言葉の暴力、ペンは剣より強し!みたいな?
目覚ましのメロディが鳴る。
ああ、今日は休みだ。
もう少し寝ていても良いかな?
ん?
違った。
今日は月曜日だ。
黄金週間も終わり、学校が再開する。
僕は、未だに黄金週間が始まったようにしか感じていない。
1週間も寝て過ごすなんて……
自業自得と判っていてもコレは辛い。
休みだと思っていたのが、休みではないと判った時の絶望感。
鬱になりそうだ。
とはいっても、僕の場合は学校に行くのは楽しみという、相反する感情がある。
学校で友達を作りたいとは思う、しかし、勉強なんてのはやりたくない。
思いがけず、恋人が出来たおかげでリア充の仲間入りを果たせたワケだが、本来の目標である“学校で友達を作る”をおろそかにするつもりは無い。
それでは遠くの高校に入った意味がなくなってしまう。
季節は晩春。
未だ僕には友達が2人しかできていない。
今月はオリエンテーション合宿、中間テストとやる事が多い。
頑張って友達を作るぞ!
気合を入れてベットから出ると、朝食準備の為に本宅の台所に移動する。
今までは、離れの台所を使っていたのだが、食事をする人数が増えたので、昨日からこちらを使う事にした。
電気代がかさみそうだ。
朝食後、すぐに学校に。
実は、僕達が出発するより先に雲雀とシスター・イルゼはニューエルサレムの学園へと出かけて行った。
雲雀も大変だなぁ。
僕はヴラドと冒険者2人に、後の事を頼むと伊織と2人学校へと出発する。
村はいつも以上に静かだった。
「おはよう」
「あっ!お、おはょぅ……」
廊下で同じクラスの男子とすれ違う。
キチンと朝の挨拶を行なう。
さわやか路線の基本だ。
たとえ強面ブサメンなデブでも、心までブサイクなつもりは無い。
だから、さわやか路線!!
いつもニコニコ這い寄る笑顔で。
伊織と一緒に来たかったんだけど、定時連絡をしないといけないという話で、トイレに行ってしまった。
さすがにトイレ前で待つのは恥ずかしかったので、僕は1人教室に入る。
「おはよう」
「ひっ……あ、おお、おはようございますっ」
先程の男子と同じ様な反応の茶髪女子。
うう、そんなに僕の顔、怖いかなぁ。
朝からブルーになるけど、いつも通り席につく。
久しぶりに学校に来たんだけど、感慨も何もなかった。
「あれー?行方不明のキチクン、おはよう」
「おおっ!メールを全然返してくれないキチーフじゃん、久しぶりっ」
さわやかスポ-ツメン・武居とイケメン探偵(見習い)・新田の登場だ。
「おはよう、新田、武居」
「朝っぱら面白い顔だな、キチーフ」
「皆ドン引きしてたよ、キチクン。
サングラスどーしたのさ?」
「あー。
それについては話す前に、先にメールの事に着いて謝罪するよ、ゴメン。
携帯が壊れたんだ。
だから買い換えてね」
僕は伊織から貰った、皇國代理天印のスマホモドキを取り出す。
「あれ?それ……」
そう言って、新田が自分の携帯らしき物を取り出す。
色違いの皇國代理天印スマホモドキだ。
「この前借りた奴と違うね?」
先々週の水曜日、雲雀VS伊織・2大怪獣大決闘のあった日だ。
「仕事用に使う物だよ」
「仕事?」
「あー、気にしないで良いから」
新田は、手をフリフリ、これ以上の詮索を止めさせる。
「なんだよ、コゴロー。
キチーフとラブラブおそろいのスマホかよ~~」
―――えっ!?
教室のどっか、僕達とは関係ない所で何故か驚きの声が上がった。
「ラブラブって……」
「うらやましいかい?イッサ」ふふん
「う、うらやましくなんか無いんだからねっ!」
何でツンデレ風?
ざわ・・
ざわ・・
少し教室がザワザワしている。
変な視線も感じるし。
―――三角関係……?
―――じゃあ戸隠さんは?フェイク?
―――イケメンとブサイクのBL……
いったいなんだろう?
僕は、新田と武居の番号を登録しなおすと、スマホモドキをしまう。
伊織、遅いなぁ。
どうしたんだろう?
「で、キチーフ、最初の質問だ」
「質問?」
「そうだよ~誤魔化そうとしたって騙されないよ?」
「「何でサングラスの代わりに眼帯なんだ?」」
ハモって言う2人。
あー。
それで視線がこっちに来てたのかなぁ?
