド
「じゃが、悪くは無い。まるで、お前様に抱かれているようじゃ。
えちぃ気分になるのぅ」にまあっ
「う……」
「効果は抜群のようじゃな」
赤面しながらも、眼を逸らす事ができない僕を見て、相変わらずチャシャ猫のように笑う。
昨日、使った風呂場の水を洗濯機に入れて、洗濯を開始する。
ほぼ、全自動なので、このままほったらかしにして、食事の用意をしつつ、風呂場へ。
カポーン。
ヴラドは、和風の風呂には、入った事はないと言っていたが、自分の世界でのローマやエジプトの風呂には入った事があるらしく、しばらくすると鼻歌を歌い、楽しみ始める。
僕は、それを横目に身体を洗う。
なるべく、ヴラドを見ないようにしているんだが、
肉体の全てが僕の管理下を離れている様にヴラドを追いかける。
目が、耳が、鼻が、口が、肌の熱さを、感触を求める。
いや、実は脱衣所の時もやばかった。
気がついたら、着替えているヴラドを押し倒して、唇を奪っていた。
あの状態で、警察を呼ばれたら、きっと僕は豚箱行きでした。
新田の事、次回から馬鹿にできない。
見た目ロリータ、合法ロリータ凄い。
この合法ロリータすごいよぉ!流石、見た目ロリータの男の娘ぉ!
思わず、企業戦士∀ガソダムのギンガナム御大将の御言葉が脳内で流れる。
結局、ヴラドと一緒にお風呂に入っているワケだが、未だに、人に身体を見られるのは抵抗がある。
ただ、ヴラドには少し無くなってきている。
いや、ヴラドの一言で、救われた感じなのだろうか?
少なくとも、ヴラドは、なんとも思っていない。
それどころか、誇れと言ってくれている。
うれしいな。
「ちなみに、その益荒男も誇ってよいぞ」にぎっ
「わぁっ!!」
「なんじゃ、そんなに驚いて。
風呂場で、くんずほぐれつ乳繰り合おうと、甘く囁いておったであろ?……お主様が」
「いや、その、心の準備が!!」
「体の準備は、OKじゃろ?」じゅるっ
「ほら、少しムードが欲しいとかっ」
「生娘でもあるまいに!!
良いではないか、良いではないか」
ふぅ。
正に、天にも昇る心持ちでした。
御免なさい。戸隠さん。月見里さん。
僕は、男の娘にはまりそうです。
ヴラドは、僕の身体を背もたれに、湯船に浸かり、僕は、後ろからヴラドを抱きながら、先程までの軽い余韻に浸っている。
止められない。
獣性が、理性を遥かに上回ってしまっている。
何というか、かっぱえびせん?みたいな感じ。
とめられない、やめられない。
……
あああ、そんな事、考えてるから、また……!!
いや、ヴラドの髪の毛から、凄く良い香いがしてっ!
ヴラドは、僕の身体の変化を敏感に感じとると、後ろを振り返り、にまぁっと笑う。
「なんじゃのう……お主様は、ほんに益荒男じゃ」
首に手を回し、濃厚な口付けを交わす。
「んっ」
ヴラドの紅い魔性の瞳に絡め取られる。
僕はヴラドを抱いたまま、湯船を出て、そのままヴラドを押し倒すと、3回戦目に突入した。
離れのリビングには、革張りの盾、木製の武器、様々な民族工芸品、用途不明な置物などが、熊や猪の首の剥製と一緒にオブジェとして置いてある。
全て祖父の趣味で、書斎の魔窟から溢れ出た一品である。
「ふむ」
ヴラドは、そんな、室外へと溢れ出た祖父の趣味を眺め回している。
「このトーテムな、面白いのぅ」
高さ2m、直径20cm程の、小さいトーテムポール風の民族工芸品は、外側の装飾が心棒から独立して削りだされており、くるくると廻す事ができる造りと成っている。
「ほっほーう」
妙に感心している。
「いや!これは!!ほう!素晴らしい!」
ぐるんぐるん。廻している。
僕はと言えば、それを横目に、吸水させていた米と、玄米を圧力鍋に入れて炊き始め、レタスとトマト、キュウリを切っている。
祖父のいない、自分1人の寂しい食事のつもりだった為、今日の夕食は、とてつもなく質素な予定だったのだ。
ヴラドは、お味噌汁は飲めるだろうか?
この地方独特の八丁味噌という、少し味のきつい赤味噌をベースに、大根、里芋、わかめ、豆腐を入れたお吸い物だ。
慣れると病み付きになるのだが、同じ日本人でも否定的な人の多いお味噌汁のバリエーションだ。
アサリがあれば、具を全てアサリに変更するんだが、今はない。
残念だ。
旬、旬の物か……。
「なにか1品、追加しよう」
そーいえば、たけのこがあったな。
ふむ。
「ヴラドってニンニク、喰えるー?」
「ほほう。それは妾が吸血鬼[ヴァンパイア]と知っての狼藉かや?」
「あー。やっぱりダメなんだ」
「いや?そうでもない」
「どっち?今から、ニンニクを使った料理を作ろうと思うんだけど……」
「ううむ。ほら、ニンニクを食すとじゃな……
口付けをする時に少し気にならんかや?」
「あー」
そういう事か。
むむむ、あ、いや、待て。
ココは、あえて冷静さを取り戻すためにも!!
いや、でも、これで精力つけて……4回戦目に!!
……
ああああああああああ
何だなぁ、まるで発情期みたいな感じだ。
止められない。
筍とガーリックを炒め、卵とじした一品を追加して完成。
祖父は、どこまで出かけたのか判らないが、今日は帰れないと連絡があった。
少し遅い夕食を2人で取る。
ヴラドは、最初は、箸と悪戦苦闘していたが、暫くすると持ち方を覚え、料理に舌堤をうつ余裕も見せるようになった。
何でも、僕との知識共有の結果らしい。




