第7話 ロキの特性魔術教義
この世界の魔術とは?
馬車が森の小道を揺れながら進む。
シヅキのプロポーズ(笑)をもらった、翌日
窓の外の木漏れ日を眺めていたシヅキは、いつの間にか座禅を組んでいた。
「……へえ?」
ロキが横目で見る。
「シヅキって、魔術使えるのか?」
「いや、全然」
「え?」
「最近やっと魔力を練れるようになっただけ。魔術はまだ。 妖術が中心だったから、魔力は片手間でさ」
ロキは鼻を鳴らした。
「ふーん。じゃあ教えてあげようか。使えるようになったら僕も楽だし」
「本当に?」
「で、どこから聞きたい?」
「そもそも……魔力って何?」
「……そこからか」
小さくため息。
「長くなるよ」
馬車の揺れに合わせて、声がゆらりと落ちる。
「世界には霊力と魔力――霊素と魔素が満ちてる。
霊素はそのまま使える。でも魔素は違う」
「違う?」
「体内で霊力を変質させて、魔素と混ぜ、魔力に作り替える。
それが、魔力というもの」
指先が揺れる。
空間に、水滴がひとつ浮かんだ。
「魔術は世界の書き換えだ。
ハッカーがバグを突くみたいなもんだね」
水滴が、ゆっくり回る。
「……ちょっと怖いな」
「正しい感想」
シヅキは首をかしげた。
「でもさ、空気に魔素があるなら、それ使えば早くない?」
ロキがにやりと笑う。
「鋭い」
指をひらひら振る。
「濃さも質もバラバラ。生で飲んだら体が先に壊れる」
「だから体内に“回路”を作る。
作って、循環させて、吐き出す。――魔力回路」
「ふうん……」
少し黙り、また口を開く。
「じゃあ最初の魔術師って、どうやって?」
「不明。悪魔の真似説、突然変異説、上位存在の劣化コピー説。好きなの選んで」
「適当だなあ……」
「歴史なんてそんなもんだよ」
ロキは肩をすくめた。
「魔術には属性がある。火、水、土、風、雷、光、闇、無」
「無?」
「身体強化」
即答だった。
「魔力を直接ぶち込む。速くなるし、硬くなるし、感覚も研ぎ澄まされる」
一拍。
「……ただし、初心者には勧めない代物だ」
目が細くなる。
「昔、本で覚えて試した奴がいてさ」
指を鳴らす。
「魔力入れすぎた」
ぱちん。
「それだけで終わり。暴走して即死」
水滴が、ぐにゃりと形を変えた。
「だから最初は水がいい。扱いやすいし、応用も利く」
シヅキは息を吐く。
(難しい……でも、面白い)
浮かんだ水滴から、目が離れなかった。
ロキが笑う。
「魔術は学問だ。焦るな。順番にいこう」
馬車が小川を渡る。
窓の外を流れる水面が、さっきの水滴みたいにきらめいていた
魔術にもいろいろある




