悪役令嬢の魅了
「アルテシアよ。何故、男爵令嬢サリー嬢の教科書を破った?」
私の婚約者ルドルフ殿下は、ピンク髪の男爵令嬢サリー様を横に並び詰問する・・・
ここは学園の庭、大勢の学園生達が止り耳目を集めているわ。
ヒソヒソヒソ~
「まあ、メンヒル公爵令嬢アルテシア様、いつも厳しいと思っていたけどサリー様、騒がしいけどそこまでやる?」
「聞いたよ。サリー様の成績が良いから妬みか」
「いいえ、生徒会書記で殿下と近いから嫉妬したのよ」
小声で噂話が聞こえてくる・・・
サリー様は・・・礼節を守り私を名前呼びしない。
殿下が再度尋ねる・・・
「何故、教科書を破った」
「それは・・・言えませんわ」
すると、サリー様は殿下の袖を引っ張り白状した。
「あたし、教科書の陛下の顔に落書きしたのだからねっ!不敬罪に当たるから、『お止めになりなさい』と注意してくれたのだからねっ、
証拠隠滅で破いてくれたのだからねっ!アルテシア様は黙っていなさいと言ったけど、サリサリ、我慢出来ないのだからねっ!」
「な、何!そうか、サリー嬢の身を案じ汚名を被ったのか・・」
「殿下、あたしを不敬罪で逮捕するのだからねっ!」
「・・・学生だ、学園長に申告せよ」
「はい、だからねっ!」
この件は学園長の文書での注意ですんだ・・・
そして、私の評判が若干良くなった。
「アルテシア様の注意は・・」
「少しガミガミだけど理由があるのね」
「俺、反省する」
屋敷に戻る。花瓶の位置が整っていなかった。
「ケリー、花瓶の位置、ズレているわよ」
「申訳ございません」
すると、義妹のメアリーが飛び込んで来た。
「お義姉様、ドレス欲し~の。お義姉様だけズルいの~」
「メアリー、私は王太子殿下の婚約者としてそれなりの品位を保たなければならないのよ。とてもきつい義務の見返りに・・・・・メ、メアリー、どうしたの?」
バタンと倒れた。
額に手を当てるとすぐに分かるほどの高熱。
「回復術士を!」
「はい、お嬢様」
回復術士の魔法、ポーションも効かない。メアリーは寝込んだ。
また、メイド達が噂をする。
「メアリー様、5歳なのに長時間立たせてお説教をしたそうよ」
「まあ、あの年頃のお嬢様は風邪を引きやすいのに・・・」
「厳しすぎるのよ」
7日目の朝、メアリーは起きた。
「「「メアリーお嬢様!」」」
「ハニャ?」
「メアリー・・大丈夫かしら」
「お、お義姉様、今まで我が儘を言ってごめんなさいなの~、メアリーは良い子になるの~!」
治ってから・・・本当に良い子になった。
頭も良くなった。
何て言うか。知識を鵜呑みにせずに自分で考えるようになったわ。
「お義姉様、何故、良い子教訓で『天は人の上に人を作らず』ってあるのに王国には厳格な身分制度があるの~」
「それは女神様の前では平等という意味よ」
「なるほど、二法あり。王の法と女神の法なの~」
「そうよ。重複するときは・・・試されるわね」
「有難うなの~」
使用人達の評判が少し良くなったわ。
「そう言えば、花瓶の位置がズレるとしまらないと言うか・・」
「ああ、決まった位置に置いておくと楽だよな」
「お嬢様の事、誤解していたわ。メアリー様が改心したのよ。きっと優しい故の厳しさよ」
学園に行く。メアリーの看病で休ませてもらっていた。
そしたら、皆の態度がどこかおかしくなっていたわ。
前からボタンを一個外した男子学生が歩いてきたわ。
「そこの君、制服が乱れてましてよ。服装の乱れは心の乱れですわ」
「はい!有難うございます!」
男子学生は喜んでボタンを直し駆け足で友人達の輪に入ったわ。
「やったぜ。メンヒル公爵令嬢に注意されたぜ!」
「羨ましいな!」
「良い事あるぜ。義妹を改心させた叱責、見たかったぜ」
何かしら・・・ね。
まあ、こんなことあるかしら。私は見た目が厳しいわ。それに未来の王妃として重責を担っている。
あら、女子学生が、校則を破っているわ。
「そこの貴女、アクセサリーは三つまでですわ。淑女は身を飾らず心を飾るですわ」
「はい!有難うございます!余計な物は教務課に預けて参ります」
スカートの裾を少しあげて駆け足で去るわ。
