第5話 愚者が集まる烏合の衆の壊し方
フェイクの本性
「安心して?シヅキ、僕にいい考えがある。」
フェイク=ナムルスは広げた地図に指を這わせながら静かに言った。
「昨日、お偉い方々の情報はすべて調べた。ターゲットは決まってる。」
シヅキは眉を寄せる。
「本当に…こんなことして、大丈夫なの?」
「大丈夫さ。」
フェイクは微笑む。
「組織の幹部、コブロ。こいつは金に目がなく、臆病で小心者な豚だ」
シヅキの唇がわずかに震える。
「酷くない…?」
「安心して。僕らが直接手を汚すわけじゃない。潜入は君の得意分野だろう?空間属性を使えば、誰にも気づかれず作戦を遂行できる。君は指示通りに動くだけでいい。」
背筋に冷たい緊張が走る。それでもフェイクの冷静さは、妙に安心感を与えた。
「ねえ、でも……なんで衛兵があんなに必死で追ってきたの?」
シヅキが小さな声で尋ねる。
フェイクは地図から目を離し、軽く肩をすくめた。
「彼らは、元々権力者が好き勝手するために作られた名ばかりの“正義の組織”さ。少女が滅ぼした残党でね。で、僕が関わった失敗の一因を逆恨みして、今回の騒ぎを起こしたんだ。」
シヅキの瞳が見開かれる。
「……そんな理由で、街まで巻き込むの?」
「残念ながら、理不尽はいつだって突然に訪れるものさ。」
フェイクは淡々と答え、地図上でターゲットを指さした。
「でも大丈夫。コブロは臆病で、ちょっとした刺激で勝手に自滅してくれる。」
潜入と賄賂の始まり
組織内部――
「ぐぬぬ…懐が寂しい…」
「そんなにお金が欲しいなら…あげようか?」
「誰だ!?」
影のように現れた声が囁く。
「はじめまして。君にお金を渡す者だ。指示に従うだけでいい。」
「指示…?まさか、組織を裏切れと?」
「いや、大したことじゃない。作戦を1日遅らせるとか、機密性の低い書類を横流しにするとか…ほんの小さなことさ。」
「私の給料3ヶ月分も…?」
「そうさ、これだけで十分。」
コブロは契約書を確認する。理屈上、安全で不正の記載もない。欲望に負け、彼はうなずいた。
「…やってやる。」
部下への拡散と心理の連鎖
「俺一人じゃ損だな…」
コブロは自分の罪悪感を紛らわすため、部下にも同じ指示を出す。
「皆もやれ、これだけ金がもらえるぞ。」
部下たちは一瞬ためらう。だが、周囲も同じ行動をしていると知るや否や、罪悪感を薄めるために次々と下の部下に伝えていく。
「これなら俺だけじゃない…皆もやってる…」
「俺は悪くない…いや、皆やってるから…」
こうして組織内に小さな“腐敗の連鎖”が生まれた。
罪悪感は安堵に変わり、安堵は疑心暗鬼に変わる。
誰もが他人の行動を警戒し、自分の利益を守るために目を光らせる。
内部は微妙な緊張で張りつめ、静かなる戦場が形成されていった。
内乱勃発
数週間後――
フェイクとシヅキは街外れの時計塔に潜み、事態を見守る。
「そろそろだな。」
「フェイ、本当にやるの?というかよくこんな場所見つけたね…」
「時計塔には長年点検されない裏側があるんだ。完璧な隠れ場所さ。」
組織内部では、コブロの行動が次々と連鎖。
全幹部の3分の1が裏切り、内乱は瞬く間に拡大する。
「コブロが裏切った!?」
「全幹部の3分の1が…!?」
廊下では銃声、叫び声、机や椅子が倒れる音、ガラスの割れる音が絶え間なく響き、炎の匂いが立ち込める。
小規模の敵対組織も乱入し、戦場は完全なカオス。
誰が味方で誰が敵かも分からず、恐怖と疑心暗鬼が渦巻く。
部下たちは互いに疑心暗鬼に陥る。
「俺は正しいのか…いや、あいつもやってるなら…」
「これで本当に正しいのか…?」
幹部の一人は汗と血にまみれながら、自分の判断の正当性を必死に探る。
別の部下は裏切った同僚を探し、互いに牽制する。
フェイク=ナムルスは影の中から全体を観察し、冷静に状況を読み続ける。
「これで十分。まだ僕たちの存在は気づかれていない。」
内乱の鎮静と結果
内乱はやがて沈静化した。
組織の本拠地に戻ると、金目のものはすべて売り払われ、残るは絶望だけだった。
「何が起きた…誰が原因何だ…」
幹部たちは呆然と座り込み、自分たちの無力さと愚かさをかみしめる。
内部で芽生えた疑心暗鬼と裏切りの連鎖は、組織全体を完全に蝕んでいた。
彼らの誇りも、信頼も、すべては虚ろな幻影となった。
馬車での会話
馬車は静かに街を離れ、フェイクとシヅキは遠くを見つめる。
「そういえば、組織に渡していたお金って…?」
「ああ、あれ?少女が燃やした基地からちょろまかしただけさ。」
「え…それってマッチポンプじゃない?」
「バレなきゃいいんだ。それに、これが一番、愚かな組織を効率的に壊す方法だから。」
風が頬をなで、街の明かりは遠くなり、二人は静かに未来を思った。
「これで…終わりじゃないけど、十分だね。」
フェイクは小さく笑い、馬車は進む。
外は冷たいが、戦場の残響は心の奥に残ったままだった。
これがフェイクの本領発揮




