表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/5

第1話 あなたの旅路に精一杯の呪いと祝福を「狼編」

いよいよ、旅の始まりです



今日、本格的に旅路に出る。

薄い黒髪を肩まで三つ編みに束ね、丸眼鏡をかけた、12歳くらいに見える地味な少年が、手際よく旅支度を進めている。


「リュックオッケー。持ち物オッケー。旅人のすゝめオッケー」


荷物を詰め終えると、少年は最後に古びた首飾りを取り出した。瞬間、懐かしそうな表情が浮かぶ。


「……首飾りオッケー」


首飾りを服の下に隠し、リュックを背負う。


「さーて、行くか。これから僕も旅人だ!」


―――ガタンゴトン、ガタンゴトン、ヒヒーン。

馬車の中、少年は書物を抱え、上機嫌で目を輝かせる。


「坊主、旅は初めてか?」


少年は本から目を少しだけ離して答えた。


「ええ、初めてです。さっきいたひつじ村の近くから来ました」


ひつじ村とは、ついさっき少年が立ち寄った場所だ。


「そうか。近くから来たのか。じゃあ、その村に伝わる“優しい狼”の昔話は知っているか?」


「いえ、知りません」


少年は首をかしげる。


「昔、心優しい少女が迫害され、山に隠れた時、優しい狼が匿って一緒に暮らしたんだ。少女が家に帰りたくなった時、狼はあっさり許した。しかし戻ると家族は村人によって――」


「……なんですかそれ?聞いたことないです。そんな救いようのない話」


少年はふと思い出す。そういえばあいつ、

日記を持ってたな――。


「まぁ、村の年寄りが細々と伝えてきた話だから、知る人は少なかったんだろうな。ひつじ村出身じゃないと尚更か」


「でも、どうしていきなりそんな話を?」


行商人は少し笑った。


「ひつじ村の村長、実は代々村人を支配するあくどい家系だった。気に入らない村人を追放したり、悪事も働いた。でも狡猾で、誰も証拠を掴めず、善良だと思わせていた」


「……へえ。でも、どうしてそれがバレたんですか?」


「何故か一気に証拠が出て、財産も燃やされた。村の年寄りは『優しい狼の祟りでは?』とささやいていた。そこから俺はこの話を知った」


「あ〜、あれは参りましたねえ。僕も数日、あの村に滞在していて旅支度していたのに、面倒事が起きる前に退散するため馬車に乗ったんです」


「しっかし、村長の悪事が一気に露見するかねえ?やっぱり優しい狼の祟りだったんじゃ……」


「イヤですねえ、祟りなんて非現実的な。それに、その狼が本当に“優しい”なら、祟りなんて起こさないと思いますよ?」


「……それもそうだな」


行商人は納得したかのように頷いた。


少年は心の奥でつぶやく。


(本当にその狼が“優しい”なら、ね……)


―――ガタンゴトン、ガタンゴトン。


ついに行き先の街に到着した。


「乗せてくれてありがとうございます。契約のお礼です」


革袋の水筒を取り出す。


「おお、この見たことのないお酒……匂いも味も独特で、琥珀色に輝き、度数も強い。本当にいいのか?」


「ええ、いいんです。借りは返すのが当然ですから。それに、実はこれ僕の自作のお酒です。ほら、もう一つ持っています」


もう一つの水筒をリュックの奥に忍ばせる。


「こんなお酒を自作で作れるのか、凄いな、坊主。俺は酒好きだからたまらないぜ」

少年は心の中で思う。


(だから交渉に出したんだ)


「ところで坊主、ここは大きい街で宿代も高いぞ。ちゃんと払えるのか?」


「大丈夫です。こう見えて僕、結構お金持っていますから」


ひつじ村に滞在していたとき、燃える前にこっそり手に入れたお小遣いがあった。


「?そうか、気をつけてな」

少年は街に入り、宿屋を探す。


「もう夕方だ、早く宿屋を見つけなければ……あ!あった!すいませーん」


宿屋に入り、チェックインを始める。


「よお、坊主。子供じゃないか。親はどうしたんだ?」


「親はいません。ちょっといろいろあって」


「そうか、悪いこと聞いたな。まあ、私には関係ないか。400ダルクだ」


「はい! ってえ?ナノじゃなくて?」


(しまった、お金の単位が違う……そういえばひつじ村は物々交換が基本で、みんな碌にお金を持っていなかったな……)


少年はリュックの奥を漁り、何かを取り出す。


「ばあちゃん、これあげる。綺麗な石」


「はあ?うちは物々交換できないよ?って、それ琥珀じゃないか!そんなものどこで?」


「こはく?いや、多分違うと思うよ。でも綺麗だからあげる。その代わり、1日だけ宿代勘弁してくれない?」


「だめだ、だめだ。琥珀は宿代より高いけど、うちは物々交換はしないんだ。お金がないなら帰りな」


少年は追い出され、別の宿屋を探す。

琥珀っぽい物体を握りつぶすと、ひんやりして独特の匂いがした。


「まあ、引っかかってくれたらラッキーぐらいだったし、別にいいか」


道端に投げ捨て、少年は歩を進める。


「さて、どうするかな……両替屋も閉まってるだろうし、ある場所も知らないし。一度別の宿屋に入って、ダメなら野宿か」


別の宿屋に入った瞬間、少年は店主と話す人物に目を止める。


深く帽子を被り、身なりの良いリュックと立派な剣を背負った、12歳くらいの山の匂いがする不思議な少年――。

謎の少年とは一体?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