確かにね。
左頬から額にかけての宇宙海賊みたいな傷跡と、つり目、四白眼。
そこに、いつものトレードマークのごっついサングラスがない。
そりゃ怖いだろう。
ごっついサングラス(正確には、近視と乱視矯正用眼鏡の上から、色盲用のレンズを別に被せる眼鏡でサングラスではないのだが、便宜上サングラスとしておこう)は、魔狼との戦いでレンズ様がお亡くなりになった。
乱視用のも、色付きの方も。
フレーム自体もヴラドとのデートで壊し、皇國代理天で魔改造され、最後はリベットで完全破壊。
うう、僕の眼鏡よ、安らかに眠れ。
そして義眼。
色々と遊び心が満載の、皇國代理天製型落ちサイバーアイ!
現在の地球の技術で作成可能な最高レベルのものらしいが、それでも凄い!
カラーだ!!
ぼやけない!
ピントを合わせるのに、ストレスを感じない程、フォーカスが早い!
もう、近視+乱視+色盲な、自分本来の目がかすんで見える。
しかも、困った事に両目を使うと、ピントが全然合わなくて、目が痛くなる。
そんなわけで、眼帯っ!
自分本来の目を封印っ!
悪の根源を絶つっ!
海賊な人達が使うような黒い眼帯を109が用意してくれた。
ただ、もう少し突っ込んで眼帯に、スカル&ボーンズ、俗に言うドクロマーク書いておけばよかったかな?
かっこいいかも。
「サングラスなんだけど……お亡くなりになりました」
「え?じゃあ……」
「その眼帯は……」
サングラスから眼帯に代わったわけを聞きたいのだろうが……
どう答えよう。
異世界に言って目玉が潰されて今再生中。
義眼の方が性能が良いから、邪魔な左目だけ見えない様にしている。
眼鏡が壊れたので。
趣味。
病気……。
病気でいくか。
「あー、実はこの年になって中二病を患いまして……
これがなかなか治らなくて」
「え?」
「は?」
なんだろう……教室の皆が首を振っている気がする。
僕の被害妄想か?
「中二病かよ……
確かに、そりゃヒデェ……」
「ええっ!?
かかったら醜い傷痕を残す事になる、あ・の・恐ろしい病かいっ!?」
「しっ!!静かにっ!!
こんな事が、お上にばれてみろ。
一族郎党、打ち首だぞっ!」
「何て恐ろしい……
じゃあ、キチクンは目からビームが出るようになったんだね?」
「うん、外道照身霊波光線なら……」
「くっ!
これは中二病の他に、合併症も患っている!?」
「そんなっ!
レトロウィルスによる感染だとっ……!」
「これは……カラコン治療しかないでしょう……」
「ああ、一刻を争う自体だ。
もはや時間だけが勝負だ」
「って真面目な話、乱視とか近視とか大丈夫なのかよ」
「うん、前より調子良いよ」
「どれ見してみ?」
そう言って武居は僕の瞳を覗いてくる。
じー
じー
「何かアレだね、イッサ。
キチクンとそうして見詰め合っていると、キスしているみたいだよ。
きゃっ、いやん♪」
「「え?」」
ざわ・・
ざわ・・
教室中がこっちをみてれぅ。
委員長とウェービーヘアさんがガン見してるのは別としても
―――本妻のいぬ間の逢瀬
―――え?戸隠さんはフェイク……?
―――新たな地平にいけそう、いえ、いっちゃうっ
ってなに?
「ちょっ、ちがっ!」
「そーゆーわけではっ!」
「あははは、判ってるよ~~イッサとの事は秘密なんでしょ~~?
大丈夫だって、戸隠さんには言わないからさ」
「そーじゃねぇぇぇって!
だいたい、自分から中二病を申告する中二病患者がいるかよ!」
ココにいます。
少し武居のテンションが上がったらしく、大声になった。
「ソレよりもキチーフ、休みの間に何があった?
どう考えても普通じゃネーだろ!これは」
「え?」
新田も武居の声のトーンが変わったのに気がついた様だ。
さっきからジッと僕の目を見る武居。
どうやら武居には義眼とばれたらしい。
伊織の5世代ぐらい昔のアイテムって言ってたモンなぁ。
どうしよう?
本当の事を話して良い事なんだろうか?
魔狼の事も話す事になるしなぁ。
「いくらなんでも義眼はおかしいだろ?」
「え?ギガンって……」
新田もビックリ。
「ギガンって言うのはMS-13だよ」
「あはは、それはガッシャ、ギガンは12」
――――!!
馬鹿な!
僕のボケが返されたっ!?
