プロローグ 悪夢
__灰色の空、灰色の街、飛び交う銃弾。自分はビルの3階のフロアを制圧してる最中。この世の地獄と思えるその環境を、息を切らせて走り抜ける。
なぜ急いでるか?__わからない。
そもそもどこに向かってるんだ?__わからない。けど、体は走っていく。
クリアリングは終わった。そうか、4階に向かってるんだ!背筋に走る悪寒。この先に凄まじい悲劇が待っている気がする。いや、当たり前だろ、ここは戦場だぞ。
そう考えている間にも体は上に向かっていく。まるで制御が効かないみたいに。
階段前の扉を蹴破り、踊り場を見上げた。目が合った。こちらに銃口を向けた敵兵。
遅かった。相手の銃が鉛玉を吐き出した一瞬を遅れ、腰撃ちでこちらも短機関銃をぶっ放す。撃ちながらも身を屈め、精一杯の回避体制を取る。感心する無駄のない動きだ。
もちろん、相手の鉛どもは僕に喰らい付いてきやがる。肩が熱くなり、肘が動かなくなり、指が吹き飛んだ。全部右腕だ。下手くそな精度しやがって。頭とか胸狙えよ。
仲間たちが続く。階段上での銃撃戦が始まったが、まもなく終わった。僕の隊優秀だし。
「中尉、大丈夫ですか!」
差し出された手を左手で握り、立ち上がる。
「右腕がお釈迦になった。ちょっと痛いだけだ、まだいける」
短機関銃を捨て、左手に回転式拳銃を握り直す。クソ、精密射撃が無くなっちまった。これからどうやって戦場で息しようかな。
そんなことを思いながら、死体を踏み、階段を上がる。
何か、大事なことを忘れている。物凄い不穏を感じる。その不穏がなんだったか、思い出せない。
階段を上がる途中に起こる不穏、足元の死体…死体?あれ、この後僕は誰に撃たれたんだっけ?
待てよ、なんで撃たれるって知ってんだ?
___ズドン




