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セカンドパートナー 朝の徒花  作者: 八卦阿礼
第二章 理性の崩壊

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2-9.第二戦

7月23日。

今日は、待ちに望んだワインバル「ブルーノ」に行く日。

私は「お店までの道がよく分からないから」と理由をつけて、現地集合ではなく駅の改札口で待ち合わせることに成功した。

 

約束の時間の少し前。

早めに到着した私は改札口から人が現れるたび、「彼が来たかも」と胸がそわそわと波打つ。

何人の見知らぬ人が通り過ぎただろう。

しばらくすると、改札口の向こうに奈良さんを見つけた。

今までゴルフではいつも軽装だったので、奈良さんの私服を見るのはこれが初めてだ。

「プライベートではこんな服を着るんだ」と、彼の新しい一面を覗き見れたようで嬉しくなる。

 

「奈良さん、お疲れ様です!」

 

駆け寄って声をかけると、奈良さんが最初に口にしたのは、やはり彼らしい心配の言葉だった。

 

「お疲れ様!

宮本さん、傷はもう大丈夫?」

「大丈夫ですよ。

もー、今日でチャラですって言ったじゃないですかw」

 

私は笑って返し、お店に向かう前に近くのコンビニへ立ち寄った。

水のリットルボトルを2つ買い、私は自分のカバンから『ウコンの力』の粉末を2包取り出した。

そのうちの1つを奈良さんに手渡す。

 

「よかったらどうぞ。

二日酔い防止の儀式です。」

「へぇー面白いね、これ初めて飲むよ。」

 

奈良さんは驚きながらも、2人で仲良く並んでウコンを口に流し込んだ。


「味、どうでした?」

「エナジードリンクみたいで結構美味しいね。」


そんなことを言いながら笑い合う。

お店に入る前から、すでに私たちの間には特別な空気が流れていた。


いざ入った「ブルーノ」は、イタリア調の落ち着いたお洒落なお店だった。

ワインの種類も豊富で、私たちはさっそく乾杯。

それからは、談笑をしながらグラスを何杯か飲む。

18時半に入店して、気づけば早2時間が経過していた。

お酒が進むにつれ、話のタネは自然とお互いの家族の話題へと移っていく。

私の番になったとき、私は少しだけ、計算を交えて本音をこぼした。

 

「実は最近、旦那が転職したんですけど……。

色々と環境が変わって、不安や不満が溜まっちゃってて。」

 

そこまで言って、少し俯いてみせてから慌てて笑顔を作る。


「あ、ごめんなさい。

こういう湿っぽい話、飲みの席でしちゃダメですよね。」


すると奈良さんは、優しい眼差しで首を振ってくれた。

 

「そんなことないよ。

お酒の席だからこそ、普段話せないことを話したらいいんだからね。」

 

私の狙い通りだ。

こうやって、彼は私の寂しさに寄り添ってくれる。

湿っぽい話を逸らそうとしたのか、奈良さんはふと私の手元や顔まわりに目を向けた。


「宮本さんは、いつもアクセサリーや付け爪のセンスが良いね。」

「本当ですか? 嬉しい!」

 

私は跳び上がるほど喜び、すかさず言葉を重ねる。

 

「奈良さんはこういうの見て、チャラついてるとか思わないんですか?」

「まさか、よく似合っているからね。

ボクはこの金のイヤリングなんか、さりげないアクセントで凄くオシャレだと思うよ。」

 

チャンス到来!

私はいたずらっぽく微笑み、彼を真っ直ぐ見つめた。

 

「宮本がつけると、高価な物に見えるでしょ?

これ、実は500円なんですよ。

……でも、奈良さんがそんなに褒めてくれるなら、これからは『奈良さん専用』ってことで。

奈良さんと会う時は、毎回これをつけますね。」

「専用(笑)」

 

奈良さんは声を上げて笑った。

その顔は、どう見ても満ざらでもなさそう。

 

会話の勢いは止まらず、お互いの誕生日の話にもなった。

私は来週の8月13日、奈良さんは11月10日。

2人ともかなり酔いが回っている。

今が一番、彼の心のブレーキが緩んでいる瞬間だ。

私はグラスを弄びながら、少し上目遣いで甘えた声を出す。

 

「奈良さんが、私の誕生日をお祝いしてくれたら嬉しいな……」

 

酔った奈良さんは、私の予想以上に簡単に罠に引っかかってくれた。

 

「そうかぁ、じゃあ誕生日当日は無理だけど、来週お祝いでもう一回行こうか!

何かプレゼントもしないとね!」

 

完全に酔っている。

普段の理性の塊のような彼なら、絶対に口にしないような約束だ。

けれど、私はこの好機を絶対に逃さない。

 

「絶対ですよ!

奈良さんは私のこと大切にしてくれますね!

楽しみだなぁ~!」

 

私は最高の笑顔で、念を押し込むように彼の言葉を確定させた。

お酒も、プレゼントも、そして次回のデートの約束も。

全てが私の計算通り、いや、それ以上に完璧に進んでいる。

 

私は信じられないほどの歓喜と嬉しい気持ちで胸を満たしながら、夜、ベッドに入ってからも次回の「ワインデート」の作戦を考え続けていた。

本作は第15回ネット小説大賞に応募致します。


もし少しでも面白い、スカッとしたと思ってくださったら、ページ下部の☆やフォローで応援していただけると、コンテストを戦う大きな力になります!


是非よろしくお願い致します!

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