企業戦士ガソダムMS博士(UCのみ)の名を欲しいままにする僕が……!
古今東西をやらせたら雲雀にも負けないのにっ!!
少し真面目な顔になって、新田が聞いてくる。
「冗談にして、この場を和ませようというのは判るけど、行方不明の後で義眼ってのは、何があったか気にはなるよ」
「おぅ、話せ。
朝の笑い話のネタに話せ」
「それは酷いよイッサ。
僕達はキチクンを助けたいんだ。
その為にも話して欲しい。友達だろ?」
「新田……」
ホロリときちゃう。
「あーっと、まぁどこから話したら良い物か悩むんだけど……
そう、大した事でh」
「ところでキチクン?
基本的人権には知る権利というのがあってだね、その前ではプライバシーなんて意味は無い。
そんな吹けば飛ぶ様な、日本国憲法にも明文規定されていない、個人に関する情報秘匿の権利について、どう思う?」
「は?」
「いやいや、僕はキチクンに、何があったかを知りたいだけさ。
キチクンの心の安寧の為に話してごらんよ」
そういいつつ、デジカメを机の上に置く。
「良い映像が手に入ってね?」
「……」
なにこのデジャヴ。
「こ、個人情報保護法は……」
「あんな欠陥法は、知る権利の前には、何の役にも立たないよ?」
「う、こ、この義眼は……そ、その」
「あーじゃあ、キチクン、質問だけど」
「?」
「どこの組との抗争だったの?
もしかして外国勢?在日?」
「え?」
何の話?
周りがざわめく。
ざわ・・
ざわ・・
―――出入り?
―――近くの村の惨殺事件……
―――村でヤクザ同士の大規模抗争。
―――流れ弾が目に。
―――駅前の爆破も実は……情報隠蔽。
「魔狼に傷つけられたのだ」
新田や武居、ましてや僕でもない第3者の声がした。
「伊織……」
僕のところに恋人が歩いてくる。
「ああ、戸隠さん、おはよう」
「おっす、オラ武居」
「おはようございます」
「で、魔狼ってなに?」
「おぅ、それな!
オカルト版で出ていたぞ!」
武居が遂に俺の時代到来か、とばかりに話し始める。
「魔狼ってぇのだな、アラスカに住むと言われているUMA、巨狼ワヒーラじゃねぇかって話だ。
今回の事件を総合すると、それに全て一致するんだよ!!」
「な、何だって――――!!
どういう事だ!!キバヤシ!!」
「えっ……?」
「なっ……!」
新田と武居の顔が驚きで強張っている。
そうだろう、そうだろう。
実は僕の顔もそうなっている。
いや、クラス中がキバヤシ発言をした人物を、驚きで見ている。
「ん?」
MMRの名台詞をパロった人物、伊織は不思議そうに教室を見回す。
「失敗した?」
「うんにゃ。
みんながビックリしているだけです」
「そう」
「いや驚いたぜ。何時の間にこんな芸当を覚えたんだ?」
「あははは、すごいねぇ」
「時雨が入院中に、色々と学習した」
「「入院……」」
あー。
ぶっちゃけ過ぎです、雲雀。
武居も新田も引いちゃってるし。
その後、すぐに先生が来て朝のHR、1時間目へと雪崩れ込んだ。
そして昼休憩のチャイムが鳴る ――――。
クラス内の生徒は三々五々、好きな様に動き始める。
ある者は、購買に食事を買いに走り出す。
ある者は、先生の目をかいくぐり、未だ見ぬ日替わり定食・御飯大盛り・おかわり自由を求めて校外へ脱出する。
ある者は、適当に空いている席で、弁当を食べる。
僕は伊織の両脚を、感覚同調・入力で無理矢理止める。
ふふ、トイレで御飯を済ませようして、ダッシュで教室から逃げ出そうとした様だが、そうはいかない。
「さぁ御飯にしよう、伊織」
「う、時雨……これは……」
(視姦プレイなのか?
いささか以上に恥ずかしいのだが……)
心話で話しかけてくるだけ、まだ冷静みたいだ。
当然、視姦プレイですと答えておく。
「おうおう、熱いじゃねぇか、お二人さん。
俺らも混ぜてもらうぜぇ~~」
「あははは、チンピラはチンピラの真似が旨いねぇ」
「本職だからな……
って、なに言わせるだぁーーっ!
赦さんっ!」
息の合ったコンビ、新田と武居が、机をあわせ始める。
「いいんちょーっ、オマケ女史~~今日も一緒に食べようよ。
この2人が熱々で、冷却材が必要なんだよ」
新田が、髪の毛をお下げにした、如何にも、委員長な感じの眼鏡少女に声をかける。
「ふぇえ、そ、そ、その……
いいの?