何故かしら。前は私が注意をするとうんざりな顔をしていたのに・・・
まるで、私が・・・・改変された世界に転移したみたいだわ。
「アルテシアが注意すると良い事があると・・・評判になっているぞ」
「そうだからねっ!」
殿下とサリー様が教えてくれたわ。
怒りづらくなるわね・・・
少し、控えるかしら・・・
もっと、サリー様やメアリーみたいに明るく朗らかになれば・・・
私は微笑むことにした。注意するときは優しくだわ。
「オホホホホ、あの~、そこの貴女、お日柄が良くて、お庭でお菓子を食べたくなるのは分かりますわ。でも、学園規則では食堂の自由席ですわ。お気をつけ遊ばせ」
すると、女学生は口を開けて驚いた。
ポトとお菓子を落とし。それを猫が奪って去っても気にしない。
立ち尽くしていた。
「・・・アルテシア様、お病気で・・・」
それからだ。生徒会室の皆にまで私が病気と心配するようになった。
「アルテシアよ。今日は帰れ。君に頼りすぎた。反省している。しばらく生徒会活動は休みたまえ」
いつもは、『アルテシアの小言はうんざりだ』と言っていたのに・・・
「アルテシア様、私とオルガがおりますの。サリー様を殿下に近づけませんわ」
「アルテシア様、このオルガ、サリー嬢を殿下の五メートルまで近づけません」
「部屋、五メートルないのだからねっ!サリサリ~、殿下に婚約者のアルテシア様がいるって知っているのだからねっ!殿下をいいな~と言ったのは吟遊詩人に対する憧れみたいなものだからねっ!」
「そうです。アルテシア先輩、サリーが変な踊りをしたら、取り押さえます」
「我慢するのだからねっ!」
学園祭が近い。でも・・・
「殿下、ネクタイが曲がっておりますわ。直して差し上げます」
「ああ、本当に調子悪いみたいだな。いつもは、叱ってくれたのに・・・」
殿下のネクタイを直して屋敷に戻った。
早い時間だわ。メアリーが友人達とボール遊びをしているわ。
「メアリーはリベロなの~!」
何か新しい球技を考案したようだわ。
「メアリー様、レシーブをお願いしますわ」
「はいなの~」
「ロビン様、アタックですわ!」
「カット!」
庭に網を張ってその両サイドに分かれて遊んでいるわね。
あら、ボールが転がってきたわ。
取ってあげようとしたら、メアリーが駆け寄ってきたわ。取ってあげるのに。
「メアリー、取ってあげるわ」
「有難うなの~、・・・・お義姉様は悪役令嬢なの~、悪役令嬢は皆を魅了するの」
変な事を言い出したわ。私が悪役令嬢・・・・
「悪役はちょっとしたきっかけでヒロインを凌駕する人気が出るの~」
「何を言っているのかしら・・・」
「メアリーちゃん。早くなのです!」
「あ、アルテシア様、ごきげんようでございます」
メアリーは皆の人気者だわ。
次の日、学園に登校する。
休めと言われたが生徒会室に足が向いたわ。
そしたら、ドアから笑い声が響いて来たわ。
「サリー様、やめなさい!」
「これが学園祭で披露するダンスなのだからねっ!EXILEなのだからねっ!」
「首をクネクネ、面白いな」
何だか腹が立った。
ドアをノックもせずに開けたら。
サリー様が大股を広げて、首をクネクネ回していたわ。どこかの蛮族のダンスかしら。
【皆様!何をなさっているの?学園祭まで10日を切りましてよ!】
しまったわ。怒ってしまったわ。
一瞬、シーンとなってから。
「アルテシア様、快気おめでとう!」
「それでこそアルテシアだ!」
「グスン、良くなったのだからねっ!」
「おめでとう。メンヒル公爵令嬢、悪役令嬢復帰嬉しいのだからねっ!」
サリー様に抱きつかれたわ。
「サリー様、学園規則では身分の序列はあれど互いに励み和となせですわ。名前で呼びなさい」
「じゃあ、アルアル様」
「それはダメよ。あっ、殿下!ネクタイ曲がっておりますわ!休み時間に確認して下さいませ!」
「アルテシア、注意有難う。その通りだ」
・・・悪役令嬢・・・
性格は無理に変えない方がいいわね。悔しいけど悪役令嬢で通そうと決めた17歳の秋の一時だったわ・・・・
最後までお読み頂き有難うございました。




