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セカンドパートナー 朝の徒花  作者: 八卦阿礼
第四章 概念の崩壊

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4-6.黄泉比良坂

「奈良さん? 嘘でしょ?」

 

私の口から、掠れた声が漏れた。

彰将さんの両手を強く握りしめたまま、私は目の前の男、奈良さんを凝視した。

視界が急速に色を失い、世界がぐにゃりと歪んでいく。

 

信じられない。

 

ボクは君の人生の道具じゃない?

君とはもう二度と会わない?

 

私によって承認欲求を満たされていたのは誰?

「待つ時間すら愛おしい」と言って、私を全能感で満たすような言葉を口にしていたのは誰?

 

それなのに、夫の彰将さんが現れて自分の社会的地位や家庭が脅かされた瞬間、急に被害者面を被り、私一人をサイコパス扱いして悪者に仕立て上げた。そうして彰将さんの機嫌を取るように「蔑ろにしちゃいけない」とか都合のいい言葉で、私を崖から突き落とすようなことをする。

「蔑ろ」にしてきたのは私たち2人でのことなのに。

 

激しい嫌悪感と、不快感に吐き気が込み上げた。

私は、彰将さんも、奈良さんも、両方を必要としている。

彰将さんは大切な家族だけど、それだけじゃ足りないから、奈良さんから「癒やし」が欲しかった。

奈良さんは私が誰にも頼れず一番辛かった時を救ってくれたヒーローのような存在だ。

だから、奈良さんから否定されてしまうと私は正気で生きていけない。


2人とも必要なの。

そう涙ながらに訴えたばかりなのに。

 

(私の人生には、あなたからの癒やしが絶対に不可欠だって言っているのに。

あなたは、自分の保身のためだけに、私をあっさりと切り捨てるというの?)

 

許せない。

絶対に、許さない。

 

奈良さんの口から出た「妻も柔らかい時があるんだ」「子供たちがいて、あの温かい家庭を守るためなら何だってする」という言葉が、頭の中で何度も繰り返される。

 

私をこれから檻に置き去りにして、自分だけぬくぬくと温かい家庭に戻って、奥さんや子供たちと幸せになるなんて、そんな虫のいい話が通るわけがない。

私を捨てるなら、あなたも相応の代償を支払うべきだ。


悲しみも、怯えも、今は感じない。

これまでの相互依存にある「お互いに癒やし合う関係」は終わったんだ。

今、一方的に捨てられたのだから。 

 

気が付くと私は繋がれたままの彰将さんの手に力を、さらに強く込めていた。

驚いて私の顔を覗き込む彰将さんの気配を感じながら、私は顔に張り付いた涙をそのままに、じっと正面の奈良さんを見据えた。

私の瞳を、奈良さんが恐怖の表情で見つめている。


絶対に逃がさない。

私から?

それとも一人で幸せになることから?


それがどっちのことかなんて今はわからないけど、泥沼化ってよく言ったものよね。

底まで引きずり落としてやりたいと思うんだから。

本作は第15回ネット小説大賞に応募致します。


もし少しでも面白い、スカッとしたと思ってくださったら、ページ下部の☆やフォローで応援していただけると、コンテストを戦う大きな力になります!


是非よろしくお願い致します!

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