コゴローくん?」
「おーけーおけー」
「バカスエには聞いてない」
「ヒデェな」
「えと、コゴローくん?」
「もちろんだよ、誘ったのはこっちだからね。
はい、座って座って」
「あ、あと、それから私、委員長じゃn」
「オマケ女史も座って?」
「えーっと、新田はん、できれば名前で呼んでーな……
いや、まぁ、えーけどなぁ。オマケで」
苦笑いを浮かべながら、波打つような髪に、触覚が生えた髪型の女性が寄ってくる。
よく偽・委員長とつるんでいるウェービーヘアさんだ。
伊織を中心に、左隣が僕、左前(僕の正面)が武居、正面に新田、右前が偽・委員長、右隣にウェービーヘアさんという順に座っている。
計6人のグループでの食事は大所帯の方だろう。
僕は伊織と自分の弁当を広げる。
「あれ?若頭、戸隠さんに弁当作ってきたんやなぁ?」
「え?うん」
「そやけど若頭、新田はんと武居はんの愛妻弁当は?」
愛妻ゆーな。
「今日は作ってないよ?
ウェービーヘアさん」
「キチクンは恥ずかしがりやだから、イッサが頼まないと作ってくれないんだよ。オマケ女史」
「うわぁ、やっぱり名前で言うてやぁ、新田はん。
まるでマヌケ女史みたいやん、若頭も変な渾名つけんと普通に呼んでやー」
「そういやウェービーヘアさんの名前、まだしっかりと覚えてなかった。
えっと……」
「広瀬やって。そっちの方が短いやろ~~。
まぁ若頭はしゃーないわなぁ。
こんなべっぴんさんを、行き成り彼女にしてるんやし」
僕は伊織の前に弁当を置く。
(し、時雨……やはり恥ずかしいのだが……
いくら管理人に見せ付ける為にやるのだとしても、やはり人前でこ、こんな破廉恥な行為は……!)
僕は心話で返す。
ダメです。
地球の生活になれないと、伊織の夢は夢のままです。
だから頑張って皆と食事をしましょう。
(くぅぅぅぅ~~)
ゴメン伊織。
一緒に食事をしたいだけなんだ。
皇國代理天も難儀な世界法則[リアリティ]というか常識だなぁ。
「「「いただきます」」」「板、抱きます」
僕達は食事を食べ始める。
「ところでオリエンテーション合宿どうするよ」
「休む」
「ダメです」
「いや、休むじゃなくて班分けな、戸隠」
「あははは。
僕も休みたい」
「お前が休んだら不味いだろう、コゴロー。
一応、委員長なんだし」
「あははは。
大丈夫だよ、しっかりとした代わりが居るからね。
頑張れ、委員長。
未来は君の双肩にかかっている!」ぽん
「ふぇ?わたっ、いや、私はっ、そ、そn」
「そーじゃなくてよぉ」
「そうだねぇ。
女性陣は20名だから5人1組で良いんだけど、男19人だから1班4人になるね。
今週の木曜日までに班分けして、提出しないといけないから、後ろの黒板を使わせてもらおうかな」
「い、い、委員長も大変ですね……」
「あははは、委員長が委員長に大変って言っても仕方ないよ」
「ふぇぇ、私は委員長じゃ……」
「でもまぁ、仕方ないよね~~」
「班分けねぇ、若頭と武居はんと新田はんは、ラブラブトライアングルで決定なんやろ?」
「「「しません」」」
「―――ら、ラブラブトライアングル!!」
驚愕に目を開く伊織。
まるで復讐すべき仇であるかの様に、新田と武居を睨む。
「伊織、そんな事実はありません」
「あ、新しいハ、ハーレム……」よろ……
「事実無根です。
それよりも僕は、貴女が世界で唯一の、ホモの嫌いな女性で嬉しいです、誇りに思います」
「ホモ……?
人間のこと?」
「ホモサピエンスではありません。
男性同士の恋愛の事です」
「……?
いや、別に嫌いではない」
「あっ!そうなんですか!?」
横から声をはさむ偽・委員長。
「?」
「男性同士の恋愛だろう?
それは、むしろ普通……性にこだわるのはおかしい。
ココは差別はいけないと言う風習のはず」
「あー」
「そうですよね!
そうですよね!!
そうですよね!!!」
水を得た魚の様にマシンガントークに入り始める偽・委員長。
「戸隠さんは、普段から何も話さない方なので、どんな趣味カナとか色々と考えていたんですよ。でもよくよくお話を聞いていると、漫画が好きらしいという話でしたんで、話の合いそうな話題とかあると良いなって思ってたんです。ゲームとか小説は読まれるんですか?家に薄い本があるんですけど貸しましょうか?今朝MMRのパロしてましたからナワヤ×キバヤシなんてどうです!?色々なシチュがありますよ。あ、もしかしてカップリングがダメですか?他のカップリングにしましょうか?戸隠さんが好きなカップリングを言ってくれれば持ってきますよ?好きなシチュは?誘い受けって好きなんですけど、どう思いますか?じゃA」
「ハイ、ストーップ、ひいてるやん」
「あ……」
真っ赤になって急に黙り込む偽・委員長。
何だろう、親近感が湧いたぞ。
僕の苦手ジャンルだけど。
「う。ん、漫画は好きだ、貸して貰えると嬉しい……
アニメは……その、ライバルが貸してくれている」
「「「ライバル?」」」
怪訝そうに皆が聞く。
「ライバル受けですね!?」
偽・委員長は未だ帰ってこない。
取り合えず、僕は新しいカルト知識で頭がパンク寸前の、伊織に心話で解説する事にした。
苦手分野だけど。
薄い本、俗に言う個人出版の特定年齢未満購入禁止制限付き2次創作本の事だ。
大なり小なりのイベントで配布されるが、有名なのは年2回の有明で行われる大規模イベントだろう。
実は屋敷にはこの手の本は非常に少ない。
父ほどのオタクでありながら、イベントに参加していないという事はありえないと思うんだけど……
どこか別の場所に隠されているんだろうか?
む。
むむむ。
う~~ん、父の事を思う度に、何かが引っ掛かるんだよなぁ……なんだろう?
「偽・委員長の趣味は良いとしてさ」
「あははは、人それぞれさ」
「今朝の話に戻るけどよ、キチーフってずっと入院してたのかよ?」
「いぇーっす、じゃなかった、旅行してたよ、北海道に」
「うわぁっ若頭、しっぽりと旅行ですかぁ?うらやましいぃ」
「ん、メイド連れて婚前旅行」
「「「は?」」」
伊織が爆弾投下。
「メイド?」
「婚前旅行?」
「あー、もしかしてコレかな?
戸隠さんに依頼された写真だけど」
「そう、証拠写真」
これこれといって新田が今朝のデジカメを見せる。
田園風景の中にメイド服姿の雲雀と、和服やセーラー姿の伊織がいる。
僕は作務衣を着ている。
「ん?そういえば……
今朝、言ってた“良い映像”って……」
「ああ、これだよ?」
「……あ、ああ、そうなんだ。良かったよ」
ヴラドとの行為中の物か、五十鈴さんの胸にもたれてニマニマしている写真かと思った……助かった。
「あの、こ、この戸隠さんの隣にいるメイドさんって、やっぱりヤクザ付きのメイドさんなんですか?」
え?
ヤクザ付き?
偽・委員長が不穏当な発言をしている。
「ん、雲雀はメイド兼正妻」
「はぁ?メイドで正妻?ホンマか?
正妻って正しい妻って書くアレやろ」
「ん」
「ちょっと待て、どういうこったキチーフ?」
「う、それは……」
「えっと……メイドさんと婚前旅行なんですか?」
「ん」
「あ、さっき言ってたライバルって……
もしかして、ですか?」
「ん、雲雀はライバル」
「でもよ戸隠、お前は、それでいーのかよ?
これって多分、親同士がきめた云々って言う話だろ?
お前はキチーフの恋人なんだしよ……」
「そ、そ、その私も応援します!
戸隠さん、どんな障害が会っても2人の仲を認めさせるんですよね?
その、ヤクザの親分さんにも……」
「まさかキチクンに許嫁が居たとはねぇ。
確かに大きな屋敷だったけど……」
「?」
何か話が変な方向に言っている様な……
なんだろう、この話題は変えた方が良い気がする。
今すぐにも。
「あの~~誤解があるようだかr」
だが僕の言葉は途中でさえぎられた。
「許嫁……?
認めるも何も、既に序列付けは成されている」
「え?序列付けって……」
「正妻は雲雀、恋人は私、愛人はヴラド、番外で桃子だ」
「「「「…………」」」」
「キチクン?」
「キチーフ?」
「さ、さすが若頭や……」
「ふ、ふふ、不潔、だと思います」
「弁明の機会を。
釈明権の適用を望みます。
僕は無実だ」
「ハーレムは事実」
「う」
これは、もしかして怒っているとか、ご機嫌がナナメってるとかだろうか?
「あははは、いや~~
この前の痴話喧嘩が何処に落ち着くかと思っていたら……」
「俺、まだキチーフのハーレムメンバーを見た事、無いんだよな」
「さすが、若頭やね、リア獣」
「ん、リアルケダモノ」
「あー、なんか生々しい話だな」
「そーいえば、この前のツワリって……」
偽・委員長が伊織を見ながら耳元で話している。
「キチーフ、言いたくないなら別に構わんが、少し質問をさせてくれ」
あらたまって武居が聞いてきた。
少し小声になっているって事は、あまり昼の食事時にする話題ではないからだろうな。
僕も少し食事の手を止め、答える。
「なんだい?」
「とある匿名の掲示板で、お前の家の事が話題に上がっている」
「僕の家が?」
匿名掲示板……オカルト関係だとしたら、魔狼のことかな?
「ああ、お前の村での惨殺事件との絡みでだ」
「……」
「それで、まぁ、お前の事を色々と勘ぐろうって奴が現れるかもしれない」
ああ、ありそうだ。
「俺自身も少し知りたくはあるんだ。
と言っても、さっきも言ったように、言いたくないなら構わない」
「どんな内容だい?」
「ああ、ちょっと言いづらいんだが……」
「?」
「さっきの話で、現実味がいっきに増しちまってな……」
義眼……やっぱり魔狼の事か。
「お前の彼女に、常に猫耳装備、語尾に“にゃん”付けの眼鏡っ娘コスの彼女がいるのか」
「は?」
「いるんだなっ!?」
「いないっ!」
「そうか……」
「そうだ」
「残念だ……」
遠くを見つめる武居。
「確かにリュネットはハーレム要員じゃない」
「―――!!」
伊織の言葉に武居は振り向く。
「リュネット!?
そうか、テレビに出ていたのは、リュネットさんというのかっ!!」
「―――て、テレビぃぃっ!?」
まて
まてまてっ!
「それは本当!?武居!」
「ん、事実」
リュネットさんに会いたいと言う武居の代わりに、伊織が答える。
武居も新田も伊織も、その時の映像を持っていた。
僕が皇國代理天で見た映像とは違う番組だ。
「この映像だよ、キチクン」
リポーターが村の中を歩いて破壊の爪あとがどれだけ酷いかつらつらと語る。
その後「実はですね……」と前置きして
「この村には宇宙人と言われる一家が住んでいるんです」
びくっ
少し手が痙攣した。
嫌な汗が出て来る。
カメラはどんどん、僕の家に近づいていく。
「はい、ここが宇宙人の家でーす」
僕の家が移された。
呼び鈴を無視して、勝手に門から入っていく。
「う、うう……」
リポーターがしばらく進むと中から人が出て来る。
1人は身長230cmの大男。
猪のような顔、身体中は剛毛に覆われているというか、毛皮だ。
猪を2足歩行させるとこんな感じの人間になるだろう。
着ている服は汚れた麻のごわごわしたシャツ。
元の世界の物なんだろうな。
1人は身長150cmでよくある猫耳を生やし、眼鏡をかけた少女。
人間の耳があるはずの所は、髪の毛で覆われている。
猫のような瞳で少しつり目がちな美少女だ。
着ている服は雲雀のメイド服でフレンチのアレンジタイプ。
良く秋葉腹で見かけるタイプといえばいいだろうか。
リポーターは笑いながら近づいていく。
「こ、こんにちわーwww」
「ヨクキタ」
土人みたいに仁王立ち。
「ウチに何か用ですかにゃ?」
にゃんっ♪と両手をあげ、くいっと曲げて片足立ち。
「実は、この家に宇宙人がいるときいて。
それにしてもすっごいコスプレですねーwww」
「こすぷれデハナイ」
「私達が宇宙人にゃ」
何とも奇妙な番組だ。
大量殺人事件があった所で、わざわざこんなふざけたリポートをするってのもおかしいけど……。
まぁ、本当にふざけているのは八代家かもしれんが。
自称・良識派という人達から、不謹慎とか言われるんじゃないかな、これ。
雲雀に心話を送る……のは止めておこう。
学園で、ひとり言をブツブツ言っている、可哀相な状況にはさせたくないので、ヴラドと同調する。
マイテースマイテース本日は晴天なり本日は晴天なり~~
(いや、そんな事はせんでも、聞こえておる)
さいで
(何かあったのかや?)
僕は、かいつまんでテレビの内容と状況を説明する。
取材である以上は、誰かがオッケー出したんだろうけど、どんな取材依頼だったの?
(おお、事の発端はジョフクからの知らせじゃ)
ジョフク?
魔法師が、わざわざ皇國代理天にまで来たのかい?
(いや、携帯じゃ)
よく使い方をマスターしたね、あの爺さん。
(この国で言う、ガジェットオタクというものらしくての、今はどこにおるのやら……じゃ。
まぁ、あの者から伊織に連絡があったんじゃ、可及的速やかに対処されたし……とな)
それが取材依頼だったんだね?
(そうじゃ)
取材拒否はできなかったの?
(それはやめた方が良いと、伊織と雲雀が言ったのでの。
そもそも、お主様と祖父殿、雲雀が行方不明となっていると言う話にしても、この者達が言ってくるまでは知らなかったんじゃ)
と言う事は家族構成まで下調べしてきてるのかな……?
テレビの取材は、2人に凄いコスプレですね~とか言っていたが、しばらくすると
「八代さんは行方不明だという話をうかがったんですが……」
「旅行中ダ!」
「え!?こんな大事件があったのに旅行中なんですか!?」ww
悪意のこもる喋り方で、リポーターは驚きを表している。
「この事は、先方のご家族の方は御存知なんでしょうか?」
「いや、知らないはずにゃん」
「どうしてですか?」
「連絡シテイナイカラダ」
「へぇ。そうなんですか。
携帯1つですむのに……山奥とか無人島なんでしょうか?
まさか中国奥地?」www
しつこくからんで来るリポーター。
「ソレハ秘密ダ」
「秘密にゃん♪」
「おっと、秘密ですか!!意味深ですねぇ!判りました!
我々の取材は、宇宙人の秘密主義により暗礁に乗り上げてしまったのです!!」
そう言ってカメラは下がり、リポーターも玄関から撤収する。
ううう。この動画を見てるだけで反吐が出そう。
正直、僕はマスコミに良い印象を持っていない。
僕のトラウマを作った主原因で、偏見とは判っていても嫌悪感しか浮かばない。
昔、マスコミの知る権利によってノイローゼになって自殺したアイドルがいた。
マスコミは、こぞって悲劇に仕立て上げ、笑いながら特別番組を組んだ。
昔、地震と津波によって日本史上でも十指に入る大惨事があった。
復興作業をする人、恐怖で寝る事のできない人に、マスコミは「今の気分は?」と笑いながら聞いてまわった。
昔、中東のテロで殺害された日本企業の社員がいた。
家族は政府に名前の報道を差し控えて欲しいと頼んだが、マスコミはこぞって悲劇に仕立て上げ、笑いながら故人の名前をさらした。
リポーター、いやマスコミの知る権利の前では、個人情報なんてものは吹けば飛ぶ様な、くだらない物なんだろう。
「さて、一旦ココまでね」
映像を新田が止める。
「まだ続きがありそうなんだけど……」
「ん~~。今は見るのは止めた方が良いと思うよ」
「ん」
新田と伊織が先を見るのをとめる。
なんか嫌な予感がする。
(あー、お主様、それは当たっておる。
じゃが今は昼飯時じゃ。見るのは止めておけ)
ヴラドからも言われた。
「……」
「……」
せっかくの昼飯時なのに、妙に重い雰囲気になってしまっている。
どうしようか。
「ーーーあ」
少し思い至った事があるので聞いておく。
「もしかして、この先にある映像は、特定個人の過去に関する映像かい?」
「うん、そうだよ」
「おう、当たりだ。さえてるじゃねーか」
ああ、当たりだ。
予想は当たりだ。
確かに昼御飯を食べたばかりだ。
もどしちゃったら勿体無いだろう。
そして今の状況から察するに武居と新田は、いや、もしかしたらこのクラスの人達全員が、僕の過去を知ってしまったかもしれない。
少し手が震える。
怖い。
見なければいい。
怖い。
知りたくない。
怖い。
逃げたい。
だけど、逃げても何も変わらない。
「おい、キチーフ」
武居は恐怖に捕らわれ始めた僕を現実に戻した。
「……ぁ?」
「おう、言っておくとだな。
少なくとも俺とコゴローのスタンスは変わってない。
いや、リュネットさんを紹介してくれるなら、お前は今から心の友だ」
「うわ、サイテーだ」
思わず口から出る本音。
「まぁ、僕もイッサとは同じだよ。
前々から知っている事だし、たいした事ではないよ」
「前々から知ってたって……」
「あははは、有名人じゃん、気づく人は気づくよ。
だからさ、気にしても仕方ないじゃない。
僕達は今までと変わらない、それだけの事だよ」
「あー、うん、ありがとう……」
目頭が熱くなった。
深呼吸する。
今、言える事を言っておこう。
「武居、リュネットさん彼氏持ちだよ」
動画のその後を見た。
やはり思っていた物と同じだった。
村八分状態で、村人から宇宙人とまで揶揄される八代家の奇行。
そして行方不明中となっている人物、八代時雨が人肉喰らい[マンイーター]という過去を持つ人間であると言う事。
この事件には不明な事がありすぎる、猟奇的でオカルトじみているから野犬ではなく、もしかしたら……みたいな作りで締めくくられていた。
何度も人肉喰らい[マンイーター]と言われた。
犯罪者でもないのに、名前がさらされた。
だけど、吐き気を催す事は無かった。
心構えをしていたし、不意打ちじゃなかったからだろう。
「多分、コレだけじゃ終わらないんじゃねぇか?」
「あははは、しつこいからねぇ」
「ん」
(お主様、よう頑張ったのじゃ)
そういえば、ヴラド。
気になってたんだけど、なんでリュネットさんとグレイブさんは、人間に変装する魔法【モンキーミミック】を使わなかったの?
(うむ、良く判らんが、雲雀が“下手に隠すよりも、コスプレと言い張るのよっ!”と言っておったのでのでな)
ああ、そっか。
うん。確かにそれであってるかも。
どうせ、探られるんなら隠さないと言うのも1つの手だね。
(なんと言っておったかのぅ“情報戦に対抗するには、こちらも情報戦よ”じゃったかの?
地球の戦略戦術は、妾には高度すぎて理解できない事も多いのじゃ)
情報戦?
情報撹乱とか情報誘導とか……かな?
まさか匿名掲示板に書き込むだけでオーケーみたいな事、考えてないだろうな?
「なぁ、キチーフ 本当にリュネットさん彼氏もちかよ」
「んー。今度、会いに来るかい?グレイブさんが彼氏だけど」
「あのでっかいキグルミ着ている奴か!?」
「うん、そう」
少し暗くなった食事時の雰囲気を戻す為に、努めて明るく振舞う。
そんな楽しい食事の時間も終わり、昼放課が終了する直前、新田は後ろの黒板にオリエンテーション合宿の班分けの表を書いた。
各自、馴れ合う人物とグループを作っておけと言う事なのだろう。
嬉しい事に新田と武居は僕を誘ってくれた。
実はかなり感動したのは内緒だ。
“誘われた”という事実が、こんなにも嬉しいものだとは。
伊織も昼の一件で、偽・委員長と会話の糸口ができたらしい。
珍しく会話をしている。
いや、翻訳機開発が一段落したから、今は余裕があるんだろう。
いつの間にか、その2人の周りにウェービーヘアさんや、クラスの女子が集まりだし、輪が出来ている。
伊織は、もしかしたらクラスの女子から嫌われてたり、無視されたりするんじゃないかって思っていたけど、どうやら杞憂だったようだ。
良かった。
伊織は自分で何とかしてしまった。
と、僕が伊織をじーっと見つめすぎていたのがまずかったのか、伊織の傍にいる女子達から白い目で見られている。
「?」
いや違う。
軽蔑?
汚物を見る目?
何人かは鬼畜を見るような目で……。
なんなの?
ん?
女子に囲まれて、伊織はスマホモドキを皆に見せている。
―――雲雀さんって大きいわね……。
―――綺麗な子、外人さん?
―――え?この子が愛人?嘘。まだ子供でしょ?
不穏当な会話が耳に入る。
―――ケダモノ
―――戸隠さん、可愛そう……。
―――最初から浮気?ひど~~いっ!
「ん。それでも私は、時雨が好きなんだ」
―――けなげすぎるぅぅ
―――大丈夫、私達、味方だからっ
―――応援するっ、相談にのるからっ
あれか。
これは、伊織の魅力か、学習能力か、それとも、もって生まれた才能なのか。
特殊能力【情報操作】っ!!なんて恐ろしいっ!
クラスの女子を代表して、ウェービーヘアさんがやって来た。
「若頭、酷すぎるでぇっ!
ちゃんと戸隠さんにあやまりぃや、リア獣!!」
―――おおお、さすが広瀬。
―――ヤクザ相手に物怖じしない……
―――肝っ玉カーチャン
申し訳無さそうな顔をして
「ゴメンなぁ、こうせぇへんと納まりそうにないでぇ」
と言われたら、こっちだって謝るしかないでしょう。
そして、僕は今日1日で、リア獣にランクアップ。
微妙に“リア獣”の使い方が間違っている気がするけど。




